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帰国する外国人社員の年末調整|出国時に行う年調と源泉徴収票の交付【計算例】

退職して母国へ帰る外国人社員の年末調整は、12月を待たず、出国の日までに支払う最後の給与で行います。出国すると所得税法上の非居住者になり、会社はその後の給与で年末調整ができなくなるからです(所得税法190条、国税庁タックスアンサーNo.2517)。年末調整に含めるのは出国前に支払った給与だけで、出国後に支払う最終月の給与や賞与は別枠として20.42%で源泉徴収します。2026年は、11月30日以前に最後の給与を払って年末調整をした人には令和8年度税制改正後の基礎控除などが適用されないという事情が重なるため、例年より説明の手間が増えます。

出国時の年末調整は「出国前に払う最後の給与」で行う

所得税の年末調整は、本来はその年最後の給与を支払うときに行います。これを年の途中で行う場面の一つが、居住者が出国して非居住者になる場合です。国税庁は、海外に出国する人について「海外に出国する日までに、年末調整をしなければなりません」と説明しています(No.2517、令和8年4月1日現在法令等)。

ここでいう出国時の年末調整とは、1月1日から出国の日までに支払った給与について、その人の1年分の所得税額を確定させ、毎月の源泉徴収額との差額を精算する手続を指します。対象になるのは、扶養控除等申告書を提出している人で、その年中に支払うべきことが確定した給与が2,000万円以下の人です。日本人の海外転勤者と同じ規定が、帰国する外国人社員にもそのまま当てはまります。

帰国する外国人社員が出国の日から非居住者になるのは、日本に住所がなくなるためです。居住者と非居住者の区別、入国1年目の判定などの基本は外国人の年末調整|居住者・非居住者の判定と扶養控除申告書の書き方【令和8年分】で扱っています。

年末調整の対象期間と対象給与

年末調整は、給与の「支払日」を基準に集計します。出国日より前に支払日が来た給与と賞与が対象で、勤務した月ではありません。末締め翌月25日払いの会社なら、1月25日に払った前年12月分の給与から、出国前最後の支払日に払った分までが対象になります。

控除の判定は「出国の時」で行う

控除の扱いは、国税庁のNo.2517に次のとおり示されています。

  • 社会保険料控除・生命保険料控除などの保険料控除:出国する日までに支払われたものに限る
  • 扶養控除・配偶者控除(配偶者特別控除)・特定親族特別控除:出国の時の現況で判定し、控除額の全額を控除できる
  • 配偶者や扶養親族の所得:出国の時の現況で見積もった1月1日から12月31日までの合計所得金額で判定

扶養控除は月割りになりません。9月に出国する人でも、要件を満たす扶養親族がいれば1年分の控除額を差し引けます。国外に住む親族を扶養に入れている社員は、親族関係書類と送金関係書類(30歳以上70歳未満なら38万円以上の送金の証明など)を出国前の年末調整に間に合うよう提出してもらう必要があります。要件は国外扶養親族の扶養控除要件|30歳以上70歳未満は38万円送金が必要【令和8年分】で詳しく扱っています。

【計算例】9月に帰国する技人国社員の年末調整

具体的な数字で流れを確認します。前提は次のとおりです(筆者の試算。1円単位は丸めています)。

  • 技術・人文知識・国際業務で働く独身の社員。扶養親族なし
  • 月給40万円、末締め翌月25日払い。7月10日に賞与60万円
  • 2026年9月30日退職、10月5日に出国
  • 1月25日から9月25日までの給与9回分(前年12月分〜8月分)=360万円、賞与60万円、合計420万円
  • この間の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は61万円

出国前(9月25日の支払)で行う年末調整

9月25日の支払が出国前最後の給与なので、ここで年末調整を行います。

  1. 給与所得控除後の金額:420万円×20%+44万円=128万円を差し引き、給与所得は292万円
  2. 所得控除:社会保険料控除61万円、基礎控除88万円(合計所得金額132万円超336万円以下の区分)
  3. 課税給与所得金額:292万円−61万円−88万円=143万円
  4. 年税額:143万円×5%=71,500円に102.1%を掛けて73,001円、100円未満を切り捨てて73,000円

毎月の給与と賞与から源泉徴収していた税額の合計がこれより多ければ、差額を9月25日の給与で還付し、少なければ追加で徴収します。

基礎控除を88万円としているのは、9月25日時点の年末調整に令和8年度税制改正による引上げが適用されないためです。この点は次の節で説明します。

出国後(10月25日の支払)に払う9月分の給与

9月1日から30日までの勤務に対する9月分の給与40万円は、出国後の10月25日に支払います。支払の時点で社員は非居住者になっており、この給与は日本での勤務に対応する国内源泉所得です。年末調整には含めず、40万円×20.42%=81,680円を源泉徴収し、非居住者用の納付書で翌月10日までに納付します。月額表や扶養控除は使いません。

同じ9月分の給与でも、10月5日の出国前に前倒しして支払えば、居住者への給与として年末調整に含められます。その場合、年末調整は9月25日ではなく、前倒しした支払のときに行います。どちらを選ぶかで本人の手取りが変わるため、退職日と出国日が決まった時点で本人と相談してください。非居住者への支払の詳細は非居住者の源泉徴収|帰国後の外国人社員に払う給与・賞与は20.42%で扱っています。

2026年11月30日以前に帰国する人は改正後の控除を受けられない

令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件が見直され、2026年12月1日に施行されます。国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(2026年5月)は、令和8年分の最後の給与を11月30日以前に支払った場合の年末調整には改正後の控除等は適用されず、適用を受けるには確定申告等が必要だとしています(Q1-3)。

