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短期滞在で研修・会議・技術指導はできる?報酬が出ると就労になる線引き

短期滞在の外国人は、日本で報酬を受ける活動をすることができません。ただし会議への出席、商談、見学中心の研修、機械の販売に付随する技術指導は、日本の受入れ側から「報酬」を払わない限り短期滞在の範囲に収まります。判断の分かれ目は活動の名目よりも、日本側から役務の対価が出ているか、日本側の業務そのものを担っていないか、の2点です。海外の子会社や取引先の社員を数週間呼ぶ予定がある人事・総務担当者に向けて、条文と審査要領の記述から線を引いていきます。

短期滞在で禁止されているのは「報酬を受ける活動」

入管法19条1項2号は、短期滞在(別表第一の三)の在留資格で在留する人について、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」を行ってはならないと定めています。技術・人文知識・国際業務のような就労資格と違い、資格外活動許可を受けてアルバイトをする道も、実務上ほぼ閉ざされています。

ここでいう報酬とは、日本で行った役務(労務やサービスの提供)に対する対価を指します。入国・在留審査要領(第12編)は、報酬を「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」と定義し、通勤手当や住宅手当のような実費弁償の性格をもつもの(課税対象となるものを除く)は含まないとしています。この定義の詳しい読み方は通勤手当・住宅手当は報酬に入る?就労ビザの報酬月額の計算方法で解説しています。

条文には例外もあります。19条1項1号のかっこ書きは、報酬から「業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるもの」を除いており、この定義は2号(短期滞在)にもそのまま及びます。法務省令である入管法施行規則19条の3が定める除外は次のとおりです。

  • 業として行うものではない講演・講義・討論、助言・鑑定、著作物の制作、催物への参加や放送番組への出演などに対する謝金・賞金
  • 親族・友人・知人の依頼で日常の家事に従事したことへの謝金(業として行うものを除く)

「業として」とは、反復継続して、それで収入を得る目的で行うことを指します。大学が海外の研究者を1回招いて講演料を払うのは除外に当たり得ますが、来日のたびに複数の会場で有料講演を重ねるなら「業として」に当たります。

審査要領が短期滞在として例示する活動

別表第一の三は、短期滞在の活動を「本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」と定めています。審査要領はこれを具体化して、企業の担当者に関係するものとして次のような活動を例示しています(審査要領の文言は開示版を引用する専門家サイトで確認したもので、原本との照合は(公式資料では未確認))。

  • 見学、視察
  • 教育機関や企業などが行う講習、説明会への参加
  • 報酬を受けないで行う講義、講演
  • 会合への参加
  • 外国に職業活動の基盤があることを前提に、日本に出張して行う業務連絡、相談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査などの、いわゆる短期商用
  • 報酬を受けずに外国の大学生などが学業の一環として日本の機関で行う90日以内の実習

ここで重要なのは、短期商用が「外国に職業活動の基盤を有すること」を前提にしている点です。海外の所属先に雇用されたまま、その会社の仕事として日本に出張してくる、という構図が想定されています。海外の所属先から給与が払われ続けていること自体は、短期商用の前提そのものです。

なお、2026年9月1日施行の入管法施行規則の改正(令和8年法務省令第48号)により、短期滞在の在留期間は90日以内で日単位の指定もできるようになりました。90日・30日・15日の区分と滞在日数の考え方は短期滞在ビザとは?90日・30日・15日の違いと2026年9月からの日単位指定で整理しています。

研修・会議・技術指導の線引き

同じ「研修」「技術指導」という言葉でも、中身によって短期滞在に収まるものと、別の在留資格が必要なものに分かれます。企業が迷いやすい4つの場面を並べると、次のようになります。

