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外国人労働者の税金の基本|所得税・住民税の居住者判定と企業の源泉義務

外国人労働者の税金は、国籍では決まりません。所得税は、その人が所得税法上の「居住者」「非永住者」「非居住者」のどれに当たるかで課税の範囲と源泉徴収の方法が変わり、住民税は、1月1日に日本に住所があるかどうかで課税の有無が決まります。日本で1年以上働く予定で入国した外国人は、入国した日から居住者と推定され、日本人社員と同じく源泉徴収税額表で源泉徴収し、年末調整の対象になります。

外国人労働者にかかる税金の全体像

日本で働く外国人に給与から差し引かれる税金は、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の2つです。どちらも会社が給与から天引きして納める仕組みで、外国人だからといって免除や特別な税率が一般的にあるわけではありません。

税金 課税を決める基準 会社の役割
所得税・復興特別所得税 居住者・非永住者・非居住者の区分(所得税法2条1項3号〜5号) 毎月の給与から源泉徴収し、翌月10日までに納付。居住者は年末調整
住民税(道府県民税・市町村民税) 1月1日(賦課期日)に市区町村に住所があるか(地方税法318条など) 市区町村から通知された税額を毎月の給与から特別徴収して納付

ここで重要なのは、二つの税金で判定の基準がずれている点です。所得税は、その年に日本で得た給与に、その月ごとに源泉徴収がかかります。住民税は、前年の所得に対して、その年の1月1日に住んでいる市区町村が課税します。このずれが、「来日1年目は住民税がない」「帰国した翌年に住民税が残る」という外国人雇用に特有の現象を生みます。

外国人本人から見ると、税金の不払いは在留資格の問題に直結します。在留期間の更新や永住申請では、住民税の課税証明書と納税証明書が提出書類になり、未納があると審査で消極的に評価されます。その仕組みは在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています。

所得税の3区分|居住者・非永住者・非居住者

所得税法は、個人を居住者と非居住者に分け、居住者の中に非永住者という区分を置いています(国税庁タックスアンサーNo.2010、令和8年4月1日現在法令等)。

ここでいう居住者とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を指します。住所は「個人の生活の本拠」で、客観的な事実で判定されます。居所は、生活の本拠ではないが現実に住んでいる場所です。

非永住者とは、居住者のうち、日本国籍がなく、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の人です。来日して5年以内の外国人社員の多くはこれに当たります。

非居住者は、居住者以外の個人です。

区分 課税される所得の範囲 給与の源泉徴収 年末調整
非永住者以外の居住者 国内・国外のすべての所得 源泉徴収税額表(甲欄・乙欄) 対象
非永住者 国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち国内で支払われたもの・国内に送金されたもの 源泉徴収税額表(甲欄・乙欄) 対象
非居住者 国内源泉所得のみ 原則20.42%の定率 対象外

会社の給与計算に直接関わるのは、居住者(非永住者を含む)か非居住者かの区別です。非永住者であるかどうかは、日本の会社から受け取る給与の源泉徴収には影響しません。非永住者であることの影響は、本国の預金利子や不動産収入など国外の所得をどこまで日本で課税するかに表れ、本人が確定申告をする場面の論点です。

入国1年目の外国人は居住者か|住所の推定

「1年以上居所を有する」という定義だけを読むと、入国して1年たっていない外国人は非居住者のように見えます。実務で判定を決めるのは、所得税法施行令14条の住所の推定規定です。

国税庁の「別紙 住所の推定」(令和8年4月1日現在法令等)によると、国内に居住することになった個人が、国内において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、その人は国内に住所を有する者と推定されます。さらに所得税基本通達3-3は、国内で職業に従事するために居住することになった人は、在留期間が契約等によってあらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、この「1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」者に当たるとしています。

つまり、期間の定めのない雇用や1年以上の雇用契約で働き始めた外国人は、入国した日から居住者です。逆に、雇用契約が当初から1年未満と決まっている人は、原則として非居住者として扱われます。居住期間の1年は、入国した日の翌日から起算します。

判定は、事情の変化があったときにやり直します。国税庁の質疑応答事例は、1年未満の予定で入国した人が、その後の事情の変更で1年以上勤務することが明らかになった場合、その明らかになった日以後は居住者になり、入国時に遡って居住者になることはないとしています。

技能実習生の具体例|1号だけで帰国する人は非居住者

国税庁は、この推定規定を技能実習生に当てはめた事例を公表しています。技能実習1号のみを予定し、2号へ移行せずに帰国する実習生(入国X1年8月20日、在留期間満了X2年8月20日、入国後講習X1年8月21日〜9月20日、雇用契約X1年9月21日〜X2年8月20日)について、国税庁は「一般的には非居住者に該当します」と回答しています。

理由は、1年以上居住するという要件が、入国日の翌日から起算して1年を経過する日を超えて国内に居住する場合に満たされるところ、この実習生は満了日までに帰国する予定で、要件を満たさないからです。入国後講習も「職業」に含めて考えるとされています。

