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【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?外国人社員の定着・育成のために企業がすべきこと

ここでいう永住許可の厳格化とは、収入・年金・日本語能力という3つの軸に、これまでより具体的で高いハードルが設定されることを指します。出入国在留管理庁が2026年8月4日に公表した改定案では、この3つのすべてに新しい基準が加わる方針が示されています。

「勤続年数が長いから、そろそろ永住を取らせてあげよう」という判断だけでは、今後は通用しにくくなります。改定案が示す方向性は、日本人世帯の平均収入を継続的に上回っていること、厚生年金30年加入相当の年金見込額があること、日本語能力もCEFR B1相当が求められること、という3点に集約されます。まだ改定案の段階であり細部は今後変わり得ますが、「長く日本で暮らし、経済的にも自立し、日本語もできる人」に対象を絞り込んでいく流れであることは、ほぼ間違いありません。永住を見据えて社員を育てたい企業にとっては、今のうちに準備を始めておく価値のある話です。

この記事では、改定案の内容を整理したうえで、外国人社員の定着・育成を考えている企業が今からできることを示します。永住は本人にとって人生の大きな決断であり、企業にとっても「この人にずっと働いてほしい」という意思表示の一つです。要件が厳しくなるからこそ、企業側の後押しが持つ意味は、これまで以上に大きくなります。

この記事でわかること

  • 2026年8月4日公表の永住許可ガイドライン改定案の概要
  • 収入要件が「日本人世帯の平均収入超え」の方針になる背景
  • 新たに加わる年金要件・日本語能力要件(B1相当)の内容
  • 要件ごとに異なる適用時期(2026年10月と2027年4月)
  • 永住を見据えて長期雇用したい企業が今からできること

現行の永住許可要件のおさらい

現行の永住許可要件を先に整理しておきます。永住許可は、次のような要件を満たしたうえで申請するのが基本です。

  • 素行要件:日本の法律を守り、社会的に非難されるような行動がないこと
  • 独立生計要件:日常生活に困窮せず、独立した生計を営むに足りる資産または技能を有すること(年収・納税状況等で判断される)
  • 国益要件:原則として引き続き10年以上の在留、そのうち就労系資格での在留が一定期間以上あること、公的義務(納税・社会保険料の納付等)を適正に履行していること

今回の改定案は、この枠組み自体をゼロから作り直すものではありません。「独立の生計を営むに足りる」という部分と、これまで明文化されていなかった日本語能力という観点を、より具体的な基準に落とし込もうとするものです。既存の要件を守れていない企業がいきなり大混乱に陥る、というより、これまで曖昧だった部分が数値化される、と捉えたほうが実態に近いはずです。

2026年8月公表の永住許可ガイドライン改定案とは

出入国在留管理庁は2026年8月4日、永住許可に関するガイドラインの改定案を公表しました。2026年10月の改定実施が予定されており、永住許可の審査で見られるポイントが大きく見直される見込みです。

今回の改定案は、「独立の生計を営むに足りる」の部分と、日本語能力という新しい観点を、より具体的かつ厳格に運用しようとするものです。

ガイドラインの改定案が公表された段階であり、パブリックコメントを経て正式に決定するプロセスが残っています。細部の数字や運用方法は今後変わる可能性がありますが、「収入・年金・日本語のハードルが上がる」という大きな方向性がひっくり返ることは、実務上の感覚としては考えにくいところです。

収入要件:日本人世帯の平均収入を継続的に上回る方針

改定案でとくに注目されているのが、収入要件の見直しです。日本人世帯の平均収入を継続的に上回っていることを、永住許可の収入要件とする方針が示されています。

ここで重要なのは「継続的に」という条件です。単発でその年の収入が高ければいい、という話ではなく、一定期間にわたって水準を維持できているかが見られる方向性ということです。パブリックコメントを経ての正式決定前の段階なので、具体的な基準額や算定期間の確定は今後の発表を待つ必要がありますが、「平均以上を、それも継続的に」という考え方自体は、企業の給与設計に直結する話です。

