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外国人の住民税は帰国後どうなる?退職時の一括徴収と納税管理人【計算例つき】

外国人社員が帰国しても、住民税の納税義務は消えません。住民税は毎年1月1日時点で日本に住所がある人に、前年の所得をもとに課税される税金で、1月2日以降に出国しても、その年度分は全額を納める必要があります。会社としては、退職月に応じて最後の給与から残りを一括で差し引くか、本人に納税管理人を選んでもらうかのどちらかで、帰国後に未納が残らないようにしておくことになります。

住民税は「1月1日に日本に住んでいたか」で決まる

個人住民税の賦課期日は、地方税法318条により「当該年度の初日の属する年の一月一日」とされています。たとえば令和8年度(2026年度)の住民税は、2026年1月1日に日本に住所があった人に、2025年1年間の所得をもとに課税されます。税額は5月ごろに市区町村から会社へ通知され、特別徴収(給与天引き)の場合は6月から翌年5月までの12回に分けて差し引かれます。

この仕組みから、帰国のときに問題になる住民税は2種類あります。

1つは、今まさに給与から差し引いている年度の残りです。6月に始まった天引きは翌年5月まで続くため、年の途中で退職すると、退職月の翌月から5月までの分が残ります。

もう1つは、まだ税額が決まっていない翌年度分です。帰国が1月から5月の間であれば、その年の1月1日には日本に住んでいたため、前年1年間の所得に対する住民税が新たに課税されます。ところが税額が決まるのは5月から6月ごろで、本人はもう日本にいません。「帰国後も翌年分の住民税が残る」と言われるのは、このケースです。

逆に、6月から12月の間に帰国し、市区町村に転出届を出していれば、翌年1月1日には日本に住所がないため、その年の所得に対する住民税(翌年度分)は課税されません。帰国の時期が1月1日をまたぐかどうかで、残る税金の量が大きく変わるということです。

退職月で変わる一括徴収のルール

退職時に残った住民税をどう扱うかは、地方税法321条の5第2項が退職の時期で分けています。総務省の案内も同じ整理です。

退職した時期 残りの住民税の扱い
1月1日〜4月30日 5月までの残額を、最後の給与や退職手当から一括徴収する(本人の申出は不要)
5月 その月の分で天引きが終わるため、残額は生じない
6月1日〜12月31日 本人の申出があれば一括徴収する。申出がなければ普通徴収(本人が納付書で納める)に切り替わる

1月から4月の退職で一括徴収が義務になるのは、5月31日までに支払う給与や退職手当が、残りの月割額の合計を超える場合に限られます。最後の給与が少なく全額を差し引けないときは、差し引けた分を納め、残りは普通徴収に回ります。

6月から12月の退職では、一括徴収は本人の申出が前提です。帰国する外国人社員の場合、普通徴収に切り替わると、納付書が本人の日本の住所に届いても本人はすでに出国しているため、未納になる可能性が高くなります。筆者は、帰国が決まった時点で本人に残額を示し、申出書に署名してもらって一括徴収するのが最も確実だと考えます。

一括徴収をしたとき、あるいは一括徴収ができずに普通徴収へ切り替えるときは、会社は「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を、退職日の翌月10日までに市区町村へ提出します。一括徴収した税額は、徴収した月の翌月10日までに納入します。

年収300万円の外国人社員で計算すると

ここからは、年収300万円(給与のみ、扶養なし、社会保険料は年45万円)の外国人社員が毎年同じ収入を得ていると仮定して、帰国時期ごとに残る住民税を試算します。税額は令和8年度の控除額を前提にした筆者の概算で、実際の金額は市区町村の通知で確定します。

まず、1年分の住民税を求めます。給与収入300万円の給与所得控除は98万円(300万円×30%+8万円)で、給与所得は202万円です。ここから社会保険料45万円と住民税の基礎控除43万円を差し引くと、課税所得は114万円になります。所得割は10%で11万4,000円、調整控除2,500円を引いて11万1,500円です。これに均等割5,000円(市町村民税3,000円、道府県民税1,000円、森林環境税1,000円)を加えると、年税額は約11万6,500円、特別徴収の月割額は約9,700円となります。

例1:2026年9月末に退職し、10月に帰国する場合

令和8年度分の住民税(2025年の所得に対するもの)は、6月から9月までの4回が天引き済みで、10月から翌年5月までの8回分、約7万7,600円が残ります。6月以降の退職なので、本人の申出があれば9月分の給与から一括で差し引けます。

2027年1月1日には日本に住所がないため、令和9年度分(2026年1月から9月の所得に対するもの)は課税されません。転出届を出して出国していることが前提です。

例2:2027年3月末に退職し、4月に帰国する場合

令和8年度分は4月と5月の2回分、約1万9,400円が残り、1月から4月の退職なので、3月分の給与から一括徴収します(本人の申出は不要)。

問題は令和9年度分です。2027年1月1日に日本に住んでいたため、2026年1年間の所得(年収300万円)に対して、約11万6,500円が新たに課税されます。この税額が決まるのは2027年5月から6月で、本人はすでに帰国しています。会社は退職後の元社員から特別徴収はできないため、本人が普通徴収で納めることになり、そのために納税管理人が必要になります。

2つの例を比べると、帰国時期が半年違うだけで、帰国後に払う住民税が0円から約11万6,500円まで変わります。年度末で契約が終わる社員や、1月から3月に在留期間の満了を迎えて帰国する社員は、例2の形になる点を押さえておいてください。

