外国人社員も、健康保険・厚生年金保険の適用事業所で働き、加入要件を満たせば、日本人と同じく被保険者になります。日本年金機構は、適用事業所に使用される人は「国籍や性別、賃金の額等に関係なく」被保険者になると説明しており、本人が「将来日本で年金を受け取らないから入りたくない」と希望しても、会社の判断で加入させないことはできません。例外として加入が免除されるのは、社会保障協定を結んだ国から一時的に派遣され、相手国の適用証明書を持っている場合に限られます。
社会保険に国籍要件がない理由
健康保険法3条と厚生年金保険法9条は、被保険者を「適用事業所に使用される者」と定めています。条文のどこにも国籍の要件はなく、年齢(厚生年金は70歳未満、健康保険は75歳未満)と、働き方による適用除外があるだけです。
ここでいう社会保険とは、会社を通じて加入する健康保険(40歳以上65歳未満は介護保険を含む)と厚生年金保険を指します。雇用保険と労災保険は労働保険と呼ばれ、別の法律で加入の要件が決まっています。この記事は前者を扱います。
国籍を問わない仕組みには、歴史的な背景もあります。国民年金は、1982年1月の難民条約の発効に合わせて国籍要件が撤廃されました。それ以降、日本に住む20歳以上60歳未満の人は国籍にかかわらず国民年金の被保険者で、会社員として厚生年金に入れば、同時に国民年金の第2号被保険者になります。
実務でよく聞かれる「外国人は短期間しか日本にいないから、年金は払い損になる」という点は、加入義務の有無とは別の問題です。帰国した外国人のために脱退一時金の制度があり、2025年の年金制度改正法で支給上限を5年から8年に引き上げることが決まっています(施行日は公布から4年以内の政令で定める日で、2026年9月時点で施行を定める政令は確認できていません)。制度の中身は外国人の脱退一時金とは?上限8年への改正はいつから・再入国許可中の請求制限で扱っています。
加入条件は日本人と同じ|正社員とパート・アルバイト
加入するかどうかは、在留資格ではなく、会社と働き方で決まります。
会社(適用事業所)の条件
法人の事業所は、従業員が1人でも、代表者1人だけの会社でも、強制適用事業所です。外国人が経営・管理の在留資格で設立した会社も同じで、社長自身が報酬を受け取っていれば被保険者になります。個人事業所は、法定の業種で常時5人以上の従業員を使用していれば強制適用です。
通常の加入要件(4分の3基準)
1週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば、パートやアルバイトという呼び方にかかわらず加入します。正社員として雇う技術・人文知識・国際業務や特定技能の社員は、通常この基準で加入対象です。
短時間労働者の加入要件
4分の3に満たない短時間労働者も、次の要件をすべて満たせば加入します(2024年10月以降)。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生でない
- 従業員数51人以上の企業(特定適用事業所)で働いている
外国人社員について見落とされやすいのが、家族滞在の在留資格で資格外活動許可を受けて働く配偶者です。家族滞在の人は学生ではないため、週28時間以内でも、週20時間以上・月額8.8万円以上であれば、51人以上の企業では短時間労働者として加入対象になります。一方、留学生は「学生」に当たるため、この短時間労働者の要件からは外れます。
適用除外になる働き方
次の人は、国籍にかかわらず、原則として被保険者になりません。
- 日々雇い入れられる人(1か月を超えて引き続き使用されれば加入)
- 2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えて使用される見込みのない人
- 季節的業務に4か月以内の期間で使用される人
- 臨時的事業の事業所に6か月以内の期間で使用される人
在留期間が1年だから、ワーキングホリデーで1年しかいないから、という理由は適用除外になりません。
在留資格別に見た加入の目安
在留資格そのものは加入の要件ではありませんが、在留資格ごとに典型的な働き方が決まっているため、結果として加入の有無に傾向が出ます。採用担当者が最初の目安にできるよう、整理しておきます。
| 在留資格 | 典型的な働き方 | 会社の社会保険 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務、技能、介護など | フルタイムの雇用 | 加入(4分の3基準) |
| 特定技能 | フルタイムの直接雇用が原則 | 加入(加入と納付が受入れの基準にもなる) |
| 技能実習・育成就労 | 実習実施者・育成就労実施者との雇用 | 加入 |
| 企業内転勤 | 海外本社からの転勤 | 日本法人から報酬を受けていれば原則加入。協定国からの派遣で適用証明書があれば、協定の対象制度は免除 |
| 経営・管理 | 法人の役員 | 法人から報酬を受けていれば加入 |
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等 | 就労制限なし | 働き方次第(4分の3基準か短時間の要件) |
| 家族滞在(資格外活動) | 週28時間以内のパート | 51人以上の企業で短時間の要件を満たせば加入 |
| 留学(資格外活動) | 週28時間以内のアルバイト | 学生のため原則として加入しない |
| 特定活動(ワーキング・ホリデー) | 期間の定めのある雇用 | 働き方次第。在留期間が1年であることは適用除外の理由にならない |
