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難民申請とは?日本での認定条件と申請から結果までの流れ

難民申請とは、本国に帰ると迫害を受けるおそれがある外国人が、入管法61条の2第1項に基づいて、法務大臣に「難民」であることの認定を求める手続です。認定の条件は、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、政治的意見という難民条約の5つの理由のいずれかにより、迫害を受けるという十分に理由のある恐怖を持っていることです。2025年の難民認定申請者は1万1,298人、難民と認定されたのは187人で、一次審査の平均処理期間は約22.5か月でした(出入国在留管理庁、2026年3月27日公表)。申請から結果が出るまでの手続は、一次審査、審査請求、訴訟の3段階に分かれます。

日本でいう「難民」とは|難民条約の定義と5つの迫害理由

入管法2条3号の2は、難民を「難民の地位に関する条約第1条の規定又は難民の地位に関する議定書第1条の規定により難民条約の適用を受ける難民」と定めています。日本の法律が独自の定義を置いているわけではなく、1951年の難民条約と1967年の議定書の定義をそのまま採り入れている、という構造です。

条約の定義を分解すると、難民として認定されるには次の要素がそろう必要があります。

  1. 国籍国(無国籍の人は常居所国)の外にいること
  2. 人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、政治的意見のいずれかを理由として
  3. 迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
  4. 国籍国の保護を受けることができない、またはそれを望まないこと

ここで重要なのは、2番目の「迫害の理由」です。紛争から逃れてきた人や、貧困から抜け出すために来日した人は、それだけでは5つの理由のどれにも当たらないため、難民条約上の難民にはなりません。ここでいう迫害とは、生命や身体の自由の侵害や抑圧など、人間の本質的な尊厳を損なう重大な危害を指します。出入国在留管理庁は2023年3月に「難民該当性判断の手引」を公表し、迫害の意味や、特定の社会的集団(性的指向、ジェンダーなど)の考え方を具体化しています。

紛争地域から逃れてきた人のように、5つの理由には当たらないものの、帰国すれば生命などに重大な危害が及ぶおそれがある人については、2023年12月1日から「補完的保護対象者」として認定する制度ができました(入管法61条の2第2項)。制度の中身は補完的保護対象者とは?2023年12月開始の認定制度と難民との違い・雇用時の確認点で扱っています。

難民申請の流れ|一次審査・審査請求・訴訟

難民申請の手続は、次の3段階で進みます。

段階 判断する者 期限・期間
一次審査(難民認定申請) 法務大臣(難民調査官が調査) 2025年の平均処理期間 約22.5か月
審査請求 法務大臣(難民審査参与員の意見を聴く) 不認定の通知を受けた日から7日以内に請求。2025年の平均処理期間 約13.4か月
訴訟 裁判所 不認定処分等の取消訴訟

一次審査|申請から難民調査官の面接まで

申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に、申請書と、難民であることを証明する資料を提出して行います。申請期限はありません。申請書には、本国で何があったか、なぜ帰れないのかを具体的に書きます。

難民であることの立証責任は、原則として申請者の側にあります。本国の身分証明書、迫害を受けたことを示す記録、所属していた団体の資料、報道記事などを、可能な限りそろえることになります。そのうえで、難民調査官が申請者本人への面接(インタビュー)や、本国の情勢に関する情報の収集を行い、法務大臣が認定するかどうかを判断します。

2025年の一次審査では、処理1万4,832人のうち、認定183人、不認定9,214人、取下げ等5,435人でした。

振分けと申請中の在留資格

2018年1月15日から、申請内容を審査の初期段階で分類する「振分け」の運用が行われています。難民条約上の難民である可能性が高いと思われる案件(A案件)、難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張する案件(B案件)、再申請で正当な理由なく前回と同様の主張をする案件(C案件)、それ以外(D案件)に分けられ、分類によって申請中の在留の扱いが変わります。2025年はB案件が1,615人(14.3%)と、前年の80人(0.6%)から大きく増えました。

