ミャンマー人の緊急避難措置による「特定活動」は、現在の在留資格の活動を終えた人に原則として「特定活動(1年・就労可)」を認める措置で、職種や労働時間の制限なく働くことができます。ただし、自らの意思で技能実習先を離れた場合など「自己の責めに帰すべき事情」がある人には「特定活動(6か月・週28時間以内の就労可)」しか認められず、2024年10月1日からは、技能実習を修了していない技能実習生の変更そのものが大きく制限されました。雇う側は、在留カードの「特定活動」の表示だけで判断せず、旅券に貼られた指定書で「1年・就労可」か「週28時間以内」かを必ず確かめる必要があります。
緊急避難措置の特定活動とは|2021年5月28日に始まった措置
ここでいう緊急避難措置とは、ミャンマーの情勢不安を理由に帰国できない在留ミャンマー人に、日本での在留と就労を認める出入国在留管理庁の措置を指します。2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生したことを受け、入管庁は同年5月28日からこの措置を始めました。入管庁の資料(令和6年10月改訂)によると、この措置で在留している人は2023年末時点で約15,000人です。
対象者は、ミャンマー国籍を持つ人、またはミャンマーに常居所がある外国籍の人で、ミャンマーの情勢不安を理由に日本での在留を希望する人です。難民認定申請中の人も対象になり、不法滞在中の人についても、在留特別許可が相当な場合は同様の対応をとるとされています(入管庁Q&A、令和3年7月30日掲載・令和6年9月27日更新)。
この措置には、入管法や告示に根拠規定がありません。法務大臣が個々の外国人について活動を指定する、いわゆる告示外の特定活動です。そのため内容は入管庁の公表資料で運用され、これまでに2022年4月15日と2024年10月1日の2回、取扱いが変わっています。特定活動の全体像は特定活動ビザとは?告示・告示外の種類一覧と就労できる号・できない号で整理しています。
重要なのは、この措置が「活動を終えた人」のためのものだという点です。現在の在留資格の活動を続けている人は変更の必要がなく、入管庁のQ&Aも、日本の大学で学んでいる留学生について「在留資格を変更する必要はありません」と答えています。留学生が卒業前に特定活動に切り替えるといった使い方は想定されていません。
就労の可否は3つの区分で決まる|1年・就労可と6か月・週28時間
緊急避難措置の特定活動は、在留資格の活動を満了したかどうかと、満了しなかった理由によって、3つに区分されています。
| 対象者 | 2024年10月1日からの取扱い |
|---|---|
| 現在の在留資格の活動を満了した人(雇用契約の満了、技能実習の修了、卒業など) | 特定活動(1年・就労可) |
| 自己の責めに帰すべき事情によらず、活動を満了できなかった人 | 特定活動(1年・就労可)。ただし技能実習生は、実習継続が困難となり、監理団体等が実習先変更の措置を講じても新たな実習先を確保できなかった場合に限る |
| 自己の責めに帰すべき事情により、活動を満了しなかった人 | 特定活動(6か月・週28時間以内の就労可)。技能実習を修了していない人で残りの在留期間がある場合は変更を認めない |
出典:出入国在留管理庁「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置(令和6年10月改訂)」
「1年・就労可」は、就労の時間や職種に制限がない指定です。飲食店のホール、工場のライン作業、介護の補助など、技術・人文知識・国際業務では認められない現場の仕事にも、フルタイムで就けます。この点が、企業からこの特定活動の人材に注目が集まる理由です。
一方の「6か月・週28時間以内の就労可」は、留学生のアルバイトと同じ水準の時間制限がかかる指定です。この区分の人をフルタイムで雇うと、本人は資格外活動、会社は不法就労助長罪の問題になります。雇用主の責任は不法就労助長罪とは?で解説しています。
「週28時間以内」の区分にも出口はあります。入管庁のQ&Aは、この特定活動を許可されてからおおむね1年間、刑罰法令違反や入管法令違反を犯さず適正に在留していると認められるなど、個々の事案に応じて在留状況を踏まえ、「特定活動(1年・就労可)」を許可するとしています。
「自己の責めに帰すべき事情」とは
入管庁のQ&Aは、この言葉を例で説明しています。本国からの送金で学費と生活費を賄っていた留学生が、送金が途絶えて除籍・退学を余儀なくされた場合は、自己の責めに帰すべき事情とは扱いません。一方、適正に技能実習が行われているにもかかわらず、自らの意思で実習先を離れた技能実習生は、自己の責めに帰すべき事情があると扱います。判断は主に現在の在留資格の活動状況で行われますが、留学生や技能実習生として在留していた人については、過去の在留資格での活動状況も含めて総合的に判断されます。
2024年10月1日の改訂|技能実習の途中離脱者は原則変更できない
2024年10月1日の改訂は、技能実習生に的を絞ったものです。入管庁は理由として、技能実習を修了していない技能実習生が緊急避難措置を「誤用・濫用的に利用している事例が散見されている」ことを挙げています。
