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難民申請は何回までできる?3回目以降の送還停止効の例外と「相当の理由」

難民認定の申請は、法律上は何回でもできます。変わったのは申請の回数制限ではなく、申請中に送還されない効果(送還停止効)のほうで、2024年6月10日に施行された改正入管法61条の2の9第4項により、過去に2回の申請がいずれも不認定で確定している人の3回目以降の申請には、原則として送還停止効が働かなくなりました。3回目以降でも、難民または補完的保護対象者と認めるべき「相当の理由がある資料」を提出すれば送還は止まります。出入国在留管理庁の公表では、2025年にこの例外規定を適用して送還された人は59人でした。

難民申請は何回まで|申請回数そのものに上限はない

報道では「難民申請は原則2回まで」と書かれることがありますが、入管法に申請回数の上限を定めた条文はありません。61条の2第1項は、日本にいる外国人は難民の認定を申請できると定めており、過去の申請回数による制限はありません。出入国在留管理庁の「令和7年における難民認定者数等について」(2026年3月27日公表)によれば、2025年の難民認定申請者1万1,298人のうち1,305人(約11.6%)が過去に申請したことのある複数回申請者で、最も多い人は7回目の申請でした。

「2回まで」と言われる理由は、3回目以降の申請者について送還停止効が原則として働かなくなったことにあります。申請すること自体はできても、申請中に退去強制が執行されうる、という意味での「2回まで」です。

送還停止効とは|難民申請中は送還しないという仕組み

難民として保護されるべき人を、審査の結論が出る前に迫害のおそれのある国へ送り返してしまえば、取り返しがつきません。そこで入管法は、退去強制手続の対象になっている外国人が難民認定を申請した場合、審査の結論が確定するまで送還を停止すると定めています。この効果を送還停止効と呼びます(61条の2の9第3項)。

対象になるのは「在留資格未取得外国人」、つまりオーバーステイや不法入国などで在留資格を持たずに日本にいる人です。有効な在留資格を持って在留している人は、そもそも退去強制手続の対象ではないため、送還停止効が問題になる場面はありません。2025年の申請者のうち、申請時に不法滞在だった人は698人(約6.2%)で、大半は短期滞在などの正規滞在者でした。

改正前は、この停止が申請の回数や理由にかかわらず働いていました。そのため、退去強制が確定した人が不認定のたびに申請を繰り返し、送還を事実上回避し続けるケースが生じていました。出入国在留管理庁は、送還に応じない「送還忌避者」の問題の一因としてこの点を挙げ、2023年の法改正(令和5年改正入管法)で例外規定を設けました。

3回目以降の申請で送還停止効が働かない要件

改正後の61条の2の9第4項は、次のいずれかに当たる人には、3項の送還停止効を適用しないと定めています。

第1号:過去に2度申請し、いずれも不認定が確定している人

1号の条文は、今回の申請より前に「本邦にある間に二度にわたりこれらの申請を行い、いずれの申請についても」61条の2の4第5項1号または2号に該当することとなった者です。

ここでいう5項1号・2号とは、次の状態を指します。

  • 1号:難民不認定(または補完的保護対象者不認定)の処分に対して審査請求をせず、審査請求期間(通知から7日)が過ぎたこと
  • 2号:審査請求をしたが、取り下げたか、却下・棄却の裁決があったこと

つまり条文上の「3回目」は、前の2回の申請がいずれも不認定で確定した後の申請を指します。申請書を出した通算回数とは一致しないことがあります。数え方の起点は「確定した不認定が2回あるか」です。

条文上、申請そのものを取り下げた場合(61条の2の4第5項5号)は1号・2号に含まれていません。取り下げた申請が「二度」の回数に数えられるかどうかは条文の文言からは直ちに読み取れず、運用上の取扱いは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。

改正法の施行前にした申請が回数に含まれるかについて、入管庁のページに明示の説明は見当たりません。ただ、同庁の集計では、施行日(2024年6月10日)から同年12月末までの約半年間で、1号を適用して送還した人が17人いました。半年の間に2回の不認定が確定するとは考えにくいことから、施行前の申請も回数に含めて運用されていると読めます。

第2号:無期または3年以上の実刑を受けた人、テロリスト等

2号は、申請回数にかかわらず送還停止効を外す類型です。無期もしくは3年以上の拘禁刑に処せられた人(全部執行猶予・一部執行猶予を受けた人を除く)、テロ等の公衆等脅迫目的の犯罪行為のおそれがあると認定された人、暴力主義的破壊活動にかかわる人(24条3号の2、3号の3、4号オからカまで)などが対象です。2号に当たる人は、初めての申請でも送還が停止されません。

「相当の理由がある資料」を出せば3回目以降でも送還は止まる

1号には、かっこ書で例外が付いています。3回目以降の申請でも「難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者」は1号から除かれ、送還停止効が働きます。この例外は1号だけのもので、2号(3年以上の実刑など)には付いていません。

3回目以降の申請で送還が止まるかどうかは、申請の回数ではなく、提出した資料の中身で決まる、というのが改正後の仕組みの核心です。

どのような資料が「相当の理由がある資料」に当たるか、入管庁は具体的な基準を公表していません。条文の構造から考えると、前回までの申請で審査された事情と同じ主張を繰り返す資料は当たりにくいと考えられます。入管庁は申請を受け付けた段階で案件をA〜Dに振り分けており、そのうちC案件を「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」と定義しています。反対に、前回の不認定後に本国の政治情勢が変わった、新たに迫害を裏づける文書を入手した、といった事情を示す資料は、前回までに審査されていない事実を含む点で意味を持ちます。

