ワーキングホリデーで日本に来た外国人は、在留資格「特定活動」を持ち、風俗営業に当たる仕事を除けば、職種や労働時間の制限なく働けます。外務省によると、日本とワーキングホリデーの取決めがある国・地域は2026年4月1日現在で32あり、滞在期間は原則1年以内です。雇う側が確認するのは、在留カードの「特定活動」の表示と、旅券に貼られた指定書に「ワーキング・ホリデー」の文言があるかどうかの2点で、この確認を怠ると不法就労助長罪の問題になります。
ワーキングホリデーとは|日本での在留資格は「特定活動」
ここでいうワーキングホリデーとは、2つの国・地域が互いの若者に、休暇を目的とする入国と、滞在中の旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度を指します。日本では1980年にオーストラリアとの間で始まりました。
日本に来る外国人の在留資格は、入管法別表第1の5の表の「特定活動」です。法務大臣が告示で定める特定活動の5号は、ワーキングホリデーの協定・口上書・協力覚書の適用を受ける者について、次の活動を認めています。
日本文化及び日本国における一般的な生活様式を理解するため本邦において一定期間の休暇を過ごす活動並びに当該活動を行うために必要な旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動(風俗営業活動を除く。)
台湾の人については、告示5号の2が別に定めています。告示の別表第3は、申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること、1年を超えない期間、主として休暇を過ごす意図があること、以前にワーキングホリデー査証の発給を2回以上受けていないことなどを要件としています。台湾の人は2回まで利用できる、ということです。
特定活動の全体像は特定活動ビザとは?告示・告示外の種類一覧と就労できる号・できない号で整理しています。
日本で働く条件|職種・時間の制限と風俗営業の禁止
ワーキングホリデーの外国人が日本で働く条件は、次のようにまとめられます。
- 職種の制限はない(飲食店、ホテル、小売、農業、事務、通訳などいずれも可)
- 1週間あたりの労働時間の上限はない(留学生の週28時間のような制限はない)
- 雇用形態の制限はない(アルバイト、契約社員、正社員のいずれも可)
- 風俗営業活動は禁止(キャバクラやホストクラブなどの接待を伴う飲食店、ナイトクラブ、麻雀店・パチンコ店、性風俗関連特殊営業などでの就労)
風俗営業の禁止は、接客をしない裏方の仕事にも及ぶ点に注意が必要です。告示の定義は「風俗営業が営まれている営業所において行うもの」としているため、パチンコ店での清掃や、接待を伴う飲食店の厨房の仕事も、この営業所の中で行う限り禁止の対象になります。
一方、制度の本来の目的は休暇です。告示が認めているのは「旅行資金を補うため必要な範囲内」の報酬を受ける活動なので、1年間ほぼ休まずにフルタイムで働き続けるような形は、制度の趣旨に合わないと評価されるおそれがあります。労働時間の上限はありませんが、休暇のための滞在という前提を崩さない働き方にしておくのが無難です。
滞在期間は原則1年、国によって違いがある
外務省の案内では、日本での滞在期間は原則1年以内です。入国時に許可される在留期間は1年または6月で、6月の在留期間で入国した人は、取決めで認められた期間の範囲内で、日本国内で在留期間の更新を受けて滞在を続けることになります。どの国籍の人が6月で入国するかは、各国との取決めの内容によって決まっており、出入国在留管理庁は国別の一覧を公表していません(公式資料では未確認)。雇う側としては、在留カードの在留期間と満了日を必ず確認します。
英国については、外務省の一覧でユース・モビリティ・スキームとして最長2年の滞在が認められていると記載されています。年齢の上限も国によって異なり、オーストラリア、カナダ、韓国、アイルランドは原則18歳以上25歳以下で、各国政府が認める場合は30歳以下まで申請できます。
日本とワーキングホリデーの協定国・地域一覧
外務省の「ワーキング・ホリデー制度」のページ(2026年4月1日更新)が挙げる32か国・地域と導入年は次のとおりです。
| 導入年 | 国・地域 |
|---|---|
| 1980〜2001年 | オーストラリア(1980)、ニュージーランド(1985)、カナダ(1986)、韓国(1999)、フランス(2000)、ドイツ(2000)、英国(2001) |
