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在留特別許可とは?2024年改正後の申請制度とガイドラインの考慮事項

在留特別許可とは、オーバーステイなどで退去強制事由に当たる外国人に対して、法務大臣が特別に日本での在留を認める入管法50条の制度です。2024年6月10日施行の改正入管法で、本人が申請する手続が設けられ、判断の考慮事情が法律に書き込まれました。申請できるのは、収容令書で収容された人か監理措置に付された人で、退去強制令書が発付された後はできません。2025年の申請は2,424件、許可は1,026件、不許可は1,233件でした。判断の物差しになるのが2024年3月改定の「在留特別許可に係るガイドライン」で、積極要素が消極要素を「明らかに上回る」ときに許可の方向で検討するとされています。

在留特別許可とは|退去強制の例外として認められる在留

ここでいう在留特別許可とは、本来は日本から退去を強制されるべき外国人に、例外的・恩恵的に在留を認める措置を指します。入管法50条1項は、外国人が退去強制対象者に該当する場合でも、次のいずれかに当たるときは、法務大臣がその外国人の在留を特別に許可することができると定めています。

  1. 永住許可を受けているとき
  2. かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるとき
  3. 人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留しているとき
  4. 難民または補完的保護対象者の認定を受けているとき
  5. その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき

実際の申請の大半は5号です。日本人と結婚している、日本の学校に通う子どもがいる、といった事情はすべてここに入ります。

ガイドラインは、在留特別許可の判断が「法務大臣の極めて広範な裁量に委ねられて」いることは改正後も変わらないと明記しています。条文が「許可することができる」という形をとっているのもそのためです。在留の許否に広い裁量があるという考え方の出発点は、マクリーン事件とは?在留期間更新の裁量をわかりやすく解説で扱っています。

重い前科がある人は「特別の事情」が必要

50条1項ただし書は、無期または1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた人や、テロリスト・売春関係・薬物関係など一定の退去強制事由に当たる人については、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限って許可できるとしています。執行猶予付きの判決は、ここでいう実刑に含まれません。

ガイドラインは「特別の事情」の例として、日本で疾病の治療を受けていて、相当期間日本で治療を受けなければ生命に危険が及ぶ具体的なおそれがある場合を挙げています。この類型に当たる人は、通常の考慮事情の比較衡量に入る前に、この高いハードルを越える必要があります。

2024年改正で何が変わったか|申請制度の新設

改正前の在留特別許可は、退去強制手続の最終段階で、本人が異議の申出をしたときに法務大臣が裁決の中で職権で判断する仕組みでした。本人が「在留特別許可を申請する」という手続はなく、考慮事情も法律には書かれていませんでした。

令和5年改正入管法(2024年6月10日施行)は、この仕組みを3点で変えています。

  • 申請手続の創設:本人の申請により、または職権で在留特別許可をするとした(50条1項・2項)
  • 考慮事情の明文化:在留を希望する理由、家族関係、素行など、判断で考慮する事情を法律に列挙した(50条5項)
  • 理由の通知:許可しない処分をするときは、理由を付した書面で本人に知らせるとした(50条10項)

ガイドラインはこの改正に合わせて2024年3月に改定されました。改定の説明は、従来の判断の在り方を変えるものではないとしつつ、不法に在留している期間が長いことは消極的に評価されることを明確にした一方、家族とともに生活をするという子の利益の保護や、地域社会との関係を積極的に評価することを明確にした、と述べています。

在留特別許可の申請手続

出入国在留管理庁の「在留特別許可申請」のページによると、手続の骨格は次のとおりです。

項目 内容
対象者 退去強制事由(入管法24条)に該当する外国人
受付期間 収容令書により収容されたとき(仮放免中を含む)、または監理措置に付されたときから、退去強制令書が発付されるときまで
受付方法 収容中の人は意思表示をして入国審査官等と面接のうえ申請。仮放免中・監理措置中の人は地方出入国在留管理官署に出頭し面接のうえ申請
代理 16歳未満の人や疾病などで自ら申請できない人は、父・母・配偶者・子または親族が代わって申請できる
提出書類 在留特別許可申請書(1人1部)と、50条1項各号の事情を証する資料
手数料 かからない
不服申立て なし

期限が「退去強制令書が発付されるとき」までと区切られている点が、この手続で最も重要です。令書が出た後は申請できず、ガイドラインも、令書の発付後の事情の変化は原則として考慮されないとしています。婚姻の予定がある、子どもの進学が決まっているといった事情は、手続の早い段階で申請書と資料に反映させておく必要があります。申請書の書き方と資料のそろえ方は在留特別許可申請の方法|申請書・必要書類・流れと「3日以内」の期限で扱います。

