未来創造人材制度(J-Find)は、世界大学ランキングで上位100位以内に入る大学を卒業してから5年以内の外国人が、預貯金20万円以上を条件に、日本で最長2年間、就職活動や起業の準備を行える在留資格です。在留資格の種類としては「特定活動」の告示51号に当たり、配偶者と子は告示52号で帯同できます。制度は2023年4月に始まりました。
この制度の要件は短く見えますが、実際に確かめるべき点は3つに絞られます。自分の大学が対象か(ランキングは毎年変わる)、学位授与から5年以内か(卒業日ではなく学位の授与日で数える)、そして2年の間にどの在留資格へ移るか、です。本稿では、令和8年4月8日改正後の特定活動告示の条文と、出入国在留管理庁の案内(対象大学一覧は令和8年1月時点)をもとに、この3点を順に説明します。
J-Findで認められる活動|就職活動・起業準備と、その間の報酬
特定活動告示51号が定める活動は、次のとおりです。
- 就職活動
- 日本で貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動(告示はこれを「起業準備活動」と呼んでいます)
- これらの活動を行うために必要な資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動
- 起業準備活動に附随して行う報酬を受ける活動
いずれも風俗営業活動は除かれます。告示は、これらを日本で「二年を超えない期間」滞在して行う活動と定めています。
ここで重要なのは、3つ目と4つ目の報酬を受ける活動が、指定された活動そのものに含まれているという点です。留学生のアルバイトは、本来の活動に含まれない仕事を資格外活動許可で例外的に認めるものですが、J-Findの生活資金のための仕事は、告示の文言上、在留資格の活動の範囲内に位置づけられています。そのため、資格外活動許可を別に受ける必要はないと読めます。
ただし、告示が認めているのは「必要な資金を補うため必要な範囲内」の報酬活動です。留学生のような週28時間という数字は告示にありませんが、就職活動や起業準備がほとんど行われず、フルタイムの仕事が中心になっている状態は、この範囲を超えると判断されるおそれがあります。どの程度の就労時間までが「必要な範囲内」かについて、出入国在留管理庁の公表資料に目安は見当たりません(公式資料では未確認)。就職活動の記録(応募、面接、説明会の参加)や起業準備の記録(物件探し、事業計画、許認可の相談)を残しておくと、更新や次の在留資格への変更の際に活動の実態を説明しやすくなります。
本人の要件は2つ(告示51号イ・ロ)
告示51号は、次のイとロのいずれにも当たる人を対象にしています。
| 告示 | 要件 | 条文の要点 |
|---|---|---|
| イ | 大学・学位 | 申請の時点で、告示別表第十三の3つの世界大学ランキング(いずれも直近のもの)のうち2つ以上で上位100位までに入っている大学を卒業し、またはその大学の大学院の課程を修了して学位・専門職学位を授与された日から5年を経過していないこと |
| ロ | 生計費 | 申請の時点で、申請人の預貯金の額が日本円に換算して20万円以上であること |
3つのランキングのうち2つ以上で100位以内
別表第十三に掲げられているランキングは次の3つです。
- クアクアレリ・シモンズ社(英国)の世界大学ランキング(QS World University Rankings)
- タイムズ・ハイヤー・エデュケーション誌の世界大学ランキング(THE World University Rankings)
- 上海ランキング・コンサルタンシー(中国)の世界大学学術ランキング(ARWU)
3つのうち1つだけで100位以内に入っていても対象にはなりません。2つ以上で100位以内に入っていることが必要です。
対象大学の確かめ方|一覧は「参考」、判定は最新ランキング
出入国在留管理庁は「未来創造人材制度の対象となる大学一覧」を公表しており、最新版は令和8年1月時点のものです。この一覧に載っている日本の大学は、東京大学と京都大学の2校だけです。
注意したいのは、告示が「いずれも直近のもの」のランキングで判断すると定めていることです。一覧にも、申請の際は必ず最新の3つの世界大学ランキングをあわせて確認するよう注記があります。ランキングは毎年発表され、100位前後の大学は年ごとに出入りします。そのため、確認の手順は次のようになります。
- 出入国在留管理庁の対象大学一覧で、自分の大学が載っているかを確認する
- 申請する時点で最新のQS、THE、ARWUの3つのランキングを各社のサイトで開き、自分の大学の順位を確認する
- 2つ以上で100位以内に入っていることを確認し、その画面や掲載ページを印刷・保存しておく