| 2007〜2015年 | アイルランド(2007)、デンマーク(2007)、台湾(2009)、香港(2010)、ノルウェー(2013)、ポルトガル(2015)、ポーランド(2015) |
| 2016〜2019年 | スロバキア(2016)、オーストリア(2016)、ハンガリー(2017)、スペイン(2017)、アルゼンチン(2017)、チリ(2018)、アイスランド(2018)、チェコ(2018)、リトアニア(2019) |
| 2020〜2026年 | スウェーデン(2020)、エストニア(2020)、オランダ(2020)、ウルグアイ(2023)、フィンランド(2023)、ラトビア(2023)、ルクセンブルク(2024)、マルタ(2026)、イタリア(2026) |
年間の査証発給枠は国によって異なり、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツなどは上限なし、韓国と台湾は1万人、英国は6,000人、フランスは1,800人、アイスランドは30人などとなっています。
なお、2026年4月8日改正の特定活動告示5号には、上の32か国・地域に加えてイスラエルとの協定も挙げられていますが、外務省の一覧には掲載されておらず、制度が実際に始まっているかは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
雇う企業が確認すべき書類|在留カードと指定書
ワーキングホリデーの外国人を雇うときに確認するのは、次の2つの書類です。
在留カード
在留カードの表面で次の欄を見ます。
- 在留資格:「特定活動」
- 就労制限の有無:「指定書により指定された就労活動のみ可」
- 在留期間(満了日):雇用期間が満了日を超えていないか
特定活動には、ワーキングホリデーのほかにも、就職活動中の留学生、インターンシップ、家事使用人、医療滞在など、働ける活動と働けない活動が混在しています。在留カードに「特定活動」とあるだけでは、どの活動の特定活動なのかわかりません。
指定書
そこで確認するのが指定書です。指定書とは、特定活動の外国人に法務大臣が個別に指定した活動の内容を記載した書面で、旅券(パスポート)に貼り付けられています。ワーキングホリデーの人の指定書には、「日本国政府と○○政府との間のワーキング・ホリデーに関する協定(口上書・協力覚書)の適用を受ける者が行う」休暇の活動と、それに付随する報酬を受ける活動(風俗営業活動を除く)といった内容が記載されます。
採用時は、在留カードの表と裏、旅券の身分事項のページ、指定書の写しを取って保管します。指定書の見方と、紛失していた場合の対応は特定活動の指定書とは?見方・どこにあるか・紛失時の対応を見本で確認で解説しています。在留カードの確認を怠って不法就労をさせた場合の企業の責任は不法就労助長罪とは?で扱っています。2027年4月1日からは、不法就労助長罪の法定刑が5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。
雇用保険・社会保険・税金の扱い
雇用保険は適用除外
ワーキングホリデーで入国した人は、雇用保険の被保険者になりません。福岡労働局のハローワーク福岡中央・福岡外国人雇用サービスセンターの「外国人の雇用に関するQ&A」も、ワーキング・ホリデー制度による入国者は雇用保険の適用除外になると明記しています。
雇用保険に入らない場合でも、ハローワークへの外国人雇用状況の届出は必要です。この場合は「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を使い、雇入れ・離職ともに翌月の末日までに届け出ます。届出の仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
健康保険・厚生年金は通常の基準で判断
健康保険と厚生年金保険には国籍や在留資格による適用除外はなく、日本人と同じ基準で加入の要否が決まります。所定労働時間・日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、原則として加入します。雇用期間が2か月以内の有期契約で、それを超えて使用される見込みがない場合は加入しません。厚生年金に加入した人は、帰国後に脱退一時金を請求できます。
所得税は居住者か非居住者かで変わる
給与にかかる所得税は、本人が所得税法上の居住者か非居住者かで扱いが変わります。日本に住所がなく、1年以上居所を有しない人は非居住者に当たり、国内で受ける給与には原則として20.42%の税率で源泉徴収が行われます。滞在予定が1年以内のワーキングホリデーの人は非居住者と判断されることが多い一方、住所の有無は生活の実態で判断されるため、雇い入れの時点で本人の滞在予定を確認し、源泉徴収の区分を決めます。個別の事情で判断が変わる部分なので、判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。
