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非居住者の源泉徴収|帰国後の外国人社員に払う給与・賞与は20.42%

退職して母国へ帰った外国人社員に、出国後に最終給与や賞与、退職金を支払う場合は、日本で働いた期間に対応する部分を国内源泉所得として20.42%の税率で源泉徴収します。源泉徴収税額表の月額表や扶養控除は使わず、支払金額にそのまま税率を掛けます。納付には「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」を使い、支払った月の翌月10日が期限です。税率も納付書も普段の給与とは別物になるため、帰国者が出るたびに給与担当者が迷う論点を、支払の種類ごとに整理します。

出国した翌日から「非居住者」になる

所得税法は、日本国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人を居住者とし、それ以外の個人を非居住者としています(所得税法2条1項3号・5号)。ここでいう住所とは、生活の本拠を指します。退職して帰国する外国人社員は、日本での住まいを引き払い、生活の本拠を母国へ移すため、出国の翌日から非居住者として扱われるのが通常です。

源泉徴収で重要なのは、居住者か非居住者かを「支払う時点」で判定することです。同じ3月分の給与でも、出国前の3月25日に払えば居住者への給与として月額表で源泉徴収し、出国後の4月25日に払えば非居住者への給与として20.42%で源泉徴収します。働いた期間ではなく、支払日によって手続が変わる、という点がこの論点の出発点になります。

非居住者に課税されるのは、国内源泉所得に限られます。給与については、日本国内で行った勤務に基因するものが国内源泉所得です(所得税法161条1項12号イ)。日本で働いた分の給与を帰国後に受け取る場合は、国内源泉所得に当たります。

20.42%の内訳と、令和9年1月以後も変わらない理由

非居住者に支払う給与の源泉徴収税率は、所得税20%です(所得税法213条1項1号)。これに所得税額の2.1%相当の復興特別所得税が加わり、合計20.42%になります。

2027年(令和9年)1月1日以後は、防衛特別所得税(所得税額の1%)が創設され、復興特別所得税の税率が1.1%に下がります。国税庁の「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」は、合計税率を所得税率×102.1%とし、所得税率20%なら20.42%と示しています。税率の数字は変わりませんが、納付書には防衛特別所得税の非課税該当欄が加わるなど、様式の扱いが変わるため、2027年以後の納付では最新の様式を使ってください。

支払の種類ごとの判定|最終給与・賞与・退職金

帰国者に出国後払うものは、多くの場合、最終給与、賞与、退職金の3つです。判定の考え方はそれぞれ違います。

支払の種類 国内源泉所得になる部分 税率
最終月の給与 計算期間の全部が国内勤務なら全額 20.42%
賞与 計算期間のうち国内勤務の期間に対応する部分 20.42%
退職金 居住者だった期間の勤務に対応する部分 20.42%(選択課税で精算可)

最終月の給与は全額が対象になるのが通常

3月31日に退職し、4月5日に出国した社員に、3月分の給与を4月25日に支払う例で考えます。3月1日から31日までの勤務はすべて日本国内で行っているため、支払額の全額が国内源泉所得となり、20.42%で源泉徴収します。

国税庁の所得税基本通達212-5は、給与の計算期間の中途で非居住者となった人について、計算期間が1か月以下なら、その給与を国内源泉所得に該当しないものとして扱ってよいとしています。ただし、同通達はその給与の全額が国内勤務に対応する場合を除いています。帰国して退職する社員の最終給与は、計算期間の全部を日本で働いているため、この取扱いの対象になりません。海外転勤者向けの扱いを帰国者に当てはめてしまう誤りが起きやすい箇所です。

賞与は国内勤務の期間で按分する

賞与の計算期間の途中で出国した場合は、計算期間のうち国内で勤務した期間に対応する部分だけが国内源泉所得になります。所得税基本通達161-41は、国内勤務分を「給与の総額×国内において行った勤務の期間÷給与の総額の計算の基礎となった期間」で計算するとしています。

たとえば、計算期間が12月1日から5月31日までの夏季賞与を、3月31日に退職・出国した社員に6月に支払う場合、計算期間6か月のうち国内勤務は4か月です。ただ、退職後の4月・5月は勤務自体がないため、賞与規程が在籍期間で支給額を決めているなら、支給額そのものが4か月分として計算されているはずです。その場合は支給額の全額が国内勤務分となります。計算期間中に海外出張や海外勤務の期間が含まれていたときに、按分が実際に問題になります。

退職金は20.42%で源泉徴収し、本人が選択課税で精算できる

非居住者に支払う退職金は、居住者だった期間の勤務に対応する部分が国内源泉所得になります(所得税法161条1項12号ハ)。日本で入社し日本で勤務して退職した社員なら、退職金の全額が対象です。

居住者であれば退職所得控除を差し引いたうえで2分の1課税となるため、税額はかなり低くなります。非居住者への退職金は、こうした控除なしに支払額の20.42%を源泉徴収するため、居住者として受け取った場合より税負担が重くなるのが普通です。

この差を埋める制度が、退職所得の選択課税です(所得税法171条・173条)。本人は、翌年1月1日以後(その前に退職手当の総額が確定した場合はその日以後)に、退職金の総額を居住者として受け取ったものとみなして計算した税額を申告できます。源泉徴収された額との差額は還付されます。帰国後の本人が自分で手続するのは難しいため、出国前に納税管理人を決めておくよう案内しておくのが親切です。脱退一時金の還付手続と合わせて案内するなら脱退一時金の確定申告|20.42%源泉の還付を受ける方法と納税管理人も参考になります。

