外国人雇用管理指針(正式名称「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」)は、外国人を雇うすべての事業主が、募集・採用、労働条件、安全衛生、労働・社会保険、人事管理と生活支援、解雇の予防、雇用状況の届出について講ずべき措置を定めた厚生労働省の告示です。2007年(平成19年)8月3日の厚生労働省告示第276号として定められ、最新の改正(2026年5月29日告示第227号)は、2026年6月14日、同年10月1日、2027年4月1日の3段階で適用されます。指針そのものに罰則はありませんが、指針が確認を求めている事項の多くは労働基準法や入管法の義務と重なっており、守れていないと在留期間の更新や特定技能の受入れで会社側の問題として表に出ます。
この記事では、指針の構成を先に示し、各項目を会社が点検できるチェック表の形に置き換えたうえで、入管の在留審査と結びつく場面を整理します。
外国人雇用管理指針とは|根拠は労働施策総合推進法7条
指針の根拠は、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)です。同法7条は、事業主に対し、雇用する外国人が能力を発揮できるよう雇用管理の改善に努める責務と、解雇などで離職する外国人が再就職を希望するときに再就職を援助するよう努める責務を定めています。指針は、この責務を果たすために事業主が講ずべき措置を具体的に示したものです。
指針の対象となる「外国人」は日本国籍を持たない人で、特別永住者と、在留資格「外交」「公用」の人は除かれます(第三)。技能実習生は外国人労働者に含まれると明記されています。永住者や日本人の配偶者等のように就労制限のない人も対象で、国籍にかかわらず労働関係法令と社会保険関係法令が適用されることを前提に組み立てられています。
指針は8つの章で構成されています。
| 章 | 内容 |
|---|---|
| 第一 | 趣旨 |
| 第二 | 基本的考え方(労働関係法令・社会保険関係法令の適用、不法就労の禁止) |
| 第三 | 外国人労働者の定義 |
| 第四 | 事業主が講ずべき措置(募集・採用、労働条件、安全衛生、労働・社会保険、人事管理・生活支援・帰国援助、解雇の予防、派遣・請負) |
| 第五 | 外国人雇用状況の届出 |
| 第六 | 雇用労務責任者の選任(常時10人以上) |
| 第七 | 在留資格に応じた措置(特定技能・技能実習・留学生) |
| 第八 | 行政機関の援助と協力 |
中心は第四で、指針全体の分量の大半を占めます。書き方には「〜すること」と「〜するよう努めること」の2種類があり、前者は法令上の義務を確認的に書いたもの、後者は努力義務です。チェック表を作るときは、この区別を残しておくと優先順位が付けやすくなります。
2026年の改正で何が変わったか
最新の改正は、2026年1月23日に関係閣僚会議が決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」で外国人雇用状況届出制度の運用改善が掲げられたことと、2027年4月1日に育成就労制度が始まることを受けたものです(厚生労働省「外国人の雇用」ページ)。適用日は改正告示の附則で3段階に分かれています。
| 適用日 | 主な内容 |
|---|---|
| 2026年6月14日(第一条) | 基本的考え方に、日本人と外国人が互いに尊重し安全・安心に暮らせる秩序ある共生社会の実現と、外国人が日本の法律や制度を理解し責任ある行動をとれるよう事業主が適切な雇用管理を行う旨を追加。雇用状況の届出で在留カードを確認する際、本人の同意を得て在留カード等読取アプリケーションでICチップの情報と券面の記載を照合することが「適切である」と明記 |
| 2026年10月1日(第二条) | (公式資料では未確認)(改正告示の該当箇所を原文で確認できていないため、項目の特定を保留) |
| 2027年4月1日(本体) | 技能実習に関する記載を育成就労に置き換え(帰国旅費の負担者を監理支援機関とするなど)。改正法の経過措置で従前の例による技能実習生には、帰国援助と第七の措置について従前の例による |
6月14日の適用日は、在留カードとマイナンバーカードの一体化などを定めた改正入管法(令和6年法律第59号)の施行日と同じです。新しい様式の在留カードが交付され始めたのにあわせて、アプリによる照合を事業主の確認方法の標準として位置づけた改正と読めます。
第四の一 募集・採用のチェック表
| 確認項目 | 指針の書き方 | 区分 |
|---|---|---|
| 募集時に業務内容・契約期間・就業場所・労働時間・休日・賃金・労働社会保険の適用を書面で明示したか | 明示すること(本人希望時は電子メール等も可) | 義務 |
| 明示を母国語や平易な日本語で行ったか | 努めること | 努力 |
