在留特別許可申請は、2024年6月10日施行の改正入管法50条で新しく設けられた手続で、収容令書により収容されたとき(仮放免中を含む)または監理措置に付されたときから、退去強制令書が発付されるまでの間に、申請書と事情を証する資料を出して行います。申請書そのものは1枚で、氏名などのほかは「申請の理由」を書く欄しかありません。許否を分けるのは、その理由を裏付ける資料をどれだけそろえられるかと、法律が定める「3日以内」の期限を落とさないことです。
制度の全体像とガイドラインの考慮事項は在留特別許可とは?2024年改正後の申請制度とガイドラインの考慮事項で解説しました。この記事は、実際に申請する人と家族、雇用予定先の会社に向けて、申請書の書き方、資料のそろえ方、手続の流れに絞って説明します。
在留特別許可申請ができる人と期間
申請できるのは、退去強制事由(入管法24条)に該当する外国人です。オーバーステイ(不法残留)、不法入国、資格外活動、一定の刑罰法令違反などがこれに当たります。
申請できる期間は、入管法50条2項・3項と出入国在留管理庁の案内によると、次のとおりです。
- 始まり:収容令書により収容されたとき(仮放免中を含む)、または監理措置決定を受けたとき
- 終わり:退去強制令書が発付されるとき
ここでいう監理措置とは、収容に代えて、監理人の監督の下で社会の中で生活しながら手続を受けられる仕組みを指します(監理措置とは?監理人の役割・届出義務と2024年6月施行の新制度)。
この期間の定め方から、二つのことが分かります。一つは、オーバーステイの人が自ら入管に出頭しただけでは、まだ申請できないことです。出頭すると違反調査が始まり、収容令書の発付か監理措置決定を経て、はじめて申請できる状態になります。もう一つは、退去強制令書が出た後は申請できないことです(50条3項)。ガイドラインも、令書発付後の事情の変化は原則として考慮しないとしています。
手続の流れ|在留特別許可の判断は退去強制手続の最後に行われる
在留特別許可の申請は、退去強制手続と並行して進みます。手続の順番は次のとおりです。
- 違反調査(入国警備官):出頭または摘発をきっかけに、退去強制事由に当たる疑いを調べる
- 収容令書の発付または監理措置決定:この時点から在留特別許可を申請できる
- 違反審査(入国審査官):退去強制事由に当たるかを審査し、当たると認定すると理由を付した書面で通知する
- 口頭審理(特別審理官):認定に異議があれば、通知を受けた日から3日以内に請求できる
- 異議の申出(法務大臣):判定に異議があれば、通知を受けた日から3日以内に申し出られる
- 在留特別許可の判断(法務大臣):申請があれば、認定・判定に服した後、または異議の申出に理由がないと裁決された後に、許可するかどうかを判断する
50条4項は、在留特別許可は認定か判定に服した後、または異議の申出に理由がないとの裁決の後でなければできないと定めています。退去強制事由に当たるかどうかの争いを先に決め、そのうえで「当たるけれども在留を特別に認めるか」を判断する、という二段階の構造です。
最も重要な期限|認定・判定に服した日から3日以内
実務で一番注意すべきなのは、入管法47条5項が定める期限です。入国審査官の認定に服した(口頭審理を請求しない)場合、主任審査官は、次のいずれかに当たるときは速やかに退去強制令書を発付しなければならないとされています。
- 在留特別許可の申請をしない旨の文書に署名したとき
- 認定に服した日から3日以内に在留特別許可の申請をしなかったとき
- 申請を取り下げたとき、または許可しない処分を受けたとき
同じ仕組みは、口頭審理の判定に服した場合(48条10項)と、異議の申出に理由がないとの裁決の通知を受けた場合(49条7項)にも準用されています。入国審査官は、認定を通知するとき、口頭審理の請求と在留特別許可の申請ができることを本人に告げなければならないとされています(47条4項)。
申請の準備を認定の通知を受けてから始めると、3日ではまず間に合いません。収容令書の発付や監理措置決定を受けた時点で申請書を出しておき、資料はその後に追加していくのが現実的な進め方だと筆者は考えています。
在留特別許可申請書の書き方
申請書は出入国管理及び難民認定法施行規則の別記第61号の4様式で、入管庁のウェブサイトからPDFで入手できます。記載欄は次のとおりです。
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 1 氏名・性別 | 旅券どおりの氏名。性別に丸を付ける |
| 2 生年月日 | 旅券どおりの生年月日 |
| 3 国籍・地域 | 旅券の国籍 |
| 4 居住地 | 現に住んでいる場所。収容中の場合は、許可後に住む予定の住所を申請の理由の中で示しておく |
| 申請の理由 | 在留を希望する理由と、それを支える事情 |
| 署名 | 申請人本人。代理申請なら代理人 |
