留学生のアルバイトは、雇用保険には原則として加入しません。大学・専門学校・各種学校に通う昼間の学生は、週20時間以上働いていても雇用保険の被保険者にならないと厚生労働省の「雇用保険事務手続きの手引き」が定めており、この扱いは国籍を問わず外国人留学生にも同じように当てはまります。健康保険・厚生年金の側でも、週20時間以上の短時間労働者を対象にする加入ルールは「学生でないこと」を条件にしているため、留学生は原則として会社の社会保険に入らず、自分で国民健康保険と国民年金に加入します。ただし、卒業後もそのまま働く予定の人、休学中の人、所定労働時間が正社員の4分の3以上になる人は例外で、学生であっても加入の手続が必要になります。
留学生アルバイトの保険は4つに分けて考える
アルバイトに関係する公的保険は、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の4つです。留学生の場合、それぞれの結論は次のとおりです。
| 保険 | 留学生アルバイトの原則 | 主な例外 |
|---|---|---|
| 労災保険 | 加入する(1日だけのアルバイトでも対象) | なし |
| 雇用保険 | 昼間学生は加入しない | 卒業見込みで同じ会社に就職予定、休学中、定時制・通信制など |
| 健康保険・厚生年金 | 週20時間以上の短時間労働者のルールでは学生は対象外 | 所定労働時間・日数が正社員の4分の3以上なら学生でも加入。卒業見込み・休学中・夜間部なども加入 |
| 国民健康保険・国民年金 | 会社の保険に入らない留学生は本人が加入 | 国民年金は20歳以上が対象 |
労災保険は、雇用されて働く人すべてが対象で、会社が保険料を全額負担します。留学生が仕事中や通勤中にけがをしたときは、日本人のアルバイトと同じく労災保険から給付を受けられます。この点は誤解されやすいため、雇う会社は「留学生だから労災の対象外」という説明をしないよう注意してください。
雇用保険は昼間学生が適用除外
雇用保険の被保険者になるのは、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みのある人です。留学生のアルバイトは週28時間以内のため、時間の要件だけを見れば加入対象になり得ます。
それでも留学生が加入しないのは、雇用保険法6条4号が「学校教育法第1条の学校、同法124条の専修学校、同法134条の各種学校」の学生・生徒で一定の人を適用除外にしているからです。ここでいう昼間学生とは、昼間に授業のある課程に通う学生・生徒を指し、大学、短大、大学院、高専、専門学校(専修学校の専門課程)、各種学校の学生が当たります。
雇用保険事務手続きの手引き(第4章)は、在日外国人について国籍を問わず被保険者になるとしたうえで、外国公務員、外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された人、ワーキングホリデーの人と並べて、昼間学生を被保険者としない人に挙げています。雇用保険の外国人の扱い全体は外国人社員の雇用保険|加入条件・適用除外(留学生・ワーホリ)と資格取得届の記入例で整理しています。
雇用保険に入らない以上、留学生がアルバイトを辞めても失業給付(基本手当)は受けられません。会社都合でシフトを削られた場合も同じです。
日本語学校の留学生は昼間学生に当たるか
日本語学校(日本語教育機関)の多くは、学校法人や準学校法人が運営する各種学校か専修学校です。この場合は昼間学生として雇用保険の適用除外になります。
一方で、株式会社などが運営し、各種学校の認可を受けていない日本語教育機関もあります。条文の「学校教育法第1条の学校、専修学校、各種学校」に当たらない機関の生徒を、ハローワークが昼間学生として扱うかは、公表資料から確認できませんでした(公式資料では未確認)。該当する日本語学校の留学生を週20時間以上で雇う会社は、事業所を管轄するハローワークに確認してから資格取得届を出すかを判断してください。
昼間学生でも雇用保険に加入する4つの例外
手引きは、昼間学生であっても次の人は被保険者になるとしています。
- 卒業見込証明書を持ち、卒業前に就職して、卒業後も引き続き同じ事業所で働く予定の人
- 休学中の人(休学の事実を証明する書類が必要)
- 事業主の命令または承認を受けて大学院などに在学する人(社会人大学院生)
- 定時制課程に通う人など、昼間学生に当たらない人
留学生で実際に問題になるのは、1つ目の卒業見込みの例外です。4月入社の内定者に、卒業前の1月から3月まで同じ会社でアルバイトをしてもらう場合がこれに当たり、週20時間以上であれば、卒業前から雇用保険に加入させる必要があります。
ただし、在留資格の面では、卒業前の留学生が働けるのは資格外活動許可の範囲、つまり週28時間以内(学則上の長期休暇中は1日8時間以内)に限られます。内定先であっても、卒業前に正社員と同じフルタイムの勤務をさせることはできません。入社日と就労資格への変更の関係は留学から就労ビザが入社日に間に合わない|特例期間と4月入社の対応、留学からの変更手続は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイドで解説しています。