| 海外から呼ぶ場合、渡航・帰国旅費の負担割合と住居を事前に明確にしたか | 努めること | 努力 |
| 許可・届出のある職業紹介事業者を使い、違約金・保証金を取る業者を避けたか | 受けないこと | 義務 |
| 求人の申込みで国籍による条件を付けていないか | 十分留意すること | 留意 |
| 労働条件を変える場合、変更前後を対照できる書面で明示したか | 明示すること | 義務 |
| 採用前に、従事させる業務が在留資格上認められるかを確認したか | 確認すること/採用してはならないこと | 義務 |
入管の審査と最も直接に結びつくのは最後の項目です。在留資格で認められない業務に就かせれば、本人の資格外活動と、会社の不法就労助長罪(入管法73条の2)の問題になります。不法就労助長罪の罰則は現在3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、2027年4月1日からは5年以下・500万円以下に引き上げられます。確認の方法と責任の範囲は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説で解説しています。
特定技能の外国人を受け入れる場合は、違約金や保証金の契約をさせる者を取次機関として使う職業紹介事業者からあっせんを受けないことが、特定技能所属機関の基準にもなっている点に指針は注意を促しています。
第四の二 労働条件のチェック表
| 確認項目 | 指針の書き方 | 区分 |
|---|---|---|
| 国籍を理由に賃金・労働時間などで差別していないか | してはならないこと | 義務 |
| 雇用契約時に主要な労働条件を書面で交付したか | 交付すること | 義務 |
| 税金・社会保険料・労使協定による控除を説明し、手取り額が分かるようにしたか | 努めること | 努力 |
| 最低賃金以上を全額払い、寮費・食費の控除を実費相当にしているか | 支払うこと/不当な額とならないようにすること | 義務 |
| 強制貯金をさせていないか | してはならないこと | 義務 |
| 労働時間を客観的な方法で把握しているか | 把握すること | 義務 |
| 旅券・在留カードを会社が保管していないか | 保管しないようにすること | 義務 |
| 退職時に本人の金品を返し、請求から7日以内に出国する場合は出国前に返したか | 返還すること | 義務 |
労働条件の項目は、在留審査の報酬要件と重なります。技術・人文知識・国際業務などの就労資格では、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが上陸許可基準の一つです。国籍を理由に賃金を低く設定すると、指針の均等待遇に反するだけでなく、在留資格の基準を満たさなくなります。
旅券・在留カードの保管は、指針が明確に禁止している項目です。技能実習法48条も、技能実習生の旅券や在留カードを保管することを禁じています。本人の同意があっても、会社が預かる運用は避けてください。退職時の返還が遅れると、帰国の直前に本人が出国できないという事態につながります。
第四の三・四 安全衛生と労働・社会保険のチェック表
| 確認項目 | 指針の書き方 | 区分 |
|---|---|---|
| 安全衛生教育を母国語や視聴覚教材で、理解できる方法で行ったか | 行うこと | 義務 |
| 労災防止に必要な日本語と合図を習得させているか | 努めること | 努力 |
| 健康診断・ストレスチェックを実施し、結果を理解できる方法で説明したか | 実施すること/努めること | 義務・努力 |
| 雇入れ時に労働・社会保険の制度と給付の請求手続を周知したか | 努めること | 努力 |
| 被保険者に当たる外国人の資格取得手続をしたか | 手続をとること | 義務 |
| 離職時に健康保険の資格確認書(書面)を回収し、国保・国民年金の手続が必要な場合に教えたか | 回収するとともに教示するよう努めること | 努力 |
| 離職時に離職票を交付し、ハローワークの窓口を教えたか | 努めること | 努力 |
| 年金加入期間のある外国人が帰国する際、脱退一時金を説明したか(受給すると加入期間がなくなること、社会保障協定国の期間との通算も含む) | 努めること | 努力 |
社会保険の加入は、在留審査で会社と本人の双方に影響する項目です。在留期間の更新では、公的義務の履行が「相当の理由」の判断要素の一つとされ、社会保険に加入させていない会社の従業員は、本人に落ち度がなくても不利な評価を受けることがあります。特定技能では、受入れ機関が社会保険と労働保険の法令を守っていることが基準そのものです。更新審査との関係は在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で解説しています。
