短期滞在ビザの延長(法律上は「在留期間更新許可」)は、病気やけがで帰国できないといった、人道上の真にやむを得ない事情がある場合に限って認められます。「家族ともう少し一緒にいたい」「観光を続けたい」という理由では認められず、親族訪問で来日した親を引き留めたいという相談も、それだけでは延長の理由になりません。申請するなら在留期限の前に、住居地を管轄する出入国在留管理官署へ、事情を裏付ける資料を添えて出す必要があります。
短期滞在ビザの延長は「人道上の真にやむを得ない事情」がある場合に限られる
出入国在留管理庁は、在留資格「短期滞在」の在留期間更新について「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合」に認められるとし、例として病気治療を挙げています。
この基準が厳しいのには理由があります。短期滞在は、観光・親族訪問・商談など、もともと短い期間で日本を離れることを前提にした在留資格です。入国の時点で「この期間で帰国する」という前提で上陸を許可しているため、滞在を延ばすことは、その前提を入国後に変えることを意味します。更新の審査は法務大臣の裁量に委ねられており(入管法21条3項「相当の理由があるときに限り」)、短期滞在ではその「相当の理由」が、他の在留資格よりも狭く解されている、と整理できます。在留期間の更新と裁量の関係はマクリーン事件とは?在留期間更新の裁量をわかりやすく解説で扱っています。
ここでいう「ビザの延長」は、正確には査証(ビザ)の延長ではありません。査証は日本に入国する前に在外公館で受けるもので、入国した時点で役目を終えます。日本に入ってから延ばせるのは、上陸許可のときに決まった「在留期間」のほうです。この区別を押さえておくと、どこに何を申請するのかで迷わなくなります。
延長が認められやすい事情と認められない事情
入管庁が公に挙げている例は病気治療だけです。そのうえで、「人道上の真にやむを得ない事情」「これに相当する特別な事情」に当てはまるかという観点から、相談で出てくる事情を類型に分けると次のようになります。個別の申請が認められるかどうかは、事情の重さと資料の内容で判断が変わります。
| 類型 | 延長の理由になり得る場面 | 理由になりにくい場面 |
|---|---|---|
| 本人の病気・けが | 入院中、医師が航空機での移動を止めている、治療を中断すると危険 | 通院はしているが移動に支障はない |
| 出産 | 臨月・産後で医師が移動を控えるよう指示している、新生児の状態が移動に耐えない | 出産の手伝いのために親が長く滞在したい |
| 親族の重病・死亡 | 日本にいる家族が危篤、葬儀や死亡後の手続を本人が行う必要がある | 家族の身の回りの世話を続けたい |
| 帰国手段の途絶 | 本国での災害・紛争、航空便の運休で帰国の手段がない | 希望する日程の航空券が高い、取れない |
| その他 | 裁判の証人として出廷を求められている等、本人の意思で動かせない事情 | 観光・交流・就職活動を続けたい |
表の右側に共通するのは、「本人や家族の希望」で滞在を延ばそうとしている点です。左側は、帰国できない、または帰国するとより深刻な結果になるという、本人の意思で動かせない事情です。筆者は、申請の可否を検討するときにこの一点だけを見ます。
新型コロナウイルス感染症の拡大で国際線が止まった時期には、帰国が困難になった短期滞在者について在留期間の更新を認める運用が取られました。これは「帰国手段の途絶」の典型例で、その時期に限った措置でしたが、同じ理屈は大規模災害や紛争でも働き得ます。
親族訪問ビザの延長は「親族の事情」だけでは足りない
検索で最も多いのが、親族訪問で来日した親や兄弟の滞在を延ばしたいという相談です。子どもの出産を手伝いに来た母親、孫の面倒を見に来た両親などが典型です。
家族を手伝いたいという気持ちは理解できますが、入管庁の基準に照らすと、これは「人道上の真にやむを得ない事情」には当たりにくい事情です。親族訪問の滞在を延ばせるのは、来日した本人が病気になって帰国できない、手伝っている家族が危篤に陥ったなど、延長しないと人道上の問題が生じる場合に限られます。
親に長く日本にいてほしいという事情が続く場合は、いったん帰国して改めて短期滞在で来日する形になります。ただし、短期滞在での滞在が年間180日を超えるような来日の繰り返しは、上陸審査で滞在目的を厳しく確認される原因になります。この点は短期滞在ビザ90日と「年180日ルール」|日数の数え方と入国を断られる典型例で整理しています。
申請できる期間|在留期限の前ならいつでもよいが、早いほどよい
在留期間の更新は、現に持っている在留期間が切れる前に申請しなければなりません。在留期間が6か月以上ある在留資格は満了のおおむね3か月前から受け付けますが、短期滞在の在留期間は最長90日なので、この「3か月前から」の制限は実質的に問題になりません。延長が必要な事情が生じた時点で、すぐに申請の準備を始めることになります。