この事例から、技能実習生の判定の分かれ目が見えます。1号で1年以内に帰国する予定なら非居住者、2号・3号への移行を予定して1年を超えて在留する予定なら、入国の日から居住者と推定される、という整理です。「技能実習生はすべて居住者」とも「すべて非居住者」とも言えないため、受入れ時の実習計画で判断します。

在留資格と在留期間から判定する実務フロー

居住者の判定は、最終的には生活の実態で行われます。ただ、採用の時点で会社が手元に持っている情報は、在留カード、雇用契約書、実習計画などです。この情報から判定するには、次の順番で確認するのが実務的です。

  1. 日本国内に生活の本拠(住所)があるかを見る。永住者、日本人の配偶者等、定住者などで、家族と日本で暮らし、住民票がある人は、通常この段階で居住者と判定できる
  2. 住所がはっきりしない場合は、雇用契約の期間を見る。期間の定めがない、または1年以上であれば、入国の日から居住者と推定される(所得税法施行令14条、所得税基本通達3-3)
  3. 雇用契約が当初から1年未満と決まっている場合は、原則として非居住者。入国の日の翌日から1年を超えて引き続き居所を有することになった時点から居住者になる
  4. 契約の延長や短縮があった場合は、その時点で判定をやり直す。遡って区分を変えることはない
  5. 居住者と判定した人について、過去10年の国内居住期間が5年以下なら非永住者に当たることを記録しておく

在留カードの在留期間が「1年」だから非居住者、という判定は誤りです。在留期間は入管法上の許可の期間で、更新を前提に1年で許可されることもあります。所得税法の判定は、雇用契約の期間と生活の実態で行います。

在留資格ごとの典型的な判定を並べると、次のようになります。

  • 技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、介護などで、期間の定めのない雇用または1年以上の雇用契約:入国の日から居住者
  • 技能実習1号のみで1年以内に帰国する予定:一般的に非居住者(国税庁の事例)
  • 技能実習2号以上へ移行して1年を超えて在留する予定:入国の日から居住者と推定
  • 留学:1年以上の課程に在籍する予定であれば、通常は住所を有する者として居住者
  • 企業内転勤で、海外の親会社から1年未満の予定で出向してくる:原則として非居住者
  • 永住者、日本人の配偶者等、定住者:生活の本拠が日本にあるため、通常は居住者

判定が微妙な場合は、個別の事情で結論が分かれるため、所轄の税務署や税理士に確認してください。

企業の源泉徴収義務|居住者と非居住者で方法が違う

給与を支払う会社は、支払のたびに所得税を源泉徴収し、原則として翌月10日までに納付する義務を負います。外国人社員の場合、方法は区分によって二つに分かれます。

居住者(非永住者を含む)への給与

日本人社員と同じく、源泉徴収税額表を使います。本人から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けていれば甲欄、提出がなければ乙欄で計算します。乙欄は甲欄より税額が高く、年末調整の対象にもなりません。外国人社員に申告書の意味が伝わらず提出されないまま乙欄で計算していた、というのは起こりやすい誤りです。入社時に母国語の説明を添えて提出を受けるようにしてください。

国外に住む親族を扶養控除の対象にする場合は、親族関係書類と送金関係書類の提出が必要です。年末調整の具体的な手順と、国外居住親族の書類の要件は外国人の年末調整|居住者・非居住者の判定と扶養控除申告書の書き方【令和8年分】で扱っています。

非居住者への給与

非居住者に支払う給与のうち、日本での勤務に対応する部分は国内源泉所得に当たり、原則として20.42%の税率で源泉徴収します。扶養控除や基礎控除は適用されず、年末調整もありません。20.42%で源泉徴収すれば課税は完結し、本人の確定申告も原則として不要です。

2027年1月1日以後は、防衛特別所得税(所得税額の1%)が創設され、復興特別所得税が1.1%に下がります。合計の税率は所得税率に102.1%を掛けたものとなり、非居住者の20.42%は据え置かれます(国税庁「源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後)」)。

非居住者分の源泉所得税には、納期の特例(半年ごとの納付)が使えません。所得税法216条の納期の特例は「居住者に対し」支払う給与等に限られているためです。納付書も「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」を使います。帰国した元社員に支払う賞与や退職金の扱いは非居住者の源泉徴収|帰国後の外国人社員に払う給与・賞与は20.42%にまとめています。

源泉徴収を誤ったときの会社のリスク

居住者・非居住者の区分を誤ると、源泉徴収の不足が生じます。源泉徴収義務は会社に課されているため、不足分は会社が納付しなければならず、法定納期限までに納付しなかった場合は不納付加算税と延滞税の対象になります。本人から後で回収できるかどうかは、会社と本人の間の問題として残ります。退職して帰国した人からの回収は、現実には難しいと考えておくべきです。

