外国人雇用管理主任者、外国人雇用労務士、外国人雇用管理士は、いずれも民間団体が認定する民間資格で、外国人を雇うために取得が義務づけられている資格はありません。社内の担当者が外国人雇用の知識を体系的に学ぶ手段としては使えますが、資格を持っていても、入管への申請を本人に代わって出す「申請取次」ができるようになるわけではなく、報酬を得て他社の在留申請書類や社会保険の届出を作ることもできません。企業が本当に押さえるべきなのは、資格の有無よりも、法令が企業に課している届出・確認・選任の義務のほうです。
3つの資格はいずれも民間資格
まず、検索で並んで出てくる3つの資格の基本情報を、実施団体の公表内容から整理します。
| 資格 | 実施・認定団体 | 試験の形式 | 受験料(税込) | 有効期間 |
|---|---|---|---|---|
| 外国人雇用管理主任者 | 外国人雇用支援センター(2019年10月開始) | CBT、四肢択一50問・60分、正答率70%以上で合格 | 8,500円 | 3年(登録料11,000円で更新) |
| 外国人雇用労務士(外労士) | 一般社団法人全国外国人雇用推進機構(2022年開始) | オンライン、四肢択一80問・120分 | 8,900円 | 2年(有料の更新講習) |
| 外国人雇用管理士 | 一般社団法人東京都外国人就労認定機構 | マークシート方式 | 9,900円 | (公式資料では未確認) |
外国人雇用管理主任者と外国人雇用労務士は、試験の実施サイト(CBT-Solutionsの受験者ポータル、全国外国人雇用推進機構の受験概要)で内容を確認しました。外国人雇用管理士は実施団体の公表資料を確認できず、民間の解説記事の記載に基づいているため、試験の詳細は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。外国人雇用管理主任者には、LEC東京リーガルマインドの認定講習を受けて修了テストに合格するルートもあります。
合格率は、外国人雇用管理主任者について、実施団体の公表資料では確認できませんでした。外国人雇用労務士については、民間の解説記事に「第7回試験の合格率は69.97%」とする記載がありますが、実施団体の受験概要ページには合格率の記載がありません。いずれも数十時間程度の学習で合格を目指せる水準の試験と説明されることが多く、難関資格の位置づけにはありません。
一部の求人サイトの記事には「国家資格」と書かれているものがありますが、3つとも国家資格ではありません。いずれも一般社団法人などの民間団体が独自に定めた認定制度です。
資格があってもできないこと|申請取次と書類作成の代行
民間資格の限界を最もはっきり示すのが、入管手続の申請取次です。ここでいう申請取次とは、在留資格の変更・更新などの申請で、外国人本人が地方出入国在留管理局に出頭する代わりに、一定の者が申請書類を提出する仕組みを指します。
入管法施行規則は、本人に代わって申請書等を提出できる者を限定しています。資格外活動許可について定める19条3項の列挙は次のとおりで、在留資格の変更・更新の申請でも同じ枠組みがとられています。
- 外国人を雇用する機関などの受入れ機関等の職員で、地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの
- 特定技能外国人については、特定技能所属機関の職員または登録支援機関の職員で、地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの
- 公益法人の職員で、地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの
- 弁護士または行政書士で、所属する弁護士会・行政書士会を経由して地方出入国在留管理局長に届け出たもの
- 外国人の法定代理人
この中に、民間資格の保有者という区分はありません。自社の外国人社員の申請を会社の人事担当者が取り次ぎたい場合は、1の「受入れ機関等の職員」として地方局長の承認を受けることになり、外国人雇用管理主任者などの資格の有無は要件になっていません。
