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特定技能「林業」とは?対象業務・試験・直接雇用と年217日の就労要件を解説

特定技能「林業」は、育林、素材生産、育苗、製炭といった森林での作業に外国人を受け入れる特定技能1号の分野で、2024年3月29日の閣議決定で対象に加わり、同年9月30日に分野の運用要領が公表されて受入れが始まりました。外国人本人は林業技能測定試験と日本語試験(N4以上など)に合格する必要があり、受け入れる事業者は林業特定技能・育成就労協議会に加入したうえで、直接雇用で受け入れます。派遣はできません。雇用は「フルタイム」が要件で、林野庁の手引きは原則として週5日以上かつ年間217日以上、週30時間以上としています。季節で仕事量が大きく変わる林業では、この年間の就労日数をどう確保するかが受入れ計画の核になります。

特定技能「林業」の概要|いつから始まったか

林業分野は、自動車運送業、鉄道、木材産業とともに、2024年3月29日の閣議決定で特定技能の対象分野に追加されました。分野の運用要領(特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-林業分野の基準について-)が公表されたのは2024年9月30日で、この日から林業分野での在留資格の申請が可能になっています。所管は農林水産省(林野庁)です。

受入れ見込数は、2026年1月23日に閣議決定された現行の分野別運用方針で900人とされています(出入国在留管理庁の受入れ見込数の資料)。2024年の追加時点では5年間で1,000人とされていました。19分野の中で最も小さい枠の1つで、分野ごとに在留する外国人の上限として運用されます。2027年4月に始まる育成就労でも林業は対象分野になっており、林野庁の手引きでは令和10年度までの受入れ見込数を500人としています。

林業分野には特定技能2号がありません。特定技能1号で働ける期間は通算5年が上限です。5年を超えて同じ人に働いてもらう道は、現時点の林業分野の中には用意されていないことを前提に計画を立てる必要があります。

林野庁のQ&A(令和8年8月)によると、林業分野には技能実習制度のような1事業者あたりの受入れ人数枠は、現在のところありません。

従事できる業務|育林・素材生産と関連業務

林業分野で外国人が主として従事する業務は、林業技能測定試験の合格で確認された技能を要する「林業(育林、素材生産等)」です。林野庁の手引き(令和8年8月)は、主たる業務を育林、素材生産、育苗、製炭と整理しています。

  • 育林:植栽、下刈り、除伐、間伐など、森林を育てる作業
  • 素材生産:伐倒、造材、集材など、立木を丸太にして搬出する作業
  • 育苗:林業用の苗木を育てる作業
  • 製炭:木炭を製造する作業

これらに付随して、日本人が通常従事している関連業務に就くこともできます。運用要領が関連業務の例として挙げているのは、林産物の林内での製造・加工、除雪作業、機器の保守、資材の運搬、事務作業などです。関連業務は「付随的に」従事するもので、関連業務だけに従事させることはできません。

製材工場や合板工場での作業は、林業分野の対象になりません。これらは別の分野である「木材産業」の業務です。森林組合や素材生産業者が製材部門を持っている場合、外国人を山の現場と工場のどちらに配置するかで、使う分野が変わります。木材産業分野については特定技能「木材産業」とは?製材・合板工場で受け入れる要件と試験、林業との違いで扱います。

外国人本人の要件|林業技能測定試験と日本語

特定技能1号(林業)の人材基準は、技能と日本語の2つです。

林業技能測定試験

技能は、一般社団法人林業技能向上センターが実施する「林業技能測定試験(林業分野特定技能1号評価試験)」で確認します。林野庁の手引きによると、試験は学科試験と実技試験で構成され、水準は技能実習の林業職種の技能検定3級と同等程度です。実技では、チェーンソーの組み立て、暖機運転、丸太の合わせ切りといった作業が出題されます。

受験資格として、チェーンソーによる伐木等の特別教育の要件を満たす講習を受講していることが求められます。試験の実施地は、当面の間、国内のみとされています。海外に住む人がそのまま受験して来日するルートは、本稿執筆時点ではとれない点に注意が必要です。試験日程と会場は林業技能向上センターのウェブサイトで告知されます。

日本語

日本語は、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験N4以上の合格が必要です。分野別運用方針の表記では、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上になります。

技能実習2号からの移行

技能実習2号を良好に修了した人については、運用要領が、修了した技能実習の職種・作業の種類にかかわらず日本語試験を免除するとしています。林業職種(育林・素材生産作業)の技能実習2号を良好に修了した人は、林業技能測定試験と日本語試験の両方が免除されます。