正規の在留資格を持っている人が申請した場合、分類に応じて「特定活動」への在留資格の変更が認められることがあり、就労できるかどうかもこの段階で決まります。申請中の就労の条件は難民申請中の就労は可能?特定活動(6月・就労可)の条件と指定書の確認方法で解説しています。

在留資格を持たない人が申請した場合は、要件を満たせば「仮滞在」の許可を受けられます。仮滞在の期間は原則6か月で、住居や行動範囲の制限、就労の禁止といった条件が付きます。

審査請求|難民審査参与員が意見を述べる

一次審査で不認定になった人は、通知を受けた日から7日以内に、法務大臣に審査請求をすることができます。通常の在留資格の不許可には行政不服審査法による不服申立ての手段がありませんが、難民の不認定については入管法が独自に審査請求の手続を置いています。一般的な在留資格の不許可と不服申立ての関係は在留資格の不許可に不服申立てはできない?で解説しています。

審査請求では、法務大臣は、法律や国際情勢に関する学識経験者から任命された難民審査参与員の意見を聴かなければなりません。参与員は3人1組の班で審理を担当し、請求人から口頭で意見を聴く「口頭意見陳述」の機会を設けたうえで、法務大臣に意見を提出します。参与員の意見に法的な拘束力はありませんが、法務大臣はその意見を踏まえて裁決します。

2025年の審査請求は7,702人(前年比135.1%増)、処理4,676人のうち、理由ありとされたのは8人でした。

訴訟

審査請求でも認められなかった場合は、裁判所に不認定処分の取消しを求める訴訟を起こすことができます。裁判で不認定処分が取り消され、その後に難民と認定された例もあります。

申請中の送還停止と、2024年改正で加わった例外

難民申請をしている間は、退去強制令書が出ていても、原則として送還が停止されます(送還停止効、入管法61条の2の9第3項)。迫害のおそれがある国に送り返さないという、難民条約33条のノン・ルフールマン原則を手続面で担保する仕組みです。

2024年6月10日に施行された改正入管法は、この送還停止効に例外を設けました。3回目以降の申請者(難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出した場合を除く)と、3年以上の実刑に処せられた人などは、申請中でも送還できるようになっています(61条の2の9第4項)。2025年に、この例外を適用して送還されたのは59人でした。何回目の申請から例外に当たるかの数え方は難民申請は何回までできる?3回目以降の送還停止効の例外と「相当の理由」で詳しく扱っています。

日本の難民認定が少ないと言われる理由

日本の難民認定の少なさは、国内外からたびたび指摘されてきました。2025年の申請者の主な国籍は、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、バングラデシュの順です。ミャンマーのように政治情勢が深刻な国がある一方、上位には、国全体として迫害が広く起きているとは言いにくい国も含まれています。振分けでD案件が62.2%、B案件が14.3%を占め、A案件は14.8%にとどまっていることも、申請の中身が多様であることを示しています。

ただ、数字の読み方には注意が必要です。処理数のうち取下げ等が5,435人と3分の1以上を占めており、審査の途中で申請を取り下げたり、出国したりする人が多いことが分かります。また、難民としては認定しなくても、補完的保護や人道配慮で在留を認めた人が999人おり、難民認定の187人だけを見ると保護の実態を小さく見積もることになります。

筆者は、認定率の低さを「審査が厳しいか緩いか」の一点で論じるより、申請の中身が保護を求める人と在留の継続を求める人に分かれていることと、保護の必要な人が迫害の事実を証拠で示すことの難しさの両方を見る必要があると考えます。本国から逃れてきた人ほど、身分証明書や迫害の記録を持ち出せていないことが多いからです。