場面 短期滞在で可能か 判断のポイント
海外子会社の社員が日本本社の会議・経営会議に出席する 可能 会合への参加・業務連絡に当たる
海外社員が日本の工場で座学・見学中心の研修を受ける 可能 講習・見学。生産ラインで実作業をすると別資格が必要
海外メーカーの技術者が、日本の顧客に売った機械の据付指導・修理に来る 可能な場合が多い 売買契約に付随するアフターサービスか、独立した工事の請負か
海外社員が日本の現場で製品を作りながら技能を覚える(OJT) 不可 実務研修は在留資格「研修」でも原則認められず、技能実習等の枠組みになる

会議・商談は最も典型的な短期商用

本社の会議への出席、取引先との商談、契約書への調印は、短期滞在の中心的な活動です。滞在が数日から数週間で、日本側から報酬が出ていなければ、問題になることはほとんどありません。

研修は「座学と見学」か「実作業」かで分かれる

海外子会社の社員を日本に呼んで、製品知識や品質管理の手法を学ばせる研修は、講習と見学の範囲であれば短期滞在で受け入れられます。問題になるのは、研修と称して生産ラインに入り、製品の製造や顧客対応といった実務に従事させる場合です。

実務を伴う研修は、在留資格「研修」でも、国や地方公共団体の公的研修など一部の例外を除いて認められていません。企業の現場で働きながら技能を身につける形は、技能実習(2027年4月1日以降は育成就労)の枠組みで扱われます。研修の在留資格が認める範囲は研修ビザとは|実務研修ができない原則と公的研修の例外、技能実習・技人国との違いで、就労資格で入社した社員の研修については入社後の現場研修は技人国でできる?で解説しています。

筆者が研修計画を見るときの目安は、1日の時間割に「講義」「見学」「実習(見学者として)」以外の項目が入っていないか、です。「補助作業」「ライン応援」のような言葉が入っていれば、その時点で短期滞在の範囲を外れていると考えます。

技術指導は売買契約との関係で判断する

海外メーカーが日本の工場に機械を納め、その据付や操作方法の指導、故障時の修理のために技術者を派遣する場面は、アフターサービスとして短期滞在で受け入れられることが多い類型です。ここで見られるのは、指導が機械の売買契約に付随するものかどうかです。

これに対し、海外企業が日本の建設現場やプラントで工事そのものを請け負い、技術者が作業員として数か月働くような形は、アフターサービスの範囲を超えます。この場合は、技術・人文知識・国際業務や企業内転勤など、活動に合った就労資格が必要になります。審査は契約書の名目ではなく活動の実体で判断されます。この考え方は最判平成14年10月17日と「活動の実体」でも取り上げています。

日当・謝金・滞在費はどこから「報酬」になるか

受入れ企業が最も迷うのが、お金の出し方です。整理すると、判断の軸は「その支払いが日本での役務の対価か、滞在に必要な実費の補填か」の1点に集約されます。

渡航費・宿泊費・食費などの実費は報酬に当たらない

航空券、ホテル代、現地での交通費、食事代を日本側が負担することは、実費弁償の性格をもつため報酬には当たらないと解されています。審査要領も、報酬を受けない講義・講演の例示で、主催者が渡航費などを負担することは差し支えない趣旨を示しています。領収書に基づいて精算するか、実際にかかる額を超えない定額で支給するのが安全です。

「日当」は名前でなく中身で判断される

悩ましいのは日当です。出張旅費規程に基づいて、実際の滞在費を賄う程度の額を支給するのであれば、実費弁償の範囲と説明しやすくなります。一方で、日本での作業日数に応じて1日あたりの金額を払う、成果物の納品と引き換えに払う、といった形は、名目が日当でも役務の対価と評価されやすくなります。支給額が滞在費の実額を大きく超える場合も同じです。

日当を出すなら、社内の旅費規程と実際の宿泊・食費の水準に照らして額を決め、その根拠を説明できるようにしておくべきだと筆者は考えます。

謝金は「業として」でなければ例外に入る

講演や技術的な助言に対する謝金は、施行規則19条の3の除外に当たれば報酬から外れます。1回限りの講演や、来日のついでに行う単発の助言への謝礼がこの典型です。反対に、日本企業と顧問契約を結んで毎月助言料を受け取り、その業務のために来日する場合は、業として行う活動に当たります。

