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不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説

ここでいう不法就労助長罪とは、「わざと違反させた」場合だけでなく「確認を怠っていた」場合にも成立し得る犯罪を指します。「在留カードをちゃんと見せてもらったので大丈夫だと思った」という言い分は、通用しないことがあります。カードの見た目を確認しただけで、有効期限や就労制限の内容をきちんと読んでいなければ、それは確認したうちに入らないからです。

悪意を持って不法就労者を雇う企業ばかりではありません。むしろ大半は「知らなかった」「そこまで見ていなかった」という過失によるものです。ただし、この法律は過失であっても処罰対象にしているので、「知らなかった」は言い訳にならないという構造になっています。採用の入口できちんと確認する仕組みを持っているかどうかが、企業を守る一番の防波堤になるゆえんです。

この記事では、不法就労助長罪がどういう場合に成立するのか、罰則はどれくらい重いのか、そして企業が採用前に何をどう確認しておけばいいのかを、行政書士の立場から整理します。採用担当者だけでなく、現場で外国人社員に指示を出す責任者にも共有してほしい内容です。

この記事でわかること

  • 不法就労助長罪の構成要件(故意でなくても成立し得る理由)
  • 罰則の重さと、実際にどんなケースが処罰対象になるか
  • 企業が採用前に確認すべき具体的な手順
  • 技人国など専門職の在留資格で特に注意すべき業務範囲
  • 2026年に報道された欠格事由化の動きと今後の見通し

不法就労助長罪とは

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)73条の2に定められている犯罪です。不法就労者だと知りながら、あるいは知らなかったとしても確認を怠ったまま、外国人を働かせたり、そのあっせんをしたりした事業主が処罰される、という制度です。

ここでいう「不法就労」には、大きく分けて3つのパターンがあります。ひとつは、在留資格を持たずに、あるいは在留期限が切れた状態で働いているケース。もうひとつは、観光などそもそも就労が認められていない在留資格で働いているケース。そしてもうひとつが、技人国のような就労系の在留資格を持っていても、許可された範囲を超えた業務、たとえば専門職のはずが単純作業ばかりしている、といったケースです。この3つ目のパターンは、企業側が「合法的に雇っているつもり」でいながら実は不法就労にあたっていた、という事態を招きやすいので特に注意が必要です。

故意でなくても成立する、というのが最大の落とし穴

不法就労助長罪でいちばん誤解されているのが、この「過失犯」の部分です。入管法は、不法就労であることを知らなかった場合でも、「知らなかったことに過失がある」場合は処罰の対象になると定めています。つまり、企業側に「確認する義務」がある、ということです。

これは、飲食店や工場のような現場だけの話ではありません。技人国のようなホワイトカラーの在留資格で採用した外国人であっても、実際にやらせている業務が在留資格の範囲を外れていれば、それは立派な不法就労です。技術・人文知識・国際業務でやらせてはいけない業務とは?で解説しているとおり、専門性のある業務のはずが、実態として単純作業が中心になっている、というケースは驚くほど多いのが実情です。忙しいからとレジを手伝わせる、繁忙期だけ倉庫作業をさせる、こうした「ちょっとだけだから」という感覚が、そのまま不法就労助長罪のリスクに直結します。

業務の一部にごく付随的な作業が含まれる程度なら問題になりません。ただし、「専門業務が主で、それ以外はおまけ」という建付けが崩れて、単純作業のほうが実質的にメインになってしまうと、一気に危うくなります。この境界線の判断を、現場の感覚だけで乗り切ろうとすると危険です。忙しさに流されて、なし崩し的に業務の中身が変わっていく、というのがいちばん怖いパターンです。

罰則の重さ

不法就労助長罪の罰則は、決して軽いものではありません。

対象 罰則
個人(事業主・採用担当者等) 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科もあり)
法人 両罰規定により、法人にも罰金刑が科される場合がある

この罰則は、不法就労者本人よりも、雇った側・あっせんした側のほうに重く設計されているのが特徴です。外国人本人の在留資格違反も当然処罰されますが、制度としては「働かせる側の管理責任」をより強く問う建付けになっています。社長個人が懲役刑を受ける可能性がある話なので、経営者としては「うちには関係ない」で済ませられる話ではありません。

