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外国人労働者の日本語教育|社内研修の方法・費用と補助金、在留資格別の目標

外国人労働者の日本語教育は、「どのくらい話せるようになってほしいか」を感覚で決めるより、その人の在留資格が求める日本語の水準から逆算して目標を置くほうが、費用も時間も無駄になりません。2026年4月15日からは技術・人文知識・国際業務で通訳・翻訳・接客などに主に従事する人にCEFR B2相当の言語能力の立証が求められ、2027年4月1日に始まる育成就労では入国時A1・3年でA2という目標と、認定日本語教育機関による講習が制度に組み込まれました。日本語教育は福利厚生の話から、在留資格の要件を満たすための業務の話に変わりつつあります。本記事では、在留資格別の目標、社内研修と外部機関の使い分け、費用と労働時間の扱い、使える公的支援を順に整理します。

外国人労働者の日本語教育は在留資格から目標を決める

日本語の水準を表す物差しとして、国の制度で使われているのが、文化審議会国語分科会が2021年にまとめた「日本語教育の参照枠」です。欧州の言語共通参照枠(CEFR)に合わせ、A1(基礎段階の初め)からC2(熟達した段階)までの6段階で「日本語で何ができるか」を示します。日本語能力試験(JLPT)のN1〜N5は、この参照枠とおおよそ対応づけて使われています。

在留資格ごとに、制度上どの水準が要件や目標になっているかを並べると次のようになります。

在留資格 制度上の日本語の水準 主な根拠
技術・人文知識・国際業務(通訳・翻訳・接客などに主に従事) CEFR B2相当(JLPT N2以上、BJT400点以上、日本の大学卒業など) 2026年4月15日以降の申請から立証資料が必要
経営・管理 申請者または常勤職員のいずれかにB2相当の日本語能力 2025年10月16日施行の基準改正
特定技能1号 原則A2.2相当(JFT-Basic、JLPT N4以上)。介護は別に介護日本語評価試験 分野別運用方針
育成就労(2027年4月1日〜) 就労開始前にA1相当、3年でA2相当の試験合格が目標。本人意向の転籍にはA2.1相当以上 育成就労制度運用要領
定住者(日系3世の2回目以降の更新で在留期間5年を希望する成人) B1相当(JLPT N2、N3かつ104点以上、BJT400点以上など) 更新申請の提出書類

ここで重要なのは、要件になっている水準と、職場で実際に必要な水準は別だという点です。特定技能1号の人はA2.2相当の試験に合格して入国しますが、A2は「身近な話題なら簡単なやりとりができる」段階で、安全上の指示や顧客からのクレームを正確に理解できる水準ではありません。制度の水準は最低ライン、職場の水準は業務から決める、という二本立てで考えると計画が立てやすくなります。

在留資格別の日本語教育計画の例

目標から逆算した教育計画の例を、在留資格ごとに示します。時間数や期間は筆者が制度の要件から組み立てた一例で、社員の出発点や業務によって変わります。

技術・人文知識・国際業務|B2の「証明」をいつ取るか

2026年4月15日から、カテゴリー3・4の所属機関で、主に言語能力を用いて対人業務に従事する人(翻訳・通訳・接客など)について、CEFR B2相当の言語能力を証する資料の提出が求められるようになりました。日本語を使う業務であれば、JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、日本の大学卒業などがB2相当と扱われます。更新申請では、以前から同じ業務を続けている人は提出不要とされ、転職や配置転換で翻訳・通訳・接客などが主な業務になった場合に必要になります。要件の詳細は通訳・翻訳・接客の技人国にCEFR B2が必要にで解説しています。

会社の教育計画として押さえるべきなのは、日本語が十分に話せる社員でも、試験の合格証がなければ立証できないことです。技人国の社員を将来、接客や通訳の比重が大きい部署に異動させる可能性があるなら、異動の前にJLPTやBJTを受験させておくのが、在留手続の面から見た日本語教育の中心になります。JLPTは年2回(7月・12月)の実施で、結果が出るまでに2か月ほどかかるため、異動の半年以上前から逆算しておく必要があります。更新時の書類は技術・人文知識・国際業務ビザの更新で扱っています。

経営・管理|会社として日本語人材を置く

2025年10月16日の基準改正で、経営・管理では申請者か常勤職員のいずれかがB2相当の日本語能力を持つことが求められるようになりました。外国人経営者本人が日本語を学ぶ計画を立てるか、日本語能力のある常勤職員を置くかは、会社の体制の問題として判断します。誰が要件を満たせばよいかの読み方は経営管理ビザの日本語要件|B2相当が必要なのは申請者か常勤職員かで整理しています。

