不法滞在のうち最も多いオーバーステイは、在留期間の更新や変更を受けないまま在留期間を過ぎて日本に残っている状態で、入管法70条1項5号の不法残留罪として3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される犯罪です。刑事罰とは別に、退去強制(強制送還)の対象にもなります(入管法24条4号ロ)。状態を解消する出口は、自ら出頭して帰国する「出国命令」、日本での在留を認めてもらう「在留特別許可」、そして「退去強制」の3つで、どれになるかで再来日できるまでの期間が1年から10年まで変わります。2026年1月1日現在の不法残留者は6万8,488人です(出入国在留管理庁)。
不法滞在とは|不法入国・不法上陸・不法残留の3つ
ここでいう不法滞在とは、日本に在留する法的な根拠を持たずに日本にいる状態を広く指す言葉で、法律上の用語ではありません。入管法の条文に沿って分けると、次の3つになります。
- 不法入国:有効な旅券を持たずに日本に入った場合など(入管法3条違反、70条1項1号)
- 不法上陸:入国審査官から上陸の許可を受けずに上陸した場合(70条1項2号)
- 不法残留:在留期間の更新・変更を受けないで在留期間を経過して残留した場合(70条1項5号)
一般に「オーバーステイ」と呼ばれるのは3つ目の不法残留です。出入国在留管理庁が毎年公表している統計も、この不法残留者の数を対象にしています。
在留期間の満了日までに更新や変更の申請をしていれば、審査中に満了日を過ぎても不法残留にはなりません。入管法20条6項により、処分がされる時か、満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで、従前の在留資格で適法に在留できるからです(特例期間)。逆に、申請をしないまま満了日を1日でも過ぎると、その時点から不法残留になります。在留期間の管理と申請期限の考え方は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?で解説しています。
オーバーステイの罪名と罰則
オーバーステイの正式な罪名は「不法残留罪」で、根拠は入管法70条1項5号です。条文は「在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者」を処罰の対象とし、法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。
刑事手続と入管の行政手続は、別々に進みます。警察に逮捕されて刑事裁判になり、執行猶予付きの判決を受けた場合でも、判決後に入管に引き渡され、退去強制の手続が始まるのが通常の流れです。罰金を払えば日本にいられるという仕組みにはなっていません。
なお、不法残留罪は、在留期間を過ぎて残留している状態が続く限り成立し続ける罪と解されています。日本に滞在し続けている間に、時の経過で罪が消えることはありません。
雇った会社も処罰の対象になる
オーバーステイの外国人を働かせた会社は、不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)に問われます。現行の法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科で、法人にも罰金刑が科されます(76条の2の両罰規定)。2024年の入管法改正(令和6年法律第60号)で、この法定刑は2027年4月1日から5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその併科)に引き上げられます。
同条2項は、外国人が不法残留者であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできず、過失がないときに限って処罰されないと定めています。在留カードの「在留期間(満了日)」を見れば分かることなので、確認を怠った会社が過失なしと認められるのは難しいと考えてください。企業側の責任と防止策は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で詳しく扱っています。
数字で見るオーバーステイ|2026年1月1日現在6万8,488人
出入国在留管理庁の報道発表によれば、2026年1月1日現在の不法残留者数は6万8,488人で、前年から6,375人(8.5%)減りました。
国籍・地域別では、ベトナム1万1,601人、タイ1万907人、韓国1万20人、中国5,827人、フィリピン4,393人の順です。在留資格別では、短期滞在が4万1,607人と全体の6割を占め、技能実習9,323人、特定活動7,306人、留学2,173人、日本人の配偶者等1,724人と続きます。2025年中に新たに判明した不法残留者は9,748人でした。
