短期滞在から他の在留資格への変更は、原則としてできません。入管法20条3項ただし書が「短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする」と定めているためです。出入国在留管理庁の「出入国審査・在留審査Q&A」は、日本に滞在している間に在留資格認定証明書が交付されたことだけでは、この「やむを得ない特別の事情」に当たらないとも明記しています。就労ビザでも配偶者ビザでも家族滞在でも、基本の道筋は、認定証明書の交付を受けていったん出国し、査証を取って入国し直すことです。
短期滞在からの在留資格変更は原則として認められない
在留資格の変更は、入管法20条に定めがあります。同条3項本文は、法務大臣は「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」許可できるとしています。ここまでは、技術・人文知識・国際業務から経営・管理へ、留学から就労へ、といった一般の変更と同じ基準です。
短期滞在だけは、その後にただし書が続きます。「やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする」。一般の変更が「相当の理由」で足りるのに対し、短期滞在からの変更は、それよりもう一段高い基準を満たさなければ許可されないという構造です。
入管庁のQ&A(Q55)は、この条文を受けて次のように答えています。
入管法では、「短期滞在」からの在留資格変更については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとされていますので、原則として認められません。日本に中長期間在留することを希望する場合は、地方出入国在留管理局等に対して在留資格認定証明書交付申請(在留資格認定証明書交付申請の対象外である場合は在外公館での査証申請)を行ってください。 (注)単に本邦に在留中に在留資格認定証明書が交付されたことをもって、やむを得ない特別の事情に該当するものではありません。
なぜ短期滞在だけ扱いが違うのか。短期滞在の査証や上陸審査は、観光・親族訪問・商談など90日以内の滞在を前提に、就労系の在留資格よりも簡易な書類で行われます。短期滞在で入国してから国内で中長期の在留資格に切り替えることを広く認めると、査証審査と上陸審査を経ずに中長期の在留が始まることになります。ただし書は、この迂回を防ぐための規定と読むのが自然です。
「在留資格認定証明書が交付されたから変更できる」は通らない
実務では長く、「短期滞在で来日中に在留資格認定証明書を取れば、それを添付して国内で変更申請できる」と説明されてきました。一部の専門家は、この扱いが2019年ごろから厳しくなったと指摘しています。入管庁のQ&Aの注記は、少なくとも現在の公式な立場として、認定証明書の交付だけでは足りないことを示しています。
ここで重要なのは、認定証明書の交付と在留資格の変更が、法律上まったく別の手続だという点です。
- 在留資格認定証明書:日本に入国しようとする外国人が、上陸の条件(在留資格該当性と上陸許可基準)に適合することを、法務大臣が事前に証明する文書(入管法7条の2)。海外にいる人が査証を申請するときに使う
- 在留資格変更許可:すでに日本に在留している外国人の在留資格を切り替える許可(入管法20条)
認定証明書が交付されたということは、上陸の条件を満たすと判断されたということです。それ自体は変更の「相当の理由」の材料にはなっても、短期滞在のただし書が求める「やむを得ない特別の事情」とは別の話になります。日本国内で認定証明書を受け取った場合は、交付日から3か月以内に、出国して在外公館で査証を取り、日本に入国するのが原則の流れです。交付後の手順は在留資格認定証明書が交付されたら?で解説しています。
査証の申請先にも注意が必要です。外務省の「よくある質問」は、査証は「出身国(地域)又は居住国(地域)に所在する日本大使館又は総領事館」で申請するよう求め、「原則として旅行先では申請できません」としています。近隣の第三国に出て査証を取る方法は、原則として想定されていません。
「やむを得ない特別の事情」に当たりうる場面
では、どのような事情であれば「やむを得ない特別の事情」と認められるのか。入管法にも公表されているQ&Aにも、具体的な類型は列挙されていません。入国・在留審査要領(入管の内部審査基準)にも短期滞在からの変更に関する記載がありますが、開示版では該当部分の詳細を筆者が確認できておらず、審査要領上の具体的な例示は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
公表されている資料と条文の趣旨から、筆者は次のように整理しています。共通するのは、いったん出国して正規の手順を踏むことを求めるのが、本人や家族にとって酷であるか、そもそも不可能な場面だという点です。
