外国人の住民税は、日本人と同じく、1月1日に日本に住所がある人に前年の所得をもとに課税され、その年の6月から翌年5月までの12回で給与から天引きされます。来日した年の所得に対する住民税は翌年6月から始まるため、4月に入国した社員であれば、翌年5月までの約14か月間は住民税がかかりません。国籍を理由に免除される仕組みはなく、例外は、留学生や事業修習者などが租税条約で免除される場合と、所得が非課税の基準以下の場合に限られます。
住民税がかかるかは「1月1日の住所」で決まる
住民税(市町村民税と道府県民税)は、市町村内に住所を有する個人に課税されます(地方税法294条1項1号)。ここでいう住所を有する個人とは、住民基本台帳法の適用を受ける人であれば、その市町村の住民基本台帳に記録されている人を指します(同条2項)。在留カードを受け取った中長期在留者は、住居地の届出をした時点で住民票が作られるため、日本人と同じ基準で住民税の対象になります。
課税の基準日は1月1日です(地方税法318条)。1月1日に住民票がある市町村が、前年1年間の所得に対して、その年度の住民税を課税します。この仕組みから、次の3つのことが導かれます。
- 1月1日に日本に住所がなければ、その年度の住民税はかからない
- 1月1日に住所があれば、1月2日以降に出国しても、その年度の住民税は全額かかる
- 課税されるのは前年の所得で、6月から翌年5月にかけて納める
所得税は給与を払うたびに源泉徴収される「今年の税金」であるのに対し、住民税は1年遅れで請求される「去年の税金」です。外国人社員が戸惑うのは、この時間差を事前に知らされていないことがほとんどです。
来日1年目の住民税がゼロになる理由
来日した年は、入国日より前の1月1日には日本に住所がありません。そのため、来日した年度の住民税は課税されず、給与からの天引きも発生しません。来日した年に日本で得た給与には、翌年1月1日の住所地で翌年度分として課税されます。
2026年4月1日に入国し、4月から働き始めた社員の例で整理します。
| 時期 | 住民税の動き |
|---|---|
| 2026年4月〜12月 | 住民税の天引きなし(2026年度は課税対象外) |
| 2027年1月1日 | 日本に住所があるため、2027年度の納税義務が確定 |
| 2027年1月31日まで | 会社が給与支払報告書を住所地の市町村に提出 |
| 2027年5月31日まで | 市町村が特別徴収税額を会社と本人に通知 |
| 2027年6月〜2028年5月 | 2026年4〜12月の所得に対する住民税を12回で天引き |
給与支払報告書の提出期限は地方税法317条の6第1項、特別徴収税額の通知期限は同法321条の4第2項、6月から翌年5月までの12回で天引きして翌月10日までに納入する仕組みは同法321条の5第1項に定められています。
この例では、2026年4月から2027年5月までの14か月間、住民税の天引きがありません。2027年6月の給与から突然手取りが減るため、本人は「給料が下がった」と感じます。入社時の説明で、住民税は翌年6月から始まることと、おおよその月額を伝えておくと、6月の問い合わせはかなり減ります。
逆に、12月に入国して1月1日を日本で迎えた人は、翌年度に前年12月の1か月分の所得に対する住民税がかかります。所得が非課税の基準以下なら課税されませんが、均等割だけかかることもあり、入国のタイミングによって「1年目がゼロ」とは限らない点に注意してください。
2年目の住民税はいくらか|月給25万円の試算
2026年4月入国・月給25万円(賞与なし)の社員が、2027年6月から納める2027年度の住民税を試算します(筆者試算・概算)。
- 2026年の給与収入:25万円×9か月=225万円
- 給与所得控除:225万円×30%+8万円=75.5万円、給与所得は149.5万円
- 社会保険料控除:約33.8万円(給与の15%と仮定)
- 基礎控除(住民税):43万円
- 課税所得:約72.7万円
- 所得割:72.7万円×10%-調整控除2,500円=約7.0万円
- 均等割:5,000円(市町村民税3,000円・道府県民税1,000円・森林環境税1,000円)
年額は約7.5万円、月額にすると約6,300円です。3年目は1年分(300万円)の所得が対象になるため、同じ条件なら年額約11.6万円、月額約9,700円に上がります。扶養する家族がいる場合や、国外の親族を扶養控除に入れている場合は金額が下がります。控除額は税制改正で変わることがあるため、実際の額は5月に届く特別徴収税額の決定通知書で確認してください。