短期滞在が多いのは、観光などの名目で入国し、90日などの期限を過ぎても帰国しないケースが多いためです。企業の人事担当者にとって注意が必要なのは、技能実習と留学です。実習先から失踪した技能実習生や、退学・除籍になった留学生が、在留期限を過ぎたまま別の職場で働いているケースがあるからです。
発覚後の3つの出口|出国命令・在留特別許可・退去強制
オーバーステイの状態を解消する方法は、次の3つです。どれに進むかは、本人が帰国を望むか、日本での在留を望むか、そして自ら出頭したかどうかで分かれます。
| 出口 | 対象・要件 | 身柄 | 上陸拒否期間 |
|---|---|---|---|
| 出国命令 | 自ら出頭し速やかに出国する意思がある、不法残留以外の退去強制事由がない、一定の罪で拘禁刑に処せられていない、過去に退去強制・出国命令歴がない、速やかな出国が確実 | 収容されない | 出国した日から1年 |
| 在留特別許可 | 退去強制対象者だが、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、人道上の配慮の必要性などから法務大臣が在留を特別に許可 | 収容または監理措置 | なし(在留が認められる) |
| 退去強制 | 上記に当たらない場合。退去強制令書により送還 | 収容または監理措置 | 退去の日から5年(2回目以降は10年) |
出口1 出国命令|自ら出頭すれば上陸拒否は1年
出国命令制度は、オーバーステイの外国人が自ら出入国在留管理官署に出頭した場合に、収容せずに出国させる制度です。入管法24条の3は、次のすべてに該当する人を「出国命令対象者」としています。
- 違反調査の開始前に、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと。または違反調査の開始後、退去強制の通知を受ける前に、速やかに出国する意思を表明したこと
- 不法残留以外の一定の退去強制事由に該当しないこと
- 入国後に窃盗などの一定の罪で拘禁刑に処せられていないこと
- 過去に退去強制されたことや、出国命令により出国したことがないこと
- 速やかに出国することが確実と見込まれること
出国命令を受けると、15日を超えない範囲で出国期限が定められます(55条の85第1項)。出国後の上陸拒否期間は、出国した日から1年です(5条1項9号ホ)。
1の後半、違反調査の開始後に出国の意思を表明した場合も対象になるという部分は、2024年6月施行の改正入管法で加わったものです。ただし、この場合に出国命令で出国した人が短期滞在の目的で再来日しようとするときの上陸拒否期間は、1年ではなく5年です(5条1項9号ヘ)。摘発される前に自ら出頭することの意味は、今も変わっていません。
出国命令制度の詳しい流れと必要書類は出国命令制度とは?オーバーステイで自ら出頭した場合の5要件と出国までの流れで取り上げます。
出口2 在留特別許可|日本での生活を続けたい場合
日本人と結婚している、日本で生まれ育った子どもがいるなど、帰国できない事情がある人は、在留特別許可を求めることになります。入管法50条1項は、退去強制対象者に該当する場合でも、法務大臣が在留を特別に許可できると定めています。
2024年6月10日施行の改正入管法で、在留特別許可は本人が申請できる制度になりました(50条2項)。申請できるのは、収容令書により収容された人と監理措置決定を受けた人で、退去強制令書が発付された後は申請できません(同条3項)。許可しない処分をするときは、理由を付した書面で通知されます(同条10項)。
判断の考慮事項は、50条5項に列挙されています。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性に加えて、内外の諸情勢や、不法滞在者に与える影響も考慮されます。出入国在留管理庁は出頭申告の案内で、自ら出頭申告したことは在留特別許可の判断で積極的に評価される要素の一つだと説明しています。
申請の手続と必要書類は在留特別許可申請の方法|申請書・必要書類・流れと「3日以内」の期限で扱います。個別の事情で判断が変わる手続であり、家族関係や在留歴の立証の仕方で結論が左右されるため、申請の前に専門家に相談することをお勧めします。
出口3 退去強制|摘発されれば上陸拒否は原則5年
出国命令の要件を満たさず、在留特別許可も認められない場合は、退去強制令書が発付され、送還されます。上陸拒否期間は、初めて退去強制された人が退去の日から5年、過去にも退去強制や出国命令の歴がある人は10年です(5条1項9号ハ・ニ)。
2024年の改正で、自らの負担で出国する人(自費出国)のうち、過去に退去強制や出国命令の歴がなく、素行などから相当と認められる人については、法務省令で定める日までに出国すれば上陸拒否期間を1年とする決定ができるようになりました(52条5項、5条1項9号ロ)。ただし、短期滞在の目的で再来日する場合はこの短縮の対象外です。