| 場面 | 例 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 本国に戻れない | 本国の情勢悪化、戦争・紛争 | 入管庁が制度として変更を認めた例がある(ウクライナ避難民) |
| 出国できない身体状況 | 本人の重い病気・けが、妊娠後期・出産 | 医師の診断書など客観資料で、出国が困難であることを示せるか |
| 出国すると家族生活に重大な支障 | 日本人・永住者と日本で婚姻し、配偶者の介護・出産・子の養育が差し迫っている | 婚姻の実体、来日時点での予見可能性、再入国までの期間と支障の大きさ |
公表された例として分かりやすいのが、ウクライナ避難民の扱いです。入管庁は、避難を目的としてウクライナから短期滞在で入国したウクライナ国籍の人(ウクライナに常居所がある外国籍の人を含む)について、就労可能な「特定活動(1年)」への在留資格変更許可申請ができるとしています。本国に戻ること自体が不可能になった状況で、短期滞在からの変更が制度として認められた例です。
反対に、次のような事情だけでは「やむを得ない特別の事情」と評価されにくいと考えられます。
- 日本で就職先が決まった、会社が早く働いてほしいと言っている
- 査証を取り直す時間や渡航費がもったいない
- 認定証明書の審査を待つ間に短期滞在の期限が来る
- 当初から中長期の在留を予定していたのに、短期滞在で入国した
最後の点は特に重要です。来日前から結婚や就職を予定していたのに、手続の近道として短期滞在で入国した場合、上陸時の申告と実際の目的が食い違っていたと見られるおそれがあります。変更が不許可になるだけでなく、次回以降の入国審査や在留審査で不利に扱われることもありえます。
就労ビザ・配偶者ビザ・家族滞在別の進め方
検索されることが多いのは、家族滞在、配偶者ビザ、就労ビザへの切り替えです。それぞれの原則の進め方を整理します。
短期滞在から就労ビザへ(技術・人文知識・国際業務など)
企業が面接のために短期滞在で候補者を呼び、その場で内定を出した場合でも、国内での変更は原則として認められません。会社(受入れ機関の職員)が代理人となって、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請します。短期滞在の期限内に交付されなければ、本人は予定どおり出国し、本国で交付を待ちます。交付後に本国の日本大使館・総領事館で査証を取り、入国します。
就職が決まったことや会社の事業上の都合は、「やむを得ない特別の事情」の典型例には当たりません。採用の段取りとしては、短期滞在で来日する前に内定と雇用契約をまとめ、来日中は面接や職場見学にとどめ、認定申請は本人の帰国と並行して進めるのが現実的です。
短期滞在から配偶者ビザへ(日本人の配偶者等・永住者の配偶者等)
日本で婚姻届を出した場合も、原則は認定証明書の交付申請です。日本人配偶者が代理人として申請し、交付後に相手が本国で査証を取って入国します。配偶者ビザは、夫婦の同居と婚姻の実体が問われる在留資格であるため、婚姻の直後で出産が迫っている、日本人配偶者が重い病気で介護が必要といった事情がある場合には、国内での変更を検討する余地があります。どこまでが「やむを得ない特別の事情」に当たるかは、個別の事情で判断が変わります。申請する場合は、事情を裏付ける診断書などの資料と、婚姻の実体を示す資料を厚めに用意することになります。
短期滞在から家族滞在へ
外国人社員が、短期滞在で来日した配偶者や子をそのまま日本に残したいと考える場面です。家族滞在も、原則は認定証明書の交付申請です。扶養者である社員が代理人となり、身分関係の書類と扶養能力の資料を出します。家族滞在は扶養者の在留資格と収入で可否がほぼ決まるため、国内での変更を求める「特別の事情」は立てにくい類型です。
老親を呼び寄せたい場合
「短期滞在で来日した親をそのまま日本で扶養したい」という希望も、同じ壁に当たります。親を扶養する目的の在留資格は告示に定めがなく、高度専門職の親などの限られた場合を除き、入管庁のQ&A(Q56)も「外国人の親であることを理由として付与される在留資格はありません」としています。告示外の特定活動として許可された例は専門家が公表していますが、本人の高齢・病気で本国に扶養者がいないなど、事情が相当に重い場合に限られると考えたほうがよいでしょう。
変更申請を出す場合の手続と注意点
「やむを得ない特別の事情」があると判断して国内で変更を申請する場合の手続は、一般の在留資格変更許可申請と同じです。住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に、在留期間の満了日までに申請します。九州では福岡出入国在留管理局とその出張所が窓口です。申請の期限の考え方は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?で解説しています。
