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外国人の年末調整|居住者・非居住者の判定と扶養控除申告書の書き方【令和8年分】

外国人社員の年末調整は、国籍で決まるのではなく、所得税法上の「居住者」か「非居住者」かで決まります。居住者であれば、入国1年目でも日本人社員と同じ手順で年末調整を行い、非居住者であれば、給与から20.42%を源泉徴収して課税が完結するため年末調整はしません。2026年(令和8年)分は、令和8年度税制改正で基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正が同年12月1日に施行されるため、12月の年末調整で初めて反映される点にも注意が必要です。

外国人社員の年末調整は「居住者かどうか」で決まる

所得税法は、個人を居住者と非居住者に分けています。ここでいう居住者とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を指します(所得税法2条1項3号)。住所とは生活の本拠のことで、客観的な事実で判定されます。非居住者は居住者以外の個人です。

居住者はさらに、非永住者とそれ以外の居住者に分かれます。非永住者とは、日本国籍がなく、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である居住者です(同項4号)。来日して数年の外国人社員の多くは非永住者に当たります。

3つの区分と年末調整の関係は次のとおりです。

区分 定義 課税される所得の範囲 年末調整
非永住者以外の居住者 国内に住所があるか、引き続き1年以上居所がある人(非永住者を除く) 国内外のすべての所得 対象
非永住者 日本国籍がなく、過去10年のうち国内に住所・居所があった期間が5年以下の居住者 国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち国内で支払われたもの・国内に送金されたもの 対象
非居住者 居住者以外の個人 国内源泉所得のみ 対象外(20.42%の源泉徴収で完結)

非永住者も居住者の一種なので、年末調整の対象です。年末調整の手順も日本人社員と変わりません。非永住者であることの影響は、海外の預金利子や本国の不動産収入など国外源泉所得の課税範囲に表れますが、日本の会社から受け取る給与だけであれば、年末調整の計算そのものは同じです。

年末調整の対象になるのは、居住者のうち「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している人(源泉徴収税額表の甲欄適用者)で、その年の給与収入が2,000万円以下の人です。これは日本人社員と同じ基準です。

入国1年目の外国人は居住者か

年末調整で最も迷うのが、入国して1年たっていない外国人社員の扱いです。「引き続いて1年以上居所」という定義だけを読むと、1年未満の人は非居住者のように見えます。

ここで効いてくるのが、所得税法施行令14条1項1号の住所の推定規定です。国内に居住することになった人が、国内において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合は、国内に住所を有する者と推定されます。所得税基本通達3-3は、国内で事業を営み、または職業に従事するために国内に居住することとなった人は、在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、この「1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」ものとして扱うとしています。

この規定により、就労ビザで入国し、期間の定めのない雇用契約や1年以上の雇用契約で働き始めた外国人社員は、入国した日から居住者として扱われます。入国1年目でも年末調整の対象です。

実務では次のように判定します。

  • 技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習(2号以上へ移行予定の場合)などで入国し、1年以上の雇用が予定されている:入国の日から居住者
  • 雇用契約が当初から1年未満と決まっている(短期のプロジェクト契約など):原則として非居住者。その後、契約の延長などで引き続き1年以上居所を有することになった時点から居住者
  • 留学生のアルバイト:留学期間が1年以上予定されていれば、通常は住所を有する者として居住者

在留カードの在留期間が「1年」だから非居住者、という判定は誤りです。在留期間は入管法上の許可の期間で、所得税法の居住者判定は、雇用契約の期間や生活の実態で行います。

年の途中で帰国・出国する外国人社員の年末調整

退職して帰国する社員や、海外拠点に1年以上の予定で転勤する社員は、出国の日から非居住者になります。所得税法施行令15条は、国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業に就く場合を、国内に住所を有しない者と推定しています。

年の中途で非居住者になる社員については、出国の日までに支払う最後の給与で年末調整を行います(所得税法190条)。12月を待たずに、出国前の時点で1年分の税額を精算するということです。この年末調整では、居住者であった期間の給与が対象になり、扶養控除や生命保険料控除などは、出国の日までの状況と支払額で判断します。