加えて、不法就労助長罪で有罪になった企業は、社名が公表されることもあります。行政処分としての事業停止や、公共調達からの排除といった二次的な影響も無視できません。刑事罰そのものよりも、こうした社会的な信用の毀損のほうが、企業にとっては長期的なダメージになるケースも少なくないです。

企業が採用前に確認すべきこと

過失犯である以上、企業には「確認する義務」があります。逆に言えば、きちんと確認していたことを証明できれば、過失を否定できる材料になります。採用前に最低限やっておきたい確認手順を整理します。

確認項目 見るべきポイント
在留カードの提示 在留資格の種類、在留期限、就労制限の有無を確認する
在留カード番号の失効情報照会 出入国在留管理庁のウェブサイトで、カードが失効していないかを確認する
在留資格の種類と就労内容の照合 採用予定の業務が、その在留資格で認められた範囲かどうかを確認する
資格外活動許可の有無 留学生等のアルバイトの場合、資格外活動許可(週28時間等の制限)を確認する
就労資格証明書の取得推奨 転職者を採用する場合、入管に発行してもらう証明書で就労の可否を明確にする

特に見落とされがちなのが、在留カードを「見た」だけで満足してしまうパターンです。カードのICチップの真偽までは目視で分かりませんし、偽造の技術も年々巧妙になっています。在留カード番号のオンライン照会システムを使って失効の有無を確認する、という一手間を必ず入れておいたほうがいいでしょう。この確認記録を残しておくこと自体が、万が一のときに「確認義務を果たしていた」という証拠になります。

留学生をアルバイトで雇う場合は特に注意が必要です。資格外活動許可があっても、週28時間という上限を超えて働かせれば、それだけで不法就労にあたります。複数の職場を掛け持ちしている留学生の場合、自社での労働時間だけを見ていても、本人の総労働時間を把握できないという構造的な問題もあります。シフトを組む段階で本人にきちんと確認し、超過が疑われる場合は率直に伝えて調整してもらう、という運用が欠かせません。

確認の質で結果が変わる――良い例と悪い例

同じ「在留カードを確認した」という行為でも、その中身によって過失の有無が大きく変わります。実務でありがちなパターンを並べておきます。

確認義務を果たしたと評価されやすい例

在留カードの原本を提示させ、期限・在留資格・裏面の就労制限の記載を確認/オンラインの失効情報照会も実施/確認結果と写しを記録として保存/業務内容と在留資格の対応関係を書面で整理

過失が認定されやすい例

在留カードのコピーの提出を求めただけで原本を見ていない/有効期限を確認せず放置/本人の口頭申告のみで採用/業務内容の変化を追跡していない

ここで重要なのは「見た」ではなく「確認して記録した」という状態を作っておくことです。実際に確認していたとしても、記録が何も残っていなければ、あとから「確認していた」と主張しても説得力がありません。逆に、確認の手順と記録がしっかり残っていれば、それ自体が過失を否定する材料になります。

資格外活動許可違反との関係

不法就労助長罪と混同されやすいのが、資格外活動許可の違反です。留学生や家族滞在の在留資格を持つ人が、許可を受けずに、あるいは許可された時間・業務の範囲を超えて働く行為そのものは、外国人本人の資格外活動違反にあたります。ただ、これを雇う企業側から見ると、そのまま不法就労助長罪の問題に直結します。

特に注意したいのは、留学生が複数のアルバイト先を掛け持ちしているケースです。週28時間という上限は、1つの職場だけでなく、すべての職場を合算した時間で計算されます。自社のシフトだけを見て「うちは週20時間しか入れていないから大丈夫」と思っていても、本人が別の職場でも働いていれば、合計で上限を超えてしまうことがあります。採用時や定期面談の際に、他に働いている場所がないかを本人にきちんと確認しておく必要があります。根掘り葉掘り聞きすぎると本人との信頼関係を損ないかねませんが、法令上必要な確認だという説明をきちんとすれば、たいていの学生は素直に答えてくれます。

派遣・請負での受け入れも他人事ではない

「うちは派遣会社から紹介された人材だから、確認は派遣元がやってくれているはず」という考え方は危険です。就労先の企業が、在留資格の範囲を超えた業務をその外国人にさせていれば、就労先の企業自身が不法就労助長罪の対象になり得るからです。紹介元への信頼だけに頼らず、実際に受け入れる現場でも、業務内容が在留資格に合っているかを自社の目で確認しておく必要があります。

