監理措置と仮放免は、どちらも退去強制手続の対象になった外国人が入管の施設の外で生活できる制度ですが、位置づけが違います。2024年6月10日施行の改正入管法で、監理措置は「収容しないで手続を進める」ための原則的な制度になり、仮放免は「健康上・人道上その他これらに準ずる理由」があるときに収容を一時的に解く例外的な制度になりました。会社にとって決定的な違いは就労で、仮放免中の人は働けず、被監理者も退去強制令書が発付される前に主任審査官から報酬を受ける活動の許可を受けた場合に限って、指定された勤務先で働けます。
監理措置と仮放免の違い|比較表
入管法の条文と出入国在留管理庁のQ&Aをもとに、2つの制度を並べます。
| 項目 | 監理措置 | 仮放免 |
|---|---|---|
| 根拠 | 入管法44条の2(退去強制令書発付前)、52条の2(発付後) | 入管法54条 |
| 位置づけ | 収容しないで退去強制手続を進める措置 | 収容されている人の収容を一時的に解く措置 |
| 判断の要素 | 逃亡・証拠隠滅(発付後は逃亡・不法就労)のおそれの程度、収容により受ける不利益の程度など | 健康上、人道上その他これらに準ずる理由 |
| 監理人 | 必要(監理人を選定できることが要件) | 不要(身元保証人を立てる) |
| 保証金 | 300万円以下(未成年者は150万円以下)の納付を条件とできる | 2024年6月10日以降の許可では納付不要 |
| 交付される書面 | 監理措置決定通知書 | 仮放免許可書 |
| 届出 | 3か月を超えない範囲で指定された日に、条件の遵守状況・生活状況などを届け出る | 指定された日時に出頭する |
| 就労 | 発付前の被監理者が44条の5の許可を受けた場合のみ可 | 不可 |
| 行動範囲 | 原則として指定住居のある都道府県内 | 仮放免許可書に記載された範囲 |
ここでいう監理人とは、被監理者の生活状況を把握し、条件を守るよう指導・監督し、逃亡や条件違反を知ったときは7日以内に入管へ届け出る人を指します。親族や支援者、弁護士などがなります。監理人の責務と届出義務は監理措置とは?監理人の役割・届出義務と2024年6月施行の新制度で詳しく扱っています。
2024年改正で仮放免はどう変わったか|「仮放免の廃止」ではない
「仮放免 廃止」という検索がありますが、仮放免の制度は廃止されていません。変わったのは使われる場面です。
改正前の仮放免は、収容されている人を保証金の納付と引き換えに外に出す、ほぼ唯一の手段でした。長期収容の問題を受けて、改正法は収容に代わる手段として監理措置を新設し、仮放免を健康上・人道上の理由がある場合に絞りました。出入国在留管理庁のQ&Aは、仮放免が許可されるには、収容を解く原則的な手段が監理措置であることを前提としてもなお、監理措置によらずに収容を一時的に解くことが相当と認められる程度の理由が必要だと説明しています。保証金の規定も54条から外れ、監理措置の側に移りました。仮放免の条件と許可書の見方は仮放免とは?許可の条件と仮放免許可書の見方|2024年改正で保証金はどうなったかで解説しています。
数字にも変化が表れています。出入国在留管理庁の「令和7年における入管法違反事件について」によれば、2025年中の監理措置決定は3,783件(退去強制令書発付前2,103件、発付後1,680件)で、仮放免の許可は286件でした。一方、2025年末時点で仮放免中の人は2,429人、被監理者は1,546人です。年末の人数で仮放免が上回っているのは、改正前から仮放免を続けている人が残っているためと筆者はみています。仮放免中の人も監理措置決定の申請ができ、その場合は仮放免の事務を担当する地方出入国在留管理官署の窓口に申請します。
被監理者が働けるのは「発付前」と「許可」がそろったときだけ
被監理者の就労について、入管法44条の5第1項は次のように定めています。
主任審査官は、被監理者の生計を維持するために必要であつて、相当と認めるときは、被監理者の申請(監理人の同意があるものに限る。)により、その生計の維持に必要な範囲内で、監理人による監理の下に、主任審査官が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う報酬を受ける活動として相当であるものを行うことを許可することができる。
この条文を分解すると、報酬を受ける活動の許可が出るための条件は次のとおりです。
- 44条の2の監理措置(退去強制令書が発付される前)に付されていること。52条の2の監理措置(発付後)の被監理者は対象外
- 生計を維持するために必要であること