これまで「最低賃金をわずかに超えていればいい」程度の給与水準で雇用していた企業にとっては、社員に永住を取らせたくても、収入要件の面でつまずく可能性が出てきます。

日本人世帯の平均収入といっても、世帯構成(単身か家族帯同か)によって水準感は変わります。改定案の細かい算定方法はまだ確定していませんが、「本人の給与さえ一定額あればいい」という単純な話ではなく、世帯全体の収入状況が見られる可能性があるという前提で捉えておいたほうが安全です。

なぜ今、永住許可の要件が厳格化されるのか

背景にあるのは、日本で長期的に生活する外国人が増えるなかで、「本当に自立して生活できる人に永住を認めるべきだ」という考え方が強まっていることです。2026年1月に決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」でも、在留管理の適正化が大きなテーマとして掲げられており、永住許可の厳格化はその流れの延長線上にあると見ていいでしょう。

まっとうに働き、税金も社会保険料もきちんと納めている社員にとって、それほど脅威になる話ではありません。一方で、「とりあえず10年住んだから永住を取らせよう」という感覚だけで進めていた企業にとっては、これまで通用していた考え方が通用しなくなる可能性が高いといえます。この総合的対応策の全体像は外国人受入れの総合的対応策で解説しています。

年金要件:厚生年金30年加入相当の受給見込額(2027年4月適用予定)

もうひとつの大きな変更が、年金に関する要件です。改定案では、厚生年金30年加入相当の年金受給見込額があることが、新たな要件として追加される見込みです。この年金要件については、2027年4月からの適用が予定されています。

これはつまり、単に「今の収入が高いか」だけでなく、「将来にわたって安定した年金を受け取れる見込みがあるか」まで見られるようになる、ということです。厚生年金への加入期間や納付実績が問われる以上、社員が厚生年金にきちんと加入し、継続して保険料を納めているかどうかが、これまで以上に重要な意味を持つようになります。

注意:年金要件の詳細(算定方法・必要な加入期間の証明方法など)は、正式なガイドライン公表時に確定します。現時点ではあくまで改定案・方針段階の情報であることをご理解ください。

社会保険の未加入や滞納は、永住許可だけでなく在留資格全般に影響します。社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?もあわせて確認しておくと、社員の年金・保険加入状況を見直すきっかけになるはずです。

ここで企業側が誤解しやすいのが、「本人が個人的に加入していればいい」という理解です。厚生年金は、雇用形態や労働時間の要件を満たしていれば、企業が加入手続きを行う義務がある制度です。パートタイムだからと厚生年金への加入手続きを怠っていた場合、それは本人の問題ではなく、企業側の労務管理の不備という扱いになります。永住を見据えた社員がいるなら、まずは自社の社会保険適用状況に漏れがないか、確認しておく価値があります。

日本語能力要件:CEFR B1相当が新たに追加される見込み

もうひとつ見逃せないのが、日本語能力に関する要件です。改定案では、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)B1相当の日本語能力が、新たな要件として加わる見込みとされています。B1は「日常的な話題であれば、まとまった内容を理解し、自分の意見も述べられる」レベルで、これまで永住許可の審査で明確な日本語基準がなかったことを踏まえると、大きな変化です。

日本で長く働き、日本人の同僚とコミュニケーションを取りながら業務をこなしている社員であれば、自然とこのレベルに到達しているケースも多いはずです。ただし、業務が専門分野に閉じていて、日本語での会話機会が限られている職場だと、意識的に学習の機会を作らないと届きにくい水準でもあります。

とくに、社内の公用語が英語だったり、同じ国籍の同僚とばかり働いていたりする環境だと、日本での在留年数が長くても日本語力が伸びにくいケースがあります。技術力・専門性は申し分ないのに、日本語能力だけがネックで永住申請のタイミングを逃す、というのは企業にとっても本人にとっても大きな損失です。

日本語力が伸びやすい環境

日本人社員との日常的な会話機会がある/社内研修や日本語学習支援がある/日本語での業務報告・会議が中心

日本語力が伸びにくい環境

社内公用語が英語や母国語中心/同国籍の社員だけのチームで完結している/業務が専門分野に閉じていて雑談機会が少ない

要件ごとに異なる適用時期に注意

ここで整理しておきたいのが、要件ごとに適用時期が異なるという点です。ガイドライン全体の改定は2026年10月に予定されている一方、年金に関する要件は2027年4月からの適用が予定されています。10月に全部一斉に厳しくなるのではなく、段階的に要件が積み上がっていくイメージで捉えておくと理解しやすくなります。

