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社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?企業が確認すべきポイントを解説

ここでいう社会保険料の未納とは、単に「本人の個人的な事情」で片づけられる話ではなく、企業のコンプライアンスと直結する論点を指します。「税金や保険料の話は本人の問題で、会社には関係ない」という理解は、今のうちに改めておいたほうがいいでしょう。現状でも在留審査のマイナス要素として扱われていますし、2027年6月には未納が更新・変更を原則不許可にする新しい制度が始まる見込みだからです。

外国人社員個人の納付状況まで会社が細かく管理する義務は、法律上明確に定められているわけではありません。しかし、会社が正しく社会保険に加入させていれば、そもそも本人が未納になるリスク自体が大きく下がります。だからこそ、外国人社員を雇う企業ほど、社会保険の加入手続きをきちんとやっているかどうかが、これまで以上に重要になってきます。

この記事では、社会保険料の滞納が在留審査にどう影響するのか、2027年6月施行見込みの新制度がどういうものか、そして企業が今からできることを整理します。外国人社員を雇用している経営者・人事担当者はもちろん、これから採用を考えている方にも押さえておいてほしい内容です。

この記事でわかること

  • 現状の在留審査で社会保険料の未納がどう扱われているか
  • 2027年6月施行見込みの新制度の内容(検討段階)
  • 会社側の社会保険加入義務と、未加入がもたらすリスク
  • 外国人社員の加入状況を企業が確認する具体的な方法
  • 滞納が発覚した場合の対処法

現状:社会保険料の未納は在留審査のマイナス要素

在留資格の変更・更新の審査では、「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」といった要件が見られます。この「素行善良要件」の中で、税金や社会保険料をきちんと納めているかどうかが、実務上の判断材料の一つとして扱われてきました。

社会保険料を滞納していたからといって、これまでは即座に不許可になっていたわけではありません。ただ、他の要素と合わせて総合的に判断される中で、「納付すべきものを納めていない」という事実は、確実にマイナスに働いていました。永住許可の申請では特にこの点が厳しく見られていて、永住許可の要件厳格化で何が変わる?でも触れているとおり、納税や社会保険料の納付状況は年々重視される傾向にあります。

【2027年6月施行見込み】新制度の内容

そしてここへきて、より踏み込んだ制度改正の方向性が示されています。国民健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料に一定の滞納がある場合、在留資格の更新・変更を原則として不許可にする新しい運用が、2027年6月ごろに施行される見込みだと報道されています。

これがそのまま制度化されれば、これまでの「総合判断の中のマイナス要素の一つ」という位置づけから、「滞納があれば原則アウト」という、かなり強い制度に変わることになります。正式な省令改正や運用要領の確定はまだ先の話で、対象となる滞納の金額や期間、例外的な救済措置の有無など、詳細は今後の発表を待つ必要があります。正式決定次第、当事務所でも改めてご案内します。

ただ、方向性としては、「うっかり滞納していた」では済まされない制度に向かっている、ということは間違いありません。この動きは、外国人受入れの総合的対応策で在留審査はどう変わる?で決定された、審査全体の厳格化路線とも一致しています。

時点 社会保険料未納の扱い(見込み)
現状 素行善良要件等の中で、総合判断のマイナス要素として考慮
2027年6月施行見込み以降 一定の滞納があると、更新・変更が原則不許可となる方向で検討

なぜ社会保険料の未納がここまで問題視されるのか

背景には、外国人住民の増加に伴って、国民健康保険や国民年金の未納・未加入が各自治体で無視できない規模になってきている、という事情があります。制度を維持するための財源としての社会保険料が納められないと、公的医療や年金の制度全体が揺らぎかねません。在留資格という「日本に住み続けるための許可」と、社会保険料の納付という「社会の一員としての責任」を、より強く結びつけていこうという流れになっています。

経済的に困窮していて払いたくても払えない、という事情がある方もいるはずです。しかし制度としては「事情があるかどうか」よりも「納めているかどうか」という客観的な事実で判断される場面が増えていきます。感情的には気の毒でも、制度上はシビアに扱われる。この現実を踏まえて、企業側も対策を考えておく必要があります。

