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医療滞在ビザとは|身元保証機関・同伴者・特定活動と国保に入れない理由

医療滞在ビザとは、海外に住む外国人が日本で治療や検診を受けるために発給される査証で、滞在が90日以内なら在留資格「短期滞在」、入院して90日を超えるなら在留資格「特定活動」(医療滞在)で在留します。申請には、経済産業省または観光庁に登録された身元保証機関の関与が必要です。特定活動(医療滞在)で在留する患者と同伴者は、住民票があっても国民健康保険に加入できないと省令で明記されており、医療費は全額自己負担になります。

医療滞在ビザは「査証」と「在留資格」の2層でできている

医療滞在ビザという言葉は、2つの仕組みをまとめて呼んでいます。

1つは、外務省が運用する「医療滞在査証」です。在外公館で発給される入国のための査証で、外務省のページ(2026年8月1日更新)は対象を「日本において治療等を受けることを目的として訪日する海外在住の外国人患者等」としています。入院治療だけでなく、人間ドック、健康診断、歯科治療、温泉湯治などの療養も対象です。

もう1つは、入国後に日本で在留するための在留資格です。医療滞在査証で入国した人は、滞在期間に応じて次のどちらかの在留資格を持ちます。

滞在期間 在留資格 査証申請の前に必要なもの
90日以内 短期滞在 身元保証機関の身元保証書、医療機関の受診等予定証明書
90日超(6か月または1年) 特定活動(医療滞在) 上記に加え、地方出入国在留管理局の在留資格認定証明書

外務省は、90日を超える滞在は「入院が前提」としています。人間ドックや外来での治療で長期間滞在することは想定されていません。

在留資格「医療」は、日本の免許を持つ医師や看護師が日本で働くための就労資格で、医療滞在ビザとはまったく別の制度です。両者の違いは医療ビザとは|医師・看護師の在留資格「医療」と医療滞在ビザの違いで整理しています。

特定活動(医療滞在)の根拠|告示25号・26号

90日を超えて入院する患者の在留資格は、法務大臣があらかじめ告示で定めた特定活動の一つです。いわゆる特定活動告示(最近改正は令和8年4月8日法務省告示第31号)は、次のように定めています。

  • 25号(患者):本邦に相当期間滞在して、病院又は診療所に入院し疾病又は傷害について医療を受ける活動及び当該入院の前後に当該疾病又は傷害について継続して医療を受ける活動
  • 26号(同伴者):前号に掲げる活動を指定されて在留する者の日常生活上の世話をする活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)

25号の文言で重要なのは、「入院し」という要件と、入院の「前後」の通院が含まれるという範囲の2点です。入院を伴わない長期の通院治療や、療養目的の長期滞在は25号に当たりません。一方、手術の前の検査や、退院後のリハビリのための通院は、同じ病気・けがについて継続している限り含まれます。

在留期間は、外務省の案内では6か月または1年で、治療が続く場合は在留期間の更新を申請できます。

身元保証機関とは|登録制の「受入れの調整役」

医療滞在ビザの特徴は、身元保証機関が手続の中心にいることです。ここでいう身元保証機関とは、日本の医療機関での外国人患者の受入れをアレンジする国際医療交流コーディネーターや旅行会社を指します。外務省は、身元保証機関が受診のアレンジ、受入医療機関の確定、必要書類の発行を担うとしています。

身元保証機関になれるのは、経済産業省(医療渡航支援企業)または観光庁(旅行会社)に登録された事業者です。日本に住む親族や知人が身元保証人になる一般の短期滞在査証とは、ここが違います。日本の親族が患者を呼び寄せたい場合でも、医療滞在査証を使うなら、登録された身元保証機関を通す必要があります。

外務省が示す申請の流れは次の4段階です。

  1. 患者が身元保証機関に連絡し、受診をアレンジしてもらう
  2. 身元保証機関が受入医療機関を確定する
  3. 医療機関の「受診等予定証明書」と身元保証機関の「身元保証書」などの必要書類をそろえる
  4. 患者が在外公館で査証を申請する