要件 内容(方針・見込み) 適用時期
収入要件 日本人世帯の平均収入を継続的に上回る方針 2026年10月改定予定
日本語能力要件 CEFR B1相当が新たに加わる見込み 2026年10月改定予定
年金要件 厚生年金30年加入相当の受給見込額 2027年4月適用予定

いずれの要件も、まだパブリックコメント段階・方針段階の情報を含みます。正式決定次第、当事務所でも改めてご案内しますので、現時点では「この方向に進んでいる」という前提で準備を進めておくのが現実的です。

「2027年4月まで待てばいい」と考えるのは早計です。年金は加入期間が要件になる以上、短期間で積み上げられるものではありません。今から2027年4月までの期間は、社員の厚生年金加入状況を積み上げていく大事な準備期間だと捉えておいたほうがいいでしょう。

技人国・特定技能から永住までの道のり

ここで少し視点を引いて、外国人社員が永住にたどりつくまでの一般的な道のりを整理しておきます。多くのケースでは、留学から技人国への切替、あるいは特定技能からの移行を経て、10年前後の在留を積み重ねたうえで永住許可の申請にいたります。

この一連の流れを企業側から見ると、採用してからずっと関わり続ける長い付き合いということになります。技人国の要件・更新のポイントは技術・人文知識・国際業務ビザとは、特定技能1号・2号の違いは特定技能1号と2号の違いで解説しています。永住はこの道のりの「最終目的地」の一つですが、そこにたどりつくまでの各段階で、企業側の対応がずっと積み重なっていくことになります。

どんな社員が影響を受けやすいか

すべての外国人社員が、今回の改定案の影響を等しく受けるわけではありません。とくに意識しておきたいのは、次のような立場の社員です。

  • 技人国・特定技能2号など、長期的な就労が見込める在留資格で働いており、すでに永住取得を視野に入れている社員
  • 在留期間が10年に近づきつつあり、数年以内に永住許可を申請したいと考えている社員
  • 扶養家族がいて世帯全体の収入水準が見られる可能性がある社員
  • 業務上、日本語を使う機会が少ない専門職の社員

こうした社員がいる企業ほど、収入・年金・日本語という3つの要件を早めに意識しておく価値があります。逆に、まだ入社間もない社員や、そもそも永住を希望していない社員については、現時点で急いで対応する必要はありません。優先順位をつけて、必要な社員から順にサポートしていくのが現実的なアプローチです。

人事担当者としては、社員一人ひとりに「永住を目指しているか」を丁寧にヒアリングするところから始めるのがおすすめです。本人にその意思があるかどうかで、企業側がどこまでサポートすべきかも変わってきますし、本人にとっても、会社が将来を一緒に考えてくれているという安心感につながります。

ヒアリングの際は、「なぜ永住を考えているのか」「日本での生活をどう見据えているのか」といった本音の部分まで聞けると理想的です。制度上の要件だけを一方的に説明するより、本人の希望を先に聞いたうえで、それに合わせて会社側ができることを提案するほうが、結果的に納得感のあるサポートになります。

永住を見据えて長期雇用したい企業が今からできること

優秀な外国人社員に長く働いてもらいたい、いずれは永住も取らせてあげたい。そう考えている企業は、改定案の内容を踏まえて、次のことに今から取り組んでおくといいでしょう。

  • 給与水準の見直し:日本人世帯の平均収入という基準を意識し、長期的に見て見劣りしない給与設計になっているか確認する
  • 社会保険・年金の適正な加入:厚生年金への加入漏れや保険料の滞納がないか、労務担当と一緒に確認する
  • 日本語学習の機会の提供:業務上の必要性だけでなく、永住を見据えた日本語力の底上げとして、学習支援や研修の機会を用意する
  • 納税状況の確認:住民税・所得税の納付状況も永住審査で重視される項目なので、給与担当と連携して滞納がないか確認する
要件 企業ができるサポート例
収入 昇給・評価制度の見直し、長期雇用社員への手当検討
年金・社会保険 加入状況の点検、労働時間管理の適正化、未加入者の洗い出し
日本語能力 日本語研修の費用補助、日本人社員との交流機会の創出
納税 住民税の特別徴収の徹底、納付状況の定期確認