もうひとつ見逃せないのが、こうした制度改正が、外国人材の受け入れそのものに対する社会的な印象にも関わってくるという点です。「きちんと制度を守って受け入れている」という実態を積み重ねていくことが、結果的に外国人採用に対する周囲の理解を広げることにもつながります。逆に、一部の未納・滞納事例が目立つと、外国人受け入れ全体への風当たりが強くなり、まわりまわって真面目に受け入れている企業まで肩身の狭い思いをすることになりかねません。

会社の社会保険加入義務を再確認する

ここで企業にとって大事なのが、そもそも「会社が正しく社会保険に加入させていれば、本人の未納リスクは大幅に下がる」という点です。一定の要件を満たす従業員は、厚生年金保険・健康保険(あわせて「社会保険」)への加入が会社の義務です。この場合、保険料は給与から天引きされ、会社が半分を負担したうえで納付するので、本人が個別に納付書を持って窓口に行くような手間もなく、滞納そのものが起きにくい仕組みになっています。

逆に、会社が社会保険に加入させるべき従業員を加入させていない場合、その従業員は国民健康保険・国民年金の対象になります。こちらは自分で納付書を受け取り、自分で納める形になるので、収入が不安定だったり、制度への理解が不十分だったりすると、未納が発生しやすくなります。会社が社会保険への加入義務を怠っていること自体が、間接的に外国人社員本人の在留資格リスクを高めている、という構造になっています。

加入形態 保険料の納め方 未納リスク
社会保険(厚生年金・健康保険) 給与天引き(会社が半分負担) 低い
国民健康保険・国民年金 本人が個別に納付 高くなりやすい

「うちは小規模だから社会保険は関係ない」と考えている経営者もいますが、法人であれば原則として社会保険の適用事業所になりますし、個人事業でも一定の要件で加入義務が生じます。加入すべき従業員を未加入のままにしておくと、会社自体が保険料の追徴や罰則の対象になるリスクもあるので、この機会に自社の加入状況を見直しておいたほうがいいでしょう。

年金事務所による調査は、外国人・日本人を区別せずに行われますが、外国人社員を雇用している事業所は、在留資格の関係で入管とのやり取りも発生するため、労務面での不備がより表に出やすい傾向があります。書類を整えるタイミングとしては、新しく外国人を採用するとき、あるいは在留期間更新のタイミングに合わせて社内の社会保険加入状況を棚卸しするのが、いちばん効率がいいやり方です。

企業が確認すべきポイント

外国人社員の社会保険・納付状況について、企業として確認しておきたいポイントを整理します。

  • 加入要件を満たす従業員を、正しく社会保険に加入させているか:週の所定労働時間や雇用期間などの要件を確認し、対象者を漏れなく加入させる
  • 給与明細上で保険料が正しく控除されているか:控除がない場合、加入手続きが漏れている可能性がある
  • 国民健康保険・国民年金の対象者に、納付の重要性を説明しているか:短時間勤務やアルバイトなど社会保険の対象外の従業員には、個人での納付が必要であることを丁寧に伝える
  • 更新前の面談で、納付状況に懸念がないか本人に確認する機会を設けているか:直接答えにくい話題ではあるが、更新時期が近づいたタイミングで一声かけておく
  • 納付証明書・課税証明書の取得方法を案内できるか:更新申請時に必要になる書類なので、取得方法を事前に案内しておくと本人もスムーズに準備できる

特に、雇用形態が変わったタイミング、たとえばアルバイトから正社員になった、あるいは労働時間が増えたといったタイミングで、社会保険の加入要件を満たすようになっていないかを見落としがちです。年に一度は、雇用している外国人社員全員の勤務形態と社会保険の加入状況を突き合わせて確認する機会を作っておくと安心です。

更新申請で提出する書類にも影響が出る

在留期間更新許可申請では、カテゴリーによって課税証明書・納税証明書の提出が求められます。今後、社会保険料の納付状況を確認する運用がより厳格になれば、これらに加えて国民健康保険料や厚生年金保険料の納付証明書、あるいは会社の社会保険加入状況を示す資料の提出が求められる可能性も十分に考えられます。