退去強制の手続中は、原則として収容されますが、2024年の改正で、収容せずに監理人の監督の下で生活しながら手続を進める「監理措置」の制度ができました。出入国在留管理庁は、出国命令の対象外であっても自ら出頭した人について、監理措置により収容せずに手続を進めることも可能だと案内しています。
会社がオーバーステイに気づいたときの対応
雇用している外国人社員がオーバーステイになっていることに気づいた場合、会社がすべきことは次の順です。
- 就労を直ちに止める:不法残留者を働かせ続ければ、気づいた後の分は故意の不法就労助長になります
- 在留カードと旅券を本人と確認する:満了日前に更新・変更の申請をしていないか、裏面の「在留期間更新等許可申請欄」に申請中の記載がないかを確認します。申請中であれば特例期間中で、不法残留ではない可能性があります
- 本人に出頭を促す:帰国を望むなら出国命令、在留を望むなら在留特別許可の検討になりますが、いずれも自ら出頭することが本人に有利に働きます
- 雇用契約と届出を整理する:離職させる場合は、ハローワークへの外国人雇用状況の届出(離職)を出します
会社が本人を匿ったり、出頭を妨げたりすることは避けてください。入管への通報について法的な義務はありませんが、不法残留を知りながら雇用を続けることはできません。
オーバーステイは、多くの場合、在留期間の管理の漏れから起きます。社員の在留期限を一覧で管理し、満了日の3か月前には本人に更新申請の準備を促す運用にしておけば、ほとんどは防げます。取消しや失効など、在留資格を失う他の場面については在留資格の取消しとは?取消事由と外国人を雇用する企業への影響も参考にしてください。
よくある質問
オーバーステイしてしまった場合、どうなりますか?
在留期間を1日でも過ぎれば不法残留になり、刑事罰(不法残留罪)の対象になると同時に、退去強制の手続の対象になります。摘発されれば原則として収容され、送還された場合は5年間日本に上陸できません。自ら入管に出頭すれば、出国命令により収容されずに帰国でき、上陸拒否期間も1年で済む可能性があります。
オーバーステイの罰金はいくらですか?
入管法70条1項5号の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。実際にいくらの罰金になるかは、刑事裁判で個別に決まります。罰金を払っても在留資格が得られるわけではなく、退去強制の手続は別に進みます。
オーバーステイした人は日本に再入国できますか?
上陸拒否期間を過ぎれば、再入国の申請はできます。期間は出国命令で出国した場合は1年、退去強制された場合は5年(2回目以降は10年)です。ただし、期間が過ぎても査証の審査や上陸審査で過去の違反歴は考慮されるため、必ず再入国できるとは限りません。期間内でも、法務大臣の上陸特別許可を受けて入国できる場合があります。
オーバーステイと不法滞在の違いは何ですか?
不法滞在は、日本に在留する法的な根拠がない状態を広く指す言葉で、不法入国、不法上陸、不法残留を含みます。オーバーステイはそのうちの不法残留、つまり適法に入国した人が在留期間を過ぎて残っている状態を指します。
オーバーステイはどこに通報すればよいですか?
出入国在留管理庁は、不法滞在者に関する情報を地方出入国在留管理局の窓口、電話、ウェブサイトの情報受付で受け付けています。九州では福岡出入国在留管理局が窓口です。雇用している社員の場合は、通報より先に、本人に自ら出頭するよう促すほうが本人にとって有利な結果につながります。
出口の選択は「発覚の前か後か」で決まる
オーバーステイの解消方法を比べると、結論を分けるのは違反の長さや理由より、入管が見つける前に本人が動いたかどうかです。自ら出頭すれば、出国命令で収容されずに帰国でき、上陸拒否期間も1年で済みます。在留特別許可を求める場合でも、出頭申告は積極的な要素として評価されます。摘発されてからでは、この選択肢の多くが閉じてしまいます。
外国人社員を雇う会社にとっての教訓は、オーバーステイを起こさない在留期限の管理と、万一のときに本人に出頭を促せる関係づくりです。在留カードの満了日を管理台帳に記録し、更新申請の準備を早めに始めるよう声をかける。この地味な運用が、社員を不法残留から守り、会社を不法就労助長の責任から守ります。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第5条・第20条・第24条・第24条の3・第50条・第52条・第55条の85・第70条・第73条の2(e-Gov法令検索)
- 本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)(出入国在留管理庁)
- 出頭申告のご案内~不法滞在で悩んでいる外国人の方へ~(出入国在留管理庁)
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