一覧に載っていても、申請時点の最新ランキングで2つ以上の100位以内から外れていれば、要件を満たしません。反対に、一覧の作成後に発表されたランキングで新たに条件を満たした大学は、一覧にまだ載っていなくても対象になり得ます。この読み方は告示の文言から導けますが、一覧にない大学で申請するときは、ランキングの該当ページを必ず提出資料に添えてください。
「5年」は学位の授与日から数える
5年の起算点は、卒業日や修了日ではなく、学位または専門職学位を授与された日です。多くの大学では卒業日と学位授与日は同じですが、国によっては卒業式と学位授与の日付がずれることがあります。学位記や学位証明書に記載された授与日を確認してください。
判断の基準時は「申請の時点」です。申請日の時点で5年を経過していなければ要件を満たし、審査中に5年を過ぎても、条文上は申請時点で判断されます。ただし、在留期間の更新申請のときにも要件をあらためて見られるかどうかは、公表資料からは読み取れません(公式資料では未確認)。
学部卒だけでなく、大学院の修了で学位(修士・博士)や専門職学位(MBAなど)を授与された場合も対象です。学部と大学院で大学が違う場合は、どちらか一方が対象大学で、その学位の授与から5年以内であればよいと読めます。
預貯金20万円は「申請時点」の残高
ロの生計費は、申請時点で申請人本人の預貯金が20万円以上あることです。外貨預金は日本円に換算して判断します。家族を帯同する場合に、家族の分として上乗せの金額が必要かどうかは、告示に規定がありません(公式資料では未確認)。20万円は来日直後の当面の生活費を想定した金額と読めますが、住居の初期費用なども考えると、実際の生活には余裕のある資金計画が必要です。
在留期間と家族(告示52号)
告示の定めにより、J-Findで滞在できる期間は通算で2年を超えません。出入国在留管理庁も「最長2年間の在留が可能」と案内しており、申請の種類として在留期間更新許可申請を用意しています。最初に決定される在留期間と、2年に達するまでの更新の組み方は、個別の決定によります(公式資料では未確認)。
配偶者と子は、告示52号(51号の活動を指定されて在留する人の扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動)で帯同できます。52号の家族が働く場合は、資格外活動許可の対象になります。
申請の方法と提出書類
申請の種類は、日本の外にいる人と、すでに日本に在留している人で分かれます。
- 海外から来日する場合:在留資格認定証明書交付申請
- 留学などの在留資格で日本にいる場合:在留資格変更許可申請
- J-Findで在留中に期間を延ばす場合:在留期間更新許可申請
出入国在留管理庁は、J-Find用に「経歴書」と「滞在予定表」の様式を公表しています。これに加えて、対象大学を卒業・修了したことと学位授与日が分かる書類(卒業証明書・学位記の写しなど)、預貯金残高の証明書、写真、旅券(日本在留中は在留カードも)が必要です。滞在予定表は、2年の間に何をするかを説明する書類で、就職活動か起業準備か、どの業種・地域で活動するかを具体的に書くことが審査の土台になります。
変更・更新の許可を受けるときは手数料がかかります。2026年10月1日以降、在留期間1年の許可は窓口33,000円、オンライン27,000円です。手数料の改定は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で解説しています。
日本の大学を卒業する留学生の選択肢として
J-Findは海外大学の卒業者のための制度と思われがちですが、対象大学一覧には東京大学と京都大学が入っています。両大学を卒業・修了した留学生は、卒業後に日本で就職活動を続ける方法として、J-Findも選択肢に入ります。
留学生が卒業後に就職活動を続ける方法には、もう一つ、就職活動を継続するための特定活動があります。違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 継続就職活動の特定活動 | J-Find(告示51号) |
|---|---|---|
| 対象 | 日本の大学・専修学校等を卒業した留学生 | 対象大学を学位授与後5年以内の人(日本の大学は東大・京大) |
| 滞在できる期間 | 原則として卒業後1年(6月+更新1回) | 最長2年 |
| 就労 | 資格外活動許可を受けて週28時間以内 | 生活資金を補うため必要な範囲内の報酬活動が活動に含まれる |
| 起業準備 | 就職活動が中心 | 起業準備活動も明記 |
| 大学の推薦 | 必要 | 不要 |
東大・京大の卒業生で、起業も視野に入れている人や、1年では就職先が決まりにくい分野の人にとっては、J-Findのほうが期間と活動の幅で有利です。継続就職活動の特定活動については卒業後の就職活動の特定活動|留学生が最長1年残れる要件と推薦状で詳しく扱っています。
就職・起業が決まったら|次の在留資格への変更
J-Findは「次の在留資格を見つけるための期間」を与える制度です。就職先や起業の準備が整ったら、その活動に合う在留資格への変更許可申請を行います。主な行き先は次の3つです。