書類作成の代行にも線があります。行政書士法は、行政書士でない者が官公署に提出する書類の作成を業として行うことを禁じています。2026年1月1日施行の改正で、同法19条に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加わり、手数料やコンサルティング料といった名目で実質的に書類作成の対価を受け取る形も規制の対象であることが明確になりました。社会保険・労働保険の届出書類の作成や提出の代行を、報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士法27条により社会保険労務士に限られます。
つまり、民間資格を取った担当者が自社の手続を自社のために行うことは問題ありませんが、資格を理由に他社から報酬を受けて在留申請書類や社会保険の届出を作ることはできません。申請取次の仕組みと行政書士法の改正については在留資格の申請は行政書士に依頼すべき?申請取次とは何かで詳しく解説しています。
法律が企業に求めているもの|資格より先に確認すべき義務
外国人を雇う企業に法令が課している義務は、資格の取得とは別のところにあります。主なものを並べると次のとおりです。
| 義務 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 在留カード等の確認 | 入管法73条の2(不法就労助長罪) | 就労できない外国人を働かせると、知らなかったことに過失があれば処罰される。2027年4月1日から法定刑が5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に引上げ |
| 外国人雇用状況の届出 | 労働施策総合推進法28条 | 雇入れ・離職のときにハローワークへ届け出る(特別永住者・外交・公用を除く) |
| 所属機関による届出 | 入管法19条の17 | 技人国などの外国人の受入れ開始・終了を出入国在留管理庁へ届け出る(努力義務) |
| 雇用労務責任者の選任 | 外国人雇用管理指針 第六 | 外国人を常時10人以上雇用する場合、人事課長等を雇用労務責任者に選任する |
| 特定技能・育成就労の体制 | 各制度の法令 | 支援責任者・育成就労責任者などの選任、育成就労では養成講習の修了が必要 |
この表の中で、講習の受講が法令上の要件になっているのは、育成就労の育成就労責任者・育成就労指導員・生活相談員(過去3年以内の養成講習修了)など、制度ごとに定められた一部の役職だけです。その講習も、民間資格の試験とは別物です。
外国人を常時10人以上雇う企業に求められる雇用労務責任者も、資格の保有は要件ではありません。厚生労働省の委託事業として「外国人労働者雇用労務責任者講習」が無料で開かれており、2026年10月1日からは人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の要件にこの講習の受講が加わりました。選任の考え方と講習の受け方は外国人労働者雇用労務責任者とは|10人以上で選任する理由と無料講習の受け方で扱っています。
ここで紛らわしいのは、外国人労働者雇用労務責任者講習の令和8年度の受託事業者がLEC東京リーガルマインドで、同社が外国人雇用管理主任者の認定講習も提供していることです。前者は厚生労働省の委託事業で無料、後者は民間資格の有料講座です。助成金の要件として求められているのは前者の講習の受講であり、民間資格の取得ではありません。
「意味ない」と言われる理由と、役立つ場面
「外国人雇用労務士 意味ない」という検索が一定数あるのは、資格を取っても業務の独占や手続上の権限が得られないためでしょう。その評価は一面では正しい見方です。
一方で、筆者は、社内に外国人雇用の担当者を置く企業にとって、体系的な学習の入口としての価値はあると考えています。外国人雇用の知識は、入管法、労働基準法、雇用保険法、社会保険、税、特定技能や育成就労の制度と、複数の法令にまたがります。実務の中で必要になった都度に調べていると、在留資格ごとの就労範囲や、転職者を受け入れるときの在留資格変更の要否といった論点が抜け落ちやすくなります。試験の出題範囲は、在留資格の基礎、入管法、特定技能、登録支援機関の役割、労務管理、助成金など、こうした論点を一通りなぞる内容になっています。
役立つのは、たとえば次のような場面です。
- 外国人の採用を始めたばかりで、社内に知識の土台がない
- 人事担当者が交代し、引継ぎ資料だけでは全体像がつかめない
- 登録支援機関や人材紹介会社の担当者が、顧客への説明の質を上げたい