実際にこの例外で送還が止まった件数はわずかです。入管庁の集計では、2024年6月10日から12月末までに「相当の理由がある資料を提出したため、送還計画を中止」した人は1人、2025年1月から8月までも1人でした。

数字で見る改正後の運用

改正後の送還停止効の例外が、どの程度使われているかを入管庁の公表資料で確認します。

期間 例外を適用して送還した人数 うち1号(3回目以降) うち2号(3年以上の実刑等) 相当の理由がある資料で送還計画を中止
2024年6月10日〜12月末 19人 17人 2人 1人
2025年1月〜8月 42人 38人 4人 1人
2025年(通年) 59人 52人 7人 公表資料に記載なし

2025年通年の59人は、護送官付きの国費送還318人の内数です。同じ年に退去強制令書により送還された人は7,563人で、その88.3%は自費出国でした。送還停止効の例外は、送還全体から見れば一部の事案に使われている規定です。

2025年5月23日に公表された「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」は、改正法で送還停止効の例外として送還が可能になった人や重大犯罪者を中心に、護送官付き国費送還を計画的に実施する方針を示しています。同プランでは、改正法施行前の複数回申請者について早期に審査を行うことも掲げられており、3回目以降の申請者に対する送還は今後も続くと見込まれます。

申請中の在留と就労も制限されている

送還停止効とは別に、難民申請中の在留資格と就労にも制限がかかっています。入管庁は申請を受け付けた段階で案件を次の4つに振り分けています。

  • A案件:難民・補完的保護対象者である可能性が高い、または人道上の配慮を要する可能性が高い案件
  • B案件:難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件
  • C案件:再申請で、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件
  • D案件:上記以外の案件

振り分けの結果に応じて、難民認定申請者用の「特定活動」での在留を認めない措置(在留制限)や、就労を認めない措置(就労制限)がとられます。2025年はB案件が1,615人(約14.3%)で、前年の80人から大きく増えました。3回目以降の申請の多くはC案件に振り分けられる可能性があり、その場合は在留や就労の許可も得にくくなります。申請中の就労の可否は難民申請中の就労は可能?特定活動(6月・就労可)の条件と指定書の確認方法で詳しく扱います。

よくある質問

難民申請を3回したら強制送還されますか?

3回目の申請をしたことだけで送還されるわけではありません。送還停止効が外れるのは、退去強制手続の対象になっている在留資格のない人で、過去2回の申請がいずれも不認定で確定している場合です。その場合でも、難民等と認めるべき相当の理由がある資料を提出すれば送還は停止されます。正規の在留資格を持って申請している人は、送還停止効の例外の問題にはなりません。

難民申請で強制送還された人は何人ですか?

出入国在留管理庁によると、送還停止効の例外を適用して送還した人は2025年に59人(前年比210.5%増)で、うち3回目以降の申請者が52人、無期または3年以上の実刑判決を受けた人などが7人でした。施行直後の2024年6月10日から12月末までは19人でした。

難民申請中に働くことはできますか?

在留資格と振り分けの結果によります。正規の在留資格を持って申請した人は、一定の要件のもとで「特定活動」への変更と就労が認められる場合がありますが、B案件・C案件に振り分けられると在留制限や就労制限がかかります。雇用する側は、在留カードと指定書で就労の可否を必ず確認してください。

難民申請が通る確率はどのくらいですか?

2025年は難民認定申請の処理数1万4,832人のうち、一次審査で難民と認定されたのは183人でした。審査請求で認められた4人を含めた難民認定者は187人です。このほか、難民とは認定されなかったものの補完的保護対象者と認定された人、人道上の配慮で在留を認められた人がいます。一次審査の平均処理期間は約22.5か月です。

難民不認定に不服がある場合はどうすればよいですか?

不認定の通知を受けた日から7日以内に、法務大臣に審査請求ができます(61条の2の12)。審査請求では難民審査参与員が意見を述べ、2025年の平均処理期間は約13.4か月でした。一般の在留資格の不許可には審査請求の仕組みがない点と対照的です(在留資格の不許可に不服申立てはできない?)。

3回目の申請を考えるときに確かめるべきこと

改正後の制度で3回目以降の申請を検討する本人や支援者にとって、判断の軸は2つです。1つは、前の2回の申請が不認定で確定しているかどうか。審査請求の途中であれば、まだ「二度」にはなっていません。もう1つは、前回までに審査されていない事実を示す資料があるかどうかです。前回と同じ主張の繰り返しでは送還停止効は戻らず、在留制限や就労制限の対象にもなりやすくなります。

外国人を雇用する会社にとっては、難民申請中の従業員がいる場合、その人の在留資格と指定書の内容を更新のたびに確認することが最低限の管理になります。在留期限と就労の可否を把握していれば、制度の変更で本人の状況が変わったときにもすぐに気づけます。雇用の届出との関係は外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。難民認定の制度全体と申請の流れは難民申請とは?日本での認定条件と申請から結果までの流れで扱います。

根拠資料


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