留学ビザの経費支弁書は、留学生の学費と生活費を負担する人(経費支弁者)が、法務大臣宛てに「なぜ負担を引き受けたのか」「学費と生活費をいくら負担するのか」「どうやって日本に届けるのか」を書いて署名する書類で、出入国在留管理庁の「在留資格『留学』」のページに様式が掲載されています。書き方そのものは難しくありませんが、審査で読まれるのは書類の文面より、その裏付けです。入管庁の「申請に当たっての留意事項」は、預金残高だけでなく資金が形成された経緯を示す資料の提出を求め、一時的に口座へ高額を振り込むことは適正な在留に疑義がある者とみなす可能性があると明記しています。経費支弁書は、支弁者の収入・資産の資料と一体で信用される書類だと考えてください。
経費支弁書とは|誰が、何のために書く書類か
ここでいう経費支弁とは、留学生が日本で学ぶ間の学費と生活費を、誰がどのように負担するかを指します。経費支弁者は、本国の父母が最も多く、ほかに本人自身、日本に住む親族、奨学金を出す団体などがあります。
留学ビザ(在留資格「留学」)の申請では、「申請人の在留中一切の経費の支弁能力を証する文書」の提出が求められ、申請人以外の人が経費を支弁する場合には、「その者の支弁能力を証する文書及びその者が支弁するに至った経緯を明らかにする文書」が必要とされています(入管庁「申請に当たっての留意事項」)。この「支弁するに至った経緯を明らかにする文書」の役割を果たすのが経費支弁書です。
経費支弁書は主に、海外から来日する留学生の在留資格認定証明書交付申請で使います。日本語学校から大学・専門学校に進学するときの在留資格変更や在留期間の更新でも、経費支弁者が変わった場合などに求められることがあります。留学ビザ全体の要件は留学ビザ(日本)とは?要件・在留期間・経費支弁と就労の制限で解説しています。
経費支弁書の様式と記載項目
入管庁の様式「経費支弁書」は1枚の書式で、宛先は「法務大臣殿」です。記載する項目は次のとおりです。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 申請者 | 留学生の国籍・地域、氏名、生年月日 |
| 経費支弁者 | 住所、電話番号、氏名、申請者との関係 |
| 経費支弁を引き受けた経緯 | 申請者との関係と、支弁を引き受けた具体的な理由 |
| 経費支弁内容 | 学費(毎月・半年ごと・年間から選び金額を記入)、生活費(月額) |
| 支弁方法 | 送金・振込み等の具体的な方法 |
| 署名 | 作成年月日と経費支弁者の署名 |
様式の中には、在留期間の更新の際に、送金証明書や預金通帳の写しなど支弁の実績を示す資料の提出を求める場合がある旨の記載もあります。経費支弁書に書いた送金方法は、来日後に実際にその方法で送金しているかを確かめられる前提で書く必要があります。
様式は日本語ですが、支弁者が日本語を読めない場合は、母国語の訳を付けて内容を理解したうえで署名してもらうのが適切です。代筆した内容を支弁者が理解していないと、入管から支弁者に直接確認があったときに説明が食い違います。
経費支弁書の書き方|欄ごとの記入例
経費支弁者と申請者との関係
支弁者の住所は、預金残高証明書や収入証明書に記載された住所と一致させます。関係は「父」「母」「叔父」のように具体的に書きます。父母以外の親族や知人が支弁者になる場合は、関係を示す親族関係の公的書類(出生証明書、戸籍に当たる書類など)を添えると説明が通りやすくなります。
経費支弁を引き受けた経緯
この欄は、定型文で済ませずに具体的に書くべき欄です。父母が支弁する場合でも、次の3点が読み手に伝わるように書きます。
- なぜ日本に留学させるのか(本人の進路と日本で学ぶ理由)
- 支弁者の職業と収入の状況
- 留学期間中の費用をどう準備しているか
記入例を示します(数字は説明のための例です)。
私は申請者の父です。〇〇市で食品卸売業を経営しており、年収は約〇〇〇万円です。申請者は本国の高校を卒業後、日本の専門学校で自動車整備を学び、将来は日本の技術を本国で生かしたいと希望しています。私は申請者の希望を支援するため、日本での学費と生活費の全額を負担します。留学費用として、20XX年から事業収入の一部を申請者名義ではなく私名義の定期預金に積み立ててきました。
支弁者が父母以外の場合は、なぜ父母でなくその人が負担するのかを必ず書きます。父母が亡くなっている、父母の収入が不足しているため親族が援助する、といった事情です。この説明がないと、支弁者が名義を貸しているだけではないかという疑問を持たれます。
経費支弁内容|学費と生活費の金額
