外国人社員を健康保険・厚生年金保険に加入させるときは、日本人と同じ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を、採用の事実発生から5日以内に事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。外国人に固有の手続は2つだけです。1つは、マイナンバー(個人番号)と基礎年金番号が結びついていない人、番号制度の対象外の人について「厚生年金保険被保険者 ローマ字氏名届」を同時に出すこと。もう1つは、個人番号を書かない場合に⑪住所欄へ住民票住所、住民票がなければ居所と理由(海外在住・短期在留・その他)を書くことです。以下、日本年金機構の様式と記入例(2026年7月13日時点の掲載分)に沿って、欄ごとに説明します。
外国人でも社会保険の資格取得届は同じ様式・同じ期限
健康保険法と厚生年金保険法の適用は国籍を問いません。適用事業所に使用され、加入要件を満たす人は、在留資格が技術・人文知識・国際業務でも特定技能でも技能実習でも、日本人と同じ条件で被保険者になります。加入義務の考え方は外国人社員の社会保険加入ルール|国籍で免除されない理由と加入条件の確認で詳しく扱っています。
届出の基本は次のとおりです。
- 様式:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
- 期限:事実発生(使用されるに至った日)から5日以内
- 提出先:事務センターまたは事業所の所在地を管轄する年金事務所
- 提出方法:電子申請、郵送、窓口持参
- 添付書類:原則不要(60歳以上の退職後継続再雇用や国民健康保険組合の適用除外の場合を除く)
外国人だからという理由で在留カードやパスポートの写しを添付する必要はありません。日本年金機構は、提出漏れが後で分かった場合は事実が発生した時点にさかのぼって保険料を納めることになると注意しています。入社手続が在留資格の申請と重なって後回しになりやすい外国人社員ほど、5日の期限を社内の入社チェックリストに組み込んでおくのが安全です。
資格取得届の記入例|外国人社員で注意する5つの欄
様式の欄のうち、外国人社員で迷いやすいのは次の5つです。記入例として、ベトナム国籍の「NGUYEN VAN AN(グエン ヴァン アン)」さんを技術・人文知識・国際業務で採用し、社宅を提供するケースを想定します。
| 欄 | 記入のしかた | 記入例 |
|---|---|---|
| ②氏名 | 住民票に登録されている氏名。フリガナはカタカナで正確に | フリガナ「グエン ヴァン アン」。ローマ字の綴りはローマ字氏名届で届け出る |
| ⑥個人番号[基礎年金番号] | 本人確認のうえ個人番号を記入。基礎年金番号を書く場合は10桁を左詰め | 個人番号通知書・マイナンバーカードの12桁 |
| ⑨報酬月額 | ㋐通貨と㋑現物を分けて記入 | ㋐230,000円、㋑社宅の現物給与額 |
| ⑪住所 | 個人番号を書いた場合は記入不要。書かない場合は住民票住所、住民票がなければ居所と理由 | 福岡県福岡市南区…(フリガナ付き) |
| ⑫資格確認書発行要否 | マイナンバーカードを持っていない、保険証利用登録をしていない等の場合にチェック | 来日直後でカード未取得なら「発行が必要」 |
②氏名はカタカナ、ローマ字は別の届で
資格取得届の氏名欄は、住民票に登録されている氏名を記入し、フリガナをカタカナで正確に書くよう求められています。日本年金機構は原則として住民票上の氏名と住所で年金記録を管理しているため、社内で使っている通称や英語のニックネームを書くと、記録の突合がうまくいきません。住民票にアルファベットの氏名しかない人でも、フリガナ欄のカタカナ表記が機構側の記録の基本になります。ローマ字の綴りは、後述のローマ字氏名届で別に届け出ます。
⑥個人番号を書けば⑪住所は不要
外国人でも、中長期在留者として住居地を届け出て住民票が作られれば、個人番号が付番されます。個人番号を記入した場合は、⑪住所欄の記入は不要です。来日直後で個人番号通知書が届いていない社員は、番号が分かるまで待って5日の期限を過ぎるより、分かる情報で期限内に出すことを優先してください。
⑨報酬月額は社宅・食事を「現物」に
報酬月額の㋐通貨には、給料・手当など名称を問わず労働の対償として金銭で支払うものすべての合計を書きます。外国人社員で見落としやすいのが㋑現物です。社宅や寮、食事を会社が提供している場合、その分は厚生労働大臣が定める額(食事・住宅は都道府県ごとの価額)で現物給与として記入します。特定技能や技能実習で寮を用意している事業所では、家賃相当額を給与から控除しているか、無償で提供しているかによって現物給与の額の計算が変わるため、雇用契約書と賃金台帳の記載をそろえておく必要があります。