不許可の処分に対する審査請求などの不服申立ての手段はありません。争う場合は、処分の取消訴訟によることになります。在留に関する処分と不服申立ての関係は在留資格の不許可に不服申立てはできない?行政不服審査法の適用除外と取消訴訟で解説しています。

数字で見る在留特別許可|2025年は許可1,026件

出入国在留管理庁は、申請制度が始まってからの件数を公表しています。

区分 2024年(6月10日〜12月末) 2025年
申請 2,048件 2,424件
許可 469件 1,026件
不許可 370件 1,233件
終止 46件 119件

(出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」図表22)

2025年の結果が出た件数(許可と不許可の合計2,259件)に占める許可の割合を計算すると、約45%です。2024年は同じ計算で約56%でした。制度開始直後は、以前から手続が進んでいて事情の明らかな案件が多く処理されたと筆者はみており、単純に比べることはできませんが、許可が出るのは結果の出た案件のおおむね半分という水準です。許可された事例と不許可の事例の傾向は公式案内をご確認ください。

ガイドラインの考慮事項|50条5項の順に読む

ガイドラインの第2は、50条5項に並ぶ考慮事情を順番に取り上げ、それぞれを積極要素と消極要素に分けて説明しています。審査でもこの枠組みで事情が整理されるため、申請の準備もこの順に行うのが合理的です。

1 在留を希望する理由

在留を希望する理由は判断の基本になるものですが、理由があるだけでは足りず、以下の2から9の事情とどのように関連するかという観点から考慮されます。「日本が好きだから」ではなく、家族や生活の実態に結びつけて説明する必要があります。

2 家族関係|子の利益の保護は積極要素

家族関係は重要な要素となり得るもので、中でも、家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性は積極要素として考慮されます。ガイドラインが「特に考慮する積極要素」として挙げるのは、次のような家族関係です。

  • 日本人・特別永住者との間の実子であること、またはその実子(未成年・未婚など)と相当期間同居して監護・養育していること
  • 日本人・特別永住者と法的に婚姻し、相当期間共同生活をして相互に扶助し、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること(退去強制を免れるための偽装婚は除く)
  • 永住者・定住者・日本人の配偶者等などの別表第二の在留資格で在留する人と、同様の親子関係・婚姻関係にあること
  • 日本の小中学校・高校などで相当期間教育を受け、本国で教育を受けることが困難な実子と、地域社会に溶け込んでいる親が同居していること

婚姻については「安定かつ成熟」が求められている点に注意が必要です。入管に摘発された後に婚姻届を出した、同居期間が短い、といった事情は、婚姻の実体を疑わせる要素になります。

3 素行|善良は前提で、積極要素にはならない

ガイドラインは、素行が善良であることは当然の前提であり、積極要素にはならないとしています。そのうえで、地域社会で相当程度活動している、将来の雇用主などの第三者による支援が十分である、といった地域社会への溶け込みや貢献は、その程度に応じて積極要素になります。社会・経済・文化などの分野で日本に貢献し、欠かせない役割を担っていると認められることは、特に考慮する積極要素です。

消極要素として挙げられているのは、過去の退去強制手続・出国命令の歴、刑罰法令違反、仮放免や監理措置中の逃亡・条件違反、就労していたのに納税していないこと、地域のルールを守らないことなどです。特に考慮する消極要素は、集団密航や不法入国の手助け、他の外国人の不法就労や在留資格の偽装への関与、在留カードの偽変造や不正受交付、売春関係、反社会的勢力であることです。

4 本邦に入国することとなった経緯

適法に入国したことは前提で積極要素にはなりませんが、インドシナ難民、第三国定住難民、中国残留邦人であることは特に考慮する積極要素です。密航、偽造旅券の使用、在留資格の偽装などによる不正な入国は、帰責性の程度に応じて消極要素になります。

5 在留期間とその間の法的地位|不法滞在の長さは消極要素

就労資格や身分系の在留資格で適法に在留していた期間が長いことは積極要素です。反対に、不法残留や不法入国後の在留が長いことは、在留管理秩序を侵害する程度が大きいとして消極要素になります。2024年改定で明確にされたのがこの点です。

ただし注記で、不法滞在中であっても日本人や地域社会との関係を築いている場合は、積極要素として考慮される場合があるとされています。また、考慮する不法滞在期間の終期は、出入国在留管理庁が不法滞在の事実を認知した時点です。自ら出頭すれば、その時点で不法滞在期間の伸びが止まることになります。

6 退去強制の理由となった事実

どの退去強制事由に当たったかは、その反社会性の程度に応じて消極要素として考慮されます。在留期間をうっかり過ぎたオーバーステイと、偽造在留カードを使った不法就労とでは、評価の重さが大きく違います。

