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強制送還された外国人は再入国できる?上陸拒否期間と上陸特別許可の実例

強制送還(退去強制)された外国人も、日本に二度と入れなくなるわけではありません。入管法5条1項9号が定める上陸拒否期間は、初めて退去強制された人で退去の日から5年、2回目以降は10年、出国命令で出国した人は出国の日から1年で、期間が過ぎれば在留資格認定証明書の申請から手続をやり直せます。一方、1年以上の拘禁刑に処せられたことがある人は期間の定めがない上陸拒否事由(同項4号)に当たるため、期間の経過を待つ方法は使えません。どちらの場合も、日本人や永住者の配偶者がいるなどの事情があれば、上陸拒否期間中でも上陸を認める例外(5条の2、12条)があり、出入国在留管理庁は2026年7月にその実例を公表しています。

強制送還されたら再入国できるか|期間と刑罰歴で答えが変わる

最初に確認すべきなのは、本人がどの理由で日本に入れない状態になっているかです。入管法5条1項は上陸拒否事由を14の号で定めており、強制送還に関係するのは主に次の2つの系統です。

1つ目は、退去強制や出国命令を受けたこと自体を理由とする上陸拒否(9号)です。これは期間が決まっていて、期間が過ぎれば該当しなくなります。オーバーステイだけを理由に退去強制された人は、通常こちらだけに当たります。

2つ目は、刑罰歴を理由とする上陸拒否(4号)です。日本または外国の法令に違反して1年以上の拘禁刑またはこれに相当する刑に処せられたことのある人は、年数がいくら経っても4号に当たり続けます。執行猶予が付いた判決でも「刑に処せられた」ことに変わりはないため、4号の対象です。薬物事犯(5号)は罰金刑でも期間の定めなく該当します。

整理すると、次の表のようになります。

本人の状況 該当する号 上陸拒否期間
出国命令で出国した 9号ホ 出国した日から1年
初めて退去強制された 9号ハ 退去の日から5年
過去にも退去強制・出国命令を受けたことがある 9号ニ 退去の日から10年
退去強制令書が出たが、上陸拒否期間の短縮決定を受けて自費出国した 9号ロ 退去の日から1年(短期滞在で来る場合は5年)
1年以上の拘禁刑に処せられた(執行猶予付きを含む) 4号 期間の定めなし
薬物事犯で刑に処せられた(罰金を含む) 5号 期間の定めなし

退去強制の理由がオーバーステイでも、その過程で入管法違反の罪で起訴され、懲役1年6月・執行猶予3年のような判決を受けていれば、9号の5年とは別に4号に当たります。本人が「5年経ったから大丈夫」と考えていても、判決の内容次第で結論が変わるため、判決書の写しで刑の種類と長さを確認することが出発点になります。上陸拒否事由の全体像は上陸拒否事由とは?入管法5条の一覧と上陸拒否期間1年・5年・10年で整理しています。

退去強制と出国命令で上陸拒否期間が違う理由

同じオーバーステイでも、退去強制になった人は5年、出国命令で帰った人は1年です。差がつくのは、出国命令制度が「自ら出頭して速やかに帰る人」を優遇する制度として作られているからです。

出国命令(入管法24条の3)の対象になるのは、次のすべてを満たす不法残留者です。出入国在留管理庁の「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」は、要件を次のように説明しています。

  • 速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと(2024年改正で、違反調査の開始後でも、違反審査の通知前に出国の意思を表明した場合を含むようになった)
  • 不法残留以外の退去強制事由に当たらないこと
  • 窃盗罪などの一定の罪で拘禁刑に処せられたことがないこと
  • 過去に退去強制されたことや出国命令を受けて出国したことがないこと
  • 速やかに出国することが確実と見込まれること