休学中の留学生は、そもそも在留資格「留学」の活動を行っていない状態になるため、資格外活動許可の前提が揺らぎます。休学中のアルバイトを雇用保険の例外として処理する前に、在留資格上アルバイトを続けてよい状態かを本人と学校に確認してください。
2028年10月の適用拡大と昼間学生
雇用保険は、2028年10月1日から週の所定労働時間が10時間以上の人に対象が広がります(厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会資料、2026年3月11日)。週10時間以上20時間未満で働く人も被保険者になりますが、昼間学生の適用除外そのものを見直すという記載は、確認した資料にはありませんでした。適用拡大後も昼間学生の留学生は加入しないと考えられますが、施行時の省令・業務取扱要領で最終確認が必要です(公式資料では未確認)。
健康保険・厚生年金は「学生でないこと」が条件
健康保険と厚生年金保険には、加入の入り口が2つあります。1つは正社員と同じくらい働く人の入り口、もう1つは週20時間以上の短時間労働者の入り口です。
短時間労働者の入り口は、日本年金機構の案内(2026年4月17日更新)によると、次の4つをすべて満たす人が対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額の所定内賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生でない
この入り口は、被保険者数が51人以上の特定適用事業所などで開かれています。企業規模の要件は、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上へと段階的に広がる予定です。
4つ目の「学生でない」があるため、昼間の学生である留学生は、この入り口からは加入しません。ここでも例外があり、卒業見込証明書を持ち卒業後も同じ事業所で働く予定の人、休学中の人、大学の夜間学部や高校の定時制の課程の人などは加入対象になります。
外国人の社会保険の加入ルール全体と、家族滞在の配偶者が学生除外を受けられない点は外国人社員の社会保険加入ルール|国籍で免除されない理由と加入条件の確認で解説しています。
週28時間以内でも学生が社会保険に入るケース
見落とされやすいのが、もう1つの入り口です。1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所の正社員(通常の労働者)の4分の3以上であれば、学生かどうかに関係なく健康保険・厚生年金の被保険者になります。学生の除外は短時間労働者の入り口にだけ付いている条件で、4分の3基準の入り口には付いていません。
正社員の所定労働時間が週40時間の会社では、4分の3は週30時間です。留学生は週28時間までしか働けないため、この会社では4分の3基準に届きません。
ところが、正社員の所定労働時間が短い会社では結論が変わります。
| 正社員の所定労働 | 4分の3の基準 | 週27.5時間・月22日勤務の留学生 |
|---|---|---|
| 1日8時間・週5日(週40時間・月22日) | 週30時間・月16.5日 | 時間が届かず加入しない |
| 1日7時間・週5日(週35時間・月22日) | 週26.25時間・月16.5日 | 時間・日数とも届き加入する |
正社員が1日7時間勤務の飲食店や小売店で、留学生に1日5時間半・週5日(週27.5時間)のシフトを所定として組むと、学生であっても健康保険・厚生年金に加入させる必要があります。資格外活動の上限の範囲内であることと、社会保険の加入義務がないことは別の問題です。
判断の基準は、実際に働いた時間ではなく、雇用契約書や労働条件通知書で定めた所定労働時間と所定労働日数です。所定を週20時間で結び、繁忙期だけ残業で27時間にしているような運用は、実態が2か月続くと所定の見直しを求められる場合があります。そもそも週28時間の枠を残業で埋めるシフトは、資格外活動違反の危険も大きくなります。
学則上の長期休暇中は、留学生は1日8時間・週40時間まで働けます。夏休みの2か月間だけフルタイムで雇う契約は、2か月以内の期間を定めた雇用で、延長の見込みがなければ健康保険・厚生年金の対象外です(健康保険法3条1項2号)。
会社の保険に入らない留学生は国民健康保険と国民年金
在留期間が3か月を超える留学生は、住民登録をした市区町村で国民健康保険に加入します。会社の健康保険に入らないアルバイトの留学生は、国民健康保険の被保険者です。
20歳以上の留学生は、国民年金の第1号被保険者にもなります。学生の保険料については、本人の所得が一定額以下であれば納付を猶予する「学生納付特例制度」が使えます。対象になる学校の範囲は大学、専修学校、各種学校(修業年限1年以上の課程)などで、日本語学校が対象かは学校の種類によって異なるため、年金事務所か市区町村で確認してください。
国民健康保険料には、留学生だけを対象にした免除はありません。前年の所得が一定額以下の世帯は保険料の均等割・平等割が7割・5割・2割軽減されますが、軽減を受けるには所得の申告(収入がゼロでも申告)が必要です。来日1年目の留学生は日本での前年所得がないため、住民税の申告をしておくことで軽減が適用されやすくなります。
