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出国命令制度とは?オーバーステイで自ら出頭した場合の5要件と出国までの流れ

出国命令制度とは、オーバーステイ(不法残留)の外国人のうち、入管法24条の3の5つの要件をすべて満たす人について、収容せずに簡易な手続で出国させる制度です。自ら入管に出頭すれば、出頭から出国までおおむね2週間で、出国後に日本へ上陸できない期間(上陸拒否期間)は1年で済みます。摘発されて退去強制になれば上陸拒否期間は原則5年なので、出頭するかどうかの判断が、その後の数年を左右します。

出国命令制度とは|退去強制との違い

オーバーステイは入管法24条4号ロの退去強制事由で、本来は退去強制手続の対象です。退去強制手続では、収容令書により原則として収容され、違反審査、口頭審理を経て退去強制令書が発付され、送還されます。

出国命令制度は2004年(平成16年)の入管法改正で設けられた制度です。オーバーステイの人に自発的な出頭を促すため、一定の要件を満たす人については、退去強制の手続に乗せず、主任審査官が出国を命じる形にしました。

項目 出国命令 退去強制
根拠 入管法24条の3・55条の85 入管法24条・51条以下
収容 されない 原則として収容(監理措置・仮放免の例外あり)
出国の方法 本人が自分で航空券を用意して出国 退去強制令書による送還(自費出国の許可を含む)
上陸拒否期間 出国した日から1年(5条1項9号ホ) 退去の日から5年、2回目以降は10年(同号ハ・ニ)
手続の期間 出頭から出国までおおむね2週間 事案によって大きく異なる

出入国在留管理庁の公表によると、2025年(令和7年)に退去強制手続等を執った外国人1万8,442人のうち、出国命令の手続によったのは9,483人で、出国命令により出国した人は9,789人でした。手続の対象になった人の半数以上が、この制度で帰国していることになります。

出国命令の対象者|入管法24条の3の5要件

出国命令の対象者(出国命令対象者)は、オーバーステイなど一定の不法残留の退去強制事由に当たる外国人で、次の5つにすべて該当する人です(24条の3)。

  1. 出頭または出国の意思の表明をしたこと(1号)
  • イ:入国警備官の違反調査が始まる前に、速やかに出国する意思をもって、自ら出入国在留管理官署に出頭した
  • ロ:違反調査が始まった後、入国審査官から退去強制事由に該当する旨の認定の通知を受ける前に、入国審査官または入国警備官に、速やかに出国する意思があることを表明した
  1. 不法残留以外の退去強制事由に当たらないこと(2号)
  2. 日本に入った後に、窃盗罪など一定の罪で拘禁刑に処せられていないこと(3号)
  3. 過去に退去強制されたこと、出国命令で出国したことがないこと(4号)
  4. 速やかに出国することが確実と見込まれること(5号)

2号:オーバーステイ以外の違反があると対象外

2号は、不法残留以外の退去強制事由に当たらないことを求めています。偽造パスポートでの入国(不法入国)、資格外活動の罪での拘禁刑、不法就労助長、薬物事犯などに当たる人は、自ら出頭しても出国命令の対象になりません。出入国在留管理庁のQ&Aも、偽造パスポートで入国した人は不法入国に当たるため対象外で、退去強制手続を執ると説明しています。

3号:刑事処分の対象になる罪

3号が挙げる罪は、刑法の住居侵入、通貨偽造、文書偽造、有価証券偽造、印章偽造、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、横領、盗品等の罪など、暴力行為等処罰法、盗犯等防止法、特殊開錠用具所持禁止法、自動車運転死傷処罰法の危険運転致死傷などです。これらの罪で拘禁刑に処せられた人は、執行猶予付きであっても対象外です。罰金刑は、条文上この要件には含まれていません。

4号:一度使った人は二度と使えない

出国命令は1人1回の制度です。出国命令で帰国した人が上陸拒否期間の経過後に再入国し、再びオーバーステイになった場合、2回目の出国命令は受けられません。過去に退去強制された人も同じです。2025年の在留特別許可の公表事例には、出頭申告でオーバーステイのみ、刑事処分もない人が、出国命令歴があることを特記されて不許可になった例があります。

5号:帰国の準備ができていること

「速やかに出国することが確実と見込まれる」かどうかは、有効なパスポートと帰国の航空券(またはその予約)があるかで判断されます。パスポートを失くしている人は、本国の大使館・領事館で再発行を受ける必要があり、その分だけ手続が長くなります。

2024年改正で加わった「表明」型と短期滞在5年の例外

2024年6月10日施行の改正入管法(令和5年法律第56号)で、1号ロの「違反調査の開始後の表明」が加わりました。改正前は、違反調査の開始前に自ら出頭した人に限られていたため、職務質問や職場の摘発で発覚した人は、ほかの要件を満たしていても出国命令を受けられませんでした。改正後は、摘発された後でも、入国審査官の認定の通知を受ける前に出国の意思を表明すれば対象になります。

