「医療ビザ」という言葉は、まったく別の2つの制度を指して使われています。1つは、日本の国家資格を持つ医師や看護師などが日本の病院で働くための就労資格である在留資格「医療」。もう1つは、海外に住む外国人患者が日本で治療を受けるために来日する「医療滞在ビザ」で、こちらは90日以内なら短期滞在、それを超えて入院する場合は在留資格「特定活動」(告示25号)になります。前者は働くための資格、後者は治療を受けるための資格で、就労の可否も必要な書類も違うため、最初にどちらの話なのかを切り分ける必要があります。
医療ビザとは|2つの制度の違いを先に整理する
2つの制度の違いを、比べやすい項目で並べると次のとおりです。
| 項目 | 在留資格「医療」 | 医療滞在ビザ(短期滞在・特定活動) |
|---|---|---|
| 目的 | 医療職として日本で働く | 日本で治療・健診を受ける |
| 対象者 | 日本の免許を持つ医師・看護師など14職種 | 海外在住の外国人患者と同伴者 |
| 根拠 | 入管法別表第一の二、上陸基準省令 | 特定活動告示25号(患者)・26号(同伴者)、外務省の医療滞在査証 |
| 在留期間 | 5年・3年・1年・3月 | 90日以内(短期滞在)、6月・1年(特定活動) |
| 就労 | 医療業務に従事できる | できない |
| 主な関係者 | 雇用する病院・診療所・薬局 | 受入医療機関、身元保証機関 |
「医療ビザ」で調べる人には、医療職として働きたい外国人やその採用を考える病院の担当者と、「身元保証機関」「同伴者」といった語とあわせて患者としての来日を考える人の両方がいます。以下、在留資格「医療」から説明し、後半で医療滞在ビザを扱います。
在留資格「医療」の対象となる14職種
入管法別表第一の二の表は、在留資格「医療」の活動を「医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動」と定めています。どの資格が対象になるかは、上陸許可基準を定める法務省令(基準省令)が列挙しており、次の14職種です。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士
ここで重要なのは、いずれも日本の法律に基づく資格であり、日本の免許が必要だという点です。海外で医師や看護師の資格を持っていても、日本の国家試験に合格して免許を受けていなければ、在留資格「医療」の対象にはなりません。
列挙されていない医療関係職種、たとえば臨床検査技師、言語聴覚士、救急救命士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は、在留資格「医療」の対象外です。これらの職種で就労する場合に他の在留資格が使えるかは、業務内容による個別の判断になります(公式資料では未確認)。介護福祉士は在留資格「介護」の対象で、医療とは別の資格です。病院や介護施設で技術・人文知識・国際業務の人が担当できる業務の範囲は、介護施設で技人国の外国人ができる業務・できない業務で整理しています。
在留資格「医療」の要件|報酬・准看護師・招へい
基準省令は、14職種共通の要件と、職種ごとの追加要件を定めています。
共通:日本人と同等額以上の報酬
申請人は、それぞれの業務に日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事する必要があります。金額の下限が数字で決まっているわけではなく、同じ病院で同じ職種・経験年数の日本人職員の給与と比べて判断されます。比べ方の考え方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とはで解説しています。
准看護師:免許取得後4年以内の研修
准看護師として業務に従事する場合は「本邦において准看護師の免許を受けた後四年以内の期間中に研修として業務を行うこと」が要件です。准看護師のまま長く働き続けることは想定されておらず、4年の間に看護師の資格を取ることが前提になっています。
薬剤師・歯科衛生士・診療放射線技師など8職種:医療機関・薬局への招へい
薬剤師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士の8職種は、「本邦の医療機関又は薬局に招へいされること」が追加要件です。医師・歯科医師・看護師などにはこの要件がありません。
日本の看護師国家試験を受ける経路には、日本の看護学校や大学を卒業する方法のほか、外国の看護師学校養成所の卒業者が厚生労働大臣の受験資格認定を受ける方法、EPAに基づく看護師候補者として来日する方法があります。EPA候補者は、合格前も合格後も在留資格「特定活動」で在留し、在留資格「医療」とは別の枠組みです。外国人看護師の採用経路は外国人看護師を雇用するには|日本の免許と在留資格「医療」・EPA候補者の違いで詳しく扱います。
在留期間と更新|5年・3年・1年・3月
