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在留特別許可された事例と許可率|入管庁の公表事例23件から見る許否の分かれ目

在留特別許可された事例を読むと、許否を分けているのは婚姻期間の長さよりも、自ら出頭したか摘発されたか、過去に退去強制や出国命令の歴があるか、家族と実際に同居しているかの3点です。出入国在留管理庁が2026年7月に公表した令和7年の事例では、日本人と結婚して自ら出頭し、違反がオーバーステイだけだった3人は、婚姻期間が約1年1月でも許可されています。一方、全体の数字で見ると、2025年の許可は1,026件、不許可は1,233件で、結果の出た案件のうち許可は約45%にとどまります。

この記事では、入管庁の公表事例を類型ごとに並べ、2024年分の事例とも比べながら、どのような事情が許可と不許可を分けているかを整理します。制度の全体像とガイドラインの考慮事項は在留特別許可とは?2024年改正後の申請制度とガイドラインの考慮事項、申請書と資料のそろえ方は在留特別許可申請の方法|申請書・必要書類・流れと「3日以内」の期限で解説しています。

入管庁が公表している「事例」とは何か

出入国在留管理庁は2004年(平成16年)から在留特別許可された事例とされなかった事例を公表しており、2010年(平成22年)4月からは前年の事例を分類・整理した一覧表の形にしています(同庁 2023年12月15日の報道発表)。2024年6月10日に改正入管法が施行されて本人が在留特別許可を申請できるようになってからは、公表の単位も変わりました。

公表時期 対象期間 資料
2025年7月25日 2024年6月10日〜12月31日 令和6年6月10日から同年12月31日まで
2026年7月 2025年1月1日〜12月31日 令和7年

一覧表の項目は、発覚理由(出頭申告・警察逮捕・摘発など)、退去強制事由、在日期間、不法滞在期間、婚姻期間、子の有無、刑事処分、許可された在留資格と在留期間、特記事項です。類型は「配偶者が日本人である場合」「配偶者が正規に在留する外国人である場合」「子と共に不法に滞在している場合」「その他」の4つで、それぞれに許可事例、不許可事例、50条1項ただし書による許可事例が並びます。難民認定手続の中で在留特別許可の許否を判断した事例は含まれていません。

ここで注意したいのは、この一覧が統計ではないことです。令和7年版に載っている事例は23件で、2025年に許可・不許可が出た2,259件のごく一部です。どの事例を載せるかは入管庁が選んでおり、典型例と境界例を示すための資料と読むのが適切です。国籍も記載されていないため、特定の国籍の人がどう扱われているかは、この資料からは読み取れません。

在留特別許可の件数と許可率|2025年は約45%

件数は、入管庁が毎年公表する「入管法違反事件について」に載っています。申請制度が始まってからの数字は次のとおりです。

区分 2024年(6月10日〜12月末) 2025年
申請 2,048件 2,424件
許可 469件 1,026件
不許可 370件 1,233件
終止 46件 119件

(出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」図表22)

許可と不許可を合わせた結果の出た件数に占める許可の割合は、2025年が約45%、2024年が約56%です(筆者の計算)。入管庁は「許可率」という数字を公表しておらず、この割合も終止や未処理を除いた単純な計算にすぎません。

2024年6月9日以前の在留特別許可は、本人の申請ではなく、退去強制手続の異議の申出に対する裁決の中で職権で判断されていました。そのため、それ以前の年の許可件数と、2024年以降の「申請に対する許可件数」は同じ物差しでは比べられません。改正前の年ごとの許可件数の推移は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。

割合が下がった理由について入管庁は説明していません。筆者は、制度開始直後の半年は以前から手続が進んでいて事情が明らかな案件が多く処理され、2025年は新しく申請された案件の比重が高まったためとみています。いずれにしても、結果の出た案件の半分程度しか許可されていないという水準は、申請すれば通るという期待を持つには低い数字です。