学費は入学予定の学校が示す金額と一致させます。入学金、授業料、施設費などを合計し、「年間〇〇万円」と書くのが分かりやすい方法です。
生活費は月額で書きます。家賃、食費、光熱費、通信費、国民健康保険料などを合計した金額で、地域の生活水準から見て無理のない額にします。入管庁の留意事項は、生活費の目安として日本学生支援機構(JASSO)の「私費外国人留学生生活実態調査」を参照するよう案内しています。この調査で示される地域別の平均生活費を大きく下回る金額を書くと、足りない分をアルバイトで補う前提の計画と読まれるおそれがあります。
学費と生活費の合計額は、支弁者の年収や預金残高と比べて負担可能な水準である必要があります。年収に対して支弁額の割合が大きすぎると、その収入で本国の家族の生活も支えられるのかが問われます。
支弁方法
「送金・振込み等」の欄には、具体的な方法を書きます。例えば「父名義の〇〇銀行口座から、申請者名義の日本の銀行口座へ、学費は年1回、生活費は3か月ごとに国際送金する」のように、誰の口座から、どこへ、どの頻度で、という3つを入れます。
入学時に現金を持参する場合は「携行」と書き、入国時の税関での申告など、持ち込んだ事実を示せる記録を残してください。外貨の持ち出しに規制がある国の場合、入管庁の留意事項は、資産の持ち出し方法を説明する書類の提出を求めています。
経費支弁書と一緒に出す書類
経費支弁書は単独では支弁能力の証明になりません。支弁者の区分に応じて、次のような資料を組み合わせます。
| 支弁者 | 主な資料 |
|---|---|
| 本国の父母など | 預金残高証明書、資金形成の経緯を示す資料(出入金明細書、預金通帳の写し)、公的機関発行の年間収入証明書、在職証明書や営業許可証など職業を示す書類 |
| 日本に住む親族 | 住民税の課税(所得)証明書・納税証明書、在職証明書、預金残高証明書 |
| 申請者本人 | 本人名義の預金残高証明書と資金形成の経緯を示す資料 |
| 奨学金 | 奨学金の給付額・給付期間を示す証明書 |
入管庁は、提出書類の一部を省略できる国・地域を「別表」に掲げています。アジアでは韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国、香港、マカオなど12か国・地域が掲載されています。ベトナム、ネパール、スリランカ、ミャンマーなどの出身者は、別表に掲載されていないため、経費支弁に関する資料を省略せずに提出するのが原則です。受け入れる学校が「適正校」かどうかによっても、必要な範囲は変わります。
預金残高証明書は、各国の政府や中央銀行が認める銀行の口座のものである必要があります(入管庁 留意事項)。
不交付リスクが高い経費支弁の例
入管庁の留意事項は、証明書の偽造や一時的な高額入金を、適正な在留に疑義がある者とみなす可能性があるとしています。そのうえで「学費・生活費の全額をアルバイトで賄うということは認められません」と明記しています。これらを踏まえると、次のような経費支弁は不交付の原因になりやすいと筆者は考えます。
申請直前に残高が急に増えている
預金残高証明書の金額が十分でも、数週間前に大きな入金があって残高が形成されている場合は、借入金や他人から一時的に借りた資金ではないかと疑われます。入管が資金形成の経緯の資料を求めるのは、この点を確かめるためです。預金通帳や出入金明細で、給与や事業収入が数年かけて積み上がっている流れを示せるかが分かれ目になります。
土地の売却や親族からの贈与など、まとまった入金に正当な理由がある場合は、売買契約書や贈与の事実を示す書類を付け、経費支弁書の「経緯」欄でも説明します。
支弁者の収入と支弁額が釣り合わない
年収証明の金額に比べて、預金残高が不自然に多い場合も説明を求められます。収入から見て数年では貯められない額が口座にあれば、その資金がどこから来たのかが問われます。逆に、預金は十分でも年収が低く、留学期間中の継続的な送金が難しいと見られることもあります。
支弁者と申請者の関係が薄い、または経緯の説明がない
父母以外の親族や知人が支弁者で、なぜその人が負担するのかが書かれていない場合は、名義だけの支弁者ではないかと疑われます。同じ人が複数の留学生の支弁者になっている場合も、実際に全員分を負担できるのかが問われます。
生活費をアルバイトで賄う計画になっている
経費支弁書の生活費が極端に低い、または「足りない分はアルバイトで補う」と読める内容になっている場合は、留学の在留資格の前提と合いません。留学生のアルバイトは資格外活動許可を受けたうえで週28時間以内に限られ、学業を妨げない範囲の補助的な収入と位置付けられています。