- 被監理者本人が申請し、監理人が同意していること
- 主任審査官が指定する日本の公私の機関との雇用契約に基づくこと。自分で会社を経営する、業務委託で働くといった形は対象外
- 生計の維持に必要な範囲内であること
ここで重要なのは、許可が「働いてよい」という一般的な許可ではなく、勤務先・活動の内容・報酬額の上限を特定した許可だという論点です。出入国在留管理庁のQ&Aによれば、許可されると次の3つが条件として監理措置決定通知書に記載されます。
- 勤務先
- 活動の内容
- 報酬額の上限
報酬額の上限は、生活保護の生活扶助・住宅扶助の水準を参考にしつつ、本人と生計を一にする家族の資産・収入、監理人などの援助の見込みを考慮して、個別に決まります。フルタイムで働いて得られる給与の全額ではなく、生活に必要な分に絞られる仕組みです。
許可が実際に出た件数は2025年に4件
条文上は道が開かれていますが、実際の件数は多くありません。2025年中に退去強制令書発付前の被監理者に報酬を受ける活動を許可した件数は4件でした(同資料)。同じ年の発付前の監理措置決定2,103件と比べると、被監理者の大半は働けない状態で手続を待っていることになります。
申請に必要な書類
許可を申請するのは、働こうとする被監理者本人です。Q&Aが例示する書類は次のとおりで、このうち3つは雇う会社が用意するものです。
- 報酬を受ける活動の許可申請書
- 雇用契約書や労働条件通知書など、労働基準法15条1項に基づく労働条件を明示する文書(会社)
- 就業予定の会社の本店・事業所が日本にあることを示す資料(パンフレット、登記事項証明書など)(会社)
- 就業予定の会社の直近3か月分の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の写し(領収日付印のあるもの)(会社)
- 被監理者本人と、生計を一にする家族の収入・資産の資料
- 監理人などからの援助の有無と額の資料
- 住居の賃貸借契約書の写し
所得税徴収高計算書が求められるのは、Q&Aが、源泉徴収義務を適切に果たしていない会社は勤務先として相当でないとしているためです。風俗営業の営業所での活動や、法令に違反する活動も認められません。
仮放免中の人は働けない
出入国在留管理庁のQ&Aは、「就労可能な在留資格を有していない場合には、仮放免中は働くことはできません」としています。仮放免には就労禁止の条件が付されるのが通例で、在留資格がない以上、資格外活動許可を受ける余地もありません。仮放免中の人の就労について企業が負うリスクは仮放免中の外国人は働ける?就労禁止の理由と雇った会社のリスクで扱います。
生活の手段がない仮放免中の人が働く道を求めるなら、監理措置決定の申請を経て、報酬を受ける活動の許可を申請することになります。退去強制令書がすでに発付されている人は、監理措置に移っても働けません。
監理措置決定通知書で会社が確認すべき記載
外国人の採用で、応募者が在留カードを持っておらず、監理措置決定通知書や仮放免許可書を示してきた場合、会社が確認すべきことを順に挙げます。
1 どの条文による監理措置か
Q&Aによれば、監理措置決定通知書には、44条の2(発付前)と52条の2(発付後)のどちらの規定による監理措置かが記載されています。発付後の監理措置の通知書には「就労の禁止」が条件として記載されます。52条の2の監理措置であれば、その時点で雇用はできません。
2 報酬を受ける活動の許可の記載があるか
44条の2の監理措置であっても、報酬を受ける活動の許可がなければ働けません。許可の記載がない被監理者を働かせれば、本人は70条1項9号(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科)の対象になり、会社は不法就労助長罪(73条の2)に問われるおそれがあります。不法就労助長罪の罰則は現行で3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金で、2027年4月1日からは5年以下・500万円以下になります。仕組みは不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説で解説しています。
3 勤務先が自社か、活動内容と報酬の上限は何か
許可は勤務先を指定して出されるため、記載された勤務先が自社でなければ雇えません。同じ会社でも、記載された活動の内容と違う仕事をさせたり、報酬額の上限を超えて支払ったりすれば、許可の条件に違反します。条件違反は許可の取消し(44条の5第4項)や監理措置決定の取消しにつながります。