出国命令を受けた人は収容されずに自分で帰国し、1年後から再入国の申請ができます。ただし、2024年改正で追加された「違反調査が始まってから出国の意思を表明した」人は、短期滞在で上陸しようとする場合に限り上陸拒否期間が5年になります(9号ヘ)。摘発された後に慌てて出頭しても、自ら出頭した人と同じ扱いにはなりません。出国命令制度の要件と流れは出国命令制度とは?オーバーステイで自ら出頭した場合の5要件と出国までの流れで解説しています。

退去強制を受けた人が期間を短くできる制度もあります。2024年6月10日施行の改正で設けられた上陸拒否期間の短縮決定(52条5項)で、退去強制令書が出た人のうち、自費出国の許可を受け、過去に退去強制や出国命令の歴がない人が対象です。入管庁のQ&Aによれば、申請しても必ず決定を受けられるわけではなく、素行や退去強制の理由などを総合的に考慮して判断されます。短縮決定を受けて定められた日までに出国した人の上陸拒否期間は1年ですが、短期滞在で来る場合は5年のままです。

上陸拒否期間が過ぎた後の再入国手続|在留資格認定証明書から

上陸拒否期間が経過すると、本人は9号に当たらなくなります。ここから先の手続は、初めて日本に来る外国人と基本的に同じです。日本人の配偶者として戻るなら、日本側の配偶者が地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を行い、交付を受けたら本人が在外公館で査証を申請し、査証を受けて来日します。

形式は同じでも、審査の中身は同じではありません。入管は過去の退去強制の記録を持っており、申請書の「過去の出入国歴」「退去強制又は出国命令による出国の有無」の欄は必ず照合されます。この欄に「無」と書けば虚偽申請になり、交付後でも取消しの対象になります。退去強制の事実は、隠すものではなく説明するものとして扱う必要があります。

期間経過後の申請で筆者が重視する点は、次の3つです。

1つは、退去強制に至った経緯を本人の言葉で説明することです。いつ、どの在留資格で入国し、なぜ期限を過ぎたのか、どう摘発または出頭したのかを、時系列で書きます。入管の記録と食い違うと、それだけで信用性を失います。

2つ目は、日本に戻る目的と生活の基盤を示すことです。配偶者として戻るなら、婚姻の経緯、退去強制後の交流(送金記録、通話記録、渡航して会った記録)、日本側配偶者の収入と住居を書類で示します。退去強制の前に婚姻していた場合は、離れていた期間も関係が続いていたことが審査の焦点になります。

3つ目は、再び違反をしないと判断できる材料です。前回の違反が不法就労なら、今回の在留資格で就労制限がないこと、雇用先が決まっていることなどを示します。

就労資格で戻る場合も同じ手順ですが、雇用する会社側にも説明が求められます。前回の退去強制が不法就労によるものだった場合、会社が本人の経歴を把握したうえで雇用することを、雇用理由書で明らかにしておくほうが審査は進みやすくなります。認定証明書交付後の流れは在留資格認定証明書が交付されたら?入国までの流れと企業の手続きで解説しています。

上陸拒否期間中に入国できる例外|5条の2と上陸特別許可

上陸拒否期間の途中、または4号のように期間の定めがない場合でも、日本に入国できる道が2つあります。

上陸拒否の特例(入管法5条の2)

5条の2は、4号・5号・7号・9号・9号の2に当たる外国人について、法務大臣が相当と認めるときは「当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる」と定めています。どんな場合に使えるかは入管法施行規則4条の2が定めており、在留資格認定証明書を交付した場合や、法務大臣と協議した査証が発給された場合が含まれます。

実務でいえば、上陸拒否期間中でも在留資格認定証明書の交付申請ができ、審査の結果として証明書が交付され、在外公館で査証を受けられれば、空港では上陸拒否事由を理由に止められません。入管庁は2026年7月の公表資料で、この仕組みを「上陸特別許可の手続を経ずに当該外国人の上陸を認めることができます」と説明しています。

ここで重要なのは、期間中の申請は「条件を満たせば交付される」申請ではないという論点です。法務大臣が相当と認めるかどうかの裁量判断であり、期間経過後の申請よりはるかに厳しく審査されます。