林野庁の手引きには、林業職種の技能実習生について、技能実習1号とあわせて2年10か月を経過した時点で、技能実習2号を良好に修了したものとして特定技能への在留資格変更許可申請ができる、という記載もあります。技能実習から特定技能への切替えの一般的な流れは技能実習から特定技能への移行は可能?で解説しています。

国内で試験を受けて特定技能になる人の多くは、この技能実習からの移行か、国内に在留している他の在留資格からの変更になると筆者は見ています。試験が国内のみで、受験資格に特別教育の受講が必要だからです。

受入れ事業者の要件|協議会・直接雇用・事業体の種類

林業特定技能・育成就労協議会への加入

受け入れる事業者は、農林水産省が設置する「林業特定技能・育成就労協議会」の構成員になる必要があります(林業分野に特有の事情に鑑みて定める基準 2条1号)。加入は在留資格の申請より前に済ませる必要があります。求人や候補者探しは加入前から始めてかまいません。

林野庁の手引きによると、加入は林野庁ホームページの申請フォームに必要事項を入力し、証拠書類をメールで送る方法で行い、手数料や入会金はかかりません。加入後は、協議会で協議が調った事項に関する措置を講じること、協議会の情報提供や調査などの活動に協力すること、農林水産省の調査・指導に協力することが求められます(同基準2条2号〜4号)。支援を登録支援機関に委託する場合は、これらの協力を行う登録支援機関に委託する必要があります(同5号)。協議会の位置づけは特定技能の協議会とは?で整理しています。

派遣は不可、直接雇用のみ

林業分野では、労働者派遣の対象とすることを内容とする特定技能雇用契約を結ぶことはできません(運用要領)。受入れ事業者が外国人を直接雇用し、自社の現場で働かせることが前提です。特定技能で派遣が認められているのは農業と漁業の2分野だけで、同じ農林水産省所管でも林業は含まれていません。この違いは特定技能で派遣はできる?で扱っています。

林業では、森林所有者や森林組合から作業を請け負って現場に入る事業体が多くあります。請負契約に基づいて自社の外国人を自社の指揮命令のもとで現場に入れることは、派遣とは区別されます。一方、発注者の職員の指揮命令を受けて作業する形になっていれば、契約の名目にかかわらず派遣に当たるおそれがあります。現場での指示系統を誰が握っているかを、受入れの前に確かめておく必要があります。

認定事業主または「意欲と能力のある林業経営体」

林野庁の手引き(令和8年8月)は、全分野共通の基準に加えて、林業分野の特定技能の受入れ機関が次のいずれかであることが必要だとしています。

  • 林業労働力の確保の促進に関する法律(労確法)に基づく認定事業主
  • 森林経営管理法に基づき都道府県知事が公表している民間事業者(いわゆる「意欲と能力のある林業経営体」や「適合事業体」)

同じ要件は育成就労の育成就労実施者にも課されています。この要件が告示のどの規定を根拠とし、既に受入れている事業者にいつから適用されるのかは、本稿執筆時点で確認できた告示の本文からは読み取れませんでした(公式資料では未確認)。未認定の事業者は、都道府県の林業担当部署で認定・公表の手続と所要期間を先に確認しておくのが安全です。

フルタイム要件と季節性|年217日の就労をどう組むか

林業の受入れで他分野より丁寧な設計が要るのが、年間を通じた就労日数です。特定技能の雇用契約は、所定労働時間が通常の労働者と同等であるフルタイムであることが基準で、林野庁の手引きは、原則として週5日以上かつ年間217日以上、かつ週30時間以上としています。

林業の仕事は季節で偏ります。植栽は春、下刈りは夏、伐採や搬出は秋から冬が中心になり、積雪の多い地域では冬に山に入れない期間があります。雨の日は作業ができない日もあります。特定技能の雇用契約で「山に入れない日は休み」とすると、年217日を下回るおそれがあります。

筆者は、雇用契約と支援計画を作る前に、月ごとの作業計画を1枚の表にしておくことを勧めます。たとえば次のような組み方です。

  • 4〜6月:植栽、地拵え(育林)
  • 7〜9月:下刈り、除伐(育林)
  • 10〜3月:間伐、伐倒・造材・搬出(素材生産)
  • 雨天・積雪時:機器の保守、資材の運搬、林産物の林内での加工、除雪(関連業務)