ここで重要なのは、特例期間の扱いです。入管法20条6項(21条4項で更新に準用)は、在留期間の満了日までに更新を申請した人は、満了日までに結果が出なくても、処分の時か満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで、引き続き在留できると定めています。ところが同項は、「三十日以下の在留期間を決定されている者」を明文で除いています。
2026年9月1日施行の入管法施行規則の改正(令和8年法務省令第48号)により、短期滞在の在留期間は90日・30日・15日に加えて、90日を超えない範囲で日単位でも指定されるようになりました。自分の在留期間が何日で決まっているかは、旅券の上陸許可の証印で確認できます。
| 決定されている在留期間 | 特例期間 | 申請時の注意 |
|---|---|---|
| 31日以上(90日など) | あり(最長で満了日から2か月) | 満了日までに申請すれば、結果が出るまで在留できる |
| 30日以下(15日・30日など) | なし | 満了日を過ぎると結果待ちでも在留の根拠がなくなるおそれがあるため、満了日よりかなり前に申請し、窓口の指示を確認する |
在留期間が15日や30日で入国した人が病気になった場合は、特に急ぐ必要があります。期限の管理と特例期間の一般的な考え方は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?申請期限と標準処理期間を解説も参考にしてください。
短期滞在ビザの延長に必要な書類は5点
出入国在留管理庁の「在留資格『短期滞在』」のページが示す提出書類は次のとおりです。
- 在留期間更新許可申請書(入管庁ウェブサイトからPDF・Excelで取得できる)
- 旅券(提示)
- 引き続き在留を必要とする理由を明らかにする資料(病気なら診断書など)1通
- 入国後、現在までの活動を説明する資料(書式自由で、具体的に書く)1通
- 滞在中の経費と帰国費用を支弁できることを証する資料(預金残高証明書、帰国用の航空券など)1通
就労系の在留期間更新と違い、在留カードは交付されないため、写真の提出は求められていません。日本で発行される証明書は発行日から3か月以内のものを出し、外国語の書類には日本語訳を付けます。
書類ごとに押さえること
3の「理由を明らかにする資料」が審査の中心です。病気やけがなら、医師の診断書に病名だけでなく、いつまで治療が必要か、航空機での移動が可能になる見込み時期を書いてもらいます。入管が知りたいのは「いつ帰国できるか」であり、その日付が延長を求める期間の根拠になるためです。出産なら出産予定日や産後の経過、家族の危篤なら入院先の病院が出す病状の証明書が、これに当たります。災害や航空便の運休なら、運航会社の欠航通知や、予約した便が取り消されたことを示す資料を付けます。
4の「活動を説明する資料」は、入国してから今日までに何をしていたかを日付順に書いた説明書で足ります。延長の理由が生じた経緯(いつ発症し、いつ入院したか)をここで時系列に示しておくと、3の資料と話がつながります。
5の経費支弁資料は、延長する期間の滞在費と医療費、帰国の費用を誰が払うのかを示すものです。本人の預金で足りない場合は、日本にいる家族の預金残高証明書や課税証明書を付け、支払いを引き受ける旨の書面を添えます。短期滞在の人は原則として公的医療保険に入れないため、治療費は全額自己負担になります。旅行保険の保険証券や、病院への支払いの見込みも資料になります。延長後に帰国する便の予約記録(eチケット控え)は、延長期間の終わりを具体的に示す資料として有効です。
申請先・手数料・結果の受け取り方
申請先は、住居地(ホテル・親族宅など滞在先)を管轄する地方出入国在留管理官署です。福岡県内に滞在している場合は福岡出入国在留管理局(福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎)か、北九州出張所などの管轄の出張所になります。九州各県の窓口と予約の取り方は福岡出入国在留管理局への行き方・予約方法にまとめています。
短期滞在の在留期間更新はオンライン申請の対象外で、窓口に書類を持参して申請します。本人が入院しているなど自分で出頭できない場合、本人以外が提出するときは、提出する人の身分を証する文書(申請取次者証明書など)の提示が必要です。申請取次の届出をした行政書士に依頼すれば、本人に代わって書類を提出できます。
手数料は、許可されたときに収入印紙で納めます。2026年10月1日から入管法施行令25条の改正で手数料が改定され、在留期間が3か月以下の更新許可は1万円になります。2026年9月30日までに受け付けられた申請は改定前の6,000円です。短期滞在の延長は通常3か月以下の期間で許可されるため、1万円と考えておけば足ります。手数料改定の全体像は【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で解説しています。
