日本語学校で在留資格「留学」が認められるのは、法務大臣が告示で定めた日本語教育機関(告示校)か、文部科学大臣が認定した認定日本語教育機関の「留学のための課程」に入学する場合だけです。入学時にはA1相当以上の日本語能力が求められ、これまで認められてきた「150時間以上の日本語学習歴」だけでA1を立証する方法は、2026年10月期の入学者から使えなくなりました。一方で、日本語学校への入学について上陸基準に年齢の上限はなく、「30歳を過ぎると留学ビザは出ない」という話は条文の上では根拠がありません。本人・家族と、日本語学校の留学生を採用しようとする企業に向けて、要件を上陸基準省令と出入国在留管理庁の案内に沿って整理します。
日本語学校で留学ビザが出るのは告示校と認定日本語教育機関だけ
上陸基準省令(平成2年法務省令第16号)の留学の項6号は、専ら日本語教育を受けようとする場合、その教育機関が「告示日本語教育機関」または「認定日本語教育機関」であることを求めています。認定日本語教育機関の場合は、さらに「留学のための課程」で学ぶ場合に限られます。
ここでいう告示校とは、法務大臣が文部科学大臣の意見を聴いて告示で定めた日本語教育機関を指します。これに対して認定日本語教育機関は、2024年4月1日に施行された日本語教育機関認定法(令和5年法律第41号)にもとづき、文部科学大臣の認定を受けた機関です。制度は告示校から認定日本語教育機関へ移行している途中で、既存の告示校は経過措置により2029年3月31日まで留学生を受け入れられます。
この違いは、入学を考える人にとって実務上の意味を持ちます。
- 「日本語学校」「日本語学院」を名乗っていても、告示校でも認定日本語教育機関でもない学校では留学ビザは出ない
- 認定日本語教育機関でも、就労者向け・生活者向けの課程に入学する場合は留学ビザは出ない
- 告示校のままで認定を受けていない学校は、2029年3月31日を過ぎると留学生を受け入れられなくなる
入学を決める前に、その学校が告示校か認定日本語教育機関か、認定の場合は留学のための課程があるかを確認します。告示校は出入国在留管理庁が告示の別表で、認定日本語教育機関は文部科学省が一覧で公表しています。2027年以降に入学し、2年間在籍する予定の人は、告示校のままの学校だと在籍中に経過措置の期限を迎えるため、学校に認定の申請状況を尋ねておくと安心です。
入学に必要な日本語能力はA1相当、150時間の学習歴だけでは足りなくなった
出入国在留管理庁は、日本語教育機関への入学者に、文化審議会の「日本語教育の参照枠」でA1相当以上の日本語能力を求めています。A1とは、ごく基本的な表現を理解し使える段階で、日本語能力試験(JLPT)のN5がこれに当たります。
A1を示す方法として、同庁は日本語能力試験N5以上、JFT-BasicのA1レベル、BJTビジネス日本語能力テスト300点以上、J.TESTのFレベル、NAT-TESTの5級以上などの試験を挙げています。
2026年10月期から何が変わったか
これまでは試験の証明書がなくても、母国の日本語学校などで150時間以上の日本語学習をした証明書があれば、A1相当の立証として認められていました。検索でよく見かける「日本語学習歴150時間」はこの運用のことです。
出入国在留管理庁は「日本語教育機関に入学する者に係る運用の一部見直し」で、この運用を改め、150時間の学習歴だけでの立証は認めないことにしました。見直し後は、次のいずれかが必要です。
- 日本語試験の証明書
- 日本語教育機関が申請人と面接を行い、A1相当以上であることを確認した記録
面接で確認する場合、学校は客観的で具体的な記録を残す必要があります。適用の時期は、在留資格認定証明書の交付申請では2026年10月以降の入学予定者から、変更・更新の申請では2026年7月1日以降の申請からです。別表に掲げる国・地域の出身で、外国の高等教育機関の卒業証明書を出す人は、日本語能力の立証が要りません。
150時間の学習歴は、これからも日本語学習の経緯を示す資料としては意味を持ちますが、それだけではA1の証明になりません。母国で学習を始めた段階で、早めにJLPTのN5やJFT-Basicを受けておくと、入学時期の選択肢が広がります。
年齢制限はあるのか:上陸基準に上限はない
「日本語学校の留学ビザは何歳まで取れるのか」という質問は多く寄せられます。上陸基準省令の留学の項で年齢の上限を定めているのは、高等学校(20歳以下)、中学校(17歳以下)、小学校(14歳以下)に入学する場合だけです。専ら日本語教育を受ける場合には、年齢の要件は書かれていません。
それでも「年齢で不交付になった」という話が出回るのには理由があります。在留資格認定証明書の審査では、上陸基準のほかに、在留資格該当性、つまり本当に日本語を学ぶために来日するのかが見られます。たとえば最終学歴から長い期間が経っている人、母国で安定した職に就いていた人が日本語学校に入学する場合、なぜ今日本語を学ぶのか、修了後にどうするのかという説明が、若い人より強く求められます。説明に筋が通らなければ、就労が主目的ではないかという疑いにつながり、結果として不交付になることがあります。
筆者は、年齢そのものではなく、年齢とともに増える「説明すべき空白」が審査を左右していると考えています。職歴や学習歴の経緯、日本語学習の必要性(進学予定、キャリア上の理由など)、修了後の具体的な進路を、書類と理由書でつなげて示せるかどうかが分かれ目です。個別の事情で判断が変わるため、年齢が高めの人ほど、学校の担当者と事前に説明の組み立てを相談しておくことをお勧めします。
なお、多くの日本語学校は募集要項で「12年以上の学校教育を修了していること」などの入学資格を定めています。これは学校側の入学条件で、上陸基準省令の要件とは別のものです。
経費支弁:学費と生活費をアルバイトで賄う計画は認められない
上陸基準省令の留学の項2号は、日本に在留する期間中の生活に要する費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を持っていることを求めています。本人以外の人(親など)が費用を出す場合は、その人の支弁能力で判断されます。
