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外国人社員の帰国手続き|会社がやる税・年金と本人の転出届・在留カード返納

外国人社員が退職して帰国するときに会社がやることは、出国前の年末調整、残りの住民税の一括徴収、社会保険の資格喪失、源泉徴収票の交付の4つが中心です。本人には、市区町村への転出届、空港での在留カードの返納、脱退一時金の請求、銀行口座と携帯電話の解約が残ります。本人の手続は会社の義務ではありませんが、転出届を出さずに帰国すると脱退一時金を請求できず、住民税の通知も届き続けるため、会社が退職前に一覧を渡しておくと、帰国後の問い合わせが大きく減ります。

入管とハローワークへの届出(外国人雇用状況の届出、所属機関に関する届出など)は外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続きを解説で解説しています。この記事は、それ以外の税・年金・住民票・在留カード・生活面の手続を、退職の1か月前から帰国後までの時系列で整理します。

帰国手続きの全体像|誰が、いつ、どこで

先に全体を一覧にしておきます。退職日と出国日が近いほど、手続が集中します。

時期 手続 担当 窓口
退職の1か月前まで 退職日・出国日の確定、納税管理人の要否の確認 会社・本人 ―
最後の給与の支払時 出国時の年末調整、住民税の一括徴収 会社 ―
退職日の翌日から5日以内 健康保険・厚生年金の資格喪失届 会社 年金事務所
退職日の翌日から10日以内 雇用保険の資格喪失届(外国人雇用状況の届出を兼ねる) 会社 ハローワーク
退職日から14日以内 所属機関に関する届出 本人 出入国在留管理庁
出国の14日前ごろから出国日まで 転出届、国民健康保険の脱退 本人 市区町村
出国の直前 銀行口座・携帯電話・公共料金の解約、住居の退去 本人 各事業者
出国日 在留カードの返納(再入国しない場合) 本人 空港の入国審査官
帰国後2年以内 脱退一時金の請求 本人 日本年金機構
翌年1月1日以後 脱退一時金の源泉税の還付申告 納税管理人 税務署

会社がやること① 出国前の年末調整と源泉徴収票

退職して帰国する社員は、出国によって所得税法上の非居住者になります。年の途中で非居住者になる社員については、出国の日までに支払う最後の給与で年末調整を行います(所得税法190条)。12月を待たずに、その年の1月から出国日までの給与について税額を確定させる手続です。

出国時の年末調整では、基礎控除や扶養控除は通常どおり適用されますが、生命保険料控除などは出国日までに支払った保険料が対象です。手続が終わったら源泉徴収票を作成して本人に渡します。本国で就職するときや、本国の税務当局から日本での所得の証明を求められたときに使うため、出国前に確実に渡してください。

注意が必要なのは、出国した後に支払う給与です。最後の月の給与や賞与、退職金の支払日が出国日より後になると、その支払は非居住者への支払として、原則20.42%で源泉徴収することになります。退職日と出国日が離れる場合は、支払日を出国前に設定できないか、就業規則と給与の締め日を確認しておくと、本人の手取りが減る事態を防げます。

会社がやること② 住民税の一括徴収と納税管理人

住民税は1月1日に住所がある人に前年の所得をもとに課税され、6月から翌年5月までの12回で給与から天引きされます。退職して天引きができなくなる場合、残りの税額の扱いは退職の時期で分かれます(地方税法321条の5第2項)。

  • 1月1日から4月30日までの退職:5月31日までに支払う給与・退職手当が残りの税額を超えるときは、残りの税額を最後の給与から一括で徴収する
  • 6月1日から12月31日までの退職:本人の申出があれば一括で徴収できる

帰国する社員は日本で普通徴収(納付書での支払)に切り替えても払う手段がなくなるため、筆者は、退職時期にかかわらず、本人の了解を得て一括徴収することを勧めます。

もう一つ見落としやすいのが、出国した年の翌年度の住民税です。1月1日に日本に住所がなければ、その年度の住民税は課税されません。反対に、1月1日時点で日本にいて、その後に帰国する社員は、前年の所得に対する住民税の全額を納める必要があり、一括徴収で足りない分は納付書で払うことになります。出国までに払いきれない場合は、日本に住む知人や会社の担当者などを納税管理人として市区町村に届け出ます(地方税法300条)。一括徴収の計算例と納税管理人の届出は外国人の住民税は帰国後どうなる?退職時の一括徴収と納税管理人【計算例つき】で解説しています。

会社がやること③ 社会保険・雇用保険の資格喪失と離職票

健康保険と厚生年金の資格喪失届は、退職日の翌日から5日以内に年金事務所へ提出します。社員と家族に交付していた資格確認書や、以前の健康保険証が手元に残っている場合は回収します。

雇用保険の資格喪失届は、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出します。外国人の場合、この届出に在留資格や在留期間などを記載することで、外国人雇用状況の届出を兼ねます。