住民税の基本|1月1日の住所と特別徴収

住民税は、その年の1月1日に住所がある市区町村が、前年の所得に対して課税します(地方税法318条)。所得税の居住者判定とは別の基準です。

この仕組みから、外国人雇用で次の三つの場面が生まれます。

一つ目は、来日1年目は住民税がかからないことです。1月1日の時点で日本に住所がなければ、その年度の住民税は課税されません。来日2年目の6月から、1年目の所得に対する住民税の天引きが始まり、手取りが急に減ります。入社時にこの点を説明しておかないと、「給料が下がった」という誤解の原因になります。

二つ目は、会社の特別徴収義務です。給与を支払う事業者は、原則として従業員の住民税を毎月の給与から差し引いて納める義務を負います。外国人社員であることを理由に普通徴収(本人納付)に切り替えると、納付漏れが起き、本人の在留期間の更新に影響します。

三つ目は、退職・帰国時の残額です。1月1日から4月30日までに退職する場合、5月31日までに支払う給与や退職手当が残りの税額を超えるときは、残額を最後の給与から一括徴収します(地方税法321条の5第2項)。6月以降の退職では、本人の申出があれば一括徴収できます。一括徴収できないまま出国する場合、本人は納税管理人を定めて市区町村に届け出る必要があります。

租税条約で免税になる場合

外国人労働者の所得税が免除されるのは、主に租税条約の適用がある場合です。代表的なのは次の二つです。

一つは、留学生や事業修習者の免税です。条約の相手国によっては、学生が生計・教育のために受け取る給付や、事業修習者(研修生など)が受け取る給与の一部が、一定の期間と金額の範囲で免税になります。対象の範囲は条約ごとに異なり、免税を受けるには「租税条約に関する届出書」を給与の支払者を経由して税務署に提出します。なお、日本語学校などの専修学校・各種学校の就学生には、学生・事業修習者の免税条項は適用されないとするのが国税庁の質疑応答事例の立場です。

もう一つは、短期滞在者の免税(いわゆる183日ルール)です。海外の会社に雇用されたまま日本で短期間働く人について、滞在日数が一定期間で183日以下であること、給与が日本の会社から支払われないことなどの条件を満たせば、日本での課税が免除されます。日本の会社に雇用されて給与を受ける外国人社員には、通常この免税は適用されません。

租税条約の免税は、届出書を出して初めて源泉徴収段階で適用されます。国ごとの条文の違いが大きいため、該当しそうな場合は条約の本文と国税庁の資料で個別に確認してください。免税の範囲の細部は(公式資料では未確認)として、税理士への確認を前提に扱うのが安全です。

よくある質問

外国人労働者は所得税を免除されますか?

原則として免除されません。居住者であれば日本人と同じく源泉徴収と年末調整の対象で、非居住者であれば20.42%で源泉徴収されます。免除されるのは、租税条約で留学生・事業修習者・短期滞在者などの免税が定められ、届出書を提出した場合などに限られます。

外国人の所得税はいくらですか?

居住者であれば日本人と同じ税率(5%〜45%の累進税率に復興特別所得税を加えたもの)で、毎月の源泉徴収は源泉徴収税額表によります。非居住者の給与は、原則として支払額の20.42%です。

外国人留学生のアルバイト代には所得税はかかりますか?

かかります。1年以上の課程に在籍する留学生は通常は居住者で、扶養控除等申告書を出していれば甲欄、他のアルバイト先に出していれば乙欄で源泉徴収します。国によっては租税条約で免税になる場合があり、その場合は届出書の提出が必要です。

外国人が帰国して給与をもらう場合、所得税はどうなりますか?

出国した日から非居住者になるため、出国後に支払う日本勤務分の給与や賞与は、原則20.42%で源泉徴収します。出国の日までに支払う最後の給与で年末調整を行います。

外国人技能実習生の所得税はどうなりますか?

実習計画で判断します。国税庁の事例では、技能実習1号のみで1年以内に帰国する予定の実習生は一般的に非居住者とされています。2号以上に移行して1年を超えて在留する予定であれば、入国の日から居住者と推定されます。

区分の判定を採用時の手続に組み込む

外国人労働者の税金は、制度として日本人と別の税があるわけではありません。違いは、所得税の居住者判定と住民税の1月1日基準という二つの物差しが、入国・帰国のタイミングで日本人社員にはない形で効いてくることです。判定を誤った場合の源泉徴収の不足は、会社の負担になります。

人事・経理の担当者が整えるべきなのは、採用時に居住者か非居住者かを判定し、その根拠(雇用契約の期間、実習計画、住民票の有無)を記録しておく仕組みです。契約の延長や帰国の予定が変わったときに判定をやり直すルールも、同じ台帳で管理できます。住民税の天引きの開始時期と帰国時の一括徴収を、入社時と退職時の説明に入れておけば、本人の在留期間の更新で税の問題が出ることも防げます。社会保険料の滞納が在留に与える影響は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?で解説しています。

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