90日を超える入院の場合は、3と4の間に、地方出入国在留管理局への在留資格認定証明書交付申請が入ります。代理人として申請できるのは、患者の入院予定先の病院の職員と、日本に住む親族です(出入国在留管理庁)。認定証明書が交付された後の流れは在留資格認定証明書が交付されたら?で解説しています。

在留資格認定証明書の提出書類

出入国在留管理庁が示す患者本人の提出書類は、次のとおりです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書、写真、返信用封筒
  • 病院等が発行した受入れ証明書
  • 入院先・治療予定表・滞在先を明らかにする資料
  • 滞在費用を支払えることを示す資料(医療機関への前払金の証明書、民間医療保険の保険証書、預金残高証明書、支払保証書などのいずれか)

同伴者の申請では、滞在日程、滞在場所、連絡先と、患者との関係を記載した資料、滞在中の経費を支払えることを示す資料を提出します。日本で発行される証明書は発行から3か月以内のもの、外国語の資料には日本語訳が必要です。

同伴者の範囲|親族でなくてもよいが、働けない

外務省は、同伴者について「親戚以外の者も同伴者として認められます」としています。患者の身の回りの世話をする目的で来日する人であれば、配偶者や子に限られず、知人や付添いのための人も対象になり得ます。

同伴者の在留資格も、患者と同じ構造です。患者が90日以内の短期滞在なら同伴者も短期滞在で、患者が特定活動(25号)で在留するなら同伴者は特定活動(26号)です。26号の文言は「前号に掲げる活動を指定されて在留する者の日常生活上の世話」なので、患者が25号の在留資格を持っていることが同伴者の在留の前提になります。

同伴者は、告示の文言どおり、収入を伴う事業の運営や報酬を受ける活動ができません。看病の合間に日本でアルバイトをすることも認められません。

短期滞在で入国した後に入院が必要になった場合

観光や親族訪問で短期滞在として入国した外国人が、日本滞在中に急に病気やけがで入院することになった場合は、医療滞在査証を取り直さなくても、日本国内で手続ができます。出入国在留管理庁は、次のように案内しています。

  • 治療が90日以内で終わる見込み:「短期滞在」の在留期間更新許可申請
  • 治療が90日を超える見込み:「特定活動」(医療滞在)への在留資格変更許可申請

どちらの場合も、医師の判断として早急な入院・治療が必要であることと、医療費を含む滞在経費と出国の費用を支払えることを、診断書や資料で示す必要があります。変更申請では、病院が発行した受入れ証明書と治療予定表も必要です。本人が入院中で申請できないときは、法定代理人、申請取次の行政書士・弁護士のほか、親族なども代理で申請できます。

短期滞在から他の在留資格への変更は、入管法20条3項ただし書により「やむを得ない特別の事情」がなければ認められないのが原則です。入国後の急病や事故は、この事情の典型例として扱われています。短期滞在からの変更の考え方は短期滞在から在留資格変更はできる?「やむを得ない特別の事情」と認定証明書交付後の扱いで扱っています。

これに対し、最初から日本での入院治療を目的にしていたのに、観光名目の短期滞在で入国し、入国後に特定活動へ切り替えようとするのは、この仕組みの想定外です。治療が目的なら、最初から医療滞在査証と在留資格認定証明書で手続するのが筋になります。

国民健康保険に入れない理由

特定活動(医療滞在)の在留期間は6か月または1年なので、患者と同伴者は中長期在留者として在留カードを受け取り、住民票も作られます。通常、在留期間が3か月を超えて住民票がある外国人は国民健康保険の対象になりますが、医療滞在はその例外です。

国民健康保険法施行規則1条2号は、国民健康保険の適用除外となる者として、特定活動のうち「病院若しくは診療所に入院し疾病若しくは傷害について医療を受ける活動又は当該入院の前後に当該疾病若しくは傷害について継続して医療を受ける活動を行うもの及びこれらの活動を行う者の日常生活上の世話をする活動を行うもの」を挙げています。患者も同伴者も、住民票の有無にかかわらず国保に加入できません。