申請は1人1部です。家族で同時に手続を受けている場合も、夫婦・子それぞれに申請書を作ります。
「申請の理由」は50条5項の順に組み立てる
申請の理由の欄は広くありませんが、別紙を付けることはできます。書く内容は、法務大臣が判断で考慮すると50条5項が定める事情、すなわち在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性の順に、自分に当てはまる事実を書いていく形が最も伝わりやすいと筆者はみています。審査する側がガイドラインの同じ枠組みで事情を整理するためです。
書き方で気をつける点は三つです。一つ目に、日付と数字で書くこと。「長く日本に住んでいる」ではなく「2012年4月に短期滞在で入国し、同年7月から在留期限を過ぎている」と書きます。二つ目に、不利な事実も隠さないこと。ガイドラインは手続の中での虚偽の申告を消極要素に挙げており、違反調査で既に供述した内容と食い違えば、申請全体の信用が落ちます。三つ目に、許可された後の生活の見通しを書くこと。どこに住み、誰と暮らし、どのように生計を立てるのかが具体的であるほど、在留を認めた後の姿を審査官が描きやすくなります。
在留特別許可の必要書類|提出書類と提示書類
施行規則が定める提出書類と提示書類
施行規則44条2項は、申請書と、50条1項各号のいずれかに該当することを証する資料を各1通、地方出入国在留管理局に出頭して提出すると定めています。同条3項は、あわせて提示する書類を定めています。
- 中長期在留者:旅券と在留カード
- 中長期在留者以外(オーバーステイの人など):旅券または在留資格証明書
- 仮放免中の人:仮放免許可書
- 監理措置中の人:監理措置決定通知書
旅券を提示できない場合は、その理由を書いた書類1通を出します。
50条1項各号ごとの資料
入管庁の案内は、50条1項各号の事情ごとに、資料の例を次のように示しています。
| 50条1項 | 事情 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 1号 | 永住許可を受けている | 在留カードの写し |
| 2号 | かつて日本国民として本籍を有したことがある | 除籍謄本、除籍証明書または除籍電子証明書 |
| 3号 | 人身取引等により他人の支配下に置かれて在留している | 陳述書(任意様式) |
| 4号 | 難民または補完的保護対象者の認定を受けている | 認定証明書の写し |
| 5号 | その他特別に在留を許可すべき事情がある | 当該事情を証する資料 |
申請の大半は5号の「その他の事情」によるものです。この「当該事情を証する資料」に何を入れるかが、実質的な準備の中心になります。
5号「その他の事情」で集める立証資料
ガイドラインの考慮事項に沿って、主張する事情ごとに集める資料を整理すると次のようになります。すべてが必要になるわけではなく、自分の主張に対応するものを選びます。
- 日本人・永住者などとの婚姻:戸籍謄本、婚姻届受理証明書、配偶者の住民票・在職証明書・課税証明書、同居を示す賃貸借契約書や公共料金の領収書、夫婦の写真、交際から婚姻までの経緯を書いた陳述書
- 日本人などとの間の子の監護・養育:子の出生届受理証明書・戸籍謄本、在学証明書、通知表、子の学校や保育所の関係者の陳述書
- 地域社会への定着:自治会・勤務先・教会や寺院・近隣住民などの嘆願書や陳述書、ボランティア活動の記録
- 生計の見通し:配偶者や本人の雇用予定先の雇用契約書・内定通知書、職務内容と報酬を示す書面、預金残高証明書
- 人道上の配慮:本人や家族の診断書、日本での治療が必要な理由を書いた医師の意見書、本国の情勢を示す公的機関の資料
- 自ら出頭したこと:出頭した日と経緯を書いた本人の陳述書
外国語の資料には日本語訳を付けます。入管庁の案内は、一定の英文資料では訳文を不要としていますが、迷う場合は訳文を付けておけば足ります。
嘆願書・陳述書を書いてもらうときのポイント
嘆願書は、第三者が本人の人柄や地域での役割を示し、在留を認めてほしいと求める書面です。ガイドラインが「具体的な根拠や客観的な状況」を重視している以上、書き手の氏名・住所・連絡先と本人との関係、知り合った時期、本人と接してきた具体的な場面を書いてもらうことが大切です。同じ文面の嘆願書を大量に集めるより、本人をよく知る人が自分の言葉で書いた数通のほうが、評価の材料として働くと筆者はみています。
雇用予定先の会社が陳述書を出す場合は、職務内容、雇用形態、報酬額、就労開始予定日、本人を雇いたい理由を具体的に書きます。許可された場合に就労資格などの活動を行うと認められることは、ガイドラインが挙げる積極要素の一つです。ただし、許可が出るまでは本人は就労できません。許可前に働かせると不法就労助長罪の問題になるため、会社側は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で確認しておいてください。