配偶者が日本人の事例|出頭申告と刑事処分なしが揃うと許可されている

令和7年版で許可された3件は、いずれも出頭申告、違反は不法残留だけ、刑事処分なしです。

在日期間 不法滞在期間 婚姻期間 夫婦間の子 許可内容
許可1 約6年1月 約6年 約1年4月 無 日本人の配偶者等・1年
許可2 約5年9月 約5年8月 約1年1月 1人(未成年) 日本人の配偶者等・1年
許可3 約24年1月 約6年4月 約8年4月 1人(未成年) 日本人の配偶者等・1年

許可1は子がおらず、婚姻期間も約1年4月です。ガイドラインは婚姻を「特に考慮する積極要素」とするにあたって、夫婦の間に子がいるなど婚姻が「安定かつ成熟していること」を求めていますが、子がいないことや婚姻期間が短いことだけで不許可になるわけではないことが、この事例から分かります。許可3の特記事項は「在留特別許可歴あり」で、過去に一度在留特別許可を受けた人でも、再度許可されることがあります。

不許可の3件は、すべて警察に逮捕されて発覚しています。覚醒剤取締法違反で懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受け、退去強制歴と在留特別許可歴もある人は、婚姻期間が約25年9月あっても許可されていません。不法就労助長で懲役1年・執行猶予4年の人(婚姻期間約4年6月)、傷害で懲役5年の実刑判決を受け、配偶者に婚姻継続の意思がない人も不許可です。

2024年分と並べると、同じ傾向がより鮮明になります。2024年分の許可4件には、婚姻期間約2月(警察逮捕・不法残留で懲役2年6月・執行猶予4年、在日約20年10月)や約7月(出頭・不法入国)の例があります。不許可4件のうち2件の特記事項は「配偶者とは別居」で、もう1件は出頭申告で婚姻期間約11年4月でありながら「退去強制歴あり」でした。

整理すると、配偶者が日本人の類型で判断を分けている要素は次の3点です。

  • 発覚の経緯:許可事例の多くは出頭申告。不許可事例の多くは逮捕や摘発
  • 過去の歴:退去強制歴・出国命令歴があると、長い婚姻期間でも不許可の例が並ぶ
  • 同居の実態:別居している夫婦は、婚姻期間が長くても不許可

配偶者が外国人の事例|相手の在留資格と出国命令歴

配偶者が永住者や定住者など正規に在留する外国人の場合も、令和7年版では許可3件、不許可3件が載っています。

許可された3件は、配偶者が永住者で警察逮捕・不法残留(懲役1年・執行猶予3年、婚姻約3年8月)の人が永住者の配偶者等1年、配偶者が定住者で出頭申告・不法滞在約2月・未成年の子4人の人が定住者1年、配偶者が永住者で摘発・不法就労助長(在日約28年7月、婚姻約24年10月)の人が永住者の配偶者等1年でした。執行猶予付きの判決があっても、永住者との長い婚姻と子の存在があれば許可されています。

不許可の3件の中で最も読んでおきたいのが、配偶者が定住者で、出頭申告・不法残留のみ・刑事処分なし・婚姻約1年4月という、日本人配偶者の許可1とほぼ同じ条件の事例です。特記事項は「出国命令歴あり」でした。出国命令で帰国した人が再びオーバーステイになると、自ら出頭しても評価が大きく下がることが分かります。ほかの2件は、偽造在留カードの行使(配偶者は技術・人文知識・国際業務、子は本国で祖父母と生活)と、売春周旋・不法就労助長で実刑(退去強制歴あり)です。

2024年分では、配偶者が技術・人文知識・国際業務で、出頭申告・婚姻約7年7月・子3人でありながら「在留諸申請において虚偽の内容を申告していたもの」が不許可になっています。ガイドラインは手続の中での虚偽申告を消極要素に挙げており、過去の申請書の嘘が後で効いてくる典型例です。

子どもと共に滞在している事例|日本で育った期間の長さ

子と共に不法に滞在している類型は、件数が少ないものの、判断の軸が他の類型と違います。

令和7年版の許可事例は、在日約18年9月の母と、日本で約12年5月暮らしてきた12歳の子のケースです。子の父は正規に在留する人で、母とは内縁関係でした。母には特定活動1年、子には留学1年が許可されています。これに対して不許可事例は、職員に探知された両親(在日約5年8月)と8歳・2歳の子の家族で、子の日本での生活期間は約5年8月と約2年でした。