現時点でどこまでの書類が具体的に求められるようになるかは、正式な運用要領の公表を待つ必要がありますが、「税金は払っているから大丈夫」という認識だけでは足りなくなる可能性がある、という前提で準備を進めておくのが安全です。納税証明書は取得したことがあっても、社会保険料の納付証明書を取ったことがない、という外国人社員は意外と多いので、更新のタイミングで初めて取得方法に戸惑う、という事態も起こり得ます。会社側から早めに案内しておくと、本人もスムーズに準備できます。

よくある誤解――「税金さえ払っていれば大丈夫」ではない

納税は済んでいるのに社会保険料だけ滞納している、というケースは実はそれなりにあります。所得税や住民税は給与天引きされることが多い一方で、国民健康保険や国民年金は自分で納付書を持って払いに行く必要があるため、後回しにされやすいという構造上の理由があります。

「税金は払っているから素行に問題はない」と本人が思い込んでいて、社会保険料の未納には気づいていない、というパターンが実務ではよく見られます。企業側としても、給与明細や源泉徴収票だけを見て「ちゃんと納めているだろう」と判断するのは早計です。国民健康保険・国民年金の対象者については、納付が別建てで発生しているという前提で、意識的に声をかけておく必要があります。

中小企業が陥りやすい落とし穴

社会保険の加入義務そのものは知っていても、実際の運用でつまずく中小企業は少なくありません。よくあるパターンをいくつか挙げておきます。

  • 試用期間中は社会保険に入れていない(本来は試用期間中も加入要件を満たせば加入義務がある)
  • パート・アルバイトから正社員に切り替わったのに、加入手続きが追いついていない
  • 本人が「国民健康保険のままでいい」と希望したので、会社の社会保険に加入させていない(本人の希望では加入義務は免除されない)
  • 複数の事業所を掛け持ちしている外国人社員の社会保険手続きが煩雑で、後回しにしている

特に3つ目は誤解が多いポイントです。社会保険は要件を満たせば会社の義務として加入させるものであって、本人の希望で加入しない、という選択肢は本来ありません。手取りが減るのを嫌がって本人が難色を示すこともありますが、会社としては法令上の義務を優先する必要があります。ここを曖昧にしたまま放置すると、あとになって未加入が発覚し、さかのぼって保険料を徴収されるだけでなく、外国人社員本人の在留資格にまで影響が及びかねません。目先の手取り額よりも、長い目で見た在留資格の安定のほうが本人にとって大事だ、ということを丁寧に説明する必要があります。

既に滞納がある場合、どうすればいいか

もし外国人社員から「実は保険料を滞納している」という相談があった場合、まず大事なのは放置しないことです。分割納付の相談を市区町村の窓口や年金事務所に行う、少しずつでも納付を進めて未納状態を解消していく、という行動そのものが、在留審査においてもプラスに評価される可能性があります。滞納があったという事実そのものよりも、「気づいてから何をしたか」のほうが重要視される場面は多いです。

更新申請の直前になって慌てて全額を用意しようとすると、かえって資金繰りが苦しくなることもあります。更新のタイミングから逆算して、できるだけ早い段階で納付状況を確認し、問題があれば早めに手を打っておく。これは本人の責任である以上に、雇用している企業としても、余裕を持ってサポートできる体制を整えておいたほうがいいでしょう。外国人社員が安心して長く働ける環境を作ることは、結局は企業の人材定着にもつながります。

会社として直接、社員の滞納分を立て替えるべきかどうかは、慎重に判断したほうがいいでしょう。善意のつもりでも、給与とは別に金銭的な貸し借りが発生すると、労務管理上のトラブルに発展することがあります。むしろ会社が果たすべき役割は、分割納付の相談窓口を案内する、必要な証明書の取得方法を教える、といった情報面でのサポートに徹することです。金銭的な支援ではなく、情報とタイミングの支援。この線引きを崩さないほうが、あとあと揉め事を防げます。

特定技能の登録支援機関が果たす役割

特定技能で外国人を受け入れている企業の場合、登録支援機関を通じて生活オリエンテーションや行政手続きの支援を行っていることが多いです。社会保険・税金の説明も、この支援計画の中に含まれています。ただ、支援計画に「説明した」という項目があっても、実際に本人が理解し、継続して納付できているかまでは、支援機関任せにしていると見えてこないことがあります。

