入管の収容とは、退去強制の対象になると疑われる外国人や、退去強制令書が出た外国人の身柄を、出入国在留管理庁の施設に置いておく措置です。収容の根拠となる令書は2種類あり、違反調査の段階で出る「収容令書」は原則30日(延長して最長60日)、退去が決まった後の「退去強制令書」は「送還可能のときまで」と、期間の決まり方がまったく違います。収容される場所は、各地方出入国在留管理局の「収容場」と、全国2か所の「入国管理センター」(茨城県牛久市の東日本入国管理センター、長崎県大村市の大村入国管理センター)です。
この記事では、家族や同僚が収容されたと知った人、雇っている外国人が入管に連れて行かれた会社の担当者に向けて、収容の仕組み、施設の違い、期間、面会の手順を入管法の条文と入管庁の公表資料に沿って整理します。
入管に収容されるのはどんなときか
収容は刑罰ではありません。入管法24条の退去強制事由(不法残留、不法就労、資格外活動、一定の刑事処分など)に当たる疑いがある外国人について、退去強制の手続を進めるための身柄確保の措置です。刑事手続の逮捕・勾留とは別の、行政手続上の身柄拘束と考えると位置づけがつかみやすくなります。
流れを条文で追うと次のとおりです。入国警備官が違反調査(27条)を行い、24条各号に当たると疑うに足りる相当の理由があれば、主任審査官に通知します(39条1項)。通知を受けた主任審査官は、その人を「監理措置」に付すか「収容」するかを審査します(39条2項)。収容すると判断したときに収容令書が発付され(39条の2)、入国警備官がそれを執行します。
ここで押さえておきたいのは、2024年6月10日施行の改正入管法(令和5年法律第56号)以降、「疑いがあれば原則収容」という組み立てが変わった点です。現在の39条は、監理措置と収容のどちらにするかを審査する構造になっていて、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、収容によって本人が受ける不利益の程度などを考慮して、収容しないで手続を進めるのが相当なら監理措置に付すこととされています(44条の2)。監理措置は、監理人(家族や支援者など)の監督の下で、収容されずに手続を受ける仕組みです。
例外として、24条各号に明らかに当たる人が令書を待っていては逃亡するおそれがあるときは、入国警備官が収容令書なしで収容できます(43条・要急事件)。この場合は速やかに主任審査官に報告し、令書の発付を請求しなければなりません。
会社の立場で起きやすいのは、在留期限を過ぎていた社員が入管の摘発や出頭をきっかけに収容されるケースです。不法就労と知りながら雇っていた場合には、会社側が不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われる可能性があるため、在留カードの確認手順を見直す必要があります。詳しくは不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で整理しています。
収容期間は令書の種類で決まる|収容令書は最長60日、退去強制令書は送還まで
「入管に収容されるのはいつまでか」という質問は、どちらの令書で収容されているかによって答えが変わります。
| 令書 | 出る段階 | 収容できる期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 収容令書 | 違反調査の後、退去強制に当たるかの審査中 | 30日以内。やむを得ない事由があれば30日を限り延長 | 入管法41条1項 |
| 退去強制令書 | 退去強制が確定した後 | 送還可能のときまで | 入管法52条8項・9項 |
収容令書による収容は、容疑者を身体拘束した時から48時間以内に入国審査官へ引き渡され(44条)、そこから入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣への異議の申出と手続が進みます。収容令書の期間は最長60日なので、この間に退去強制に当たるかどうかの結論を出すことが想定されています。
これに対して、退去強制令書による収容には日数の上限がありません。52条は、退去強制を受ける者を直ちに送還できないときは、主任審査官が監理措置に付すか収容するかを判断し、収容するときは「送還可能のときまで」収容できると定めています。本人が帰国を拒んでいる、旅券がない、国籍国が受入れを認めないといった事情があると、収容が長くなります。長期収容が社会問題として報じられてきたのは、主にこの退去強制令書による収容です。
長期化を抑える仕組みとして、2024年改正で52条の8が設けられました。入国警備官は退去のための計画を定め、退去強制令書による収容が継続して3か月に達したときに主任審査官へ計画と進捗を報告し、主任審査官は監理措置に切り替えるかどうかを検討しなければなりません。3か月を超えて続くときは、その後も3か月ごとに同じ報告と検討を繰り返します。主任審査官が監理措置にしないときは、その理由を出入国在留管理庁長官に報告する仕組みです。