国民健康保険料・国民年金保険料の未納は、在留期間の更新で公的義務の履行状況として見られることがあります。会社に手続の義務はありませんが、採用時に「会社の保険には入らないので、国民健康保険と国民年金は自分で納める」と伝えておくと、未納の予防になります。保険料の滞納と更新の関係は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?で解説しています。
雇う会社が確認すること
留学生をアルバイトで雇う会社の実務は、次の順に確認すると漏れがありません。
まず、在留カードと資格外活動許可を確認し、通っている学校の種類を聞きます。昼間の大学・専門学校・各種学校であれば、雇用保険と短時間労働者の社会保険は原則として対象外です。
次に、自社の正社員の所定労働時間と、留学生に予定するシフトを比べます。4分の3以上になるなら、学生であっても健康保険・厚生年金に加入させます。
卒業後も同じ会社で働く内定者であれば、卒業見込証明書を受け取り、週20時間以上なら雇用保険、短時間労働者の要件を満たすなら社会保険にも加入させます。
雇用保険に加入しない留学生についても、ハローワークへの外国人雇用状況届出は必要です。雇用保険の被保険者でない外国人は、様式第3号で雇入れの翌月末日までに届け出ます。届出が入管の在留審査に使われる仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
よくある質問
外国人留学生がアルバイトをする場合、社会保険に加入は必要ですか?
昼間の大学・専門学校などに通う留学生は、週20時間以上働いても短時間労働者としての社会保険の加入対象になりません。ただし、所定労働時間と所定労働日数が正社員の4分の3以上になる場合は、学生であっても健康保険・厚生年金に加入します。正社員が週35時間の会社で、留学生を週27.5時間程度の所定で雇う場合がこれに当たります。
留学生が週20時間以上働くと社会保険の対象になりますか?
週20時間以上という基準は短時間労働者の要件の1つで、同じ要件の中に「学生でないこと」があるため、昼間学生の留学生は週20時間以上でも対象になりません。卒業見込みで同じ会社に就職予定の人や休学中の人は例外として対象になります。
留学生は雇用保険に加入できますか?
昼間学生は雇用保険法の適用除外のため、本人が希望しても加入できません。卒業見込証明書を持ち、卒業後もそのアルバイト先に就職する予定で、週20時間以上・31日以上の見込みがあれば、卒業前から被保険者になります。
留学生は国民健康保険の保険料を免除してもらえますか?
留学生であることを理由にした免除はありません。前年の所得が少ない世帯は、所得の申告をすれば保険料の一部が7割・5割・2割の範囲で軽減されます。災害や急な収入減などの事情があるときは市区町村独自の減免制度が使える場合があるため、住所地の窓口に相談してください。
留学生の年金保険はどうなるのですか?
20歳以上の留学生は国民年金に加入し、所得が一定額以下なら学生納付特例で保険料の納付を猶予できます。帰国するときに保険料の納付期間があれば、脱退一時金を請求できます。脱退一時金の仕組みは外国人の脱退一時金とは?上限8年への改正はいつから・再入国許可中の請求制限で解説しています。
保険の判断は「学生であること」と「所定の長さ」の2軸で決まる
留学生のアルバイトの保険は、国籍ではなく2つの事実で決まります。1つは昼間学生かどうか、もう1つは雇用契約で定めた所定労働時間が正社員と比べてどのくらいかです。
昼間学生であれば、雇用保険と短時間労働者の社会保険はどちらも対象外になり、本人が国民健康保険と国民年金を払います。例外は卒業後も同じ会社で働く内定者と休学中の人、そして所定労働時間が正社員の4分の3に届く人です。筆者は、正社員の所定労働時間が短い会社ほど、4分の3基準の確認を採用時の手続に組み込んでおくことを勧めます。週28時間という在留資格の上限を守っていても、社会保険の加入漏れは別の問題として残るからです。個別の加入判断は、雇用契約の内容や学校の種類によって結論が変わるため、年金事務所やハローワークで確認したうえで手続を進めてください。
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根拠資料
- 雇用保険事務手続きの手引き 第4章 被保険者について(厚生労働省)
- 令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について(厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会・2026年3月11日)
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構・2026年4月17日更新)
- 外国人従業員を雇用したときの手続き(日本年金機構)
- 「外国人雇用状況の届出」について(厚生労働省)
- 雇用保険法(e-Gov法令検索)
- 健康保険法(e-Gov法令検索)
- 「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について(出入国在留管理庁)
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