離職票は、失業給付(基本手当)を受けるための書類です。基本手当は、日本で働く意思と能力があって求職活動をしている人が対象なので、帰国して日本で求職しない人は受け取れません。本人が離職票を希望しない場合は、離職証明書の添付を省略して資格喪失届を出すことができますが、離職日に59歳以上の人については希望の有無にかかわらず離職証明書の提出が必要です。帰国を予定していた人が日本で転職活動をすることもあるため、筆者は、本人に希望を確認したうえで、迷っている場合は発行しておくことを勧めます。

会社がやること④ 帰国費用と在留資格ごとの義務

在留資格によっては、帰国に関して会社に固有の義務があります。特定技能の受入れ機関は、雇用契約が終了した外国人が帰国旅費を負担できないときにその費用を負担し、出国が円滑に行われるよう必要な措置を講じることが求められます。技能実習では、帰国旅費は監理団体や実習実施者が負担します。

在留資格に関係なく、会社が本人の在留カードやパスポートを預かっていた場合は、退職日までに必ず返します。外国人雇用管理指針は、事業主が外国人労働者の旅券や在留カードなどを保管しないよう求めており、帰国の直前に「会社から返してもらえない」という相談が生じる原因にもなります。

本人がやること① 転出届と国民健康保険

日本を離れて海外に住む人は、住所地の市区町村に転出届(国外転出届)を出します。住民基本台帳法24条は、転出する人はあらかじめ転出先と転出予定日を届け出るよう定めており、多くの市区町村は転出予定日のおおむね14日前から受け付けています。受付の開始時期と必要書類は市区町村によって違うため、住んでいる市区町村の窓口に確認してください。

転出届で住民票が消除されると、国民健康保険に加入している人は資格を失い、国民年金の第1号被保険者の人も被保険者でなくなります。会社員として厚生年金・健康保険に加入していた人は、国民健康保険・国民年金の手続は通常ありません。退職日から出国日まで間が空き、その間に国民健康保険に切り替えた人は、転出届と同時に脱退の手続をします。

転出届を忘れて帰国したら

転出届を出さずに帰国すると、住民票が日本に残ったままになります。困ることは3つあります。

一つ目は、脱退一時金を請求できないことです。脱退一時金は、日本に住所がなくなってから請求できる制度で、請求書が日本年金機構に受理された日に日本に住所があると請求できません。住民票が残っていると、この点で手続が止まります。

二つ目は、住民税です。翌年の1月1日にも住民票が残っていると、市区町村は住所があるものとして扱う場合があり、課税の通知が届くことがあります。

三つ目は、次に来日したときの手続です。住民票が残っていると、新しく住民登録をするときに前の記録の整理が必要になります。

帰国後に気づいた場合は、市区町村によって代理人による届出や郵送での届出を受け付けている場合があるため、住んでいた市区町村に問い合わせてください。転出届を出さずに出国した場合、市区町村が実態調査のうえで住民票を職権で消除することもありますが、それまでにかかる期間は市区町村によって違います(公式資料では未確認)。

本人がやること② 在留カードの返納

再入国する予定がない人は、出国する空港で入国審査官に在留カードを返納します。入管法は、再入国の許可を受けていない中長期在留者が出国の確認を受けたときに在留カードが効力を失い(19条の14第3号)、直ちに返納しなければならないと定めています(19条の15第2項)。空港では出国審査の際に在留カードに穴を開けるなどして、返納の手続が行われます。

注意したいのは、みなし再入国許可を使って出国した場合です。出国の際に「一時的な出国であり再入国する予定です」という欄にチェックすると、在留カードは出国時には失効せず、本人の手元に残ります。その後1年以内(在留期限がそれより前に来る場合はその期限まで)に再入国しなければ、在留カードは効力を失い(19条の14第4号)、その日から14日以内に返納しなければなりません(19条の15第1項)。この場合は郵送で返納することになります。もう日本に戻らない人は、みなし再入国の欄にチェックしないよう伝えてください。みなし再入国許可の仕組みは再入国許可とみなし再入国許可の違い|長期出張・一時帰国で在留資格を失わないためにで解説しています。

本人がやること③ 脱退一時金の請求

日本の公的年金に6か月以上加入し、年金を受け取る資格を得ないまま帰国した外国人は、日本に住所がなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求できます。現在の支給額は加入期間60か月(5年)が上限で、上限を8年に引き上げる改正は、2025年6月20日の公布から4年以内の政令で定める日に施行されることになっています(2026年9月時点で施行日の政令は確認できていません)。

請求書は、転出届を出したうえで、転出予定日以降に日本年金機構に届くように送れば、出国前に提出することもできます。転出届を済ませていれば、住民票の除票の写しを付ける必要はありません。