企業内転勤については、日本法人が給与を支払わず、海外本社だけが給与を払っている場合、日本の事業所に「使用される者」に当たるかどうかが問題になります。日本での指揮命令関係や報酬の支払い方によって判断が分かれるため、年金事務所に事前に相談しておくのが確実です。
会社の社会保険に入らない外国人は国民健康保険・国民年金へ
会社の健康保険・厚生年金の対象にならない外国人も、保険と無縁になるわけではありません。在留期間が3か月を超え、住民登録をしている外国人は、市区町村の国民健康保険に加入します(医療目的の特定活動など、一部の在留資格は除かれます)。20歳以上60歳未満であれば、国民年金の第1号被保険者にもなります。
留学生や、短時間で働く家族滞在の人、転職の合間の人は、この国民健康保険・国民年金の側にいることになります。会社の手続は不要ですが、退職した外国人社員が次の就職までの間に国民年金・国民健康保険へ切り替えずに放置すると、その期間が未納になり、後の永住申請や特定技能の審査で問題になります。退職時に切り替えの手続を案内しておくことは、会社が負う義務ではないものの、本人の在留を守るうえで効果の大きい一手です。
保険料の負担は労使折半
厚生年金保険の保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します。健康保険の保険料率は加入する健康保険組合や協会けんぽの都道府県支部によって違い、これも労使折半です。いずれも標準報酬月額に保険料率を掛けて計算するため、外国人だから保険料が高い・安いということはありません。
給与から控除する金額が大きく、手取りが想定より少ないという不満は、外国人社員から出やすいものです。雇用契約の段階で、額面の給与と、社会保険料・税金を控除した後の手取りの目安を示しておくと、入社後の誤解を防げます。帰国時には脱退一時金で厚生年金保険料の一部が戻る可能性があることも、あわせて説明しておくとよいでしょう。
「免除」されるのは社会保障協定の適用証明書がある場合だけ
外国人社員の社会保険で唯一、加入が免除される仕組みが社会保障協定です。ここでいう社会保障協定とは、日本と相手国が、保険料の二重払いを防ぎ、両国の加入期間を通算して年金を受けられるようにするために結ぶ条約を指します。
厚生労働省によれば、2026年6月2日現在、日本の社会保障協定は24か国で発効しています。協定がある国の会社から日本の拠点に一時的に派遣される社員は、派遣期間の見込みがおおむね5年以内であれば、相手国の制度に加入し続け、日本の厚生年金(国によっては健康保険も)への加入が免除されます。そのためには、相手国の実施機関が発行する「適用証明書」を日本の事業所で保管し、提示を求められたときに出せるようにしておく必要があります。
注意点は2つあります。1つは、免除の対象は協定の対象になっている制度だけという点です。イギリス、韓国、中国、イタリアとの協定は、保険料の二重負担の防止だけを定めており、年金の加入期間の通算はありません。対象の制度も国ごとに違うため、年金は免除されても健康保険は日本で加入する、という組み合わせも起こります。
もう1つは、協定の対象は「派遣」された人だという点です。日本の会社が現地で直接採用し、日本で雇用契約を結んで働く外国人は、協定のある国の出身であっても日本の社会保険に加入します。企業内転勤で来日した社員でも、日本法人との雇用に切り替えた場合は扱いが変わることがあります。協定の締結国と手続は社会保障協定とは?外国人社員の年金二重加入を防ぐ手続きと締結国24か国一覧で詳しく扱います。
適用拡大の今後の日程|51人以下の企業も対象に
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の加入要件は今後さらに広がります。厚生労働省の資料で示されている日程は次のとおりです。
| 時期 | 変更の内容 |
|---|---|
| 2027年10月 | 企業規模要件を「36人以上」に引き下げ |
| 2029年10月 | 企業規模要件を「21人以上」に引き下げ。個人事業所の適用業種を拡大(2029年10月時点で既にある事業所は当分の間対象外) |
| 2032年10月 | 企業規模要件を「11人以上」に引き下げ |
| 2035年10月 | 企業規模要件を撤廃(10人以下の企業も対象) |
| 公布から3年以内 | 賃金要件(月額8.8万円)を撤廃。全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて時期を判断 |
「2026年10月から段階的に拡大」と紹介されることもありますが、厚生労働省の公表資料で確認できる企業規模要件の最初の引下げは2027年10月です。2026年10月に短時間労働者の加入要件で施行される変更は、公表資料では確認できていません(公式資料では未確認)。
外国人を雇う中小企業にとって、この日程が意味するのは、家族滞在の配偶者や、週20時間以上働く永住者・定住者のパート社員が、順次加入対象に入ってくるということです。賃金要件が撤廃されれば、週20時間以上かどうかだけで判断が決まるようになります。従業員数が36人から50人の会社は、2027年10月に向けて対象者の洗い出しを始める時期に来ています。
加入手続で外国人特有に必要なもの
手続そのものは日本人と同じで、入社から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務所(または事務センター)に出します。外国人社員に特有なのは次の点です。