難民と認定されたらどうなるか

難民と認定された人には、次のような地位が与えられます。

  • 在留資格「定住者」の許可を受けられる(在留資格を持たない人も含む)
  • 難民旅行証明書の交付を受け、その有効期間内は何度でも出国・再入国ができる
  • 永住許可の申請で、独立の生計要件(入管法22条2項2号)を満たさなくても許可され得る(61条の2の14)
  • 日本語教育や生活ガイダンスなどの定住支援プログラムを受けられる

難民と認定されなかった場合でも、本国の情勢などを踏まえて、人道上の配慮から在留が認められることがあります。2025年は、難民認定187人、補完的保護対象者認定474人、人道配慮による在留許可525人で、合わせて1,186人に在留が認められました。在留特別許可の考え方は在留特別許可とは?2024年改正後の申請制度とガイドラインの考慮事項を参考にしてください。

申請中の生活を支える保護措置

生活に困っている難民申請者は、外務省の委託を受けた難民事業本部(RHQ)から保護費の支給を受けられる場合があります。RHQの案内(2024年4月1日版)では、対象は審査請求中を含む申請者のうち、生活困窮の度合いが高く衣食住に欠けるなど保護が必要と認められる人で、生活費は12歳以上が日額2,400円、12歳未満が日額1,200円、住居費は家賃と居住人数に応じた額、医療費は原則として保険適用内の治療の実費です。現在の支給額と要件は(公式資料では未確認)で、最新の案内をRHQで確認してください。申請すれば誰でも受給できるものではありません。

よくある質問

難民申請の条件は何ですか?

人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、政治的意見のいずれかを理由に、本国で迫害を受けるおそれがあり、本国の保護を受けられないことです。日本国内にいることが前提で、海外の日本大使館で申請することはできません。

難民申請をするとどうなりますか?

地方出入国在留管理局で申請が受理され、難民調査官による調査と面接を経て、法務大臣が認定するかを判断します。申請中は原則として送還が停止され、在留資格や就労の可否は振分けの結果によって決まります。

難民申請が通る確率はどのくらいですか?

2025年の一次審査では、処理1万4,832人のうち認定は183人でした。取下げ等を除いた認定と不認定の合計に対する割合でも2%程度にとどまります。個別の事案で認定されるかどうかは、主張の内容と証拠によって大きく変わります。

難民申請をするといくらもらえますか?

申請しただけで一律にお金が支給される制度はありません。生活に困窮し保護が必要と認められた人に限り、難民事業本部(RHQ)から生活費(2024年4月1日版の案内で12歳以上は日額2,400円)、住居費、医療費の支給を受けられる場合があります。

難民申請を3回したら強制送還されますか?

2024年6月10日以降、3回目以降の申請者は、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出しない限り、申請中でも送還停止効が及ばなくなりました。退去強制令書が出ている人は、申請中でも送還される可能性があります。

難民申請中に働くことはできますか?

申請時に正規の在留資格があり、振分けで就労可の「特定活動」に変更された人は働けます。在留資格がない状態で申請した人や、就労不可の特定活動の人は働けません。雇用する企業は、在留カードと指定書で就労の可否を確認し、ハローワークへの外国人雇用状況の届出を行ってください(外国人雇用状況の届出とは?)。

難民申請を「在留の手段」と切り離して考える

難民申請は、迫害から逃れてきた人を保護するための手続であり、在留期限を延ばすための手段として作られたものではありません。2024年の改正で送還停止効に例外が設けられ、2025年からB案件の振分けと在留制限が強められたのは、この区別を手続の上で徹底する方向の政策です。一方で、難民該当性判断の手引の公表や補完的保護制度の創設のように、保護されるべき人を拾い上げる仕組みも同時に整えられています。

本当に帰国できない事情がある人にとっては、一次審査の段階で、迫害の理由と具体的な事実、それを裏づける資料をどこまで出せるかが結果を大きく左右します。申請書の記載と面接での説明が食い違うと、それだけで信用性が疑われます。申請を考えている人は、来日の経緯と本国での出来事を時系列で書き出し、支援団体や専門家の助言を受けながら、証拠の整理から始めてください。

根拠資料


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