同じ規則の3号・4号は、1年を超えない期間滞在して観光・保養などを行う特定活動(いわゆるロングステイ)の人とその配偶者も除外しています。被用者保険の被扶養者についても、健康保険法施行規則37条の3が、医療滞在の特定活動で在留する人を、住民票があっても被扶養者から除いています。日本で働く家族がいても、その健康保険の扶養に入れて治療費を軽くすることはできません。

この除外が置かれている理由は、制度の目的から説明できます。国民健康保険は、日本に住んで生活する人が保険料を出し合う相互扶助の仕組みです。治療を受けること自体を目的に来日する人を加入させれば、加入直後から高額な給付だけを受けることが可能になり、保険料を負担している住民との公平が保てません。医療滞在の在留資格の審査で、滞在費用を支払えることを示す資料が必ず求められるのも、同じ考え方の裏返しです。

医療費はどうなるのか

医療滞在ビザで来日した患者の医療費は、公的医療保険が使えないため全額自己負担で、自由診療として医療機関が定める料金で請求されます。保険診療の点数に一定の倍率を掛けた料金を設定している医療機関もあり、同じ治療でも日本の保険加入者の自己負担とは大きく異なります。

支払いの確保は、申請の段階から組み込まれています。在留資格認定証明書の申請では前払金の証明書、民間医療保険の証書、預金残高証明書、支払保証書のいずれかが求められ、身元保証機関が医療機関と患者の間で概算費用の前払いを調整するのが一般的な流れです。治療の途中で追加の費用が発生した場合の精算方法も、事前に身元保証機関を通じて確認しておく必要があります。

訪日外国人の医療費の未払いは、政府の対策の対象にもなっています。未払い歴のある外国人に対して次回の入国審査を厳格化する運用があると報じられていますが、その具体的な基準は公表資料で確認できていません(公式資料では未確認)。

よくある質問

医療滞在ビザの滞在期間はどのくらいですか?

外務省の案内では、90日以内、6か月、1年のいずれかで、患者の病態を踏まえて決まります。90日を超える滞在は入院が前提で、特定活動(医療滞在)の在留資格になります。治療が続けば在留期間の更新を申請できます。

医療滞在ビザの有効期間は延長できますか?

在留期間は、特定活動なら在留期間更新許可申請で延長できます。短期滞在で入国した患者の治療が延びた場合は、90日以内なら短期滞在の更新、90日を超えるなら特定活動への変更を申請します。査証の有効期間とは別の話で、数次査証の有効期間は必要に応じ最長3年(1回の滞在は90日以内)です。更新の申請は在留期間の満了前に行う必要があり、申請できる時期の目安は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?で解説しています。

医療滞在ビザの身元保証機関はどこですか?

経済産業省に登録された医療渡航支援企業、または観光庁に登録された旅行会社です。登録事業者の一覧は、両省庁のページで公表されています。

医療滞在ビザで働くことはできますか?

できません。患者の活動は治療を受けることに限られ、同伴者も告示で報酬を受ける活動が除かれています。資格外活動許可によるアルバイトも、医療滞在の目的と両立しないため、原則として想定されていません。

医療滞在ビザの対象医療機関に制限はありますか?

外務省の案内では、受入医療機関は身元保証機関が確定するものとされています。在留資格の申請では「病院等が発行した受入れ証明書」が必要で、入院を伴う特定活動の場合は病院または診療所であることが告示上の前提です。

手続の起点は「滞在期間」と「入院の有無」

医療滞在ビザを検討する患者や家族、受け入れる医療機関にとって、最初に決めるべきことは、滞在が90日以内に収まるかと、入院を伴うかの2点です。90日以内であれば短期滞在の医療滞在査証、入院して90日を超えるなら在留資格認定証明書と特定活動、滞在中の急病であれば国内での更新・変更、という形で手続の入口が分かれます。

そのうえで、国保に入れないことを前提に、医療費の全額をどう支払うかを先に固めておく必要があります。身元保証機関を選ぶ段階で、前払いの範囲、追加費用の精算、同伴者の人数と滞在費まで確認しておけば、入国後に費用や在留の問題で治療が止まる事態を避けられます。在留資格の判断は治療の内容と滞在計画で変わるため、入院期間が読めない場合は申請前に入管か専門家に相談してください。

根拠資料


在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。