ガイドラインは、日本の学校で相当期間教育を受け、本国で教育を受けることが困難な実子と同居する親の存在を「特に考慮する積極要素」としています。12歳で10年以上日本で暮らし、日本の学校で学んできた子と、就学前後の子とでは、この要素の重みが違います。2024年分の不許可事例にも、本邦で出生した7歳と5歳の子がいる家族で、「本邦での事業継続を理由に在留を希望していたが、事業の実態が認められなかった」ものがあります。

日本で生まれ育った子どもとその家族への在留特別許可については、2023年8月に法務大臣が改正法施行までの対応方針を示したと報じられました。その対象人数と結果の数字は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。いわゆるクルド人の家族についての報道もこの方針に関連して多く見られますが、入管庁の公表事例には国籍が記載されていないため、国籍別の許否の傾向を公表資料から示すことはできません。

実刑判決があっても許可された事例|50条1項ただし書

入管法50条1項ただし書は、無期または1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた人や、薬物・売春関係などの一定の退去強制事由に当たる人について、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限って許可できるとしています。刑の全部の執行猶予を受けた人は、ここでいう実刑に含まれません。

令和7年版では、この「特別の事情」で許可された例が3件載っています。いずれも窃盗の実刑判決(懲役1年2月〜1年6月)を受けた人で、在日約33年・日本人配偶者と約33年の婚姻の人、在日約34年・定住者の配偶者と未成年の子3人がいる人、日系人として日本で生まれ日本の教育機関で教育を受けた在日約22年の人です。

共通しているのは、在日期間が20年から30年を超え、生活の基盤が日本以外にほとんどないことです。逆に、同じ実刑でも薬物事犯(前科2件)や詐欺・文書偽造(懲役2年6月、在特歴あり)の人は「その他」の類型で不許可になっています。罪の種類と前科の数、日本との結び付きの長さが、ただし書のハードルを越えられるかどうかを左右していると読めます。

「その他」の類型|日本国籍を失った人と日本人の子を養育する人

配偶者や子の類型に入らない事例も、読み方によっては参考になります。令和7年版では、親子関係不存在の審判が確定して出生に遡って日本国籍を失い、約42年4月にわたって不法入国の状態になっていた人に、日本人の配偶者等・在留期間5年が許可されています。公表事例の許可内容はほとんどが在留期間1年ですが、この事例だけが5年です。2024年分にも、同様に日本国籍を失った人に定住者1年、外国籍の取得で日本国籍を失った人に日本人の配偶者等3年が許可された例があります。

日本人の実子を監護・養育している人は、不法残留で懲役2年・執行猶予3年の判決を受けていても定住者1年が許可されています。一方、日本人の実子の養育を理由にしていても、詐欺などで懲役2年6月の実刑判決を受け、在特歴もある人は不許可です。

公表事例から読める判断の傾向

2年分の事例を横に並べると、ガイドラインの積極要素・消極要素がどの程度の重みで効いているかが見えてきます。筆者の読み方は次のとおりです。

一つ目に、発覚の経緯の影響が大きいことです。配偶者が日本人の類型では、令和7年の許可3件がすべて出頭申告で、不許可3件はすべて警察逮捕でした。ガイドラインは自ら出頭したことを積極要素とし、考慮する不法滞在期間の終期を入管庁が事実を認知した時点としています。出頭は、それだけで許可を約束するものではありませんが、他の条件が同じなら結果を分けるだけの重みがあります。

二つ目に、過去の退去強制歴・出国命令歴の重さです。婚姻期間が約11年4月や約25年9月でも、退去強制歴がある人は不許可の欄に並んでいます。出国命令歴がある人も、他の条件が許可事例と同じでありながら不許可でした。