7 人道上の配慮の必要性

人道上の配慮の必要性は、その程度に応じて積極要素になります。特に考慮する積極要素は、難病などで日本での治療が必要であること(またはそうした親族の看護が必要であること)、難民等の認定を受けていなくても本国の情勢不安から帰国困難な状況が客観的に明らかであること、無国籍でどの国にも送還できないことです。

8 内外の諸情勢と不法滞在者に与える影響

国内の治安や労働市場の安定、本国の情勢、ほかの不法滞在者に与える影響などが考慮されます。本人の努力で左右できる要素ではありませんが、この要素があるために、同じような事情でも時期によって判断が変わり得ます。

9 その他の事情|出頭と在留資格該当性は積極要素

考慮される事情は1から8に限られません。ガイドラインが例示する積極要素は、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことと、就労資格などいずれかの在留資格に該当し、許可された場合にその在留資格の活動を行うと認められることです。消極要素は、手続の中で虚偽の申告をしたことと、本国との結び付きが顕著なことです。

積極要素と消極要素の比べ方

ガイドラインの第3は、個々の事案ごとに、申立ての内容だけでなく具体的な根拠や客観的な状況も考慮し、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に、在留特別許可をする方向で検討するとしています。そのため、特に考慮する積極要素があっても必ず許可されるわけではなく、特に考慮する消極要素があっても一切許可されないわけでもありません。

ここで重要なのは、「具体的な根拠や客観的な状況」という部分です。婚姻の安定を主張するなら同居の期間と生活の実態を示す資料、地域社会への溶け込みを主張するなら自治会や学校の関係者の陳述書、雇用の見込みを主張するなら雇用予定先の書面、というように、申立ての一つひとつに裏づけが要ります。

企業が関わる場面|雇用予定先としての支援

在留特別許可は本人の手続ですが、企業が関わる場面もあります。ガイドラインは、将来の雇用主などの第三者による支援の内容が十分であることや、許可された場合に就労資格の活動を行うと認められることを積極要素として挙げているからです。雇用を予定する会社が、職務内容、報酬、雇用条件を書面で示すことは、本人の申請を支える材料になります。

注意したいのは、許可が出るまでの間の就労です。収容令書の段階で監理措置に付された人は、主任審査官の許可を受けた範囲でのみ報酬を受ける活動ができ(入管法44条の5)、それ以外の就労は不法就労になります。仮放免中の人は原則として働けません。雇用予定の段階で先に働かせてしまうと、会社は不法就労助長罪の責任を問われ、本人にとっても消極要素になります。不法就労助長罪の仕組みは不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で解説しています。

よくある質問

在留特別許可を申請したらどうなりますか?

申請は、地方出入国在留管理官署での面接を経て受け付けられ、入国審査官による違反審査などの退去強制手続と並行して審査されます。許可されれば在留資格と在留期間が決定され、中長期在留者になる場合は在留カードが交付されます(50条6項・7項)。許可されなければ理由を付した書面で通知され、退去強制令書が発付されて送還の手続に進みます。

在留特別許可の許可率はどのくらいですか?

出入国在留管理庁の公表では、2025年は許可1,026件、不許可1,233件で、結果の出た案件のうち許可は約45%です(筆者の計算)。ただしこれは全体の数字で、日本人との婚姻や日本で育った子どもがいる案件と、そうでない案件とでは見通しが大きく違います。

元日本人でも在留特別許可は取れますか?

50条1項2号は「かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき」を許可できる場合の一つとして挙げています。外国籍を取得して日本国籍を失った人などがこれに当たり、資料として除籍謄本などを提出します。ただし、この号に当たっても許可は法務大臣の裁量で、5項の考慮事情による判断を経ます。

在留特別許可はいつから申請できるようになりましたか?

2024年6月10日です。令和5年改正入管法の施行により、本人が申請する手続が設けられました。それ以前は、異議の申出に対する裁決の中で法務大臣が職権で判断する仕組みでした。

在留特別許可の申請に手数料はかかりますか?

申請の手数料はかかりません。許可された後に在留期間の更新などをする際は、通常の在留手続と同じく手数料がかかります。

在留特別許可は「退去強制令書の前」に勝負が決まる

在留特別許可の判断は法務大臣の広い裁量に委ねられており、結果を約束できる手続ではありません。それでも、2024年の改正で申請手続と考慮事情が法律に書かれ、ガイドラインで積極要素と消極要素の中身が示されたことで、何を、いつまでに、どう示せばよいかは以前よりはっきりしました。

準備の軸は2つです。1つは時期で、退去強制令書が出る前に申請し、主張したい事情と資料をそろえておくこと。もう1つは裏づけで、家族関係、地域社会との関係、雇用の見込みを、ガイドラインの項目に沿って客観的な資料で示すことです。家族の事情や在留歴の立証の仕方で結論が左右されるため、個別の事情で判断が変わることを前提に、手続の初期の段階で専門家に相談することを勧めます。

根拠資料


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