特定技能1号|支援計画の「日本語学習の機会」を中身のあるものに

特定技能1号の受入れ機関(または委託を受けた登録支援機関)は、1号特定技能外国人支援計画に基づいて、日本語学習の機会を提供する義務を負っています。地域の日本語教室や教材の情報を提供するだけでも形式上は支援になりますが、入国時のA2.2から、現場で安全指示を理解できる水準まで引き上げるには足りません。筆者は、入国後の最初の3か月に業務用語と安全表示に絞った社内学習(週1〜2回・1回1時間程度)を置き、その後はJLPT N3を1年目の目標にする組み立てを勧めています。特定技能2号への移行を見込む分野では、分野によって日本語試験の合格が求められることがあるため、分野別運用方針を確認してください。

育成就労|講習の時間数と受講機会の提供が制度上の義務

育成就労では、日本語教育が計画認定の要件そのものになります。入国後講習は、A1相当の試験に合格していない人は320時間以上(うち認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA1相当講習100時間以上)、合格している人は220時間以上です。そのうえで、3年間のうちに認定日本語教育機関のA2目標講習を100時間以上受講する機会を与え、開始から1年以内にA1相当の試験を受験させる必要があります。講習費用は受入れ側の負担です。時間数と経過措置の詳細は育成就労の入国後講習と日本語教育|320時間・220時間と認定日本語教育機関、段階ごとの要件は育成就労の日本語要件|入国時A1・1年目・転籍・特定技能移行時に必要なレベルで扱っています。

日本語教育の方法は4つ|社内研修・認定日本語教育機関・外部講座・自習

企業が選べる日本語教育の方法は、大きく次の4つです。

1つ目は社内研修です。日本人社員や社内の日本語講師が、業務で使う言葉を中心に教えます。費用は抑えられますが、教える側の負担が大きく、教え方の質にばらつきが出やすい方法です。

2つ目は認定日本語教育機関の利用です。認定日本語教育機関とは、2024年4月1日に施行された日本語教育機関認定法に基づき、教育課程・教員・施設などの基準を満たすとして文部科学大臣の認定を受けた機関を指します。課程には「留学のための課程」「就労のための課程」「生活のための課程」があり、企業で働く人向けに使うのは就労のための課程です。教えるのは、国家資格である登録日本語教員です。育成就労のA1相当講習・A2目標講習は、原則としてこの課程で受ける必要があります。

3つ目は民間の語学学校やオンライン講座です。業務日本語やビジネスマナーに特化した講座、1対1のオンラインレッスンなどがあり、勤務シフトに合わせやすいのが利点です。認定日本語教育機関でなくても、技人国や特定技能の社員の教育であれば制度上の制約はありません。

4つ目は教材を渡しての自習と、地域の日本語教室の活用です。費用はほとんどかかりませんが、学習が続くかどうかは本人次第になります。自治体や国際交流協会が運営する日本語教室は、生活場面の日本語を学ぶ場として有用です。

どれか1つを選ぶより、目標によって組み合わせるのが現実的です。業務用語と安全表示は社内で、文法と試験対策は外部の講座で、生活の日本語は地域の教室で、という分担にすると、社内の負担を業務に関わる部分だけに絞れます。

教材は「業務で使う言葉の一覧」から作る

市販の教材や学習アプリは多くありますが、どれを選んでも、それだけで職場の日本語が身につくことはありません。効果が出やすいのは、職場で実際に使う言葉を先に書き出し、それを教材の中心に置く方法です。

製造現場であれば、機械の部位の名前、「止める」「触らない」「危ない」といった安全に関わる動詞と表示、作業指示書に出てくる言葉が最優先です。介護であれば、身体の部位、介助の動作、記録に使う言葉が中心になります。これらを社内で一覧にし、写真やイラスト、本人の母語の訳を付けておくと、それ自体が教材になり、日本人社員が指示を出すときの確認表にもなります。

もう一つ見落とされやすいのが、日本人社員の側の話し方です。出入国在留管理庁と文化庁が2020年に「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」としてまとめた「やさしい日本語」は、短い文で、一文に一つの内容を、敬語を減らして伝える話し方です。外国人社員の日本語力が上がるには時間がかかるため、日本人社員が話し方を変えるほうが、職場のコミュニケーションは早く改善します。

費用と労働時間の扱い|受講時間は給与の対象になるか

日本語教育の費用として考えるべきものは、講師料・受講料、教材費、そして受講時間の賃金です。最後の点は見落とされがちですが、影響が大きい項目です。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)は、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講時間を労働時間に当たるものとして挙げています。会社が業務命令として日本語研修の受講を指示すれば、その時間は労働時間になり、賃金の支払いが必要です。所定労働時間外に行えば時間外労働になり、割増賃金の対象になります。本人の自由参加で、参加しなくても不利益な扱いがない研修であれば、労働時間には当たりません。育成就労制度Q&A(Q69)も、A2目標講習の受講時間を労働時間として扱うことまでは義務づけていません。