- ローマ字氏名届:マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない外国籍の人などについて、資格取得届とあわせて提出を求められます。氏名はパスポートや在留カードのアルファベット表記に合わせます
- 被扶養者の国内居住要件:2020年4月から、健康保険の被扶養者は原則として日本国内に住所があることが要件になりました。本国に住む両親や配偶者は、留学などの例外を除き扶養に入れられません(詳しくは日本年金機構の案内を参照)
- 退職・帰国時:資格喪失届の提出に加え、本人に脱退一時金の制度と、住民税の精算を説明しておくと、帰国後の問い合わせが減ります
特定技能の外国人を受け入れる場合は、在留諸申請で社会保険の加入と保険料の納付を証明する書類が必要になります。日本年金機構は、特定技能に関する社会保険関係の書類交付の手続を案内しています。
未加入は在留審査にも跳ね返る
社会保険の未加入は、年金事務所からの指導や、最大2年分の保険料の遡及徴収につながります。届出を怠った事業主は、厚生年金保険法102条・健康保険法208条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象にもなります。
外国人社員の場合、影響は労務の範囲にとどまりません。入管の在留審査では、本人と所属機関の公的義務の履行が見られるからです。
- 在留期間の更新:出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、納税などの公的義務の履行を考慮要素に挙げています。更新での扱いは在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています
- 永住許可:永住許可に関するガイドラインは、公的年金と公的医療保険の保険料を納付期限内に納めていることを求めています。会社が加入手続を怠って本人が国民年金にも入っていなかった期間は、後から取り戻せません
- 特定技能:受入れ機関の基準として社会保険の加入と納付が求められ、本人の国民年金・国民健康保険の納付状況も確認されます。確認の範囲は特定技能と国民年金・国民健康保険の未納で扱っています
会社が滞納している場合の影響は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?にまとめています。外国人社員の在留資格は、本人の努力だけでなく、会社の手続の正確さにも支えられているということです。
よくある質問
外国人は社会保険に加入する義務はありますか?
適用事業所で加入要件を満たして働いていれば、国籍にかかわらず加入義務があります。本人の希望で加入しない選択はできません。加入が免除されるのは、社会保障協定のある国から派遣され、適用証明書を持っている場合です。
アルバイトでも外国人の社会保険加入は必要ですか?
所定労働時間が正社員の4分の3以上なら、アルバイトでも加入します。4分の3未満でも、51人以上の企業で週20時間以上・月額8.8万円以上・2か月超の見込みがあり、学生でなければ加入します。家族滞在の配偶者は学生ではないため、この要件に当たることがあります。
外国人留学生がアルバイトをする場合、社会保険に加入は必要ですか?
留学生は週28時間以内の資格外活動に限られ、通常は4分の3基準に届きません。短時間労働者の要件でも学生は除外されるため、会社の社会保険には原則として加入しません。本人が国民健康保険と国民年金に加入します。
外国人でマイナンバーがない場合、社会保険はどうなりますか?
加入義務は変わりません。資格取得届にマイナンバーを書けない場合や、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない場合は、ローマ字氏名届をあわせて出し、基礎年金番号で手続を進めます。
外国人の社会保険の免除はありますか?
国籍や在留資格による免除はありません。社会保障協定の相手国から一時的に派遣され、相手国の適用証明書がある場合に、協定の対象制度の加入が免除されます。
採用時に「加入するか」を決めるのは在留資格ではない
外国人社員の社会保険で判断を誤る原因は、在留資格や国籍を判断材料に入れてしまうことです。加入するかどうかを決めるのは、会社が適用事業所か、働き方が4分の3基準か短時間労働者の要件を満たすか、社会保障協定の適用証明書があるかの3点だけです。
実務としては、採用時に在留カードと雇用条件を確認する段階で、社会保険の加入判定も同じ書式に入れておくことをお勧めします。短時間で働く家族滞在や永住者の社員は、2027年10月以降の適用拡大で判定が変わる可能性があるため、判定の日付も残しておくと見直しが楽になります。個別の雇用形態によって判断が変わることがあるため、迷う場合は年金事務所か社会保険労務士に確認してください。
根拠資料
- 外国人従業員を雇用したときの手続き(日本年金機構・2026年8月3日更新)
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)
- 社会保険の加入対象の拡大について(厚生労働省)
- 年金制度改正法の主な改正内容(厚生労働省)
- 社会保障協定の締結状況(厚生労働省・2026年6月2日現在)
- 健康保険法(e-Gov法令検索)
- 厚生年金保険法(e-Gov法令検索)
- 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁)
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