改訂後、技能実習を修了していない人が「1年・就労可」に変更できるのは、自己の責めに帰すべき事情によらず実習の継続が困難になり、監理団体等が実習先変更に必要な措置を講じたにもかかわらず、新たな実習先を確保できなかった場合に限られます。この場合は、監理団体(企業単独型は実習実施者)が作成する「説明書」の提出が必要で、実習の継続が困難になった理由と、実習先変更の措置の実施状況を記載します。監理団体が説明書を作成しない場合や、すでに廃業している場合は、地方出入国在留管理官署に相談するよう案内されています。
自己都合で実習先を離れ、まだ技能実習の在留期間が残っている人は、「週28時間以内」の区分への変更も認められません。以前は、実習先を離れて緊急避難措置の特定活動に切り替え、その後に就労制限のない区分へ移るという流れが見られましたが、この改訂でその経路は閉じられました。
技能実習生を受け入れている企業にとって、この改訂には二つの意味があります。一つは、ミャンマー人実習生が「特定活動に切り替えれば自由に働ける」と考えて離脱するリスクが下がったことです。もう一つは、実習継続が困難になったときに、監理団体が実習先変更の措置を尽くしたかどうかが、本人の在留に直結するようになったことです。入管庁のQ&Aは、監理団体等が新たな実習先の確保に必要な支援を行わない場合は外国人技能実習機構に相談するよう案内しています。
更新と「いつまで続くか」
緊急避難措置の特定活動は、ミャンマーの情勢が改善されていないと認められる場合、在留期間更新許可申請を経て在留を続けることができます。2026年9月29日時点で、入管庁の措置ページに終了時期は示されていません。
措置の終了時期が公表されていない以上、企業も本人も、この特定活動が将来も続く前提で長期の計画を立てるのは危うい選択です。措置は情勢を理由とした緊急の対応で、終了や内容の変更は入管庁の判断で行われます。終了が発表されてから別の在留資格を探すのでは、要件を満たすための試験や学歴の証明が間に合わない可能性があります。
更新の実務で見落とされやすいのが費用です。2026年10月1日から在留手続の手数料が改定され、在留期間1年の更新は窓口33,000円・オンライン27,000円、6か月は窓口18,000円・オンライン15,000円になりました(改定前はいずれも窓口6,000円・オンライン5,500円)。毎年更新が必要なこの特定活動では、本人の負担が大きく増えます。在留期間の長い通常の就労資格へ移る動機の一つになる数字です。手数料改定の詳細は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?をご覧ください。
更新の審査では、本国情勢に加えて、日本での在留状況が見られます。所属機関の変更の届出を14日以内に出しているか、住民税や国民健康保険料を納めているか、長期間無職の状態が続いていないか、といった点です。就労制限のない在留資格であっても、これらの義務が免除されるわけではありません。
雇用するときの確認点|在留カードと指定書
緊急避難措置の特定活動の人を雇うときは、在留カードだけでは就労の範囲がわかりません。在留カードの表面には在留資格「特定活動」と在留期間が記載され、就労制限の有無の欄には「指定書により指定された就労活動のみ可」といった表示になります。就労の中身は、旅券に貼付された指定書に書かれています。
確認の手順は次のとおりです。
- 在留カードで在留資格が「特定活動」であること、在留期間と満了日を確認し、在留カード等番号失効情報照会で有効性を確かめる
- 旅券の指定書を見せてもらい、指定された活動の内容を確認する。時間の制限(週28時間以内など)の記載がないかを読む
- 在留期間が「6月」であれば、週28時間以内の区分である可能性が高いため、指定書の文言で必ず確かめる
- 雇入れ後はハローワークへの外国人雇用状況の届出を行い、在留資格欄には「特定活動」と記載する
指定書の具体的な文言は個々の許可ごとに異なり、入管庁は記載例を公表していません(公式資料では未確認)。採用面接の段階で指定書の写しの提出を求め、在留期間の満了日を人事台帳で管理しておくのが確実です。採用時の届出と確認の流れは福岡で外国人を採用したい企業へでも整理しています。
特定技能・技術・人文知識・国際業務への変更
緊急避難措置の特定活動から、通常の就労資格への変更は可能です。ただし、変更先の在留資格の要件を、他の申請者と同じように満たす必要があります。特定活動で在留していた期間が、要件を緩める方向に働くことはありません。
特定技能1号へ変更する場合
特定技能1号に変更するには、分野ごとの技能測定試験と日本語試験に合格しているか、同じ分野に関係する技能実習2号を良好に修了していることが必要です。技能実習2号を修了してから緊急避難措置の特定活動に移った人は、この試験免除を使える可能性があります。技能実習を途中でやめた人は、原則として試験に合格する必要があります。
審査では、特定活動の期間中の在留状況も確認されます。指定書の範囲を超えて働いていなかったか、届出や納税を適正に行っていたか、といった点です。技能実習を途中でやめた経緯がある場合は、その理由と、その後の経過を時系列で説明できるようにしておきます。国内在住のミャンマー人を特定技能で採用する場合は、ミャンマー側の送出機関を通す必要がありません。ミャンマー人の特定技能採用の手続はミャンマー特定技能の手続き|OWIC・認定送出機関と情勢による採用リスクにまとめています。