出国時の年末調整はまさにこのケースに当たります。 同じQ&AのQ6-3は、11月30日以前に出国する人が改正後の控除を受ける方法として、2026年12月1日から2031年12月1日までに更正の請求書を提出するか、12月1日以後に準確定申告書等を提出するかを示しています。

先の計算例でいえば、改正後の基礎控除は合計所得金額292万円の区分で104万円です。課税給与所得金額は292万円−61万円−104万円=127万円、年税額は127万円×5%×102.1%=64,833円で、100円未満を切り捨てて64,800円になります。改正前の73,000円との差は8,200円で、本人が帰国後に手続をすれば戻る可能性がある金額です。

本人が海外から自分で手続をするのは現実的ではありません。出国前に、日本に住む知人や税理士を納税管理人に定めて税務署に届け出ておけば、12月以降に納税管理人が手続を進められます。会社としては、年末調整の結果を伝えるときに「12月以降に手続をすれば税金が戻る可能性がある」ことを書面で伝えておくと、後の問い合わせが減ります。改正後の控除額の一覧は外国人の年末調整|居住者・非居住者の判定と扶養控除申告書の書き方【令和8年分】に載せています。

源泉徴収票は退職後1か月以内に本人へ

出国時の年末調整が終わったら、その年の給与所得の源泉徴収票を作成して本人に交付します。退職した人には、退職の日以後1か月以内に交付しなければなりません(所得税法226条1項)。帰国後に母国で就職するときや、母国の税務当局に日本での所得を説明するときに使われる書類なので、出国前に手渡すのが確実です。出国前に作れない場合は、送付先のメールアドレスと海外の住所を確認しておいてください。

源泉徴収票に載せるのは、居住者だった期間に支払った給与だけです。出国後に払った9月分の給与や賞与、退職金は源泉徴収票に含めず、「非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」の対象になり、翌年1月31日までに税務署へ提出します。1人の社員について、源泉徴収票と支払調書の両方が必要になる年があるということです。

年末調整と一緒に確認すること

出国時の年末調整の前後には、所得税以外の手続が集中します。担当者が同じ時期に確認しておきたいのは次の3つです。

1つ目は住民税です。住民税は1月1日時点の住所で課税されるため、1月から4月に退職する人は残りの税額を最後の給与から一括徴収し、6月以降に退職する人は、本人の申出による一括徴収をしなければ普通徴収に切り替わります。出国した年の翌年度分も、1月1日に日本にいた場合は課税されます。計算例と納税管理人の選び方は外国人の住民税は帰国後どうなる?退職時の一括徴収と納税管理人【計算例つき】で扱っています。

2つ目は社会保険の資格喪失と脱退一時金です。厚生年金の加入期間が6か月以上あり、受給資格期間10年を満たさない人は、出国後2年以内に脱退一時金を請求できます。脱退一時金には20.42%の所得税が源泉徴収されるため、納税管理人を定めておけば還付の申告も任せられます。

3つ目は入管とハローワークへの届出です。退職した社員本人は14日以内に所属機関に関する届出を、会社は外国人雇用状況の届出を出します。退職時の届出全体は外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続きを解説で、帰国時に会社と本人がやることは外国人社員の帰国手続き|会社がやる税・年金と本人の転出届・在留カード返納で整理しています。

よくある質問

出国時の年末調整を忘れた場合、どうすればいいですか?

出国後は非居住者になるため、会社が後から年末調整をやり直すことはできません。居住者だった期間の給与について所得税を精算するには、本人が準確定申告(出国の時までに行う確定申告)か、出国後に納税管理人を通じた申告をすることになります。会社としては、出国前に支払った給与で源泉徴収票を作って本人に渡し、申告に使えるようにしておくことが最低限の対応です。

出国時に年末調整は必要ですか?

扶養控除等申告書を提出していて、その年の給与が2,000万円以下の社員であれば、会社に年末調整の義務があります。任意ではありません。扶養控除等申告書を出していない社員(乙欄適用者)は年末調整の対象外で、本人が必要に応じて確定申告をします。

出国時の年末調整で住所は必要ですか?

源泉徴収票には受給者の住所を記載します。出国時の年末調整では、出国前の日本の住所を記載し、源泉徴収票の送付が出国後になる場合に備えて海外の連絡先を別に控えておくのが実務的です。

帰国する社員の賞与も年末調整に含めますか?

出国前に支払う賞与は含めます。出国後に支払う賞与は含めず、計算期間のうち日本で勤務した期間に対応する部分を国内源泉所得として20.42%で源泉徴収します。賞与の支給日が出国の直後に来る場合は、支払日と出国日の前後を事前に確認してください。

支払日と出国日を並べるところから始める

帰国する外国人社員の年末調整で結果を左右するのは、計算の技術よりも日程です。最後の給与・賞与・退職金のそれぞれについて、支払日が出国日の前か後かを並べてみると、年末調整に含めるもの、20.42%で源泉徴収するもの、支払調書に回すものが自動的に決まります。2026年はこれに、出国が11月30日の前か後かという軸が加わります。

退職の申出を受けたら、出国日の確定、最後の支払日の調整、国外扶養親族の書類の回収、納税管理人の要否の確認を1か月前までに済ませておくと、最後の給与で慌てずに済みます。在留資格の手続と税の手続は窓口が別々ですが、本人から見れば同じ「帰国の準備」です。会社が一覧にして渡すことが、手続漏れを防ぐいちばん確実な方法になります。

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