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改正入管法とは?2024年6月施行の送還・監理措置と令和8年改正までの時系列

「改正入管法」と呼ばれる法律は、2026年9月時点で3本あります。2023年6月に成立し2024年6月10日に主要部分が施行された令和5年改正、2024年6月に成立し2027年4月1日に施行される令和6年改正、2026年5月29日に成立した令和8年改正です。ニュースや解説で「改正入管法」とだけ書かれている場合、どの改正を指しているかで中身がまったく違うため、まず成立年と施行日で切り分けることが理解の出発点になります。

改正入管法は3本ある|成立日と施行日の一覧

3本の改正を時系列に並べると次のとおりです。

改正 成立・公布 施行日 主な内容
令和5年改正(令和5年法律第56号) 2023年6月9日成立、6月16日公布 2023年11月1日、12月1日、2024年6月10日の3段階 補完的保護、送還停止効の例外、退去等命令、監理措置、在留特別許可の申請手続
令和6年改正(令和6年法律第60号) 2024年6月21日公布 2027年4月1日(一部を除く) 育成就労制度の創設、永住許可の取消事由の追加、不法就労助長罪の厳罰化
令和8年改正(令和8年法律第32号) 2026年5月29日成立、6月5日公布 手数料関係は2027年3月31日までの政令で定める日、JESTAは2029年3月31日までの政令で定める日 在留手続の手数料上限の引上げ、電子渡航認証(JESTA)の創設

このうち、「改正入管法」という言葉が最も多く使われてきたのは令和5年改正です。難民認定申請中でも送還できるようにする規定を含み、国会審議で大きな議論になったためです。一方、企業の人事担当者の実務に直接響くのは、令和6年改正の育成就労と、令和8年改正に連動した2026年10月1日からの手数料改定です。

令和5年改正|2024年6月10日に何が変わったか

令和5年改正の目的について、出入国在留管理庁は「保護すべき者を確実に保護する」「在留が認められない外国人は速やかに退去させる」「長期収容を解消し適正な処遇を実施する」という3つの考え方を示しています。施行は3段階に分かれました。

  • 2023年11月1日:16歳未満の外国人の在留カード有効期間の更新申請に関する見直し
  • 2023年12月1日:補完的保護対象者の認定制度の創設
  • 2024年6月10日:送還停止効の例外、退去等命令、監理措置、在留特別許可の申請手続など

送還停止効の例外(61条の2の9第4項)

ここでいう送還停止効とは、難民認定の申請をしている間は、退去強制が確定している人でも送還しないという効果を指します(61条の2の9第3項)。改正前は申請の回数に制限がなく、申請を繰り返すことで送還を事実上止められる状態がありました。

改正で、次の人には送還停止効が働かなくなりました(同条4項)。

  • 3回目以降の難民認定申請者(ただし、難民や補完的保護対象者と認めるべき「相当の理由がある資料」を提出した人を除く)
  • 無期または3年以上の実刑に処せられた人
  • テロリスト等に当たる人、またはその疑いに相当の理由がある人

出入国在留管理庁の公表資料によれば、この例外を適用して送還した人は、2024年6月10日から12月末までに19人、2025年の1年間で59人でした。3回目以降の申請の扱いは難民申請は何回までできる?3回目以降の送還停止効の例外と「相当の理由」で詳しく扱っています。

退去等命令(55条の2)と罰則

送還を拒む人のうち、送還先の国が受入れに協力しないなどで送還が難しい一定の人に対し、主任審査官が期間を定めて日本からの退去を命じられるようになりました。この命令に違反して退去しなかった場合は、1年以下の拘禁刑もしくは20万円以下の罰金、またはその併科です(72条7号)。

対象は、①自ら退去する意思がないと表明し、送還先が法務大臣の告示する国(退去強制令書の円滑な執行に協力しない国以外の国)に含まれていない人、②偽計や威力で送還を妨害したことがあり、再び同じ行為に及ぶおそれがある人、の2類型です。命令の前には本人の意見を聴く必要があります。あわせて、送還に必要な旅券の発給申請などを本人に命じる規定(52条12項)も置かれ、違反には同じ罰則があります(72条5号)。