経費支弁の説明不足は、認定証明書が交付されない代表的な理由の一つです。不交付の理由と再申請の考え方は在留資格認定証明書が不交付になる理由とは?で解説しています。入管の内部基準である入国・在留審査要領の留学の章が、経費支弁能力の判断で送金実績や残高の形成時期をどのように扱っているかは、開示版で具体的な文言を確認できていません(公式資料では未確認)。審査要領の読み方は入国・在留審査要領とは?で解説しています。
来日後は経費支弁書どおりに送金しているかが見られる
経費支弁書は、認定証明書の審査が終われば役目を終える書類ではありません。在留期間の更新では、前回の申請以降に誰からいくら受け取り、アルバイトでいくら得たかを、「滞在費支弁に関する申告書」や送金証明書、預金通帳の写しで確認されることがあります。
特に、直近の更新の際に資格外活動許可について指導を受けている留学生や、適正校の通知を受けていない日本語教育機関の留学生(別表掲載国以外の出身者)は、申告書と本国の資産の資料、送金証明書などの提出が求められます(入管庁「提出書類一覧表<更新用>」)。経費支弁書に「3か月ごとに送金」と書きながら、来日後は一度も送金がなく生活費をアルバイトで得ていたことが通帳から読み取れると、更新の段階で経費支弁の実態が問われます。更新申請書の滞在費支弁方法の欄の書き方は在留期間更新許可申請書(留学)の書き方|記入例と所属機関欄・希望在留期間で解説しています。
経費支弁者が途中で変わる場合、例えば父の事業が悪化して叔父が援助するようになった場合は、更新や変更の申請の際に新しい支弁者の経費支弁書と資料を出し、事情を説明するほうが安全です。
よくある質問
経費支弁者とはどういう意味ですか?
留学生が日本で学ぶ間の学費と生活費を負担する人のことです。本国の父母が多く、本人自身や日本に住む親族、奨学金の給付団体がなることもあります。経費支弁者は経費支弁書を作成し、収入や預金の資料で負担できることを証明します。
経費支弁書は誰が書きますか?
経費支弁者本人が作成し、署名します。日本語の様式のため、学校や代理人が記入を手伝うことはありますが、支弁者が内容を理解したうえで署名してください。母国語の訳を添えると、内容の理解を示せます。
預金残高はいくらあれば足りますか?
入管庁は具体的な金額を公表していません。入学する学校の学費と、在籍期間中の生活費(JASSOの調査などを参考にした地域の水準)を合計した額を、支弁者が無理なく負担できることが目安になります。金額が足りていても、残高が申請直前に形成されている場合は評価されにくくなります。
日本に住む親族が経費支弁者になれますか?
なれます。その場合は住民税の課税(所得)証明書・納税証明書、在職証明書などで収入と納税の状況を示します。親族関係を示す書類と、父母でなくその親族が負担する理由の説明も用意してください。
アルバイト収入を経費支弁に含めてもよいですか?
入管庁は、学費・生活費の全額をアルバイトで賄うことは認められないとしています。来日前の計画は、アルバイトがなくても学費と生活費をまかなえる内容にする必要があります。
経費支弁書は「資金計画の要約」として書く
経費支弁書は1枚の書類ですが、読み手の入管から見れば、留学期間中の資金計画を支弁者が自分の言葉でまとめた要約です。金額、送金方法、引き受けた経緯のそれぞれが、預金通帳や収入証明と一致しているか、来日後もそのとおりに送金が続くかが見られます。
筆者は、経費支弁書を書く前に、支弁者の過去数年分の通帳と収入証明を並べ、学費と生活費の合計を無理なく出せるかを先に確認することを勧めます。書類をそろえてから文面を整える順番にすると、経緯の欄に書くべき内容も自然に決まります。個別の申請で不交付の可能性がどの程度あるかは、支弁者の資産の状況や出身国によって判断が変わります。
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根拠資料
- 在留資格「留学」(出入国在留管理庁)
- 経費支弁書(様式)(出入国在留管理庁)
- 申請に当たっての留意事項(出入国在留管理庁)
- 別表(提出書類の一部を省略できる国・地域)(出入国在留管理庁)
- 滞在費支弁に関する申告書(参考様式)(出入国在留管理庁)
- 奨学金の給付に関する証明書一覧(出入国在留管理庁)
- 適正校の通知を受けていない日本語教育機関 提出書類一覧表<更新用>(出入国在留管理庁)
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