在留資格「医療」の在留期間は、5年、3年、1年、3月のいずれかです。出入国在留管理庁は、提出書類の区分を2つのカテゴリーに分けており、カテゴリー1が医師・歯科医師、カテゴリー2がそれ以外の医療従事者(薬剤師、看護師、理学療法士、臨床工学技士など)です。
更新の審査では、許可された職種の業務を継続しているか、報酬が日本人と同等額以上か、税金や社会保険料を納めているかが確認されます。准看護師の場合は、免許取得から4年の期間との関係が更新の可否に直結します。勤務先の病院を変えた場合は、14日以内に所属機関に関する届出を出す必要があります。
在留期間の満了日までに更新申請をしていれば、審査中に満了日を過ぎても、処分の日か満了日から2か月を経過する日のいずれか早い日まで、従前の在留資格で在留できます。更新手続の時期は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?を参考にしてください。
医療滞在ビザとは|外国人患者のための査証と在留資格
ここからは、治療を受けるために来日する外国人患者の制度です。外務省は「医療滞在査証」を運用しており、同省のページ(2026年8月1日更新)は対象を「日本において治療等を受けることを目的として訪日する海外在住の外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)」としています。
対象となる治療の範囲
医療滞在査証の対象は入院治療に限られず、外務省は「人間ドック・健康診断から温泉湯治などの療養まで、幅広い分野が対象」と説明しています。歯科治療や90日以内の温泉湯治も含まれます。
滞在期間:90日以内なら短期滞在、それを超えると特定活動
医療滞在査証で認められる滞在期間は、90日以内、6か月または1年で、患者の病態などを踏まえて決まります。90日を超える滞在は入院が前提です。
- 90日以内:在留資格「短期滞在」で入国
- 90日を超える入院治療:在留資格「特定活動」(告示25号)で入国
告示25号の活動は「本邦に相当期間滞在して、病院又は診療所に入院し疾病又は傷害について医療を受ける活動及び当該入院の前後に当該疾病又は傷害について継続して医療を受ける活動」です。通院だけで長期滞在することは想定されていません。
必要に応じて、有効期間最長3年の数次査証も発給されます。ただし数次査証は1回の滞在期間が90日以内の場合に限られます。
同伴者:親族以外も可、就労は不可
外務省によれば、同伴者は患者の親族に限らず、必要に応じて親族以外の人も同行できます。90日を超える滞在の同伴者は、特定活動告示26号(患者の日常生活上の世話をする活動)で在留します。同伴者は、収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動をすることはできません。
医療ビザの身元保証機関とは
医療滞在査証の申請では、身元保証機関が中心的な役割を担います。外務省は身元保証機関を「日本の医療機関における外国人患者等の受入れをアレンジする国際医療交流コーディネーター及び旅行会社等」と位置づけており、受診のアレンジ、受入医療機関の確定、必要書類の準備を担当します。
申請の流れは、次の順番です。
- 患者が身元保証機関に連絡する
- 身元保証機関が受入医療機関を確定し、医療機関が「医療機関による受診等予定証明書」を作成する
- 患者が在外公館に、旅券、写真、申請書、受診等予定証明書、身元保証書などを提出して査証を申請する
身元保証機関は、経済産業省または観光庁に登録された事業者であることが必要です。個人が日本の親族を保証人として申請する一般の短期滞在査証とは、この点で手続が異なります。登録の基準は、経済産業省(医療渡航支援企業)と観光庁(旅行会社)がそれぞれ公表しています。
医療機関の側から見ると、身元保証機関と連携して受診等予定証明書を作成することが主な役割です。外国人患者を受け入れる病院が、身元保証機関を通さずに患者と直接やり取りする場合でも、査証の申請には登録された身元保証機関の関与が求められます。
日本滞在中に入院が必要になった場合
観光などの短期滞在で来日した外国人が、滞在中に病気やけがで入院し、当初の在留期間を超えて日本にいる必要が生じることがあります。出入国在留管理庁は、この場合の手続を治療期間で分けています。
- 治療が90日以内で済む見込み:「短期滞在」の在留期間更新許可申請
- 90日を超える見込み:「特定活動」(医療滞在)への在留資格変更許可申請
どちらの場合も、医師による「早急に入院して治療を行う必要がある」との判断と、医療費を含む滞在費用と出国費用を支払えることを書類で示す必要があります。特定活動への変更では、受入医療機関の受入証明書と入院予定先の資料も求められます。本人が入院中で申請できないときは、弁護士、行政書士、親族などによる代理申請が認められています。
よくある質問
医療ビザの資格は?