監理措置(44条の2・52条の2)

監理措置とは、退去強制の手続中の外国人を施設に収容せず、親族や支援者などの監理人の監理の下で社会生活を送らせる制度です。改正前は、原則として全員を収容する「全件収容主義」が取られ、収容を解く手段は仮放免しかありませんでした。改正後は、逃亡のおそれの程度や本人の事情を考慮して、収容か監理措置かを選ぶ仕組みになり、仮放免は健康上・人道上の理由がある場合の制度に位置づけ直されています。

2025年の監理措置決定は3,783件、仮放免許可は286件でした。退去強制令書が出る前の被監理者は、許可を受ければ報酬を受ける活動ができますが、2025年にその許可が出たのは4件にとどまります。監理人の義務と企業が確認すべき点は監理措置とは?監理人の役割・届出義務と2024年6月施行の新制度で解説しています。

在留特別許可の申請手続(50条)

在留特別許可は、退去強制事由に当たる外国人でも、法務大臣が特別に在留を認める処分です。改正前は、退去強制手続の中で異議を申し出た人について法務大臣が職権で判断する形でしたが、改正で本人が申請できる手続が設けられました(50条2項)。申請できるのは退去強制令書が発付される前までで(同条3項)、入国審査官の認定に服した場合は、認定に服した日から3日以内に申請しなければ退去強制令書が発付されます(47条5項)。

判断の考慮事項も条文に書き込まれました。50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮すると定めています。1年を超える実刑に処せられた人などについては、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限られます(同条1項ただし書)。2025年の在留特別許可は、申請2,424件に対して許可1,026件でした。

自発的な出国を促す措置

出国命令の対象も広がりました。改正前は、違反調査が始まる前に自ら出頭した人が中心でしたが、改正後は、違反調査の開始後でも、一定の通知を受ける前に速やかに出国する意思を表明した人を出国命令の対象にできるようになっています(24条の3第1号ロ)。出国命令で出国した人は、退去強制で出国した人より上陸拒否期間が短くなります。

令和6年改正|2027年4月1日に施行される変更

令和6年改正(「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」)は、技能実習制度を廃止して育成就労制度を創設する法律として知られています。施行日は2027年4月1日(一部の規定を除く)です。入管法の側で企業に関係する主な変更は次の3つです。

  • 在留資格「技能実習」に代わる在留資格「育成就労」の創設
  • 永住許可の取消事由の追加(故意の公租公課の不払い、入管法上の義務違反、一定の罪による拘禁刑など)
  • 不法就労助長罪(73条の2)の法定刑の引上げ(現行の3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金から、5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金へ)

育成就労への移行準備は【2027年4月施行】育成就労制度とは?技能実習からの移行で企業がやるべき準備、不法就労助長罪の責任の範囲は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で扱っています。在留カードとマイナンバーカードを一体化した特定在留カードも2024年の改正に基づく制度で、2026年6月14日から交付が始まっています。

令和8年改正|手数料上限の引上げとJESTA

令和8年改正は、2026年5月29日に第221回特別国会で成立し、6月5日に公布されました(令和8年法律第32号)。中身は大きく2つです。

1つは手数料の上限額の引上げです。改正前の入管法は、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可、永住許可の手数料の上限を1万円としていました。改正法はこれを、変更許可10万円、更新許可10万円、永住許可30万円に引き上げ、具体的な額は引き続き政令で在留期間に応じて定めるとしています。手数料を定める際には、実費のほか、出入国と在留の公正な管理に要する費用や諸外国の同種の手数料を勘案すること、経済的困難などの特別の理由がある人は減額・免除できることも明記されました。

この上限の範囲内で、政令により2026年10月1日から新しい手数料が適用されます。たとえば在留期間1年の更新許可は窓口33,000円(オンライン27,000円)、在留期間5年以上は窓口75,000円(オンライン65,000円)、永住許可は20万円です。2026年9月30日までに受け付けられた申請は旧額(変更・更新は窓口6,000円、永住1万円)が適用されます。金額の一覧は【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?にまとめています。