住民税の所得割の税率は、市町村民税6%・道府県民税4%の合計10%が標準です。国籍や在留資格によって税率が変わることはありません。
外国人は住民税を免除されるのか
住民税を免除される外国人は、次のいずれかに当たる人に限られます。
- 前年の所得が、住所地の市町村が定める非課税の基準以下の人
- 租税条約により、一定の所得が日本で免税とされる人
- 1月1日に日本に住所がなかった人(課税の対象外)
1と3は日本人にもそのまま当てはまる規定で、外国人だけの特例ではありません。外国人特有の免除は、2の租税条約だけです。「外国人は住民税を払わなくてよい」という話を聞いた社員がいたら、租税条約の対象か、単に1年目で課税されていないだけかを確認してください。
租税条約で住民税が免除される人と届出
日本が結んでいる租税条約の多くには、留学生・事業修習者(企業での訓練を受ける人)・教授等について、一定の報酬や給付を免税とする条項があります。対象となる所得の範囲は条約ごとに違います。
国税庁の質疑応答事例は、次の2つを対比して示しています。
- 中国から来日した大学生:日中租税協定21条により、生計・教育のために受け取る給付または所得は免税。日本での生活費や学費に充てる程度のアルバイト代は免税になる
- インドから来日した大学生:日印租税条約20条の免税は、日本の国外から支払われる給付に限られる。日本でのアルバイト代は免税にならない
同じ「留学生」でも、国籍によって結論が正反対になります。また、国税庁の質疑応答事例「専修学校等の就学生に対する免税条項の適用の是非」は、日本語学校などの専修学校・各種学校の就学生には条約の学生・事業修習者の免税条項を適用しないとしています。日本語学校に通う留学生のアルバイト代は、中国出身であっても免税の対象にならないと考えて準備してください。事業修習者や研修生についても、条約ごとに免税となる期間や金額の範囲が違います。技能実習生や研修生の手当が条約上の免税に当たるかどうかは、条約の条文と在留資格ごとの活動の実態で判断が分かれるため、個別に税務署へ確認してください(公式資料では未確認)。
所得税の届出だけでは住民税は免除されない
手続で最も多い誤りは、所得税の租税条約の届出書を出したことで、住民税も自動的に免除されると考えてしまうことです。
所得税の免除を受けるには、「租税条約に関する届出書(教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者の報酬・交付金等に対する所得税及び復興特別所得税の免除)」を、入国後最初に報酬の支払を受ける日の前日までに、支払者(アルバイト先の会社など)を経由して、支払者の所轄税務署に提出します(国税庁 A3-11)。在学証明書などの添付が必要です。
住民税の免除は、これとは別に、住所地の市町村へ届出を出す必要があります。神戸市(2026年2月3日更新)は、神戸市様式の届出書に、税務署様式の届出書の写し、在留カードやパスポート、在学証明書などを添えて、毎年3月15日までに提出するよう案内しており、「税務署へ提出される所得税の租税条約に関する届出だけでは、住民税の課税免除の適用は受けられません」と明記しています。厚木市、大阪市、大府市など多くの自治体が同じ趣旨の案内を出しています。様式や添付書類は自治体ごとに違うため、住所地の市区町村のページで確認してください。
期限が3月15日で、しかも毎年必要という点が実務上の落とし穴です。中国籍の留学生をアルバイトで雇っている会社は、年末調整や給与支払報告書の時期に、本人へ住民税の届出を済ませたかを一声かけておくと、6月に予想外の課税通知が届く事態を防げます。
留学生から就職した新卒社員の住民税
留学生が4月に就職した場合、就職した年の6月から、前年のアルバイト収入に対する住民税が給与天引きで始まります。アルバイトの年収が非課税の基準を超えていれば課税されるため、新卒でも1年目の6月から天引きがある、というケースが珍しくありません。
一方、前年に租税条約で住民税の免除を受けていた留学生は、就職後の給与には学生向けの免税条項が適用されなくなります。就職した年の所得は翌年度の住民税の対象になり、2年目の6月から天引きが本格化します。在留資格を留学から就労資格に変える手続は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイドで扱っています。
住民税の納付状況は在留審査でも見られる