1つ目は技術・人文知識・国際業務です。対象大学の学位を持つ人は学歴要件を満たしやすく、職務内容と専攻の関連性、日本人と同等額以上の報酬が主な審査ポイントになります。要件の全体は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?を参照してください。
2つ目は高度専門職です。上位大学の学位、年収、年齢などでポイントが70点以上になれば、高度専門職1号ロとして在留期間5年や家族帯同の優遇を受けられます。ポイント計算表には、一定の世界大学ランキングで上位の大学を卒業した場合の加算項目もあり、J-Findの対象者は点数を積みやすい立場にあります。制度の概要は高度専門職ビザとは?で解説しています。
3つ目は経営・管理です。起業準備の成果として日本で会社を設立する場合の行き先ですが、2025年10月16日の基準改正で、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上の雇用、申請者か常勤職員の一定の日本語能力などが求められるようになりました。J-Findの2年間は、この要件を満たす準備をする期間として使うことになります。改正後の要件は経営管理ビザの要件とは?で整理しています。
起業の準備については、地方公共団体の外国人起業活動促進事業(いわゆるスタートアップビザ)という別の特定活動もあります。福岡市のように自治体が起業準備を支援する枠組みで、J-Findの要件に当たらない人でも使える場合があります。福岡市スタートアップビザとは?も参考にしてください。
よくある質問
J-Findで就労に制限はありますか?
告示51号は、就職活動・起業準備活動を行うために必要な資金を補うため「必要な範囲内」の報酬を受ける活動を、在留資格の活動に含めています。資格外活動許可を別に受ける必要はないと読めますが、就職活動や起業準備が中心であることが前提です。時間数の上限は告示に書かれていませんが、フルタイムの就労が中心になると範囲を超えるおそれがあります。風俗営業での就労はできません。
J-Findとは何ですか?
2023年4月に始まった未来創造人材制度の略称で、世界の上位大学を卒業した若い人材に、日本で最長2年間の就職活動・起業準備の期間を与える制度です。在留資格は「特定活動」(告示51号)で、同時に始まった特別高度人材制度(J-Skip)とは別の制度です。
在留資格「特定活動」と「J-Find」の違いは?
J-Findは特定活動の一類型です。特定活動は法務大臣が個別に活動を指定する在留資格で、告示で50以上の類型が定められています。そのうち51号がJ-Find本人、52号がその家族です。どの類型で在留しているかは、旅券に貼られる指定書で確認できます。特定活動の類型の全体像は特定活動ビザとは?告示・告示外の種類一覧と就労できる号・できない号で扱っています。
対象大学一覧に自分の大学が載っていなければ、申請できませんか?
判断の基準は、申請時点で最新の3つのランキングのうち2つ以上で100位以内に入っているかどうかです。一覧は令和8年1月時点で作られた参考資料なので、その後のランキングで条件を満たしていれば、一覧に載っていなくても対象になり得ます。その場合は、各ランキングの該当ページを提出資料に添えて説明してください。
2年をどう使うかから逆算する
J-Findの要件確認は、大学、学位授与日、預貯金の3点で終わります。制度の価値が決まるのはその後で、2年のうちにどの在留資格へ移るかを最初に決めておくと、滞在予定表の書き方も、就労の量の配分も、自然に定まります。
技術・人文知識・国際業務や高度専門職を目指すなら、応募と面接の記録を残しながら、就職先の職務内容と自分の専攻の関係を整理しておくことが次の申請の材料になります。経営・管理を目指すなら、2025年10月改正後の資本金と雇用の要件を、2年のうちに満たせるかどうかを先に試算するべきだと筆者は考えます。要件を満たす見込みが立たない起業計画のまま2年を過ごすと、期間の終わりに移る先がなくなります。個別の経歴や計画によって最適な順番は変わるため、迷う場合は申請前に相談してください。
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根拠資料
- 在留資格「特定活動」(未来創造人材)(出入国在留管理庁)
- 未来創造人材制度の対象となる大学一覧(出入国在留管理庁・令和8年1月時点)
- 高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について(ジェトロ対日投資報告2023)
- QS World University Rankings
- THE World University Rankings
- ShanghaiRanking(ARWU)
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