技術・人文知識・国際業務へ変更する場合
技術・人文知識・国際業務に変更するには、大学卒業などの学歴と業務との関連性、または10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験が必要です。日本の大学や専門学校を卒業した後に緊急避難措置の特定活動に移った人は、学歴要件を満たしていることが多く、変更の現実的な候補になります。ミャンマーの大学を卒業している場合は、卒業証明書と成績証明書の取り寄せが課題になりがちです。
注意したいのは、特定活動の期間中に就いていた現場の仕事が、技術・人文知識・国際業務の職務にはならない点です。変更後は、専門的な知識を必要とする業務に就く必要があり、業務内容の説明書類で職務の中身を具体的に示します。要件の全体は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?をご覧ください。個別の経歴や在留状況によって許否の見通しは変わるため、変更の可否は事前に確認しておくことを勧めます。
永住申請との関係
緊急避難措置の特定活動のまま永住許可を申請するのは、現実的ではありません。永住許可に関するガイドラインは、現在の在留資格で最長の在留期間を持っていることを求めており、特定活動の最長の在留期間は5年です。1年または6か月の許可を受けているこの特定活動では、この要件を満たしません。日本での定住を考えるなら、まず在留期間の長い就労資格や身分系の在留資格に移ることが前提になります。
よくある質問
ミャンマー人の特定活動はいつまで有効ですか?
個々の許可の有効期間は、在留カードに記載された在留期間の満了日までです。措置そのものは、ミャンマーの情勢が改善されていないと認められる場合に更新が可能とされ、2026年9月29日時点で終了時期は公表されていません。
ミャンマーの特定活動は何時間まで働けますか?
「特定活動(1年・就労可)」は時間の制限がありません。「特定活動(6か月・週28時間以内の就労可)」は週28時間以内です。どちらかは在留カードでは判別できないため、旅券の指定書で確認します。
ミャンマーの特定活動の理由書とは?
緊急避難措置の特定活動への変更申請に添付する書類で、入管庁が様式(日本語・ミャンマー語・英語、やさしい日本語版)と記載例を公表しています。技能実習生用の理由書は別の様式で、技能実習を継続できない理由を含めて詳細に書くよう求められています。
難民申請中でも緊急避難措置の特定活動に変更できますか?
できます。入管庁のQ&Aは、難民認定申請を行っているミャンマー人についても、緊急避難措置による在留資格変更許可申請を受け付けるとしています。この場合に許可されるのは緊急避難措置の特定活動で、難民申請中の人に通常付与される特定活動とは別の枠組みです。就労の範囲は指定書で確認します。
技能実習の途中で特定活動に変更した人を雇ってもよいですか?
指定書の範囲内であれば雇用できます。ただし2024年10月1日以降、技能実習を修了していない人が緊急避難措置の特定活動に変更するには、監理団体等の説明書による裏付けが必要になりました。採用時には、特定活動に変更した時期と経緯、指定書の内容を確認してください。
「今は働ける」と「この先も働ける」を分けて考える
緊急避難措置の特定活動は、情勢不安で帰国できないミャンマー人に、在留と就労の道を開いた措置です。「1年・就労可」であれば職種や時間の制限なく雇用できるため、人手不足の現場には魅力的な人材の供給源になっています。ただ、この在留資格は本国情勢を理由とした緊急の措置で、根拠は入管庁の運用にあり、終了時期も示されていません。
雇う側が考えるべきなのは、今この人が働けるかという確認と、この先も働き続けられる在留資格をどう用意するかという計画を、分けて進めることです。採用時には指定書で就労の範囲を確かめ、採用後は、特定技能の試験の受験や、学歴を生かした技術・人文知識・国際業務への変更など、措置に依存しない在留資格への移行を本人と一緒に検討してください。移行の準備を始めるのは、措置の変更が発表された後では遅いというのが、2022年と2024年の2度の改訂から読み取れる教訓です。
根拠資料
- 本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置(出入国在留管理庁)
- 本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置(令和6年10月改訂)(出入国在留管理庁)
- 〔Q&A〕本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置について(出入国在留管理庁・令和3年7月30日掲載、令和6年9月27日更新)
- ミャンマーにおける情勢不安を理由に本邦への在留を希望する方へ(出入国在留管理庁・令和3年5月28日、令和6年9月27日更新)
- 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則(e-Gov法令検索)
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