住民税の課税証明書・納税証明書は、在留期間の更新や永住申請で提出を求められる書類です。更新の審査では、住民税が適正に納付されているかが確認され、未納があると「相当の理由」の判断で不利に働きます。考え方は在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています。
来日直後の更新では、1月1日に日本に住所がなかった年度の証明書は発行されません。入管の提出書類一覧は「1月1日現在お住まいの市区町村」から発行される証明書を求めているため、発行できない年度分をどう扱うかは、申請先の地方出入国在留管理局の案内に従うことになります(公式資料では未確認)。
住民税は特別徴収(給与天引き)であれば会社が納めるため、本人の滞納は起きにくい仕組みです。問題になりやすいのは、転職の空白期間に普通徴収(本人が納付書で納める方法)へ切り替わったときと、退職して帰国するときです。総務省の調査では、2024年度分について、日本で働いた後に出国した外国人の住民税の滞納額割合が18.6%で、日本人を含む出国者全体の4.6%を大きく上回ったと報じられています(共同通信、2026年8月14日)。帰国時の一括徴収と納税管理人の手続は外国人の住民税は帰国後どうなる?退職時の一括徴収と納税管理人【計算例つき】で扱っています。
よくある質問
外国人労働者は住民税を納めなければならないのですか?
1月1日に日本に住所がある外国人は、日本人と同じ基準で住民税を納めます。在留資格や国籍による免除はありません。免除されるのは、所得が非課税の基準以下の場合と、租税条約で一定の所得が免税になる場合です。
住民税は来日してからいつから引かれますか?
来日後に初めて迎える1月1日の翌年度分から課税され、その年の6月の給与から天引きが始まります。2026年4月に入国した人なら、2027年6月からです。
日本に1年未満しかいない外国人にも住民税はかかりますか?
滞在期間の長さで決まるわけではありません。滞在が1年未満でも、途中で1月1日を日本で迎え、住民票があれば、その年度の住民税がかかります。逆に、4月に入国して12月に出国すれば、1月1日に住所がないため住民税はかかりません。
外国人実習生は住民税を払わなくてはいけませんか?
技能実習生も、1月1日に住所があれば住民税の対象です。雇用契約に基づいて給与を受け取る以上、日本人の従業員と同じく特別徴収で天引きされます。出身国との租税条約に研修生・事業修習者の免税条項がある場合でも、技能実習の給与が対象になるかは条約ごとに確認が必要です。
一時帰国した場合、住民税はどうなりますか?
再入国許可(みなし再入国許可を含む)で一時的に出国し、住民票を残したまま1月1日を国外で過ごしても、住所は日本にあるものとして扱われるのが通常です。住民税は通常どおり課税されます。
入社時の説明に「6月」を入れておく
外国人社員の住民税で会社が押さえるべき点は、課税が1年遅れで始まること、免除は租税条約による例外だけであること、帰国時に残りの納付が必要になることの3つです。どれも、制度を知っていれば本人が予定を立てられる内容で、知らなければ給与明細を見て初めて気づくことになります。
筆者は、入社時の労働条件の説明に「住民税は翌年6月から天引きが始まり、月額はおおよそこのくらいになる」という1行と、留学生出身者には「租税条約の届出は毎年3月15日まで」という1行を加えることを勧めます。所得税・社会保険を含めた税の全体像は外国人労働者の税金の基本|所得税・住民税の居住者判定と企業の源泉義務で整理しています。
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根拠資料
- 地方税法(e-Gov法令検索)294条・317条の6・318条・321条の4・321条の5
- 学生のアルバイト代(国税庁 質疑応答事例)
- A3-11 租税条約に関する届出(教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者)(国税庁)
- 租税条約による住民税(市県民税)の免除(神戸市・2026年2月3日更新)
- 市民税・府民税における租税条約の適用について(大阪市)
- 市民税・県民税(住民税)における租税条約の適用について(厚木市)
- 外国人、出国後住民税18%未納 制度周知が不十分(秋田魁新報・共同通信配信、2026年8月14日)
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