出入国在留管理庁は、日本語教育機関への入学を考える人向けの案内で、資格外活動許可を受ければ週28時間以内のアルバイトはできるものの、学費・生活費の全額をアルバイトで賄うことは認められないとしています。月に30万円以上稼げるといった勧誘をする仲介業者についても注意を呼びかけています。
経費支弁の立証では、支弁者の預金残高証明書、収入の証明、本人との関係を示す資料などを出します。国籍・地域や学校によって求められる書類が違うため、実際には学校から指示される一覧に沿って準備します。預金残高については、申請の直前にまとまった額が入金されている場合、その資金の出どころを説明できるかが問われます。留学の在留資格全体の要件は留学ビザ(日本)とは?要件・在留期間・経費支弁と就労の制限で扱っています。
在籍期間は最長2年、在学中の管理も厳しくなっている
日本語教育機関に在籍できる期間は、通常、最長2年です。修了後に大学や専門学校へ進学する場合、授業を理解するためにN2以上の日本語能力が求められると、出入国在留管理庁は案内しています。
在学中の管理も強化されています。2026年4月から、日本語教育機関は3か月に1度、在籍する留学生の資格外活動許可の有無、アルバイト先、仕事の内容、働いた時間を確認することになりました。週28時間を超える就労が改善されない場合や、雇用主が28時間を超える就労を強いている場合は、学校から出入国在留管理庁へ報告され、在留審査に反映されます。週28時間の数え方は留学生アルバイト週28時間の数え方|掛け持ち・長期休暇の1日8時間と証明方法、更新で見られる出席率やアルバイト時間は留学ビザの更新|必要書類と出席率・アルバイト時間で見られる点で整理しています。
在留資格認定証明書の申請は、通常、日本語教育機関が留学希望者に代わって行います。申請の時期は地域の出入国在留管理局ごとに決まっており、入学時期は年2回(4月・10月)または年4回(1月・4月・7月・10月)が一般的です。
日本語学校の留学生を採用する企業が知っておくこと
日本語学校の留学生は、在学中は資格外活動許可の範囲でアルバイトとして雇えます。上限は週28時間、学則で定める長期休業期間は1日8時間です。
卒業後に正社員として採用する場合、日本語学校の修了だけでは技人国の学歴要件を満たしません。技人国の学歴要件は大学卒業または日本の専修学校専門課程の修了などで、日本語学校はこれに当たらないからです。本人が母国の大学を卒業していれば、その学歴で技人国を検討できます。日本語学校の卒業と技人国の関係は日本語学校を卒業して技人国は取れる?専修学校の日本語課程と審査要領の取扱いで、留学からの変更手続きは留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイドで解説しています。母国で大学を卒業していない人は、特定技能の試験に合格して特定技能1号へ変更する道があります。
よくある質問
日本語学校に留学するためのビザの期間は?
在留期間は4年3月を超えない範囲で個別に決まり、日本語学校の場合は在籍予定期間などに応じて決定され、必要に応じて更新しながら在籍します。日本語教育機関に在籍できるのは通常最長2年です。
日本語学校で留学ビザを取得するには年齢制限はありますか?
上陸基準省令に日本語学校への入学についての年齢の上限はありません。ただし、年齢が高いほど、なぜ今日本語を学ぶのか、修了後にどうするのかの説明が求められやすく、説明に合理性がないと不交付になることがあります。学校が独自に入学資格を定めていることもあります。
日本語学校を卒業した後のビザは?
進学するなら大学・専門学校の「留学」を続けます。就職する場合、母国で大学を卒業していれば技人国を検討でき、そうでなければ特定技能などが選択肢になります。日本語学校の修了だけでは技人国の学歴要件を満たしません。
告示校かどうかはどう確認しますか?
告示校は出入国在留管理庁が告示の別表で、認定日本語教育機関は文部科学省が一覧で公表しています。認定日本語教育機関の場合は、入学する課程が「留学のための課程」であることも確認します。
150時間の日本語学習証明書はもう使えませんか?
2026年10月期以降の入学予定者の在留資格認定証明書申請では、150時間の学習歴だけではA1相当の立証になりません。日本語試験の証明書を出すか、学校による面接でA1相当以上であることを確認してもらう必要があります。
学校選びと日本語の準備は、2年後の進路から逆算する
日本語学校の留学ビザで押さえるべき要件は、学校が告示校か認定日本語教育機関の留学課程か、入学時にA1相当を試験か面接で示せるか、学費と生活費を支弁できるかの3点です。年齢は条文上の要件ではありませんが、学ぶ理由と修了後の進路の説明の重さを変えます。
在籍できるのは最長2年で、その間に進学ならN2、就職なら学歴要件か特定技能の試験という次の関門が待っています。入学の申請書類で書く「修了後の予定」は、審査のための作文にとどまらず、2年間の学習計画そのものです。学校を選ぶ段階で、2年後に何を目指し、そのためにどのレベルまで日本語を上げるかを決めておくことが、留学ビザの審査にも、その後の進路にも効いてきます。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(上陸基準省令)留学の項(e-Gov法令検索)
- 日本語教育機関への入学をお考えのみなさまへ(出入国在留管理庁)
- 日本語教育機関に入学する者に係る運用の一部見直しについて(出入国在留管理庁)
- 在留資格「留学」に係る適正化について(出入国在留管理庁・2026年4月10日周知)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 別表第二(在留期間)(e-Gov法令検索)
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