逆に、資格の取得で解決しない場面もあります。個別の在留資格の許否判断、不許可後の再申請の方針、特定技能の支援計画の設計のように、個別の事情で判断が変わる論点は、試験の知識だけで判断すると誤りやすい領域です。資格は社内の共通言語を作る道具と割り切り、判断の難しい案件は専門家に確認する、という使い分けが現実的です。
資格の代わりに社内で整えておくこと
資格を取るかどうかにかかわらず、外国人を雇う企業が社内で整えておくべき仕組みは共通しています。
1つ目は、採用時の在留カードの確認手順です。表面の在留資格・在留期間・就労制限の有無、裏面の資格外活動許可欄を確認し、「在留カード等番号失効情報照会」や読取アプリで有効性を確かめます。確認の手順は在留カードの確認方法|採用時に見るべき表面・裏面の5か所と写しの保管で整理しています。
2つ目は、在留期間の満了日の管理です。社員ごとの満了日を一覧にし、3か月前には更新の準備に入れるようにしておくと、特例期間に頼る場面を減らせます。
3つ目は、届出の期限の管理です。外国人雇用状況の届出は雇用保険の被保険者なら資格取得届と一緒に翌月10日まで、被保険者でない人は翌月末日までが期限で、届出を怠ると30万円以下の罰金の対象になります。仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
4つ目は、専門家との役割分担です。在留申請の書類作成と申請取次は行政書士、社会保険・労働保険の手続は社会保険労務士、と外注先を決めておくと、社内の担当者は確認と記録に集中できます。採用から退職までの確認事項の全体像は外国人雇用の注意点10項目|採用前・入社時・在籍中・退職時に企業が確認することで整理しています。
よくある質問
外国人雇用管理士は国家資格ですか?
国家資格ではありません。外国人雇用管理士、外国人雇用管理主任者、外国人雇用労務士はいずれも民間団体が認定する民間資格です。取得しても、申請取次や、報酬を得て他社の書類を作成する権限は得られません。
外国人雇用労務士と外国人雇用管理主任者の違いは何ですか?
実施団体と試験の形式が違います。外国人雇用管理主任者は外国人雇用支援センターが実施するCBT試験(50問・60分)で有効期間は3年、外国人雇用労務士は全国外国人雇用推進機構が実施するオンライン試験(80問・120分)で有効期間は2年です。どちらも民間資格で、法的な効果に違いはありません。
外国人雇用管理主任者の合格率は?
実施団体の公表資料では、合格率は確認できませんでした。正答率70%以上で合格する基準は公表されています。
外国人を雇うのに資格は必要ですか?
必要ありません。企業に求められているのは、在留カードの確認、外国人雇用状況の届出、常時10人以上雇用する場合の雇用労務責任者の選任といった法令上の対応です。雇用労務責任者も、資格の保有は要件になっていません。
資格を取る前に決めておくこと
民間資格を取るかどうかは、社内のどの業務を誰が担うかを決めてから判断すると失敗しません。確認と記録を社内で回し、書類作成と申請は専門家に任せる体制なら、担当者に必要なのは全体像の理解で、民間資格や無料の雇用労務責任者講習はそのための手段になります。自社で申請書類を作り取次まで担う体制を目指すなら、必要なのは資格ではなく、地方局長による取次の承認と、在留資格ごとの審査の考え方を理解することです。どちらの場合も、判断を誤ったときの責任は資格の有無にかかわらず企業が負うという点を、出発点にしておくべきです。
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根拠資料
- 外国人雇用管理主任者 試験概要(CBT-Solutions 受験者ポータル)
- 外国人雇用管理主任者(LEC東京リーガルマインド)
- 外国人雇用労務士 受験概要(一般社団法人全国外国人雇用推進機構)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第19条・第20条(e-Gov法令検索)
- 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(厚生労働省告示・2026年5月29日改正まで反映)
- 外国人労働者雇用労務責任者講習(オンライン講習サイト)(厚生労働省委託事業)
- 外国人雇用状況の届出について(厚生労働省)
- 社会保険労務士法 第27条(e-Gov法令検索)
- 行政書士法 第19条(e-Gov法令検索)
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