出国後に支払う給与や賞与には注意が必要です。日本での勤務に対応する給与は国内源泉所得に当たり、非居住者に支払う場合は、原則として20.42%の税率で源泉徴収します。たとえば12月に帰国した社員に、翌年に冬季賞与や未払残業代を支払うケースです。帰国時の年末調整と源泉徴収票の交付は帰国する外国人社員の年末調整|出国時に行う年調と源泉徴収票の交付【計算例】で詳しく扱います。帰国時に会社がする手続全体は外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続きで整理しています。

令和8年は「11月30日以前に出国する人」に注意

令和8年度税制改正による基礎控除の引上げなどは、2026年12月1日に施行されます。国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(2026年5月)によれば、年末調整は給与の支払者がその年最後に給与の支払をする際に行うため、令和8年分の最後の給与を11月30日以前に支払った人の年末調整には、改正後の基礎控除等が適用されません。

2026年11月30日以前に帰国して年末調整を済ませた外国人社員が改正後の控除を受けるには、本人が確定申告(準確定申告)や更正の請求をする必要があります。国外に出た後の手続になるため、出国前に納税管理人を定めておくか、手続が必要になることを本人に説明しておくのが親切です。

令和8年分の年末調整で変わる点

令和8年分の年末調整では、次の3点が改正後の内容で計算されます(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」2026年4月)。

基礎控除の引上げ

基礎控除額は、合計所得金額に応じて次のとおり引き上げられました。

合計所得金額(収入が給与だけの場合の収入金額) 令和8・9年分の基礎控除額 改正前の令和8年分
132万円以下(206万円以下) 104万円 95万円
132万円超336万円以下(206万円超475万1,999円以下) 104万円 88万円
336万円超489万円以下(475万1,999円超665万5,556円以下) 104万円 68万円
489万円超655万円以下(665万5,556円超850万円以下) 67万円 63万円
655万円超2,350万円以下(850万円超2,545万円以下) 62万円 58万円

所得税法本則の基礎控除額が58万円から62万円に引き上げられ、そこに租税特別措置法による加算額(42万円または5万円)が上乗せされる構造です。国税庁のあらましは、この加算は居住者についてのみ適用があると明記しています。非居住者が日本で確定申告をする場合の基礎控除は、加算のない額になります。

基礎控除申告書(「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の基礎控除欄)には、改正後の額を記載してもらう必要があります。外国人社員向けに翻訳した記入例を毎年使い回している会社は、令和8年分の金額に差し替えてください。

給与所得控除の最低保障額の引上げ

給与所得控除の最低保障額は、65万円から74万円に引き上げられました(令和8・9年分)。年末調整では、国税庁が作成する改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って計算します。

扶養親族等の所得要件の改正

扶養控除などの対象となる親族の所得要件も変わりました。

  • 扶養親族・同一生計配偶者:合計所得金額58万円以下から62万円以下に(給与だけなら収入123万円以下から136万円以下)
  • 特定親族(19歳以上23歳未満):62万円超123万円以下(給与だけなら136万円超197万円以下)
  • 配偶者特別控除の対象となる配偶者:62万円超133万円以下(給与だけなら136万円超207万円以下)
  • 勤労学生:85万円以下から89万円以下に

この改正は2026年12月1日以後に支払う給与から適用されます。改正によって新たに扶養親族に当たることになった家族がいる社員は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて、申告書を出し直す必要があります(国税庁Q&A Q2-1)。日本で働く配偶者がアルバイトをしている外国人社員では、この改正で配偶者控除・配偶者特別控除の判定が変わることがあります。

2025年(令和7年)分から始まった特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の親族の所得が一定額を超えても段階的に控除を受けられる制度)も、令和8年分は62万円超123万円以下が対象です。