⑫資格確認書は来日直後の社員で必要になりやすい
健康保険証の新規発行が終わったことに伴い、様式に「資格確認書発行要否」欄が設けられています。マイナンバーカードを取得していない人、カードはあるが健康保険証の利用登録をしていない人などが対象です。来日して間もない外国人社員は、マイナンバーカードの交付を受けていないことが多いため、この欄にチェックを入れないと、医療機関で資格を確認する手段がない期間ができてしまいます。
ローマ字氏名届の添付が必要になる人
日本年金機構の案内は、ローマ字氏名届の対象を「外国籍の従業員を採用した際、個人番号と基礎年金番号が結びついていない方、個人番号制度の対象外である方」としています。資格取得届と同時の提出が求められ、添付書類は不要です。資格取得届を電子申請で出す場合に限り、ローマ字氏名届を画像ファイル(PDF・JPEG)で添付できます。
ここでいう「個人番号と基礎年金番号が結びついていない」とは、日本で初めて年金制度に加入する人のように、機構の記録に個人番号がまだ登録されていない状態を指します。海外から直接採用した社員や、日本で働くのが初めての留学生出身者は、多くがこれに当たります。以前に日本で厚生年金に加入していた人でも、当時は個人番号と結びついていないことがあるため、判断がつかないときは同時に提出しておくのが無難です。
ローマ字氏名届の記入例(日本年金機構)で押さえるべき点は次の4つです。
- ①基礎年金番号:分かる場合に記入
- ④住民登録の有無:日本で住民登録されていない人は「1.無」、されている人は「2.有」
- ⑤ローマ字氏名:在留カード(または特別永住者証明書)か住民票に記載されているローマ字氏名を大文字で記入。フリガナは資格取得届と同じもの
- 関連届書使用氏名:資格取得届で使った氏名の欄にチェック
在留カードの記載順どおりに書くのが原則です。先の例なら「NGUYEN VAN AN」で、パスポートと社内システムで姓名の順序が違っていても、在留カードの表記に合わせます。ローマ字氏名を持っていない人(在留カードを持たない短期在留者、海外に住所がある人、在留カードにローマ字氏名が記載されていない人など)は、⑤欄に資格取得届と同じカナ氏名を書き、C理由記入欄の該当する理由にチェックします。
なお、ローマ字氏名届を出した後も、機構から送られる通知書や資格確認書はカナ氏名で表示されます。本人に「書類の名前がローマ字になっていない」と聞かれたときに説明できるよう、あらかじめ伝えておくとよいでしょう。
マイナンバーがない外国人社員の書き方
個人番号を記入できない外国人社員は、状況によって書き方が分かれます。
1つ目は、住民票はあるが個人番号がまだ分からない人です。⑥欄に基礎年金番号があれば10桁を左詰めで書き、⑪住所欄に住民票住所を都道府県から漢字で、マンション名まで正確にフリガナ付きで書きます。あわせてローマ字氏名届を出します。
2つ目は、日本に住民票がない人です。短期滞在で来日して働く役員や、在留期間が3か月以下の人などがこれに当たります。この場合、資格取得届の記入方法は「居所等を記入のうえ『1.海外在住』『2.短期在留』『3.その他』のいずれか該当する理由を○で囲み、『3.その他』に○をした場合は、その理由を記入」するとしています。ローマ字氏名届では④住民登録の有無を「1.無」にします。
3つ目は、日本での年金加入が初めてで、基礎年金番号も個人番号もまだ手元にない人です。この場合は⑥欄を空欄のまま⑪住所欄を埋め、ローマ字氏名届を添えて提出し、機構から基礎年金番号通知書が届くのを待つ扱いになると考えられますが、空欄のまま提出した場合の処理は管轄の年金事務所に確認してください(公式資料では未確認)。
「外国人でマイナンバーがない場合、社会保険はどうなるのか」という質問が多く見られますが、答えは加入義務は変わらず、届け方が変わるだけです。マイナンバーがないことを理由に加入手続を遅らせる根拠はありません。
社会保険の資格取得届に在留資格の欄はない
外国人社員の入社手続で混同されやすいのが、雇用保険との違いです。健康保険・厚生年金保険の資格取得届には、在留資格や在留カード番号を書く欄はありません。在留資格・在留期間・在留カード番号・資格外活動許可の有無を書くのは、ハローワークに出す雇用保険被保険者資格取得届の17欄〜23欄で、これが外国人雇用状況の届出を兼ねています。記入例は外国人社員の雇用保険|加入条件・適用除外(留学生・ワーホリ)と資格取得届の記入例で扱っています。