支払日を出国前にそろえる選択肢

帰国者の最終給与を出国前に支払えば、居住者への給与として通常どおり月額表で源泉徴収し、年末調整の対象にもできます。労働基準法23条は、労働者が退職した場合に請求があれば、使用者は7日以内に賃金を支払わなければならないと定めており、本人から帰国前の精算を求められたときに、通常の支払日を待たずに支払うことは法律上も予定されています。

月給25万円の社員を例にとると、非居住者として支払えば源泉徴収税額は5万1,050円(25万円×20.42%)になります。居住者として月額表で計算すれば、社会保険料を差し引いた後の金額と扶養親族の数に応じて、数千円程度にとどまることが多いはずです。帰国前に精算できるかどうかで本人の手取りは大きく変わるため、筆者は、退職日が決まった段階で、最終給与と残業代の締め・支払日を人事と給与担当で確認しておくことを勧めます。

年の中途で出国する社員については、出国の時までに支払う給与で年末調整を行う仕組みがあります(所得税法190条)。退職日と出国日の間が空く場合や、退職後に出国する場合にどこまで年末調整の対象にするかは、事情によって扱いが分かれるため、所轄の税務署に確認してください(公式資料では未確認)。

非居住者用の納付書の書き方

非居住者に支払った給与などの源泉徴収税額は、通常の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」とは別の「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」で納付します。税務署や金融機関の窓口で入手できるほか、e-Taxでも納付できます。

国税庁の記載要領に沿って、主な欄は次のように書きます。

  • 年度・納期等の区分:支払った国内源泉所得の年月を書く(記載漏れが多い欄)
  • 区分:コード表から該当するコードを選ぶ。給料・賞与は「31」
  • 支払年月日:実際に支払った日
  • 人員・支払額:その月の実人員と支払総額
  • 税額:支払額×20.42%(1円未満切捨て)
  • 合計額:記載漏れに注意

納付期限は、支払った月の翌月10日です。居住者の給与で使える納期の特例(半年ごとの納付)は、所得税法216条が「居住者に対し」支払う給与等に限っているため、非居住者に対する支払には使えません。そのため、帰国者に1人分でも支払った月があれば、その翌月10日までに納付する必要があります。社内の半年納付の運用にまぎれて、非居住者分の納付を忘れることがないよう注意してください。

源泉徴収票の代わりに支払調書を出す

非居住者となった後に支払った給与や退職金は、居住者に交付する給与所得の源泉徴収票には含めません。代わりに「非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を、翌年1月31日までに所轄の税務署へ提出します。提出を要しない金額基準については国税庁の手引きで確認してください(公式資料では未確認)。

出国前の居住者期間に支払った給与については、退職時または出国時に源泉徴収票を作成し、本人に渡します。帰国後に母国で就職先や税務当局から日本での所得証明を求められることもあるため、出国前に手渡すか、送付先のメールアドレスと住所を確認しておくと後の問い合わせが減ります。

租税条約で免除になる場面は限られる

非居住者への給与は、租税条約によって日本での課税が軽減・免除される場合があります。ただ、多くの条約の給与所得条項は、勤務が行われた国に課税権を認めています。日本で勤務した分の給与を帰国後に受け取る場合は、日本が課税権を持つため、20.42%の源泉徴収がそのまま残るのが通常です。

一方、条約の相手国によっては、学生・事業修習者の条項などで扱いが変わる場合があります。条約の適用を受けるには、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を支払者経由で所轄の税務署に出す必要があります。対象になりそうな場合は、国税庁の租税条約一覧で個別の条文を確認してください。

よくある質問

非居住者でも源泉徴収票は必要ですか?

非居住者になってから支払った給与は、源泉徴収票に含めず、支払調書の対象になります。ただし、出国前の居住者期間に支払った給与については、通常どおり源泉徴収票を作成して本人に交付します。1人の社員について、源泉徴収票と支払調書の両方が必要になる年もあります。

非居住者に対する源泉徴収率は20%ですか?

所得税の税率は20%ですが、復興特別所得税を加えた合計の源泉徴収税率は20.42%です。2027年1月以後は防衛特別所得税が加わる一方、復興特別所得税が1.1%に下がるため、合計は20.42%のまま変わりません。

非居住者の給与の源泉徴収の計算方法は?

支払金額に20.42%を掛けます。月額表のように社会保険料控除後の金額や扶養親族の数で税額を変える仕組みはありません。国内勤務と国外勤務が混じる場合は、国内勤務の期間で按分した金額に税率を掛けます。

非居住者の退職金の源泉徴収の税率は?

20.42%です。退職所得控除は適用されませんが、本人が翌年1月1日以後に退職所得の選択課税の申告をすれば、居住者として計算した税額との差額が還付されます。

帰国者が出たら、最初に支払日を確認する

非居住者の源泉徴収で起きる誤りの多くは、支払日と出国日の前後関係を確認しないまま、いつもの給与計算を流してしまうことから生じます。退職の申出を受けた時点で、最終給与・賞与・退職金のそれぞれについて、支払日が出国の前か後かを確認する。出国後になるものは20.42%で計算し、専用の納付書で翌月10日までに納め、翌年1月に支払調書を出す。この順番を社内の退職手続のチェックリストに組み込んでおけば、担当者が替わっても同じ処理ができます。

住民税は所得税と仕組みが違い、1月1日の住所地で翌年度分が課税されるため、別途の対応が必要です。帰国時の住民税の一括徴収と納税管理人については外国人の住民税は帰国後どうなる?退職時の一括徴収と納税管理人【計算例つき】で、退職時に会社が行う入管・ハローワーク関係の届出は外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続きで解説しています。税額の具体的な計算や租税条約の適用判断は、税理士または所轄の税務署に確認してください。

根拠資料


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