収容の実態について、入管庁の「令和7年における入管法違反事件について」は次の数字を公表しています。2025年中に入管庁の収容施設に入所した人は13,400人、出所した人は13,359人でした。月末時点の収容人員が最も多かったのは11月末の721人です。2025年末時点で退去強制令書による収容期間が6か月以上だった人は17人で、前年末から30人減りました。入所者の大半は短期間で送還や放免に至っており、長期の収容は一部に限られていることがわかります。
収容施設は2種類|地方局の「収容場」と入国管理センター
入管法は、収容に使う施設を「入国者収容所等」と呼び、2つの種類を定めています。
1つ目は、地方出入国在留管理局に設けられる「収容場」です(55条の3第1項)。福岡出入国在留管理局を含む全国8局などに置かれ、摘発や出頭の後、まず収容されるのはここです。
2つ目は、法務省設置法30条に定める「入国者収容所」で、現在は東日本入国管理センター(茨城県牛久市)と大村入国管理センター(長崎県大村市古賀島町644-3)の2か所です。入管庁の官署一覧でも、入国管理センターは全国2か所とされ、業務内容は「収容・送還」と書かれています。
収容場も入国管理センターも、収容できる対象は同じで、収容令書の執行を受ける人と、退去強制令書の発付を受けて収容される人です(55条の3第2項)。法律上、どちらの令書ならどちらの施設という区別はありません。収容令書にも「収容すべき場所」が書かれ(40条)、その場所は入国者収容所等のほか、長官や主任審査官が指定する場所とされています(41条2項)。
実際の使い分けとしては、地方局の収容場は短期の収容を前提にした施設で、退去強制令書が出た後、送還までに時間がかかる人が入国管理センターへ移される運用がとられています。移送の基準や時期は公表されていないため、本人がどこにいるかは、収容先の官署に確認するしかありません。
九州で収容されたときの施設
九州・沖縄で入管に収容された場合、最初の収容先は福岡出入国在留管理局(福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎)か、その管轄の収容場になるのが一般的です。福岡局の管内には、北九州・博多港・福岡空港・佐賀・長崎・対馬・熊本・大分・宮崎・鹿児島の各出張所があります(沖縄県は那覇支局)。どの官署に収容場があるかを入管庁は一覧で公表していないため、具体的な収容先は福岡局の警備部門(092-717-5424)に問い合わせることになります。
九州で退去強制令書が出て送還に時間がかかる場合、移送先として考えられるのが大村入国管理センターです。福岡局への行き方や管轄の詳細は福岡出入国在留管理局への行き方・予約方法|混雑状況と九州各県の管轄を参照してください。
収容中の生活と処遇のルール
収容中の処遇は、入管法第5章の2「被収容者の処遇」に定められています。55条の4は、被収容者の処遇は人権を尊重しつつ適正に行わなければならないとし、保安上支障がない範囲内でできる限りの自由を与えるとしています。
家族にとって気になる医療面では、入国者収容所長等は収容開始時に健康状態を聴き取り、3か月に1回以上、医師による定期健康診断を受けさせなければならないとされています。名古屋出入国在留管理局の収容場で2021年3月にスリランカ国籍の女性が亡くなった事案は、収容中の医療体制が見直される大きな契機になりました。
処遇の適正を外部から確かめる仕組みとして、入国者収容所等視察委員会が置かれています。委員会は担当区域内の収容施設を視察し、所長等に意見を述べます。また、出入国在留管理庁の監査官が各施設を毎年1回以上実地監査することも法律に定められています。
面会の方法|受付時間・持ち物・回数
入管法55条の55は、被収容者に面会の申出があったときは、規律・秩序の維持や衛生の保持のため必要な場合を除いて、これを許すと定めています。家族や友人、会社の同僚でも面会できます。
入管庁の「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」(Q11〜Q19)は、面会の運用を次のように案内しています。
- 受付時間:土日・休日を除く平日の9時から12時まで、13時から15時まで(施設の状況により変動あり)
- 持ち物:日本人は運転免許証・旅券など写真付きの身分証明書、外国人は在留カード・特別永住者証明書・旅券
- 回数:原則として被収容者1人につき1日1回
- 時間:1回30分以内(混雑時は短くなる場合あり)
- 電話:面会の電話取次ぎはしない。収容されているかどうかの電話照会にも、プライバシー保護のため応じない
大村入国管理センターは、官署のページで面会受付を9時から11時30分、13時から16時(土日祝日を除く)と案内しています。施設ごとに受付時間が違うため、訪問前に各施設のページを確認してください。
面会には原則として職員が立ち会い、録音・録画されることもあります(55条の56)。弁護士や領事官などとの面会は、特別の事情がある場合を除いて立会いがありません。法律は、面会の回数を制限する場合でも相手方1人ごとに1日1回を下回ってはならないとしています(55条の58第2項)。