外国人社員の年末調整の必要書類

外国人社員に提出してもらう書類は、基本的に日本人社員と同じです。

  1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(令和8年分と、翌年の令和9年分)
  2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  3. 給与所得者の保険料控除申告書(生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金)
  4. 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

これに加えて、国外に住む家族を扶養控除等の対象にする場合は、次の確認書類が必要になります。

  • 親族関係書類:戸籍の附票の写しなど国や地方公共団体が発行した書類と旅券の写し、または外国政府・外国の地方公共団体が発行した書類(出生証明書、婚姻証明書、家族関係を示す公的書類など)。外国語の書類には翻訳文を付ける
  • 留学ビザ等書類:30歳以上70歳未満の親族を「留学」で扶養する場合、外国政府等が発行した留学の在留資格に相当する資格で在留することを証する書類
  • 送金関係書類:金融機関の外国送金依頼書の控え、クレジットカード会社の利用明細書(家族カードを親族が使った場合)など、その年に生活費や教育費を送ったことが分かる書類
  • 38万円送金書類:30歳以上70歳未満の親族を「38万円以上の支払」で扶養する場合、その親族への支払が年38万円以上であることを示す送金関係書類

国外に住む家族の扶養控除|30歳以上70歳未満は原則対象外

国外に住む家族(国外居住親族)を扶養控除の対象にできるのは、扶養親族のうち次のいずれかに当たる人に限られます(国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A」令和8年8月最終改訂)。

  1. 16歳以上30歳未満の人
  2. 70歳以上の人
  3. 30歳以上70歳未満の人のうち、留学により国内に住所・居所を有しなくなった人、障害者、またはその年にその社員から生活費・教育費として38万円以上の支払を受けている人

本国に住む40代・50代の親を扶養に入れようとする外国人社員は多いのですが、この年齢層は、障害者に当たる場合を除き、その年の送金額が38万円以上でなければ扶養控除の対象になりません。16歳未満の子は、国内外を問わず扶養控除(年少扶養親族)の対象外です。

確認書類を出すタイミングも区分によって違います。16歳以上30歳未満または70歳以上の親族であれば、扶養控除等申告書の提出時に親族関係書類を、年末調整時に送金関係書類を出します。30歳以上70歳未満で38万円以上の支払を理由にする場合は、申告書の提出時に親族関係書類を、年末調整時に38万円送金書類を出します。その年に複数回送金している場合は、原則としてすべての送金関係書類を出します。同じ親族への送金が年3回以上になる場合は、明細書を出したうえで、その年最初と最後の送金の書類だけを出す簡便な方法も認められています(国税庁Q&A Q32)。また、送金関係書類は親族「各人」への支払を示すものでなければならず、本国の家族の代表者1人にまとめて送金している場合、その書類は代表者の分にしかなりません(同Q34)。

国外居住親族の扶養控除の要件と書類は国外扶養親族の扶養控除要件|30歳以上70歳未満は38万円送金が必要【令和8年分】で詳しく扱います。

扶養控除等申告書の書き方|外国人社員が迷う欄

扶養控除等(異動)申告書で外国人社員が迷いやすいのは、次の欄です。

  • 氏名:在留カードの氏名表記に合わせてローマ字で書く。フリガナ欄はカタカナで読みを書く。会社の給与システムの登録名と一致させる
  • 個人番号:本人と扶養親族のマイナンバーを書く。日本に住民登録のない国外居住親族にはマイナンバーがないため、記載できない
  • 住所:日本の住民票上の住所を書く
  • 控除対象扶養親族の欄:国外居住親族については「非居住者である親族」欄に印を付け、30歳以上70歳未満の場合は該当する区分(留学、障害者、38万円以上の支払)を示す
  • 生計を一にする事実:国外居住親族について、年末調整時にその年の送金額を記入する
  • 異動月日及び事由:令和8年12月の所得要件の改正で新たに扶養親族になった家族は「令和8年12月1日 改正」と書く