ただし、2つの経路には上陸拒否期間の違いがあります。

経路 上陸拒否期間(出国した日から)
1号イ:自ら出頭 1年(5条1項9号ホ)
1号ロ:違反調査開始後の表明 短期滞在で上陸しようとする場合は5年(同号ヘ)、それ以外は1年

表明型で出国した人は、観光や親族訪問などの短期滞在で戻ろうとすると5年間上陸できません。日本人と結婚していて配偶者ビザで戻る場合など、中長期の在留資格で入国するなら1年です。自ら出頭したか、摘発後に表明したかは、帰国後の選択肢に影響します。上陸拒否期間の全体像は上陸拒否事由とは?入管法5条の一覧と上陸拒否期間1年・5年・10年で扱っています。

出頭から出国までの流れ|出頭先は8局・3支局

出入国在留管理庁のQ&Aによると、出国命令のための違反調査は、原則として8か所の地方出入国在留管理局(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)と3か所の支局(横浜、神戸、那覇)で行われます。平日の執務時間内に出頭します。

九州に住んでいる人の出頭先は、福岡出入国在留管理局(福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎)です。長崎・鹿児島などの出張所に出頭した場合は、出頭確認書が交付され、福岡局への出頭日時と場所が指示されます。空港の入管に出頭しても、違反調査に時間がかかるため、原則としてその日のうちには出国できません。

持ち物

出入国在留管理庁は、出頭の際に次のものを持参するよう案内しています。

  • 有効なパスポート(紛失した人は身分を明らかにする証明書)
  • 帰国のための航空券、または旅行代理店が発行した航空券予約確認書

在留カードを持っている人は在留カードも持参します。航空券については、調査に時間がかかって予約した便に乗れなくなることがあるため、まず出頭してから入管に相談するよう案内されています。筆者は、日付変更のできる航空券か、予約確認書の段階で出頭することを勧めています。

手続の流れ

  1. 出頭:窓口で、オーバーステイであること、速やかに帰国したいことを申告する
  2. 違反調査:入国警備官が、入国の経緯、在留の状況、就労の有無、刑事処分の有無などを聴き取る。出国命令対象者に当たると認められれば、事件が入国審査官に引き継がれる(55条の84第1項)
  3. 審査:入国審査官が、出国命令対象者に該当するかを審査する(同条2項)
  4. 出国命令書の交付:主任審査官が、15日を超えない範囲で出国期限を定めて出国を命じ、出国命令書を交付する。住居や行動範囲の制限などの条件が付くことがある(55条の85)
  5. 出国:出国期限までに、指定された空港から出国する

出頭から出国命令書の交付を受けて出国するまで、おおむね2週間程度かかるとされています。パスポートがない人や、調べることが多い人はそれより長くなります。

出国命令書と出国期限|15日を過ぎたらどうなるか

出国命令書には、氏名・年齢・国籍、出国命令の理由、出国期限、交付年月日などが記載されます(55条の86)。出国期限は最長15日で、この期限までに出国しなければなりません。

出国期限までに出国できない事情が生じた場合は、期限内に主任審査官に申し出ます。船舶や航空機の運航の都合など、本人の責めに帰すことができない事由があると認められるときに限り、期限が延長されます(55条の87)。本人の都合による延長は認められません。

期限を過ぎて日本に残った場合や、付された条件に違反して出国命令を取り消された場合(55条の88)は、それ自体が退去強制事由になり(24条8号・9号)、刑事罰の対象にもなります。罰則は、不法残留と同じ3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です(70条1項8号の2・8号の3)。出国命令で得られるはずだった1年の上陸拒否期間も失うことになります。

出国命令と在留特別許可、どちらを選ぶか

出頭する人の中には、帰国したい人と、日本での在留を望む人がいます。在留を望む場合は、出国命令ではなく在留特別許可を求めることになり、退去強制手続の中で申請します。

判断の軸は、日本に在留を認めるべき事情がどの程度あるかです。日本人と結婚して相当期間同居している、日本で育った子どもがいる、といった事情があれば、在留特別許可を検討する余地があります。一方、在留特別許可が認められなければ退去強制となり、上陸拒否期間は原則5年です。在留を強く望む事情がないなら、出国命令で1年の上陸拒否期間にとどめ、改めて正規の在留資格で来日するほうが、結果として早く日本に戻れることがあります。日本人との婚姻がある場合の比較はオーバーステイの外国人と結婚したら|在留特別許可の可能性と駆け込み婚の評価で、在留特別許可の制度は在留特別許可とは?2024年改正後の申請制度とガイドラインの考慮事項で解説しています。