ワーキングホリデーから就労ビザへの切替え
ワーキングホリデーの人を気に入り、期間の満了後も正社員として雇い続けたい、という相談は少なくありません。この場合、技術・人文知識・国際業務などの就労資格の要件(大学卒業などの学歴、または実務経験)を満たしている必要があります。要件の中身は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?で扱っています。
もう1つの問題は手続の順序です。ワーキングホリデーは本国の日本大使館・総領事館で査証を受けて入国する前提の制度で、日本国内で就労資格へ在留資格を変更できるかどうかは、国籍によって扱いが分かれるとされています。変更が認められない国籍の人は、いったん帰国し、会社が在留資格認定証明書の交付を受けて改めて入国する流れになります。国籍ごとの扱いは出入国在留管理庁の公表資料で確認できておらず(公式資料では未確認)、申請前に地方出入国在留管理局に確認するのが確実です。
見落とされやすいのが、切替え後の仕事の範囲です。ワーキングホリデーのあいだは飲食店のホール、ホテルの清掃、農作業など何でもできましたが、技術・人文知識・国際業務に切り替えた後は、専門的な知識を使う業務に限られます。ワーキングホリデーで接客を担当していた人を、同じ接客の仕事のまま就労資格に切り替えることはできません。インバウンド客への通訳・翻訳や、海外取引の事務など、学歴や職歴と結びつく業務を用意できるかが、切替えの可否を分けます。現場の仕事を続けてもらいたい場合は、特定技能の試験に合格して特定技能1号に切り替える道もあります。
雇用を続けたい場合は、ワーキングホリデーの在留期限の3〜4か月前には方針を決め、国内での変更申請か、帰国後の認定証明書による呼び寄せかを選ぶ必要があります。
よくある質問
ワーキングホリデーで日本で就労できますか?
できます。ワーキングホリデーの特定活動は、休暇の旅行資金を補う範囲で報酬を受ける活動を認めており、風俗営業に当たる仕事を除けば、職種や時間の制限はありません。
ワーキングホリデーで日本に滞在できる期間は?
原則1年以内です。英国についてはユース・モビリティ・スキームで最長2年とされています。入国時の在留期間が6月の人は、取決めの範囲内で日本国内の更新を受けて滞在を続けます。
ワーキングホリデーで日本で働ける時間に上限はありますか?
法令上の上限はありません。留学生や家族滞在の人の資格外活動のような週28時間の制限はかからず、フルタイムで働くこともできます。ただし制度の目的は休暇なので、休暇を過ごす実態がない働き方は制度の趣旨に合いません。
ワーキングホリデーは何歳まで利用できますか?
原則として申請時に18歳以上30歳以下です。オーストラリア、カナダ、韓国、アイルランドは原則18歳以上25歳以下で、各国政府が認める場合は30歳以下まで申請できます。
ワーキングホリデーの外国人は雇用保険に入りますか?
入りません。ワーキングホリデー制度による入国者は雇用保険の適用除外です。ハローワークへの外国人雇用状況の届出は、様式第3号で行います。
採用の前に、期間と出口を決めておく
ワーキングホリデーの外国人は、在留資格の手続を会社がしなくても雇える数少ない人材です。その手軽さの裏で、雇う側に残る確認は2つあります。1つは入口で、在留カードの「特定活動」と指定書の「ワーキング・ホリデー」の文言を見て、風俗営業に当たる職場でないことを確かめること。もう1つは出口で、在留期限の満了日と、その後も雇い続けるかどうかを採用の時点で本人と話しておくことです。
期間限定の人材として受け入れるのか、就労資格への切替えまで見据えるのかで、面接で確認すべき学歴や職歴も変わります。就労資格の選び方は外国人を採用できる在留資格の種類一覧にまとめています。
根拠資料
- ワーキング・ホリデー制度(外務省・2026年4月1日更新)
- 外国人の雇用に関するQ&A(ハローワーク福岡中央 福岡外国人雇用サービスセンター・令和4年7月)
- No.2875 居住者と非居住者の区分(国税庁)
- No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ(国税庁)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。