働くための在留資格「医療」の対象は、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士の14職種で、いずれも日本の免許が必要です。治療を受けるための医療滞在ビザには資格要件はなく、受入医療機関と身元保証機関の手続を経て申請します。
医療ビザは何年ですか?
在留資格「医療」は5年・3年・1年・3月のいずれかで、更新できます。医療滞在ビザは、90日以内の短期滞在か、6か月または1年の特定活動で、治療が続く場合は更新を申請できます。数次査証の有効期間は最長3年です。
医療ビザで保険はどうなりますか?医療費は自己負担ですか?
在留資格「医療」で働く人は、勤務先の健康保険に加入します。医療滞在の特定活動で在留する患者と同伴者は、国民健康保険法施行規則1条2号により国民健康保険の対象から除かれています。治療費は全額自己負担で、申請時にも医療機関への前払金の領収書、民間医療保険の証書、預金残高証明書などで支払能力を示す必要があります。
医療ビザでできる仕事は?
在留資格「医療」でできるのは、許可を受けた職種の医療業務です。看護師として許可された人が、病院の事務職として働くことはできません。医療滞在ビザの患者と同伴者は、報酬を受ける活動が一切できません。
医療ビザに必要な書類は?
在留資格「医療」の認定申請では、申請書、写真、日本の免許証の写し、雇用契約書などの労働条件を示す資料、医療機関の概要を示す資料などを提出します。医療滞在の特定活動では、日本の病院等が発行した受入証明書、治療予定表、滞在費用を支払えることを示す資料が中心です。
採用の相談か、患者の受入れの相談かで窓口が違う
在留資格「医療」と医療滞在ビザは、名前が似ているだけで、関わる人も手続もまったく違います。医療職として外国人を採用する病院であれば、最初に確認するのは日本の免許の有無と職種です。免許があれば在留資格「医療」、看護師国家試験の合格前ならEPAの特定活動、介護業務なら「介護」や特定技能というように、免許と業務の組合せで在留資格が決まります。
外国人患者を受け入れる医療機関であれば、身元保証機関との連携体制を整えることが先になります。査証の申請は患者本人が在外公館で行いますが、受診等予定証明書の作成や、入院が延びた場合の在留資格の変更など、医療機関の協力なしには進まない場面が多くあります。どちらの制度も、個別の事情で必要書類や判断が変わるため、手続の前に入管や専門家へ確認してください。
根拠資料
- 在留資格「医療」(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(e-Gov法令検索)
- 在留資格「特定活動」(医療滞在及びその同伴者)(出入国在留管理庁)
- 医療滞在査証を申請される外国人患者等の皆様へ(外務省・2026年8月1日更新)
- 「医療滞在査証」に係る外国人患者等受入れ医療機関の皆様へ(外務省)
- 「短期滞在」で在留している外国人の方で、日本の病院に入院して医療を受けるため、当初の在留期間を超えて在留する必要がある場合(出入国在留管理庁)
- infoservice/healthcare/kokusaitenkai/iryotokoshienkigyomuke.html”>医療渡航支援企業向け情報(経済産業省)
- 国民健康保険法施行規則 第1条(e-Gov法令検索)
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