ここで重要なのは、関連業務はあくまで付随的に従事するものだという点です。冬の3か月間を除雪と機器保守だけで埋めるような計画は、主たる業務に従事するという基準から外れるおそれがあります。積雪地で冬に素材生産ができない事業者は、暖かい地域の現場や育苗・製炭の作業を組み合わせられるかを検討する必要があります。九州の林業地では冬も伐採・搬出ができる地域が多く、この点は比較的組みやすい条件だと筆者は見ています。

林業は労働基準法41条の適用除外にならない

農業や水産業で働く人には、労働基準法41条1号により、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。しかし同号は、別表第一第6号の事業から「林業を除く」と明記しています。林業で働く人には、日本人と同様に1日8時間・週40時間の法定労働時間、休憩、週1日以上の休日の規定が全面的に適用されます。

農業と同じ感覚で「天気のよい日に長く働いてもらい、雨の日に休む」運用をすると、時間外労働の割増賃金の未払いや、36協定の範囲を超えた残業が生じるおそれがあります。季節変動に対応したいのであれば、1年単位の変形労働時間制を労使協定で定めるなど、労働時間制度の側で手当てをするのが筋です。

安全衛生|伐木等の特別教育と現場の指導

林業は、労働災害の発生率が全産業の中でも高い業種です。チェーンソーによる伐木等の業務に就かせるには、労働安全衛生法に基づく特別教育の修了が必要です。試験の受験資格として講習の受講が求められているのはこのためで、受入れ後も、伐木作業の安全指導を継続して行うことが求められます。日本語がN4程度の外国人に危険の伴う作業を任せる以上、合図や退避の指示を短い日本語と身振りで統一し、繰り返し確認する現場の仕組みが欠かせません。

受入れの流れ

林業分野で特定技能外国人を受け入れる流れは、おおむね次のとおりです。

  1. 自社が認定事業主または公表された林業経営体に当たるかを確認する
  2. 林業特定技能・育成就労協議会に加入する
  3. 候補者の要件を確認する(林業技能測定試験と日本語試験の合格、または技能実習2号の良好修了)
  4. 年間の作業計画をもとに、フルタイムの雇用契約と支援計画を作る
  5. 出入国在留管理局に在留資格変更許可申請(国内在留者の場合)または在留資格認定証明書交付申請を行う
  6. 受入れ開始後、定期届出と随時届出を行い、協議会・農林水産省の調査に協力する

住居は、山間部の現場に通える場所で確保する必要があり、社宅の提供などが支援計画の義務的支援に含まれます。寮や社宅を用意する場合は、居室の広さなど特定技能の住居の基準を満たす必要があります。

よくある質問

特定技能の林業はいつから始まりましたか?

2024年3月29日の閣議決定で特定技能の対象分野に追加され、同年9月30日に林業分野の運用要領が公表されて、在留資格の申請ができるようになりました。林業技能測定試験の実施要領は2024年10月に定められています。

林業分野の特定技能の受入れ人数は何人ですか?

分野全体の受入れ見込数は、2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針で900人です。1事業者あたりの受入れ人数枠は、林野庁のQ&Aによると現在のところ設けられていません。育成就労の受入れ見込数は令和10年度までで500人とされています。

林業の特定技能試験はどこで受けられますか?

林業技能向上センターが実施する林業技能測定試験は、当面の間、国内のみで実施されます。学科と実技の試験で、受験にはチェーンソーによる伐木等の特別教育の要件を満たす講習を受講していることが必要です。

森林組合でも特定技能外国人を受け入れられますか?

森林組合も、全分野共通の基準と林業分野の要件(協議会への加入、直接雇用、認定事業主等であること)を満たせば受け入れることができます。認定事業主等の要件の適用時期は、事前に林野庁または都道府県に確認してください。

林業事業体が最初に作るべきは「月別の作業計画」

特定技能「林業」の要件そのものは、協議会への加入と直接雇用、試験または技能実習からの移行と、他分野と比べて複雑ではありません。受入れの成否を分けるのは、年間217日以上のフルタイム就労を、主たる業務である育林・素材生産で埋められるかどうかです。月ごとの作業計画を先に作り、雨天・積雪時の過ごし方と労働時間制度を決めてから雇用契約に落とし込むと、審査でも受入れ後の労務管理でも説明がつきます。

もう1つの判断軸は、5年という期間の使い方です。2号のない分野なので、1号の5年間で現場のリーダーを育てるのか、育成就労や他の在留資格との組み合わせで長期の人材確保を図るのかを、最初の受入れの段階で考えておく必要があります。個別の事情で判断が変わるため、認定事業主等の要件の当てはめや雇用契約の組み方に迷う場合は、専門家に相談してください。

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根拠資料


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