もう1つがJESTA(電子渡航認証制度)の創設です。査証免除の対象で観光などの短期滞在を目的とする人、クルーズ船の乗客、乗継ぎの一部の人などに、入国前にオンラインで認証を受けることを求め、認証も査証も受けていない外国人の入国を禁止します。航空会社などには予約者の氏名などを報告する義務が課されます。施行は2029年3月31日までの政令で定める日で、具体的な開始日は2026年9月29日時点で現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。

改正入管法の問題点として指摘されていること

令和5年改正は、国会審議の段階から反対意見が多く出されました。主な論点は次のとおりです。

  • 3回目以降の難民認定申請者を送還できるようになると、本来保護されるべき人が送還されるおそれがあるという指摘
  • 日本の難民認定率が諸外国と比べて低い中で、認定の審査そのものの見直しが先ではないかという指摘
  • 監理措置で監理人に届出・報告の義務を課すことが、支援者の負担を重くし、監理人のなり手を減らすという指摘
  • 監理措置の下でも原則として働けず、生活の手段が限られるという指摘

一方、政府は、送還停止効の例外には「相当の理由がある資料」を出せば送還が止まる仕組みがあること、補完的保護で紛争避難民などを保護できるようになったことを挙げて、保護と送還の両立を図る改正だと説明しています。どちらの評価に立つかは本記事の範囲を超えますが、制度を理解するうえでは、例外規定の要件と、2024年6月以降の送還件数(前述の19人・59人)のような運用の実績を、条文と一緒に見ておくことが判断の材料になります。

よくある質問

改正入管法で何が変わったのですか?

2024年6月10日施行の令和5年改正で、3回目以降の難民認定申請者などを申請中でも送還できるようになり、送還を拒む人への罰則付きの退去等命令、収容に代わる監理措置、本人が申請できる在留特別許可の手続が設けられました。2023年12月1日からは、難民に当たらなくても紛争から逃れてきた人などを保護する補完的保護の制度も始まっています。

改正入管法はいつから施行されますか?

改正ごとに違います。令和5年改正は2024年6月10日(一部は2023年11月1日・12月1日)、令和6年改正は2027年4月1日、令和8年改正は手数料関係が2027年3月31日までの政令で定める日、JESTAが2029年3月31日までの政令で定める日です。手数料の新しい額は政令により2026年10月1日から適用されています。

改正入管法で難民申請3回目以降は申請中でも強制送還されますか?

送還の対象になり得ます。ただし、3回目以降の申請でも、難民や補完的保護対象者と認めるべき相当の理由がある資料を提出すれば、送還停止効は維持されます。資料の様式に定めはありません。

改正入管法で永住権の取消しはどうなりますか?

2027年4月1日から、故意に税金や社会保険料を納めない場合などが永住者の在留資格の取消事由に加わります。取り消す場合も、法務大臣は原則として定住者などへの在留資格の変更を職権で行う仕組みになっています。

改正入管法のメリット・デメリットは?

政府は、送還忌避の問題と長期収容の解消を図りつつ、補完的保護で保護の対象を広げた点を改正の意義として挙げています。反対側からは、保護すべき人を送還するおそれ、監理人の負担、監理措置中に働けないことなどが問題点として指摘されています。

企業と家族が確認すべきは「どの改正の、どの施行日か」

改正入管法を正しく読むコツは、ニュースの見出しの「改正入管法」を、成立年と施行日に置き換えて読むことです。難民申請や送還の話であれば令和5年改正で、すでに2024年6月10日から運用されています。育成就労や永住の取消し、不法就労助長罪の厳罰化であれば令和6年改正で、2027年4月1日からです。手数料や電子渡航認証であれば令和8年改正です。

企業が今すぐ手を打つべきなのは、2026年10月1日からの手数料改定に合わせた社内の費用負担ルールの見直しと、2027年4月1日の育成就労・不法就労助長罪の厳罰化に向けた在留カード確認体制の点検です。退去強制の手続中の人やその家族にとっては、在留特別許可の申請期限(認定に服した日から3日以内)と、監理措置の条件を正確に把握することが最優先になります。個別の事情で判断が変わるため、手続の途中にある場合は早めに専門家に相談してください。

根拠資料


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