厚生年金の脱退一時金からは、支給時に20.42%の所得税が源泉徴収されます。この税金は、翌年1月1日以後に「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を提出すると、多くの場合に全額または大部分が戻ります。帰国した本人は日本で申告できないため、出国前に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を税務署に出し、日本にいる人に申告を任せておきます。納税管理人になれる人に特別な資格はありません。

加入期間が10年以上ある人は脱退一時金の対象にならず、将来、日本の老齢年金を受け取ることになります。社会保障協定を結んでいる国の人は、脱退一時金を受け取ると日本の加入期間を通算できなくなることもあります。計算方法と受け取るかどうかの判断は外国人の脱退一時金とは?上限8年への改正はいつから・再入国許可中の請求制限で解説しています。

本人がやること④ 銀行口座・携帯電話・住居

最後の給与や脱退一時金の振込先として口座を残したい人もいますが、帰国して日本に住所がなくなった人の口座をそのまま使えるかは、銀行ごとの取扱いによります(公式資料では未確認)。本人に取引銀行へ確認してもらい、使えない場合は最後の給与の振込を確認してから解約するよう伝えます。

口座を解約せずに他人に譲り渡すことは、犯罪による収益の移転防止に関する法律で禁止されています。帰国する外国人の口座が売買されて特殊詐欺などに使われる事件が報道されており、譲り渡した本人も処罰の対象になります(同法28条)。「帰国するなら口座を売ってほしい」と持ちかけられても応じないよう、会社から一言伝えておく価値があります。

携帯電話は、契約者本人でなければ解約できないことが多いため、出国前に解約します。社宅や寮に住んでいる場合は、退去の立会いと鍵の返却、電気・ガス・水道の精算の日程を出国日に合わせて決めます。

帰国の時期と在留資格の関係

退職したからといって、すぐに帰国しなければならないわけではありません。在留期間が残っていれば、その期間内は日本に在留できます。ただし、技術・人文知識・国際業務などの就労資格の人が、その在留資格の活動を3か月以上行わずに在留していると、正当な理由がある場合を除き、在留資格の取消しの対象になります(入管法22条の4第1項6号)。転職活動中であることは正当な理由として考慮されます。

帰国を決めた後、出国までの間に働くことはできる場合とできない場合があります。退職後に別の会社で短期間働く場合は、その仕事が在留資格の範囲内かどうかを確認する必要があります。在留期間の満了日を過ぎて出国すると不法残留になり、次の来日に影響するため、出国日は在留期限より前に設定してください。

よくある質問

外国人が退職して日本に帰国する際の手続きは何がありますか?

会社は、最後の給与での年末調整と源泉徴収票の交付、住民税の一括徴収、健康保険・厚生年金・雇用保険の資格喪失届、ハローワークへの外国人雇用状況の届出を行います。本人は、入管への所属機関に関する届出(14日以内)、市区町村への転出届、空港での在留カードの返納、帰国後2年以内の脱退一時金の請求を行います。

外国人が帰国した場合、年末調整はどうなりますか?

年の途中で出国して非居住者になる社員は、出国の日までに支払う最後の給与で年末調整を行います(所得税法190条)。出国後に支払う給与や賞与は、非居住者への支払として原則20.42%で源泉徴収します。

外国人が帰国して税金を還付してもらうにはどうすればよいですか?

厚生年金の脱退一時金から源泉徴収された20.42%の所得税は、翌年1月1日以後に「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に出すと戻ります。本人は帰国しているため、出国前に納税管理人を決めて税務署に届け出て、申告と還付金の受取りを任せるのが一般的です。

退職して帰国する外国人に離職票は必要ですか?

帰国して日本で求職しない人は基本手当を受け取れないため、本人が希望しなければ離職票は発行しなくても構いません。ただし、離職日に59歳以上の人については、離職証明書を必ず提出します。日本で転職活動をする可能性がある場合は、発行しておくと本人が困りません。

外国人が退職したら帰国しなくてはいけませんか?

在留期間が残っていれば、すぐに帰国する必要はありません。ただし就労資格の人は、その活動を3か月以上行わずに在留すると、正当な理由がない限り在留資格の取消しの対象になります。転職活動をする場合は、活動の記録を残しておくと説明の材料になります。

「辞めた後」の問い合わせを減らすのは退職前の1枚

帰国する社員の手続で会社を悩ませるのは、法律上の義務よりも、帰国後に届く「住民税の通知が来た」「脱退一時金が請求できない」「口座が止まった」という問い合わせです。原因のほとんどは、転出届と納税管理人の2つが抜けていることにあります。筆者は、退職の申出を受けた時点で、この記事の一覧表をもとに、本人がやる手続と期限、会社が代わりにやる手続を1枚にまとめて母国語で渡すことを勧めます。会社の手続は出国前にしか間に合わないものが多いため、退職日と出国日が決まった日に、給与の支払日と住民税の一括徴収をあわせて決めてしまうのが最も確実です。

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