請負契約で外国人が現場に入ってくるケースも同様です。契約上は請負元の管理下にあるはずでも、実態として発注先企業が直接指示を出し、指揮命令をしているような状態であれば、偽装請負として扱われ、発注先企業側の責任が問われる可能性も出てきます。技術・人文知識・国際業務ビザは派遣で受け入れ可能?でも、指揮命令系統の重要性について触れています。

「知らなかった」が通用しないケースの具体例

実際にどういう場面で過失が認定されやすいのか、典型的なパターンを挙げておきます。

  • 在留カードの有効期限が切れているのに、確認せずそのまま働かせ続けた
  • 技人国の在留資格なのに、専門業務がほとんどなく、実態として現場作業ばかりさせていた
  • 留学生の資格外活動許可の上限時間を把握せず、繁忙期にシフトを詰め込んだ
  • 在留カードの提示を求めず、本人の口頭申告だけを信じて採用した
  • 別の会社の在留資格で働いている外国人を、そのまま自社の業務にも従事させた

いずれも、「悪意はなかった」という言い分は成り立ちます。しかし、「確認していれば防げたはず」という点で過失が認定されると、それだけで処罰の対象になり得ます。採用担当者一人の判断ミスが、会社全体の刑事責任に直結する。この重さを、経営者自身がきちんと理解しておく必要があります。

中小企業ほど、採用の現場を一人の担当者に任せきりにしている傾向があります。限られた人員でまわしている以上、仕方のない部分もありますが、その担当者が異動や退職でいなくなった瞬間に、確認のノウハウごと失われてしまう、という事態は避けたほうがいいでしょう。属人化した確認作業は、いずれ必ずどこかで抜け落ちます。

【2026年報道】欠格事由化の動きにも注意

2026年7月には、出入国在留管理庁が、業種ごとの受入れ制度に関する法改正の中で、不法就労助長罪の処分歴を「欠格事由」として明記する方針を示している、と報道されました。欠格事由というのは、その事由に該当すると一定期間、外国人の受入れそのものが認められなくなる、という重い扱いです。

これがそのまま制度化されれば、一度不法就労助長罪で処分を受けた企業は、その後しばらくの間、外国人の受入れができなくなる可能性があります。これはまだ正式に法改正が成立した話ではなく、方針が示された段階です。対象となる業種や制度の詳細、施行時期についても今後の議論次第で変わり得るため、断定はできません。正式決定次第、当事務所でも改めてご案内します。

ただ、方向性としては「一度のミスが、その後の外国人受入れ全体に長く影響する」という制度設計に進みつつある、という点は押さえておいたほうがいいでしょう。今まで以上に、採用前の確認体制の重要性が増していく、ということでもあります。

在留期限切れを見逃すとどうなるか

採用時にきちんと確認していても、更新のタイミングを見逃せば同じことです。技人国や特定技能の在留資格は1年・3年・5年といった単位で更新が必要ですが、更新の手続きは基本的に本人任せになっている企業が多いです。ここに落とし穴があります。

本人が更新を忘れていたり、書類の準備が遅れて期限が来てしまったりすると、その時点で在留期限切れの状態になります。そのまま「まだ手続き中だから大丈夫だろう」と働かせ続ければ、それは不法就労にあたります。「本人が更新すると言っていたから信じていた」という言い分は、企業の確認義務を果たしたことにはなりません。在留期限を会社側でも一覧管理し、期限の2〜3ヶ月前には本人に更新の準備状況を確認する、という運用をルール化しておく必要があります。

特に注意したいのは、更新申請中で結果がまだ出ていない状態、いわゆる「特例期間」の扱いです。期限内に更新申請をしていれば、審査結果が出るまでの間は引き続き働くことができますが、これはあくまで申請が受理されていることが前提です。申請自体をしていなければ、この特例は適用されません。「申請したかどうか」を会社側でも確認しておくことが重要です。

社内で確認体制を仕組み化するには

個人の注意力に頼った確認は、担当者が変わったり、忙しい時期に手が抜けたりすると、すぐに形骸化します。確認作業をマニュアル化し、誰が採用担当になっても同じ手順を踏める仕組みにしておくことが大事です。具体的には、採用時のチェックリストを作成し、在留カードの写しと確認結果を必ず記録として残す。定期的に、既に雇用している外国人社員の在留期限を一覧で管理し、更新時期が近づいたら本人と会社の両方が把握できるようにしておく。こうした地道な体制づくりが、結局はいちばんの防御策になります。