海外の所属先からの給与と日本側からの支払いは分けて考える

海外の所属先が払う給与は、短期商用の前提です。問題になるのは、日本の受入れ企業が別途、日本での作業の対価を払う場合です。親子会社間で「研修費」「技術指導料」といった名目の支払いがある場合は、その金額が本人の日本での役務と結びついているかどうかを確認しておく必要があります。支払いの形は同じでも、活動の中身によって結論が変わるため、個別の事情で判断が変わる点は留意してください。

短期滞在で働いた場合のリスク(本人・受入れ企業)

短期滞在の人が報酬を受ける活動をすると、資格外活動になります。本人については、専ら行っていると明らかに認められる場合は入管法70条1項4号(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科)、それ以外は73条(1年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、または併科)の対象になり、24条4号イの退去強制事由にも当たり得ます。

受入れ企業には、73条の2の不法就労助長罪(現行は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科。2027年4月1日から5年以下・500万円以下に引き上げ)が及びます。同条2項は、在留資格で認められない活動であることを知らなかったとしても、過失がない場合を除いて処罰を免れないと定めています。「本人が観光ビザで来たとは知らなかった」は通りにくいということです。

また、査証免除で来日する人の場合、日本で報酬を受ける活動をする予定があれば、そもそも査証免除措置の対象外になります。短期滞在で入国後に就労資格へ切り替える例外は限られており、その要件は短期滞在から在留資格変更はできる?「やむを得ない特別の事情」と認定証明書交付後の扱いで扱っています。

よくある質問

短期滞在で仕事はできますか?

日本の会社に雇われて働く、店を手伝って日当をもらう、といった就労はできません。海外の会社に所属したまま、その会社の業務として日本で会議や商談、市場調査をすることは、短期商用として認められています。

短期滞在ビザでアルバイトはできますか?

できません。親族訪問や観光で来日した人が、知人の店を手伝って謝礼を受け取る場合も、日常の家事の手伝いを超えていればアルバイトと同じ扱いになります。施行規則19条の3が除外するのは、親族・友人・知人の日常の家事に対する業として行わない謝金に限られます。

90日以内なら少しだけ働いても問題ありませんか?

期間の長さは関係ありません。1日だけでも、報酬を受ける活動をすれば資格外活動になります。90日は滞在できる期間の上限であって、就労が許される期間ではありません。

海外子会社の社員を日本本社で1か月研修させたいのですが、短期滞在で足りますか?

研修の内容が講義、見学、説明会への参加で構成されていれば、短期滞在で受け入れられます。日本の現場で実作業を行う時間があるなら、短期滞在では足りません。研修計画書を作り、時間割に実務が入っていないかを来日前に確認してください。

短期滞在ビザから就労ビザに変更できますか?

原則としてできません。在留資格認定証明書を取得して、いったん出国したうえで改めて入国するのが通常の流れです。滞在中に認定証明書が交付された場合など、変更が認められる例外は限られています。

呼ぶ前に確かめる3つのこと

短期滞在で海外の社員や技術者を呼ぶときは、来日前に3つの点を社内で確認しておくと判断を誤りにくくなります。1つ目は、本人が日本で行う作業が、会議・講習・見学・売買に付随する指導のどれに当たるか。2つ目は、日本側から出すお金が、実費の補填か役務の対価か。3つ目は、その説明を旅費規程や研修計画書、売買契約書といった書面で示せるか、です。

どれかに迷いがあるなら、短期滞在で済ませずに、活動に合った在留資格を取る前提で計画を組み直すほうが結果的に早く終わります。不法就労助長罪は受入れ企業が「知らなかった」では済まない罪であり、判断の責任は呼ぶ側にあると考えて準備してください。海外の取引先を招へいするときの書類の作り方は短期商用ビザで海外の取引先を招へい|会社が作る招へい理由書と例文で解説しています。

根拠資料


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