三つ目に、婚姻期間の短さは決定的な要素になっていないことです。婚姻期間約2月、約7月、約1年1月の許可例があります。ただし、別居している夫婦や配偶者に婚姻継続の意思がない場合は、期間が長くても許可されていません。婚姻の長さより、共同生活の実態が見られていると読めます。

四つ目に、他の外国人の不法就労や在留資格の偽装に関わった人、在留カードを偽造・行使した人は、家族の事情があっても不許可です。ガイドラインが「特に考慮する消極要素」に挙げる類型で、公表事例もそのとおりに並んでいます。

在留特別許可は法務大臣の広い裁量による判断で、公表事例と似た事情でも個別の事情で判断が変わります。事例は「この条件なら許可される」という基準表ではなく、どの事情が重く見られているかを知るための材料として使うのが適切です。

企業の人事担当者が知っておきたいこと

在留特別許可の手続に会社が関わるのは、従業員の家族がオーバーステイだった場合や、許可後の雇用を予定している場合です。公表事例には「不法就労助長」で退去強制事由に当たった人が複数含まれており、外国人を働かせた側にも責任が問われることが分かります。許可が出るまで本人は働けず、監理措置中に報酬を受ける活動をするには主任審査官の許可が必要です。雇う側の責任は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説で確認できます。

雇用予定先として陳述書を出す場合は、職務内容、報酬、雇用開始予定日を具体的に書くと、ガイドラインがいう「在留資格に該当し、その活動を行うと認められること」の裏づけになります。

よくある質問

在留特別許可の許可率はどのくらいですか?

入管庁は許可率を公表していません。公表されている件数から計算すると、2025年は許可1,026件・不許可1,233件で、結果の出た案件のうち許可は約45%です。2024年6月10日から12月末までは約56%でした。日本人との婚姻や日本で育った子がいる案件と、そうでない案件とでは見通しが大きく違うため、全体の割合は目安にとどまります。

在留特別許可されたらどうなりますか? 在留期間は何年ですか?

法務大臣が在留資格と在留期間を決めて許可します。公表事例では、日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者・特定活動などの在留資格で、在留期間は多くが1年です。日本国籍を失った人に3年や5年が許可された例もあります。許可後は通常の在留資格と同じように更新を重ねることになり、更新では許可の前提となった婚姻や養育が続いているかが確認されます。

在留特別許可が不許可になったらどうなりますか?

不許可の処分が出ると、退去強制令書が発付されます。在留特別許可の不許可に対する審査請求などの不服申立ての手段はなく、争う場合は取消訴訟によります。在留に関する処分と不服申立ての関係は在留資格の不許可に不服申立てはできない?行政不服審査法の適用除外と取消訴訟で解説しています。

元日本人でも在留特別許可は取れますか?

入管法50条1項2号は、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるときを、在留特別許可できる場合の一つとして挙げています。公表事例にも、親子関係不存在の審判で日本国籍を失った人や、外国籍を取得して日本国籍を失った人が許可された例があります。ただし許可は裁量によるもので、元日本人であれば必ず許可されるわけではありません。

過去に在留特別許可を受けたことがあっても、もう一度許可されますか?

令和7年の公表事例には、特記事項に「在留特別許可歴あり」と書かれた許可例があります。一方、不許可事例にも在特歴のある人が複数含まれ、多くは薬物事犯や詐欺などの刑事処分を伴っています。一度許可を受けた後に再び違反した経緯は、厳しく見られると考えてください。

事例を読んだ後に確かめること

公表事例と自分の状況を比べるときは、婚姻期間や在日期間といった数字より先に、発覚の経緯、過去の退去強制歴・出国命令歴、家族との同居の実態、刑事処分の種類の4つを確かめてください。この4つのどこかに事例の不許可欄と重なる点があれば、積極要素をどれだけ積み上げられるかが勝負になります。まだ入管に出頭していない段階であれば、出頭するかどうかの判断そのものが結果を左右します。

申請は退去強制令書が出る前にしかできず、認定に服した後は3日以内という短い期限もあります。事実関係と資料を持って、手続が進む前に専門家に相談することを勧めます。

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根拠資料


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