国外居住親族について記載内容に異動がない場合でも、年末調整の際には送金関係書類を確認して、控除を受けられる状態かを判定し直す必要があります(国税庁Q&A Q13)。前年に出した親族関係書類で親族関係が確認できていても、送金の事実は年ごとに確認するものだからです。

日本語の読み書きに不安がある社員には、会社として母語の記入案内を用意すると記入ミスが減ります。

年末調整と在留資格の関係

年末調整そのものは税務の手続ですが、その結果は在留審査にもつながります。在留期間の更新や永住申請では、住民税の課税証明書・納税証明書の提出を求められ、課税証明書には年末調整を経た給与収入と所得、扶養の状況が記載されます。国外居住親族を扶養に入れている場合、その人数は審査で生計の状況を判断する材料の1つになります。

注意したいのは、扶養控除の要件を満たさない国外居住親族を扶養に入れていた場合です。後の税務調査や本人の修正申告で扶養控除が否認されると、住民税の追加課税が生じ、納付の時期によっては在留審査で「公的義務の履行」の問題として扱われるおそれがあります。在留期間の更新で税金の納付状況が見られる仕組みは在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています。年末調整の段階で送金書類を確かめることは、社員の在留資格を守ることにもつながります。

よくある質問

外国人スタッフは年末調整は必要ですか?

所得税法上の居住者であれば必要です。国籍は関係ありません。就労ビザで入国し1年以上働く予定の人は、入国1年目でも居住者として年末調整の対象になります。非居住者は、給与から20.42%を源泉徴収して課税が完結するため、年末調整は行いません。

年末調整で外国人の扶養にいくら送金すればよいですか?

16歳以上30歳未満と70歳以上の国外居住親族については、送金額の基準はなく、その年に送金したことが確認できればよいとされています。30歳以上70歳未満の親族は、留学や障害者に当たる場合を除き、その年の送金額が38万円以上である必要があります。

外国人が帰国した場合の年末調整は?

出国して非居住者になる日までに支払う最後の給与で年末調整を行います。出国後に支払う日本勤務分の給与や賞与は、非居住者への支払として原則20.42%で源泉徴収します。2026年は、最後の給与を11月30日以前に支払う人の年末調整に、12月1日施行の改正後の基礎控除等が適用されない点に注意が必要です。

年末調整における外国人区分とは?

所得税法上の居住者、非永住者、非居住者の3つの区分を指します。居住者と非永住者は年末調整の対象、非居住者は対象外です。非永住者は日本国籍がなく過去10年のうち日本に住んでいた期間が5年以下の居住者で、課税される国外源泉所得の範囲が狭くなりますが、会社の給与だけであれば年末調整の計算は同じです。

特定技能外国人は年末調整の対象ですか?

対象です。特定技能1号の外国人は、通常1年以上の雇用契約に基づいて入国するため、入国の日から居住者として扱われます。技能実習生も、2号以上へ移行して1年以上日本で実習する予定であれば同様です。一方、国税庁の「住所の推定」の事例は、技能実習1号だけで1年以内に帰国する予定の実習生を「一般的には非居住者」としています。1年の判定は入国日の翌日から数え、入国後講習の期間も含めます。

12月の前に確認しておく3つのこと

外国人社員の年末調整で手戻りが起きる原因は、12月になってから区分と書類を確認し始めることです。10月から11月のうちに、まず全員の居住者・非居住者の区分と、年内に帰国・出国する予定の有無を確認します。次に、国外居住親族を扶養に入れている社員に、年齢区分と送金書類がそろっているかを確かめてもらいます。最後に、令和8年12月1日施行の改正で扶養の判定が変わる家族がいないかを確認し、必要な社員には扶養控除等申告書を出し直してもらいます。

居住者の判定は、雇用契約の期間や生活の実態によって結論が変わることがあり、個別の事情で判断が分かれる場合は、所轄の税務署や税理士に確認してください。在留資格の手続と税・社会保険の手続は窓口が別々ですが、外国人社員にとっては一続きの生活の問題です。会社がその接点を押さえておくと、更新や永住の場面で慌てずに済みます。

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根拠資料


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