差し入れについては、同じQ&Aが、加熱調理が必要な食品や腐りやすい食品は保安上・衛生上の理由で受け付けないとしています。帰国用の荷物は、航空機の手荷物規定を考えて「スーツケース1個程度」にまとめるよう案内されています。航空券を差し入れる場合は、手続の進み具合によって使えなくなることがあるため、事前に施設に確認が必要です。
収容から出る道|監理措置・仮放免・送還
収容から出る方法は、監理措置、仮放免、送還のいずれかです。
1つ目は監理措置への切替えです。収容されている本人や代理人は、主任審査官に監理措置に付すよう請求できます(収容令書段階は44条の2第4項。退去強制令書段階は52条の2第4項)。監理措置になれば、監理人の監督を受けながら収容の外で手続を受けます。保証金は300万円以下の範囲で定められ、退去強制令書発付後の被監理者は働くことができません。2025年末の被監理者は1,546人でした。
2つ目は仮放免です。54条は、健康上、人道上その他これらに準ずる理由で収容を一時的に解除するのが相当と認めるとき、期間を定めて仮放免できるとしています。本人のほか、代理人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹が請求できます。2025年末の被仮放免者は2,429人です。
3つ目は送還です。退去強制令書による収容は送還のための身柄確保なので、帰国すれば収容は終わります。本人が自分の費用で出国する自費出国の許可を受けると、早く帰国できる場合があります(52条4項)。2025年に退去強制令書で送還された人は7,563人でした。
在留特別許可が認められた場合も、その時点で収容から解かれ、在留資格をもって日本に残ることになります。許可後の在留資格や更新の流れは在留特別許可のその後どうなる?付与される在留資格・更新・永住までの年数で扱います。
よくある質問
なぜ入管に収容されるのですか?
入管法24条の退去強制事由に当たる疑いがあり、主任審査官が監理措置ではなく収容が相当と判断したためです。退去強制令書が出た後は、送還できるときまで身柄を確保し、退去が確定した人の在留活動を止める目的で収容されます(入管庁Q&A Q20)。刑罰として収容されるわけではありません。
入管の収容所はどこにありますか?
全国8か所の地方出入国在留管理局などに置かれた収容場と、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)、大村入国管理センター(長崎県大村市)の2か所の入国管理センターです。九州で収容された場合、まず福岡局管内の収容場に入り、送還まで時間がかかる場合に大村へ移されることがあります。
入管に収容されるのはいつまでですか?
収容令書なら原則30日、延長されても最長60日です。退去強制令書なら上限はなく、送還可能のときまでです。ただし退去強制令書による収容が3か月続くと、主任審査官が監理措置への切替えを検討する仕組みがあり、その後も3か月ごとに見直されます。
入管の収容施設で面会はできますか?
できます。平日の受付時間内に身分証明書を持って施設に行き、面会を申し出ます。原則1日1回・30分以内で、職員が立ち会います。事前に電話で収容の有無を確かめることはできないため、本人や弁護士から収容先を聞いておくと確実です。
会社の社員が収容されたら、会社は何をすればよいですか?
まず、どの官署に収容されているか、どちらの令書による収容かを確認します。退職の扱いにする場合は、ハローワークへの外国人雇用状況の届出や、入管への所属機関の届出が必要です(外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続き)。未払い賃金や私物の引渡しは、面会や差し入れの手続を使って調整することになります。
収容の知らせを受けたら、令書の種類と収容先を最初に確かめる
収容の見通しは、収容令書か退去強制令書かでほぼ決まります。収容令書の段階なら、退去強制に当たるかどうかの審査が進んでいる途中で、在留特別許可の申請(認定に服した日から3日以内など、期限の短い手続があります)や監理措置の請求を検討する時間は残っています。退去強制令書が出た後であれば、関心は送還の時期と方法、監理措置・仮放免の可能性に移ります。
家族や会社がまず取る行動は、収容先の官署と令書の種類を確認し、面会で本人の意向を聞くことです。そのうえで、帰国を選ぶなら自費出国の準備を、日本に残る道を探すなら在留特別許可や監理措置の手続を、専門家と相談しながら進めてください。個別の事情で判断が変わるため、手続の期限が迫っているときは早めに相談することをおすすめします。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第39条〜第44条の2、第52条、第52条の8、第54条、第55条の3〜、第55条の55〜第55条の58(e-Gov法令検索)
- 令和7年における入管法違反事件について(出入国在留管理庁・2026年)
- 地方出入国在留管理官署の一覧(出入国在留管理庁)
- 大村入国管理センター(出入国在留管理庁)
- 福岡出入国在留管理局(出入国在留管理庁)
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