許可されると、旅券に新しい在留期間を示す証印が押されます(短期滞在には在留カードは交付されません)。延長される期間は、診断書などで示した帰国可能時期に合わせて決まり、申請した期間がそのまま認められるとは限りません。審査期間について入管庁は短期滞在の更新に限った数字を公表していませんが、延長を必要とする事情の性質上、在留期限前に結論が出るよう扱われることが多いと筆者はみています。
延長では足りないときの選択肢
治療が長期にわたるときは、短期滞在の延長を繰り返すのではなく、別の在留資格を検討する場面があります。
日本で入院・治療を受けること自体を目的に来日する人には、在留資格「特定活動」(医療滞在)が用意されています。医療滞在は本来、来日前に医療機関の受入れ証明を得て査証を取るものです。短期滞在で入国した後に治療が長引いたというケースで医療滞在への変更を考える場合は、短期滞在からの在留資格変更に「やむを得ない特別の事情」が求められる点(入管法20条3項ただし書)に注意が必要です。短期滞在からの変更の考え方は短期滞在から在留資格変更はできる?「やむを得ない特別の事情」と認定証明書交付後の扱いで扱います。
日本で子が生まれた場合は、別の手続も必要になります。日本で出生した外国籍の子は、出生から60日までは在留資格なしで在留できますが、それを超えて在留するなら、出生から30日以内に在留資格取得の申請をしなければなりません(入管法22条の2)。母親が短期滞在なら子も短期滞在で取得するのが通常で、母親の延長申請と子の取得申請を同時に準備すると、窓口での説明がそろいます。
よくある質問
短期滞在ビザの90日を延長することはできますか?
人道上の真にやむを得ない事情がある場合に限りできます。90日の在留期間で入国した人も、在留期限までに申請すれば、結果が出るまで最長2か月は特例期間として在留できます。観光や親族との交流を続けたいという理由では延長は認められません。
親族訪問で来日した親の短期滞在を延長できますか?
親の病気・けがで帰国できない、日本にいる家族が危篤になったなど、人道上の事情があれば申請できます。出産の手伝いや孫の世話を続けたいという事情だけでは、延長の理由として認められにくいのが実情です。長期の手伝いが必要なら、いったん帰国して再来日する計画を立てることになります。
短期滞在ビザの延長申請に必要な書類は何ですか?
在留期間更新許可申請書、旅券、引き続き在留を必要とする理由を示す資料(診断書など)、入国後の活動を説明する資料、滞在費と帰国費用を支弁できることを示す資料の5点です。写真は求められていません。
短期滞在の延長は何回までできますか?
回数の上限は法令に定めがありません。ただし、延長のたびに人道上の事情が続いていることを資料で示す必要があり、延長を重ねるほど、なぜ帰国できないのかを具体的に説明する負担は大きくなります。治療が長期化する見込みなら、医療滞在など別の在留資格を検討する段階です。
延長が認められなかったらどうなりますか?
不許可になった場合は、在留期限までに出国するのが原則です。期限が迫っているときは出国準備のための期間が与えられることがあり、その期間内に出国します。在留期限を過ぎて出国しないと不法残留(オーバーステイ)となり、退去強制や上陸拒否の対象になります。不許可の通知を受けたときの対応は入管から不許可のハガキが届いたら?を参照してください。
延長を考え始めたら、最初に「帰国できる日」を決める
短期滞在の延長の審査で入管が確かめているのは、本人が帰国できない事情が本当にあるのか、そしてその事情がいつ解消されるのか、という二点です。延長を申請する人が最初にすべきことは、医師や航空会社などの第三者から、帰国できる見込みの日付を資料として得ることだと筆者は考えています。その日付があれば、求める延長期間の根拠になり、滞在費の見積もりも立ち、帰国便の予約も取れます。
もう一つは、自分の在留期間が30日以下かどうかを旅券の証印で確認することです。30日以下なら特例期間は働かず、在留期限の管理はより厳しくなります。事情が生じた時点ですぐに管轄の入管へ相談し、期限に余裕を持って申請してください。
根拠資料
- 在留資格「短期滞在」(出入国在留管理庁)
- 在留期間更新許可申請(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 第20条・第21条・第22条の2(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 別表第二(令和8年法務省令第48号による改正、2026年9月1日施行)(e-Gov法令検索)
- 在留手続等の手数料の改定について(出入国在留管理庁)
- 手数料改定リーフレット(出入国在留管理庁・PDF)
- 在留申請のオンライン手続(出入国在留管理庁)
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