なお、出頭しただけでオーバーステイの状態が解消されるわけではありません。出入国在留管理庁のQ&Aも、出頭しても直ちに不法残留の状態が解消されるわけではなく、原則として就労も認められないと注意しています。

帰国後に再入国するには

出国命令で帰国した人が再び日本に来るには、上陸拒否期間の1年(表明型で短期滞在の場合は5年)が過ぎるのを待つのが原則です。

就労や配偶者などの中長期の在留資格で戻る場合は、日本側の受入れ機関や家族が在留資格認定証明書の交付を申請し、交付を受けたうえで本国の日本大使館で査証を申請します。上陸拒否期間の経過前でも、在留資格認定証明書の交付を受け、査証を得た場合には、入管法5条の2の特例により上陸を認められることがあります。いずれの場合も、過去のオーバーステイの経緯は審査で考慮されるため、交付や査証の発給が保証されるわけではありません。再入国の手続と上陸特別許可は強制送還された外国人は再入国できる?上陸拒否期間と上陸特別許可の実例で扱います。

会社の外国人社員がオーバーステイだとわかったとき

雇用している外国人の在留期限が切れていたことがわかった場合、会社として最初にすべきことは、その日から就労をやめてもらうことです。在留資格のない人を働かせ続けると、会社が不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われます。現行法では3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金で、2027年4月1日からは5年以下・500万円以下に引き上げられます。仕組みは不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説で解説しています。

そのうえで、本人に出頭を促します。更新申請を忘れていた、という経緯であれば、出国命令の要件に当たる可能性があります。会社が本人に代わって出頭することはできませんが、在職証明書や経緯を説明する書面を用意して、本人の出頭を支えることはできます。本人を帰国させた後に呼び戻したい場合は、上陸拒否期間の経過後に在留資格認定証明書で呼び寄せる計画を立てます。更新の期限管理を見直すなら、在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?申請期限と標準処理期間を解説が参考になります。

よくある質問

出国命令制度で帰国後、再入国するにはどうしたらいいですか?

上陸拒否期間の1年が過ぎた後に、目的に合った査証や在留資格認定証明書を取得して入国します。就労や配偶者として戻るなら、日本側で在留資格認定証明書の交付を申請します。認定証明書と査証を得た場合は、1年を待たずに上陸を認められることもあります。違反調査の開始後に表明して出国命令を受けた人が短期滞在で戻る場合は、上陸拒否期間は5年です。

出国命令と退去強制の違いは何ですか?

出国命令は、要件を満たすオーバーステイの人が収容されずに自分で出国する制度で、上陸拒否期間は1年です。退去強制は、原則として収容されたうえで退去強制令書により送還される手続で、上陸拒否期間は5年、過去にも退去強制や出国命令の歴がある人は10年です。出国命令は1回しか使えません。

出国命令書とは?

主任審査官が出国命令をするときに交付する書面で、氏名・年齢・国籍、出国命令の理由、出国期限、交付年月日などが記載されています(入管法55条の86)。出国期限は15日を超えない範囲で定められ、住居や行動範囲の制限などの条件が付くことがあります。出国するまで大切に保管してください。

出国命令を受けずに空港から出国すると罰金はありますか?

オーバーステイの人が空港の入管に出頭しても、違反調査に時間がかかるため、原則としてその日には出国できません。不法残留は入管法70条1項5号の罪で、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。出国命令を受けずに退去強制となれば上陸拒否期間は5年になるため、事前に地方出入国在留管理局に出頭して手続を受けてください。

入管法改正で出国命令制度はどう変わりましたか?

2024年6月10日施行の改正で、違反調査の開始後でも、入国審査官の認定の通知を受ける前に出国の意思を表明すれば、出国命令の対象になるようになりました。ただし、この経路で出国した人が短期滞在で再来日する場合、上陸拒否期間は5年です。

出頭は「いつ」するかで条件が変わる

出国命令制度の要件は、オーバーステイ以外に違反がないこと、刑事処分を受けていないこと、初めてであること、そして自分から動いたことです。このうち本人が今から変えられるのは、出頭の時期だけです。摘発された後でも表明型の出国命令はありますが、短期滞在での再来日は5年閉ざされます。オーバーステイの期間が長くなるほど、在留特別許可の判断でも消極的に評価されます。

帰国を考えているなら、有効なパスポートを確保し、日付を変更できる航空券を予約したうえで、平日に地方出入国在留管理局に出頭してください。日本での在留を望む事情がある場合や、刑事事件や過去の出国歴があって要件に当たるか判断がつかない場合は、個別の事情で判断が変わるため、出頭の前に専門家に相談することを勧めます。

根拠資料


在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。