申請の窓口と面接
申請の受付方法は、本人の状況によって分かれます。
- 収容中:入国審査官等に申請の意思を示し、面接を受けたうえで申請する
- 仮放免中・監理措置中:地方出入国在留管理官署に出頭し、面接を受けたうえで申請する
- 刑事施設などに収容されている:入国審査官等の面接を受けたうえで申請する
16歳未満の人や、病気などで自ら申請できない人は、父・母・配偶者・子または親族が代わって申請できます(施行規則44条4項)。九州で手続を受けている場合は、福岡出入国在留管理局または管轄の出張所が窓口になります。庁舎への行き方は福岡出入国在留管理局への行き方・予約方法にまとめています。
手数料はかかりません。行政書士に書類作成を依頼する場合は、その報酬が別にかかります。
審査期間と結果の知らせ方
入管庁は、在留特別許可の審査期間の目安を公表していません。退去強制手続の進み方(口頭審理や異議の申出をするかどうか)と、資料の追加の有無で期間は大きく変わります。個別の事情で判断も期間も変わるため、目安を尋ねられても一律には答えられないのが実情です。
入管庁が公表している件数では、2025年の申請は2,424件、許可は1,026件、不許可は1,233件でした(「令和7年における入管法違反事件について」)。
許可された場合は、法務大臣が在留資格と在留期間を決め、必要な条件を付けることができます(50条6項)。中長期在留者となる場合は在留カードが交付され、収容されていた人は放免されます。許可後は、住居地の届出を14日以内に市区町村で行います。許可後の在留期間更新では、許可の前提となった事情(婚姻の継続など)が続いているかが改めて確認されます。
許可されなかった場合は、理由を付した書面で通知され(50条10項)、その後、退去強制令書が発付されます。不許可の処分に審査請求などの不服申立ての手段はなく、争う場合は処分の取消訴訟によります。この関係は在留資格の不許可に不服申立てはできない?で扱っています。
よくある質問
在留特別許可申請をしたらどうなりますか?
退去強制手続の最後の段階で、法務大臣が在留を特別に許可するかどうかを判断します。申請中も退去強制手続は進みますが、退去強制事由に当たると認定された後でも、在留特別許可をしない処分が出るまでは退去強制令書は発付されません。許可されれば在留資格と在留期間が決まり、不許可なら理由を付した書面で通知されます。
在留特別許可申請はいつからできますか?
制度は2024年6月10日に始まりました。個人としては、収容令書により収容されたとき(仮放免中を含む)か監理措置決定を受けたときから申請でき、退去強制令書が発付されると申請できなくなります。入国審査官の認定に服した日から3日以内に申請しないと令書が発付されるため、早めに出すことが重要です。
在留特別許可の申請に料金はかかりますか?
入管に納める手数料はかかりません。専門家に書類作成を依頼する場合は、その報酬が別にかかります。
在留特別許可の審査期間はどのくらいですか?
入管庁は目安を公表していません。口頭審理や異議の申出をするかどうか、資料を追加するかどうかで期間は変わります。
元日本人でも在留特別許可は取れますか?
かつて日本国民として本籍を有したことがあることは、50条1項2号に明記された事情です。除籍謄本などで立証します。ただし、ほかの事情と合わせて判断されるため、これだけで必ず許可されるわけではありません。
申請を検討する人が最初の1週間でやること
在留特別許可の申請で取り返しがつかなくなるのは、資料が足りないことよりも、期限を過ぎて申請できなくなることのほうです。退去強制令書が発付されれば申請の機会は失われ、認定に服した後の猶予は3日しかありません。
そのため、手続が始まったら、まず申請書を出して申請の意思を形にし、その後で50条5項の順に事情を整理し、足りない資料を集めていく、という順番で進めることを筆者は勧めます。家族や雇用予定先の会社は、本人が収容や監理措置で動きにくい間に、戸籍謄本の取得や陳述書の作成を引き受けることができます。オーバーステイの人と結婚している、または結婚を予定している場合の論点はオーバーステイの外国人と結婚したら|在留特別許可の可能性と駆け込み婚の評価で扱っています。
根拠資料
- 在留特別許可申請(出入国在留管理庁)
- 在留特別許可申請書 別記第61号の4様式(出入国在留管理庁・PDF)
- 在留特別許可に係るガイドライン(出入国在留管理庁・2024年3月改定)
- 出入国管理及び難民認定法 第47条〜第50条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第44条(e-Gov法令検索)
- 令和7年における入管法違反事件について(出入国在留管理庁)
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