脱退一時金の説明の項目では、指針は、脱退一時金を受け取るとその計算の基礎となった期間が加入期間でなくなり、受給資格期間10年との関係で将来の老齢年金に影響することと、社会保障協定の相手国の年金期間と通算できる場合があることを、帰国前に伝えるよう求めています。受け取るかどうかの判断材料まで説明することが事業主に期待されている点は、指針の中でも踏み込んだ書き方です。
第四の五・六 人事管理・生活支援・帰国援助・解雇予防
この部分は努力義務が中心ですが、帰国と在留手続に関わる項目が含まれています。
| 確認項目 | 指針の書き方 | 区分 |
|---|---|---|
| 社内規程の多言語化、評価・賃金決定の透明性を確保しているか | 努めること | 努力 |
| 日本語教育、生活習慣・雇用慣行の理解の支援、行政・医療・金融機関の情報提供を行っているか | 努めること | 努力 |
| 苦情・相談の窓口を設け、行政の一元的相談窓口も案内しているか | 努めること | 努力 |
| 在留期間満了で更新されない場合、帰国手続の相談に応じているか | 努めること | 努力 |
| 病気などやむを得ない理由で帰国旅費を払えない場合に負担しているか | 努めること | 努力 |
| 在留資格の変更・更新の手続のために勤務時間を配慮しているか | 努めること | 努力 |
| 一時帰国を希望する場合に休暇の取得を配慮しているか | 努めること | 努力 |
| 安易な解雇・雇止めをしていないか。会社都合の離職で再就職を希望する場合に援助しているか | 行わないようにすること/努めること | 義務・努力 |
帰国旅費と一時帰国は、在留資格によって努力義務では済まない場合があります。特定技能の外国人が雇用契約の終了後に帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関がその旅費を負担し、出国が円滑に行われるよう必要な措置を講ずることが、特定技能雇用契約の基準とされています。一時帰国の希望に対して必要な休暇を取得させることも同じく基準です。技能実習生については、帰国事由が自己都合の場合も含めて監理団体(企業単独型は事業主)が帰国旅費を負担し、2027年4月1日以降の育成就労では、この役割が監理支援機関に移ります。退職・帰国時の手続の一覧は外国人社員の帰国手続き|会社がやる税・年金と本人の転出届・在留カード返納で整理しています。
会社都合の解雇について、指針は、労働契約法上の解雇権濫用法理と有期契約の中途解雇の制限に留意し、外国人労働者に安易な解雇を行わないよう求めています。特定技能では、非自発的離職者を出すと一定期間新たな受入れができなくなるため、解雇や退職勧奨は受入れの継続そのものに関わります。
第五・第六 雇用状況の届出と雇用労務責任者
第五は、労働施策総合推進法28条1項の外国人雇用状況の届出の方法を定めています。確認する事項は、雇用保険の被保険者であれば氏名・在留資格・在留期間・生年月日・性別・国籍・地域・在留カード番号などで、雇入れは翌月10日まで(資格取得届と併せて)、離職は翌日から10日以内(資格喪失届と併せて)に届け出ます。被保険者でない人は、雇入れ・離職とも翌月末日までに様式第3号で届け出ます。届出をしない、または虚偽の届出をすると、同法40条の罰則(30万円以下の罰金)が適用され得ます。
確認は在留カードの提示を求めて行い、資格外活動許可で働く人は許可の有無、特定技能と特定活動の人は指定書も確認します。2026年6月14日からは、前述のとおり読取アプリでICチップと券面を照合することが適切とされました。ただし、確認するのは届出に必要な事項に限られ、それ以外の確認・届出は不要であり、プライバシーの保護に十分留意するよう指針は求めています。届出の内容は出入国在留管理庁にも提供され、在留審査の資料になります。その仕組みは外国人雇用状況の届出とは?ハローワークへの届出が入管の在留審査でどう使われるかで解説しています。
第六は、外国人労働者を常時10人以上雇用する事業主に、人事課長などを雇用労務責任者として選任するよう求めています。選任の方法とハローワークが開催する講習の受け方は外国人労働者雇用労務責任者とは|10人以上で選任する理由と無料講習の受け方で扱っています。
第七 在留資格に応じた措置
第七は、在留資格ごとに追加で留意すべき事項を定めています。
特定技能については、特定技能雇用契約と特定技能所属機関の基準に留意し、1号特定技能外国人支援と届出を適切に実施するよう求めています。支援には、社会保険などの行政手続の情報提供と同行、日本語習得の支援、医療機関の情報提供、苦情・相談への対応、日本人との交流の促進が含まれます。
技能実習生については、技能実習の基本方針に留意し、実効ある技能等の修得が図られるよう取り組むことを求めています。2027年4月1日からは、この部分が育成就労外国人に関する事項に改められます。