雇用保険の届出情報は入管の在留審査で参照されますが、年金事務所への資格取得届にはこうした連携の仕組みは設けられていません。その一方で、社会保険の加入状況は在留期間の更新や永住許可の審査で確認されます。会社が加入手続をしていなかったために社員の更新に影響が出る例もあり、その仕組みは社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?企業が確認すべきポイントを解説と外国人雇用状況の届出とは?ハローワークへの届出が入管の在留審査でどう使われるかで解説しています。
外国人社員の社会保険加入で必要な書類
会社が年金事務所に出す書類は、資格取得届と、該当者のローマ字氏名届です。家族を扶養に入れる場合は健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)を同時に出し、資格取得届の⑧被扶養者欄を「1.有」にします。海外に住む家族は2020年4月から原則として被扶養者になれないため、扶養の可否は社会保険の扶養に外国人配偶者を入れる条件|海外在住の家族が対象外の理由と手続きを確認してください。
記入のために社員から集めるものは次のとおりです。
- 在留カード(ローマ字氏名、住居地、在留期間の確認)
- 個人番号が分かる書類(個人番号通知書、マイナンバーカード等)と本人確認
- 基礎年金番号通知書・年金手帳(以前に日本で加入していた人)
- 住民票の写し(個人番号を書けない場合の住所確認に)
アメリカ、ドイツ、韓国、中国など社会保障協定の締結国から派遣されてきた社員は、本国の適用証明書を提出すれば日本の厚生年金への加入が免除される場合があります。協定の内容は国ごとに違い、健康保険も免除される国とされない国があります。対象国と手続は社会保障協定とは?外国人社員の年金二重加入を防ぐ手続きと締結国24か国一覧で扱っています。
よくある質問
外国人は社会保険に加入する義務はありますか?
あります。健康保険法と厚生年金保険法に国籍による適用除外はなく、適用事業所で加入要件を満たして働く外国人は、日本人と同じく被保険者になります。本人が将来帰国する予定であっても加入は免除されません。帰国時に厚生年金の保険料の一部を受け取る仕組みとして脱退一時金があります。
外国人でマイナンバーがない場合、社会保険はどうなりますか?
加入義務は変わりません。資格取得届の⑥欄に基礎年金番号を書くか、どちらの番号も書けない場合は⑪住所欄に住民票住所、住民票がなければ居所と理由(海外在住・短期在留・その他)を書き、ローマ字氏名届を同時に提出します。
外国人の社会保険はカタカナで手続きできますか?
できます。資格取得届の氏名とフリガナはカタカナで書き、機構からの通知書や資格確認書もカナ氏名で表示されます。ローマ字の綴りは、ローマ字氏名届で在留カードどおりに届け出ます。
アルバイトの外国人も社会保険の加入が必要ですか?
所定労働時間や賃金が加入要件を満たせば必要です。特定適用事業所で働く短時間労働者は、週の所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額88,000円以上などの要件をすべて満たすと加入し、資格取得届の⑩備考欄で「3.短時間労働者の取得」を○で囲みます。学生はこの短時間労働者の加入ルールから除かれるため、留学生は所定労働時間が正社員の4分の3以上にならない限り、原則として加入しません。詳しくは留学生アルバイトの雇用保険・社会保険|昼間学生の適用除外と加入する例外で扱っています。
入社日から5日を逆算して準備する
外国人社員の資格取得届で実務上の差が出るのは、様式の書き方よりも、入社前に何を集めておくかです。来日直後の社員は、住民票ができるのが住居地の届出の後、個人番号通知書が届くのはさらにその後になるため、入社日の時点で番号が手元にないことは珍しくありません。在留カードのローマ字氏名、住所、以前の日本での加入歴の有無を内定の段階で確認しておけば、5日の期限内に資格取得届とローマ字氏名届をそろえて出せます。
届出を正しく出しておくことは、社員本人が後で在留期間の更新や永住申請をするときの土台にもなります。加入の時期や報酬月額の記録は後から修正しにくいため、入社の初週に確実に済ませてください。
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根拠資料
- 従業員を採用したとき(日本年金機構・2026年7月13日更新)
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 記入例(日本年金機構・PDF)
- 従業員を採用したときの詳細説明(ケース2-1)(日本年金機構・PDF)
- ローマ字で氏名を登録(変更)するとき(日本年金機構・2025年12月25日更新)
- 厚生年金保険被保険者 ローマ字氏名届 記入例(日本年金機構・PDF)
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