費用を本人に負担させる、あるいは「会社が負担した研修費は早期退職したら返還する」という約束をすることにも注意が必要です。労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定する契約を禁止しており、業務に必要な研修の費用について返還を約束させる条項は、この規定に違反すると判断されることがあります。特定技能や育成就労では、受入れ機関が負担すべき費用を本人に負担させること自体が問題になる場面もあります。雇用契約書への書き方は外国人の雇用契約書の作り方|多言語の労働条件通知書と在留資格の停止条件で扱っています。

日本語教育に使える補助金・公的支援

日本語教育そのものを対象にした企業向けの国の補助金は、多くありません。検討の対象になるのは次のようなものです。

  • 人材開発支援助成金(厚生労働省):職務に関連した訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度で、人材育成支援コースなど7つのコースがあります(2026年8月3日更新の案内)。日本語研修が職務に関連した訓練として対象になるかは、訓練の内容と計画の立て方によって変わるため、事前に労働局へ確認が必要です(公式資料では未確認)
  • 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース):就業規則の多言語化や通訳の配置など、外国人社員が働きやすい環境を整えた事業主への助成です。日本語研修の受講料そのものを助成する制度ではない点に注意してください。要件は外国人雇用の助成金はいくら?72万円は旧制度、10月から最大25万円にで扱っています
  • 外国人就労・定着支援研修:厚生労働省の委託を受けて一般財団法人日本国際協力センター(JICE)が実施する研修で、職場でのコミュニケーション能力の向上や、職場の習慣、労働関係法令、社会保険制度の知識を学ぶ各コース計100時間の内容です。対象は、日本で適法に就労できる在留資格を持つ外国人のうち、未就業者や安定した就労への移行が見込める就業中の人です。受講料の扱いは実施団体に確認してください(公式資料では未確認)
  • 自治体の補助・日本語教室:都道府県や市町村が、企業の日本語研修費用の一部を補助したり、企業向けの日本語講座を開いたりしていることがあります。福岡県・福岡市を含め、内容と募集時期は年度ごとに変わるため、各自治体の国際交流担当窓口で確認してください

助成金は「申請すれば出る」ものではなく、訓練を始める前の計画届の提出が必要なものが多い制度です。先に研修を始めてから助成金を探すと、対象外になることがあります。

よくある質問

外国人労働者の日本語教育にはどのような方法がありますか?

社内研修、認定日本語教育機関(就労のための課程)、民間の語学学校・オンライン講座、教材と地域の日本語教室を使った自習の4つが基本です。業務用語は社内、文法と試験対策は外部、生活の日本語は地域の教室というように、目的で組み合わせると社内の負担を抑えられます。

外国人労働者の日本語教育にかかる費用は?

講師料・受講料と教材費に加え、業務命令で受講させる場合は受講時間の賃金がかかります。認定日本語教育機関や民間講座の受講料は機関によって差が大きく、一律の相場はありません。育成就労の入国後講習やA2目標講習の費用は、受入れ側が負担することが前提になっています。

育成就労外国人の日本語教育は?

就労開始前にA1相当の日本語能力を身に付けることが前提で、入国後講習は320時間以上(A1相当の試験に合格していれば220時間以上)です。3年間でA2相当の試験合格が目標とされ、受入れ企業は認定日本語教育機関のA2目標講習を100時間以上受講する機会を提供し、1年以内にA1相当の試験を受験させる必要があります。

外国人労働者の日本語教育のメリットは?

安全指示や業務の引継ぎが正確に伝わるようになることに加え、在留資格の面での効果があります。技人国の社員が接客や通訳の業務に就くにはB2相当の証明が必要で、特定技能2号や永住など次の在留資格に進む場面でも日本語能力が問われることがあります。日本語教育は、社員が日本で働き続けるための選択肢を増やす投資になります。

「話せるようになってほしい」を、要件と業務の言葉に置き換える

外国人社員の日本語教育がうまくいかない会社に共通するのは、目標が「もっと日本語が話せるように」という抽象的なもので止まっていることです。目標を具体的にする手がかりは2つあります。1つは在留資格の要件で、技人国のB2、特定技能のA2.2、育成就労のA1・A2のように、制度が数字を示しています。もう1つは業務で使う言葉で、現場で最低限理解してもらわなければならない指示や表示は、会社が一覧にできます。

この2つを先に決めれば、どの方法を使うか、誰が費用を負担するか、受講を業務命令にするかどうかは、あとから自然に決まります。在留資格の要件は改正で変わることがあり、個別の事情で判断が変わるため、配置転換や在留資格の変更を予定している社員については、計画の段階で専門家に確認してください。

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根拠資料


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