留学生については、新卒採用で留学生であることを理由に対象から除外しないこと、採用時には在留資格の変更許可が必要で、審査期間を考慮して採用活動を行うこと、アルバイトで雇う場合は資格外活動許可が必要で原則週28時間以内に制限されていることに留意するよう求めています。
指針違反が在留審査で問題になる場面
指針に違反したこと自体を理由に在留資格が不許可になるわけではありません。ただ、指針の項目のうち法令上の義務に当たるものは、入管の審査で別の形で表に出ます。筆者が整理すると、会社側の事情が審査に影響しやすいのは次の場面です。
- 在留資格で認められない業務に就かせていた:本人の資格外活動・在留資格該当性の否定、会社の不法就労助長罪
- 日本人より低い報酬を設定していた:技術・人文知識・国際業務などの報酬要件の不適合
- 社会保険に加入させていなかった:更新時の公的義務の評価、特定技能の受入れ機関の基準不適合
- 雇用状況の届出を出していない、または内容が実態と違う:入管が持つ情報との食い違いによる照会
- 旅券・在留カードを預かっていた:技能実習・育成就労での法令違反、失踪やトラブルの原因
- 特定技能で帰国旅費や一時帰国の休暇を拒んだ:特定技能雇用契約の基準違反
どの程度の影響になるかは、違反の内容と期間、是正の状況によって個別の事情で判断が変わります。重要なのは、指針を読んで「努力義務だから後回しでよい」と判断する前に、その項目が別の法令の義務や在留資格の基準と重なっていないかを確かめることです。
よくある質問
外国人雇用管理指針に違反すると罰則はありますか?
指針そのものに罰則はありません。ただし、指針が確認的に書いている事項の多くは、労働基準法、最低賃金法、入管法、社会保険関係法令などの義務であり、それぞれの法律の罰則が適用されます。外国人雇用状況の届出を怠った場合は、労働施策総合推進法40条により30万円以下の罰金の対象になり得ます。
「外国人を雇用する事業主の皆様へ」とは何ですか?
厚生労働省やハローワークが外国人を雇用する事業主向けに配布しているリーフレットの表題として使われている言葉です。外国人雇用状況の届出や雇用管理指針の内容を、事業主向けに短くまとめたものが多く、今回の改正についても厚生労働省がリーフレットを公表しています。最新版は厚生労働省の「外国人の雇用」のページから入手できます。
永住者や日本人の配偶者も指針の対象ですか?
対象です。指針の「外国人」から除かれるのは、特別永住者と在留資格「外交」「公用」の人だけです。永住者や日本人の配偶者等は就労制限がないため、採用時の在留資格上の確認は簡単になりますが、労働条件の明示や社会保険の手続、雇用状況の届出は他の外国人と同じく必要です。
技能実習生にも指針は適用されますか?
適用されます。指針は技能実習生が外国人労働者に含まれると明記しており、第四から第六までの措置に加えて、技能実習の基本方針に留意するよう求めています。2027年4月1日からは育成就労外国人に関する記載に改められますが、経過措置で従前の例による技能実習生には、帰国援助と在留資格に応じた措置について従前の例が適用されます。
チェック表の使い方|年1回の点検と入社・退職時の確認
指針は外国人を雇う会社の日常業務を広く覆っているため、全項目を一度に完璧にしようとすると手が止まります。筆者は、義務に当たる項目を入社時と退職時のチェックリストに組み込み、努力義務の項目は年1回、雇用労務責任者(10人未満の会社では人事担当者)が点検する形を勧めます。
入社時に確認するのは、在留資格と業務の適合、書面での労働条件の明示、社会保険・雇用保険の資格取得、雇用状況の届出、旅券・在留カードを預からないことです。退職時は、資格確認書の回収、離職票、雇用状況の届出、金品の返還、帰国する人への脱退一時金の説明です。この2つのタイミングを押さえておけば、在留審査で会社側の問題として指摘される事項の大半は防げます。
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根拠資料
- 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第276号、最終改正 令和8年5月29日厚生労働省告示第227号)
- 外国人の雇用(厚生労働省)
- 外国人雇用管理指針の改正に関するリーフレット(厚生労働省・PDF)
- 改正告示(令和8年厚生労働省告示第227号)(厚生労働省・PDF)
- 外国人雇用状況の届出(厚生労働省)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第7条・第28条・第40条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法 第73条の2(e-Gov法令検索)
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