書類は、変更後の在留資格の提出書類一式に加え、理由書で「なぜ出国して手順を踏むことができないのか」を具体的に書きます。事情を裏付ける資料(診断書、出生予定日が分かる母子健康手帳、本国の状況を示す資料など)がなければ、理由書だけでは判断材料になりません。
特例期間にも注意が必要です。入管法20条6項は、在留期間の満了日までに変更申請をした場合、処分がされるまで、または満了日から2か月を経過する日までのいずれか早い時まで、従前の在留資格で在留できるとしています。ただし「三十日以下の在留期間を決定されている者」は除かれます。短期滞在90日で入国した人は特例期間の対象になりますが、30日・15日の人は対象外で、満了日を過ぎれば審査中でも不法残留になります。なお、2026年9月1日に施行された令和8年法務省令第48号により、短期滞在の在留期間は90日以内で日単位の指定もできるようになっています。上陸許可シールの日数を必ず確認してください。
不許可になった場合、通常は出国準備のための特定活動に切り替えて出国することになります。出国準備期間の扱いは公式案内をご確認くださいで扱っています。許可された場合の手数料は、2026年10月1日以降の許可から許可される在留期間に応じた額になり、在留期間1年なら窓口33,000円、オンライン27,000円です。
よくある質問
短期滞在から家族滞在に変更するにはどうすればいいですか?
原則として国内での変更はできないため、扶養者が代理人となって在留資格認定証明書の交付を申請し、交付後に家族が本国で査証を取って入国します。家族が日本にいる間に交付されても、それだけでは変更の理由になりません(入管庁Q&A Q55)。病気や出産などで出国できない事情がある場合に限り、国内での変更申請を検討します。
短期滞在ビザから配偶者ビザへ変更できますか?
原則はできません。日本で婚姻しても、認定証明書の交付申請から進めるのが基本です。出産が迫っている、日本人配偶者の介護が必要などの事情があれば、「やむを得ない特別の事情」として国内で変更を申請する余地があります。婚姻の実体と事情の両方を資料で示す必要があります。
短期滞在ビザから就労ビザに変更するにはどうすればいいですか?
会社が在留資格認定証明書の交付を申請し、本人は短期滞在の期限内に出国して本国で交付を待ちます。交付後に本国の日本大使館・総領事館で査証を取り、入国します。内定が出たことや会社が急いでいることは、「やむを得ない特別の事情」には当たりにくいと考えられます。
短期滞在から留学に変更することはできますか?
留学も原則は同じで、学校を通じて在留資格認定証明書の交付を申請し、本国で査証を取って入国します。短期滞在で来日して入学試験を受けることは認められていますが、合格したことだけで国内での変更が認められるわけではありません。
短期滞在の期限を延ばして認定証明書の交付を待てますか?
短期滞在の期間更新は、病気など人道上の理由がある場合に限られ、認定証明書の審査待ちは通常その理由になりません。更新が認められるのは、病気やけがで出国できない場合などに限られます。
急ぐ採用・結婚ほど「一度帰る」前提で日程を組む
短期滞在からの変更を考えるきっかけの多くは、急いでいる事情です。採用を急ぐ会社、結婚したばかりで離れたくない夫婦、親の体調が心配な家族。いずれも気持ちは理解できますが、入管法が求めているのは「急いでいる事情」より重い「やむを得ない特別の事情」です。
判断の軸は、一度出国して査証を取り直すことが、本人や家族にとって酷であるか、そもそも不可能かどうかです。そこに当たらないなら、最初から「帰国して認定証明書を待つ」前提で日程を組むほうが、結果として早く、次の審査への影響も残りません。短期滞在そのものの仕組みは短期滞在ビザとは?90日・30日・15日の違いと2026年9月からの日単位指定、不許可の通知を受け取ったときの対応は入管から不許可のハガキが届いたら?で解説しています。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 20条(e-Gov法令検索、2026年9月1日時点)
- 出入国審査・在留審査Q&A Q55・Q56(出入国在留管理庁)
- 在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)
- 在留資格「特定活動(1年)」への変更許可申請について(ウクライナ避難民、出入国在留管理庁)
- 査証 よくある質問(外務省)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。