また、就労資格証明書の取得を積極的に活用するのも有効です。この証明書は、入管が「この人はこの会社でこの業務をすることが在留資格の範囲内である」と公的に認めるものなので、取得しておけば、万が一のトラブルの際に企業側の確認義務を果たしていたことの強力な証拠になります。転職者を採用する際は特に、取得しておくことを強くおすすめします。

もうひとつ意識しておきたいのは、確認業務を人事担当者だけの仕事にしないことです。実際に現場で外国人社員に指示を出す現場責任者が、「専門業務のはずなのに、いつの間にか単純作業ばかり任せていた」という状態に気づかず放置してしまうケースはよくあります。人事部門は在留カードの確認、現場責任者は業務内容の実態管理、というように役割を分けて、両方から抜け漏れをチェックする体制にしておくと安心です。年に一度でも、外国人社員がどんな業務にどれくらいの時間を使っているかを棚卸しする機会を作っておくと、専門業務と単純作業のバランスが崩れていないかを早期に発見できます。

不法就労が発覚した場合の対応

万が一、自社で雇用している外国人が不法就労状態にあると気づいた場合、まずやるべきは業務を直ちに停止させることです。「もう少しだけ」と先延ばしにする時間が、そのまま故意性を疑われる材料になりかねません。そのうえで、事実関係を整理し、入管への相談も含めて早急に対応する必要があります。

自主的に申告し、誠実に対応した場合と、発覚を隠そうとして後から明るみに出た場合とでは、その後の扱いに大きな差が出ます。入管は、正直に説明する企業に対して比較的理解を示す傾向があります。隠すより先に説明したほうがいい、というのは技人国の不許可対応でもよく言われることですが、不法就労の場面ではなおさらです。あとから発覚するほうが、よほど心証を悪くします。

よくある質問

Q. 在留カードを確認していれば、企業は絶対に処罰されませんか?

在留カードの確認は最低限の防御策にすぎません。偽造カードだと分からず雇用したケースでも、確認方法があまりに杜撰だと過失が認定される可能性があります。在留カード番号の失効情報照会など、複数の手段を組み合わせて確認することが重要です。

Q. 資格外活動許可の範囲を超えて働かせていたら、それだけで処罰されますか?

資格外活動許可で認められた時間や業務の範囲を超えて働かせると、不法就労にあたります。企業側がその超過を知りながら働かせ続けていれば故意、知らなかったとしても確認を怠っていれば過失として不法就労助長罪に問われる可能性があります。

Q. 派遣会社から紹介された人材なら企業は責任を負いませんか?

派遣会社を通じて受け入れた場合でも、就労先の企業が在留資格の範囲を超えた業務をさせていれば、就労先の企業自身が不法就労助長罪に問われる可能性があります。紹介元に確認を任せきりにせず、自社でも在留資格の内容を把握しておく必要があります。

Q. 不法就労助長罪の処分歴があると、今後の在留資格申請にどう影響しますか?

現時点でも受入企業としての信頼性に関わる要素として扱われる可能性があります。加えて、出入国在留管理庁が業種ごとの法改正の中で、不法就労助長罪の処分歴を欠格事由として明記する方針を示していると報道されています。まだ法改正が成立したわけではないため、正式決定次第、当事務所でも改めてご案内します。

まとめ

不法就労助長罪は、「悪意を持って不法就労者を雇った企業」だけの問題ではありません。確認を怠っただけの企業も、等しく処罰対象になり得るという点が、この制度のいちばん厳しいところです。在留カードの提示を求めるだけでなく、失効情報の照会、業務内容と在留資格の照合、資格外活動の時間管理まで、確認の手を抜かない仕組みを作っておく。それが、経営者自身と会社そのものを守ることに直結します。

欠格事由化の方針が示されている今、この確認体制を整えるタイミングは早ければ早いほどいいでしょう。制度が変わってから慌てて動くのではなく、変わる前提で今のうちに仕組みを作っておいたほうが、結果的に手間もコストも少なく済みます。自社の採用フローを一度見直し、確認と記録が漏れなく行われているか、この機会にチェックしておくことをおすすめします。