納税管理人を選ぶ方法

納税管理人とは、日本に住所を持たなくなる納税者に代わって、納税通知書の受取りや納付など、住民税に関する手続きを行う人を指します。地方税法300条1項は、市町村内に住所などを持たない納税義務者に、納税管理人を定めて市町村長に申告することを求めています。

納税管理人になれるのは、その市区町村の条例で定める地域内に住所や事業所を持つ人で、同僚、友人、日本に残る親族のほか、会社が引き受けることもあります。地域外の人を選ぶ場合は、市町村長の承認が必要です。手続きは、出国前に「納税管理人申告書」を住所地の市区町村の税務担当課へ提出します。福岡市は英語・中国語・韓国語の申告書を用意しています。

会社が納税管理人を引き受けるなら、本人から翌年度の見込額を預かっておき、納税通知書が届いたら会社が納付する、という形が実務では使われます。この場合、預かり金の精算方法と、税額が見込みより多かったときの扱いを、書面で本人と合意しておくことが欠かせません。

なお、地方税法300条2項は、徴収の確保に支障がないと市町村長が認定した場合は納税管理人を定めなくてよいとしています。出国前に税額の見込額を納める方法を用意している自治体もありますが、取扱いは市区町村ごとに異なるため、住所地の税務担当課に確認してください(公式資料では未確認)。

帰国後に住民税を滞納するとどうなるか

帰国後に住民税が未納のまま残っても、海外まで督促が届くことはほとんどありません。だからといって、問題がなくなるわけではありません。

本人にとって最も大きいのは、将来日本に戻るときの影響です。在留資格の変更・更新や永住許可の審査では、住民税の課税証明書と納税証明書で納付状況が確認されます。以前の滞納が解消されていなければ、再来日後の手続きで説明を求められることがあります。永住許可では、公的義務を期限内に履行していることが要件の一部とされています。

会社にとっては、特別徴収義務者としての責任があります。特別徴収した住民税を会社が納入しなかった場合、それは本人の未納ではなく会社の滞納です。特定技能の受入れ機関では、特別徴収した住民税を会社が納入していないことは、運用要領上、本人の義務不履行ではなく受入れ機関の基準不適合として扱われます。退職者の一括徴収分も含め、納入漏れがないか確認してください。

社会保険料の滞納が在留資格に与える影響は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?で、特定技能の運用要領の読み方は特定技能の運用要領とは?で解説しています。

帰国する外国人社員の住民税で会社がやること

退職日と帰国日が決まった時点で、次の順番で確認すると漏れがありません。

  1. 帰国が1月1日をまたぐかどうかを確認する。1月から5月の帰国なら、翌年度分が課税されることを本人に伝える。
  2. 今の年度の残額を計算し、退職月が6月から12月なら一括徴収の申出書をもらう。1月から4月の退職なら最後の給与から一括徴収する。
  3. 翌年度分が残る場合は、納税管理人を誰にするかを本人と決め、出国前に市区町村へ申告する。
  4. 退職日の翌月10日までに、給与所得者異動届出書を市区町村へ提出する。
  5. 本人に転出届を出してもらう(1年以上の出国なら必要)。

住民税以外にも、帰国時には所得税の年末調整(出国時の年末調整)、社会保険の資格喪失、在留カードの返納、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が重なります。退職時の手続き全体は外国人社員が退職・解雇したら?で、帰国時のチェックリストは公式案内をご確認くださいでまとめています。

よくある質問

技能実習生が帰国した後、住民税はどうなりますか?

一般の外国人社員と同じです。1月から4月に実習を終えて帰国する場合は最後の給与から今年度の残額を一括徴収し、帰国した年の1月1日に日本に住んでいたことによる翌年度分は、納税管理人を通じて納めます。1月から5月に帰国する実習生は例2の形になるため、実習実施者と監理団体で納税管理人の引受けを事前に決めておくと混乱がありません。

住民税を払わずに帰国できますか?

出国の手続き自体は、住民税が未納でも止められません。ただし未納は本人の債務として残り、延滞金も加算されます。再来日して在留資格の手続きをするときに、課税・納税証明書で確認される点に注意が必要です。帰国前に一括徴収か納税管理人の選任をしておくのが原則です。

1月2日に日本へ来た外国人は、その年の住民税はかかりませんか?

1月1日に日本に住所がなければ、その年度の住民税は課税されません。来日1年目の6月から翌年5月までは住民税の天引きがなく、2年目の6月から始まるのが通常の流れです。来日1年目の住民税の仕組みは外国人の住民税はいつからかかる?来日1年目がゼロの理由と租税条約による免除で扱っています。

帰国後に日本から給与や賞与が支払われる場合、住民税はかかりますか?

帰国して非居住者になった後に支払われる給与や賞与は、所得税の源泉徴収(原則20.42%)の対象になりますが、翌年1月1日に日本に住所がなければ、その所得に住民税は課税されません。非居住者への支払いの扱いは非居住者の源泉徴収|帰国後の外国人社員に払う給与・賞与は20.42%で解説しています。

帰国日を決める前に、住民税の「1月1日」を確認する

帰国する外国人社員の住民税で会社が困るのは、税額そのものより、本人が出国した後に税額が確定し、誰も払わないまま残ってしまう場面です。1月1日をまたいで帰国するかどうかで、帰国後に残る税金が0円になるか、1年分になるかが決まります。

本人と退職日を話し合う段階で、住民税がいくら残るかを試算して示し、今年度分は給与から一括で差し引く、翌年度分が残るなら納税管理人を決める、という2点を出国前に済ませておく。この段取りがあれば、帰国後の未納は防げます。本人が将来また日本で働くことになったとき、過去の納付記録がきれいに残っていることは、在留資格の手続きでも本人の助けになります。

根拠資料


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