これらはすべて「永住のためだけ」にやることではありません。給与水準を整え、社会保険をきちんと適用し、日本語学習を支援することは、そのまま社員の定着・満足度にもつながります。永住を見据えた準備は、結局のところ、いい会社であるための土台づくりでもあります。

永住を含めた在留資格全般の企業側の実務対応については、当事務所の関連ブログ記事でも詳しく解説しています。制度改正の動きは今後も出てくるので、こまめにチェックしておくことをおすすめします。関連するコラム一覧

正式決定を待つあいだ、企業がやってはいけないこと

最後に一つ、注意しておきたいことがあります。改定案の内容を見て、「どうせ厳しくなるなら、うちの社員はもう永住は無理だろう」と決めつけて、準備そのものを諦めてしまうのは早計です。パブリックコメントを経て正式に決定するまでにはまだ時間がありますし、細部が変わる可能性も十分あります。

逆に、「まだ決まっていないから何もしなくていい」と考えるのも得策ではありません。給与水準の見直しや社会保険の適正化、日本語学習の支援は、永住許可の要件がどう固まろうと、社員の定着・満足度を高めるという意味で無駄になることはありません。方向性が見えている今だからこそ、できる範囲で動き出しておいたほうが、結果的に得をするという理屈です。

よくある質問

Q. 永住許可の収入要件はどう変わりますか?

出入国在留管理庁が公表した改定案では、日本人世帯の平均収入を継続的に上回っていることを収入要件とする方針が示されています。まだ改定案の段階なので、正式決定次第、当事務所でも改めてご案内します。

Q. 年金や日本語能力も要件になるのですか?

改定案では、厚生年金30年加入相当の年金受給見込額と、CEFR B1相当の日本語能力が新たな要件として追加される見込みです。年金に関する要件は2027年4月からの適用が予定されています。

Q. 改定はいつから始まりますか?

永住許可ガイドラインの改定は2026年10月の実施が予定されています。ただし年金に関する要件は2027年4月からの適用予定とされており、要件ごとに時期が異なる点に注意が必要です。

Q. 今から社員のために企業ができることはありますか?

収入水準の見直し、納税・社会保険料の適正な支払いのサポート、日本語学習の機会の提供などが挙げられます。永住を見据えて長期雇用したい社員がいるなら、早めに環境を整えておくことをおすすめします。

Q. 現行の永住許可の要件はどうなっていますか?

現行の永住許可は、原則として引き続き10年以上の在留、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有することなどが主な要件です。今回の改定案は、この枠組みをベースに、収入・年金・日本語能力の基準をより具体的かつ厳格にする方向性です。

まとめ

永住許可の要件は、収入・年金・日本語能力のすべてで厳格化される方向に進んでいます。まだ改定案・方針段階の部分もありますが、「継続的な収入」「厚生年金への確実な加入」「一定の日本語能力」という軸そのものは変わらないとみていいでしょう。社員に長く活躍してもらい、いずれ永住も見据えているなら、給与・社会保険・日本語学習の環境整備を、今のうちから始めておく価値があります。

正式なガイドラインが確定するまでは、断定的なことは言えません。しかし、「決まってから慌てて動く」より「方針が見えている今のうちに、できることから手をつけておく」ほうが、結果的に社員にとっても企業にとってもいい選択になります。永住は、社員にとって人生の大きな節目です。企業としてそこに寄り添える体制を、今から少しずつ整えておいてください。

制度が変わるたびに一喜一憂するのではなく、日頃から給与・社会保険・日本語支援といった基本を丁寧に積み重ねておく。それが、永住許可という一つのゴールにも、社員の定着というもう一つのゴールにも、いちばん確実に近づく方法です。

依頼するかどうかで迷っている方は在留資格の申請は行政書士に依頼すべきかと行政書士に依頼する費用の相場も参考にしてください。