留学から技術・人文知識・国際業務などへの在留資格変更が入社日までに許可されない場合、その留学生は許可が出るまで内定先で働けないため、会社は入社日(雇用の開始日)を許可の日以降に後ろへずらすのが原則です。在留期限が審査中に過ぎても、期限内に申請していれば「特例期間」で日本に適法にとどまれますが、特例期間は留学生のまま在留を続ける仕組みで、就労を認めるものではありません。しかも卒業した後は、それまでのアルバイトもできなくなります。4月入社に間に合わせたいなら、出入国在留管理庁が求める「12月1日から1月末まで」の申請を守ることが、ほぼ唯一の打ち手です。
許可が出る前に入社させてはいけない理由
在留資格「留学」は、日本の教育機関で教育を受ける活動のための在留資格です。内定先の会社で社員として働く活動は、留学の活動には含まれません。変更申請を出していても、許可を受けるまでは在留資格は「留学」のままです。
入管法は、在留資格に属さない収入を伴う活動を、資格外活動許可なしに行うことを禁じています(19条1項)。留学生が在学中にアルバイトができるのは、資格外活動の包括許可を受けているからです。ところが、この包括許可には条件があり、入管法施行規則19条5項1号のかっこ書は、留学の在留資格で在留する者については「教育機関に在籍している間に行うものに限る」としています。
つまり、3月に卒業した時点で、留学生は次の状態になります。
- 在留資格は「留学」のまま(在留期限が残っていれば適法に在留できる)
- 教育機関に在籍していないので、資格外活動許可によるアルバイトもできない
- 就労資格への変更許可が出るまでは、内定先で働くこともできない
この状態で入社させて給与を払えば、本人は資格外活動違反、会社は不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われるおそれがあります。不法就労助長罪は、2027年4月1日から法定刑が5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に引き上げられます。企業側の責任は不法就労助長罪とは?で解説しています。
4月1日に日本人の新入社員と一緒に入社式や研修に出てもらう場合も、雇用契約の開始を前提にした参加であれば、報酬の有無にかかわらず避けるのが安全だと筆者は考えます。入社式への「来賓としての出席」のような形をとる会社もありますが、給与を払わない研修参加が資格外活動に当たるかどうかの線引きを示した公表資料は見当たらず、この点は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
特例期間で守られるもの・守られないもの
ここでいう特例期間とは、在留期間の満了日までに変更や更新の申請をした人が、審査中に在留期限を過ぎても、処分がされる時か、在留期間の満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで、それまでの在留資格のまま適法に在留できる期間を指します(入管法20条6項)。
留学生の場合、在留期限は卒業月の数か月後に設定されていることが多く、3月卒業でも期限が6月や7月という人は珍しくありません。その場合は審査中に期限が来ること自体が少なく、特例期間の出番はありません。特例期間が関係するのは、在留期限が4月や5月に来る人です。
整理すると、特例期間で守られるのは「在留が不法残留にならないこと」だけです。
| 項目 | 特例期間中の扱い |
|---|---|
| 日本に在留すること | できる(留学の在留資格のまま) |
| 内定先で働くこと | できない(許可前のため) |
| 卒業後のアルバイト | できない(在籍中に限る包括許可のため) |
| 一時帰国 | みなし再入国で出国できるが、再入国は満了日から2か月を経過する日まで |
| 在留期間満了日から2か月を過ぎたとき | 審査中でも特例期間は終わる |
特例期間の最終日は、満了日から2か月を経過する日です。筆者の計算では、在留期限が4月30日なら6月30日、5月31日なら7月31日が最終日になります。オンラインで申請した場合は在留カードの裏面に申請中の印が押されないため、入管庁から届く「申請受付番号のお知らせ」のメールかその印刷物で、申請中であることを示します。特例期間の考え方と注意点は在留期間の特例期間とは?更新中に期限が過ぎても働ける期間と注意点で詳しく扱います。
4月入社に間に合わせる申請スケジュール
出入国在留管理庁は、4月からの就労を希望する留学生について、12月1日から1月末までの間に変更申請をするよう求めています(「在留資格『留学』から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ」)。在留資格変更許可申請の標準処理期間は1か月から2か月とされていますが、1月から3月は申請が集中する時期で、書類の不足や確認事項があれば希望日までに審査が終わらない可能性があると入管庁自身が注意しています。
12月申請を前提にすると、会社と本人の準備は次の流れになります。
- 10月〜11月:内定と雇用契約の締結。職務内容と専攻の関連性を説明できるよう、業務内容を具体的に書いた書類を用意する
- 12月1日以降:卒業見込証明書を付けて変更申請を出す
- 1月〜3月:追加資料を求められたら、期限内に提出する(入管から資料提出通知書が届いたら?)