登録支援機関から定期的に提出される支援実施状況の報告に、納付状況の確認結果まで含まれているかを確認しておくと安心です。登録支援機関とは?選び方・費用相場・自社支援との違いでも触れているとおり、支援の質は機関によって差があります。単に書類を揃えるだけの支援なのか、実際に生活面まで踏み込んでフォローしてくれる支援なのか、この違いが結果的に社員の在留資格の安定にも直結してきます。

日本人従業員との公平性という視点

ここまで外国人社員の話を中心にしてきましたが、社会保険への加入義務そのものは、日本人・外国人を問わず同じです。むしろ、外国人社員だけを特別扱いして加入手続きを後回しにしたり、逆に過剰に厳しくチェックしたりするのは、社内の公平性という観点からも望ましくありません。

大事なのは、全従業員に対して同じ基準で社会保険の加入要件を確認し、加入させるべき人を漏れなく加入させる、という当たり前の運用を徹底することです。その結果として、外国人社員の在留資格更新のリスクも自然と下がっていく、という順番で考えたほうが、無理のない体制づくりができます。特別な外国人対応をするというより、社内の労務管理そのものの精度を上げる、という発想のほうが持続可能です。

在留資格の種類によって注意点が変わる

技人国や特定技能で就労している方の多くは、会社の社会保険に加入しているケースが大半なので、比較的リスクは低めです。一方で、経営・管理ビザの経営者本人や、フリーランス的な働き方をしている在留資格保持者は、自分で国民健康保険・国民年金に加入し、自分で納付する必要があるため、より注意が必要です。特に、事業を始めたばかりで資金繰りが厳しい時期に、社会保険料の支払いを後回しにしてしまう経営者は少なくありません。

また、家族滞在で日本にいる配偶者についても、扶養の範囲を超えて働いている場合や、自身で国民健康保険に加入している場合は、同様に納付状況が問われる可能性があります。世帯全体で見て、誰がどの制度にどう加入しているかを整理しておくことが、更新時のトラブルを防ぐことにつながります。

よくある質問

Q. 社会保険料を滞納していると、必ず在留資格の更新が不許可になりますか?

現状は、滞納の事実だけで一律に不許可となるわけではなく、素行や生活の安定性を見るマイナス要素の一つとして扱われています。ただし2027年6月に施行される見込みの新制度では、一定の滞納があると原則として不許可になる方向で検討されていると報道されています。まだ正式施行前のため、詳細は今後の発表を確認する必要があります。

Q. 会社ではなく本人が個人的に滞納している場合も問題になりますか?

はい。国民健康保険や国民年金など、本人が個人で加入・納付する制度の滞納も対象になり得ます。会社の社会保険(厚生年金・健康保険)に正しく加入していれば給与天引きになるため、個人での未納リスクは大きく下がります。

Q. 外国人社員が社会保険に加入しているかどうかは、どうやって確認すればいいですか?

厚生年金・健康保険は、要件を満たす従業員であれば会社側に加入させる義務があります。給与明細で社会保険料が控除されているかを確認する、年金事務所からの通知を確認する、といった方法で会社側からも状況を把握できます。

Q. 会社側が社会保険に未加入だと、外国人社員本人が不利益を受けますか?

受ける可能性があります。会社が加入させるべき従業員を社会保険に加入させていないと、本人が国民健康保険・国民年金の対象になり、結果として未納につながりやすくなります。企業のコンプライアンス違反が、外国人社員本人の在留資格リスクに転嫁される構造になっている点に注意が必要です。

まとめ

社会保険料の滞納は、もはや外国人社員本人だけの問題ではありません。会社が加入義務を正しく果たしているかどうかが、本人の未納リスクを左右し、それが在留資格の更新に跳ね返ってきます。2027年6月施行見込みの新制度が現実になれば、この構造はさらに強まります。自社の社会保険加入状況を見直し、外国人社員が安心して納付を続けられる環境を整えておくこと。それが、更新のたびに冷や冷やしないで済む、いちばん確実な対策です。

制度がどう変わるにせよ、「加入すべき人をきちんと加入させる」という基本を押さえておけば、慌てる必要はありません。逆に、この基本を曖昧にしたまま放置していると、制度改正のたびに後手に回ることになります。今のうちに一度、自社の状況を点検しておくことをおすすめします。