4 通知書が本物か
出入国在留管理庁は「監理措置決定通知書の確認ポイント」を公表しています。表面のチェンジング箔は、見る角度によって桐の紋章と「MOJ」の文字が切り替わります。コピーすると全面に「COPY」の文字が浮き出る複写防止措置もあります。写しだけで判断せず、原本を確認してください。
5 行動範囲と住居
行動範囲は原則として指定住居のある都道府県内に制限されます。勤務先が県外にある場合は、行動範囲の拡大の許可が必要になることがあります。通知書の指定住居と行動範囲の記載も確認します。
雇った後に会社がすること
許可を受けた被監理者を雇ったときは、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です。届出書の在留資格欄には被監理者である旨を記載し、「資格外活動許可の有無」の欄には、入管法44条の5第1項の報酬を受ける活動の許可を受けている旨を記載します。届出の仕組みは外国人雇用状況の届出とは?ハローワークへの届出が入管の在留審査でどう使われるかで解説しています。
もう一つ押さえておくべきなのは、許可がいつ終わるかです。44条の8は、主任審査官が退去強制令書を発付したとき、法務大臣が在留特別許可をしたとき、出国命令をしたときなどに、監理措置決定が効力を失うと定めています。退去強制令書が発付されれば、その時点で働けなくなります。在留特別許可が出た場合は、新しく決まった在留資格の範囲で働けるかを在留カードで確認し直します。本人から手続の進み具合を定期的に聞き、通知書の記載が変わっていないかを確認する運用にしておくのが安全です。
よくある質問
監理措置決定通知書とは?
主任審査官が監理措置決定をしたときに被監理者に交付する書面です(入管法44条の2第7項・52条の2第6項)。住居の指定、行動範囲の制限、出頭の義務などの条件が記載され、報酬を受ける活動が許可されたときは勤務先・活動の内容・報酬額の上限も記載されます。在留カードを持っていない被監理者は、この通知書を常に携帯し、警察官などに求められたときは提示する義務があります。
監理措置になれば就労できますか?
監理措置に付されただけでは働けません。働けるのは、退去強制令書が発付される前の被監理者が、監理人の同意を得て申請し、主任審査官から報酬を受ける活動の許可を受けた場合に限られます。2025年の許可は4件でした。退去強制令書が発付された後の被監理者は、許可を受けることもできません。
仮放免は廃止されたのですか?
廃止されていません。2024年6月10日の改正法施行後も入管法54条に仮放免の制度は残っていますが、健康上・人道上その他これらに準ずる理由がある場合に限られるようになり、保証金の規定もなくなりました。収容しないで手続を進める原則的な手段は監理措置になっています。
在留資格を持っている被監理者は、報酬を受ける活動の許可が必要ですか?
就労できる在留資格を持っている被監理者が、その在留資格に応じた活動をする場合は、報酬を受ける活動の許可の申請は必要ありません(Q&A)。この場合は在留カードで在留資格と在留期限を確認します。
書面の名前より「就労の記載」を見る
監理措置と仮放免の違いを制度として理解しておくことは必要ですが、採用の現場で問われるのは、目の前の書面に就労を認める記載があるかどうかです。仮放免許可書であれば働けません。監理措置決定通知書であれば、44条の2によるものか、報酬を受ける活動の許可があるか、勤務先が自社か、の3点がそろって初めて雇用を検討できます。
この3点がそろう人は、2025年の実績で年に4人でした。被監理者を雇いたいという相談の多くは、雇えないという結論になります。それでも雇用の予定があることは、本人の在留特別許可の判断で将来の生活の安定を示す材料になり得ます。雇用を約束する前に、書面の原本と手続の段階を確かめ、個別の事情で判断が変わる部分は専門家に確認してください。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第44条の2〜第44条の8・第52条の2・第54条・第70条・第73条の2(e-Gov法令検索)
- 監理措置に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- 監理措置決定通知書の確認ポイント(出入国在留管理庁・PDF)
- 仮放免制度について(出入国在留管理庁)
- 令和7年における入管法違反事件について(出入国在留管理庁)
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