- 審査終了:入管から通知のはがきが届く
- 卒業後:卒業証明書を受け取ってから、はがき・卒業証明書・手数料などを持って入管に行き、新しい在留カードを受け取る
- 新しい在留カードに記載された許可の日以降に入社
5の段階は見落とされがちです。入管庁は、審査が終わっても、留学の活動が終わった後(卒業証明書を受け取った後)に来庁して新しい在留カードを受け取るよう案内しています。審査が3月上旬に終わっても、卒業式が3月下旬なら、カードの受取りはその後になります。3月末の窓口は混雑するため、4月1日に間に合うかは、卒業証明書の発行日と来庁日の組み方にもかかっています。
2025年12月1日からは、日本の大学を卒業する人などが技人国・研究へ変更する場合に、一部の提出書類を省略できるようになりました。書類の省略は審査の負担を減らす方向に働きますが、審査期間を保証するものではありません。手続全体と必要書類は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイドで解説しています。
手数料は許可を受けるときに納めます。2026年10月1日以降は、在留期間1年の許可で窓口33,000円・オンライン27,000円など、許可される在留期間に応じた額になります(施行令25条1項)。2027年4月入社の変更申請は、すべて改定後の手数料の対象です。
間に合わないと分かったときの会社の対応
3月中旬を過ぎても結果が出ない場合、会社が取れる対応は限られています。
まず、入社日を許可日以降に変更することを、本人と書面で合意します。雇用契約書の始期を「在留資格変更許可の日の翌日」のように条件付きにしておく会社もあります。内定を取り消すことは、本人に責任のない審査の遅れを理由とする場合、労働契約法上の問題を生じるおそれがあるため避けるべきです。
次に、入社が遅れる期間の本人の生活を考える必要があります。卒業後はアルバイトができないため、収入が途絶えます。4月・5月の家賃や生活費をどう賄うか、本人と早めに話しておくことが、辞退を防ぐうえでも大切です。
審査状況について入管に電話で問い合わせることは、入管庁が控えるよう求めています。個別の進捗には回答しないとされているため、問い合わせても入社日の見通しは立ちません。追加資料の通知が届いた場合に、すぐ対応できる体制を整えておくほうが実務的です。
3月に卒業しても入社日が秋以降になるなど、卒業から入社までの期間がもともと長い場合は、別の問題になります。この場合は、就職内定者の特定活動(内定待機)で在留する方法を検討します。
審査中に在留期限が迫る・不許可になった場合
在留期限が4月や5月に来る人は、審査が長引くと特例期間に入ります。特例期間中に不許可になった場合、在留期間の満了日を過ぎていれば、そのままでは在留を続けられません。実務では、不許可の通知とあわせて、出国の準備のための特定活動(30日または31日)への変更を案内されるのが一般的です。出国準備期間の扱いは出国準備期間の特定活動とは|不許可後30日・31日の違いと再申請・就労で扱います。
不許可の理由が書類の補強で解消できるものであれば、再申請を検討します。不許可の理由を聞く方法と再申請の判断は、入管から不許可のハガキが届いたら?で解説しています。
よくある質問
留学ビザから就労ビザへの変更が間に合わない場合はどうなりますか?
許可が出るまで内定先で働くことはできません。在留期限が残っていれば留学のまま在留できますが、卒業後はアルバイトもできないため、会社は入社日を許可の日以降にずらすのが原則です。期限が審査中に過ぎても、期限内に申請していれば特例期間で在留できます。
就労ビザの審査中に入社して働いてもいいですか?
働けません。審査中の在留資格は「留学」のままで、会社で社員として働く活動は認められていません。給与を払って働かせれば、本人は資格外活動違反、会社は不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
留学ビザから就労ビザへの変更はどのくらいの期間がかかりますか?
入管庁が示す標準処理期間は1か月から2か月です。1月から3月は申請が集中するため、4月入社を希望する場合は12月1日から1月末までに申請するよう入管庁が求めています。追加資料を求められると、さらに時間がかかります。
特例期間中にアルバイトはできますか?
卒業後であれば、特例期間かどうかにかかわらずできません。留学生の資格外活動の包括許可は、教育機関に在籍している間に限られているためです。卒業前で在籍中であれば、在学中と同じ条件でアルバイトができます。
「間に合わない」を防ぐのは内定の時期
就労ビザが入社日に間に合わないという問題の大半は、申請の時期で決まっています。12月に申請できれば、書類に大きな問題がない限り、3月中に審査が終わる見込みが立ちます。2月や3月の申請では、同じ書類でも4月1日に間に合わない可能性が高くなります。そして12月に申請するには、秋のうちに内定と雇用契約、職務内容の説明書類が固まっている必要があります。
留学生の採用を予定する会社は、次の3点を採用スケジュールに組み込んでおくことをお勧めします。1つは、内定を11月までに出し、12月上旬に変更申請できる状態にしておくこと。2つ目は、本人の在留期限と卒業証明書の発行日を内定時に確認し、特例期間に入る可能性があるかを把握すること。3つ目は、雇用契約書の始期を許可日と連動させ、間に合わなかった場合の生活費の相談窓口を社内に決めておくこと。個別の事情で判断が変わるため、在留期限が近い人や専攻と職務の関連性に不安がある人は、申請前に専門家に確認してください。
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根拠資料
- 在留資格「留学」から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ(出入国在留管理庁)
- 在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 第19条・第20条・第73条の2(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第19条(e-Gov法令検索)
- 特例期間について(出入国在留管理庁)
- 在留手続等の手数料の改定について(出入国在留管理庁)
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