上陸特別許可(入管法12条)

もう1つは、空港での上陸審査の段階で判断される上陸特別許可です。上陸審査で上陸拒否事由に当たるとされた外国人が、口頭審理を経て法務大臣に異議を申し出た場合、法務大臣は異議に理由がないと認めるときでも、再入国許可を受けているとき、人身取引の被害者であるとき、その他特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときは、上陸を特別に許可できます(12条1項)。

事前に在留資格認定証明書を得ないまま来日して空港で判断を仰ぐ方法は、許可されなければそのまま退去を命じられ、航空券代も無駄になります。家族が日本にいる事案では、5条の2の手続で事前に審査を受けるほうが現実的です。

入管庁が公表した上陸特別許可の実例|令和7年の許可・不許可

出入国在留管理庁は2026年7月31日、「上陸を特別に許可された事例及び上陸を特別に許可されなかった事例について」を公表しました。対象は令和7年(2025年)中の事例で、上陸拒否事由に当たる人のうち、配偶者が日本人または正規に在留する外国人である事例から選ばれています。

公表資料は、判断で考慮する事情として「上陸を希望する理由(入国目的)、該当する上陸拒否事由の内容、上陸拒否事由が発生してから経過した期間、我が国に居住する家族の状況やその生活状況、内外の諸情勢など」を挙げています。実例を並べると、どの事情が効いているかが見えてきます。

許可された事例

配偶者が日本人の場合、許可された4件はすべて在留資格「日本人の配偶者等」、在留期間1年での許可でした。

  • 不法残留で退去強制(5年拒否)。退去から約1年2月、婚姻期間約1年7月、刑事処分なし。当局の説得に応じて自らの負担で出国していた
  • 不法入国で2回目の退去強制(10年拒否)。退去から約7年3月、婚姻期間約2年10月。2回とも自らの負担で出国していた
  • 不法入国で2回目の退去強制(10年拒否)。退去から約1年1月、婚姻期間約12年9月。風営法違反で罰金50万円の判決があるが、直近の退去強制の際に説得に応じて自費出国していた
  • 入管法違反(不法残留)で懲役1年6月・執行猶予3年(期間の定めのない拒否)。退去から約2年5月、婚姻期間約1年9月。自らの負担で出国していた

配偶者が永住者など正規在留の外国人の場合も、退去から約1年1月で10年拒否の事案が許可された例や、懲役1年6月・執行猶予3年の刑を受けた事案(退去から約5年7月、婚姻約12年8月、子あり)が許可された例があります。いずれも在留資格「永住者の配偶者等」、在留期間1年でした。

許可されなかった事例

不許可の側には、次のような事例が並んでいます。

  • 不法残留で退去強制(5年拒否)。退去から約3年2月、婚姻期間約2年4月、刑事処分なし。国費により送還された
  • 不法残留で2回目の退去強制(10年拒否)。退去から約7年7月、婚姻期間約17年7月。直近の退去強制で国費送還。婚姻の信ぴょう性と生計の安定性に疑義
  • 不法入国で懲役1年6月・執行猶予3年。退去から約18年8月経過していたが、婚姻の信ぴょう性に疑義
  • 窃盗・建造物侵入で懲役2年8月の実刑。婚姻期間約17年5月、子ありでも不許可

実例から読める判断の軸

許可事例の特記事項には、ほぼ例外なく「自らの負担により、自ら本邦を退去した」と書かれています。逆に不許可事例の2件には「国費により送還された」とあります。刑事処分がなく、婚姻期間も退去からの経過期間も許可事例と大差のない事案が、国費送還だったことで不許可になっている点は見逃せません。

筆者は、この公表資料が示している最大の論点は、再入国の可否が退去強制の「後」ではなく「送還のされ方」の時点でかなり決まっている、という点だと考えています。退去強制令書が出た段階で自費出国に応じたかどうかが、数年後の申請で本人の姿勢を示す記録として残ります。

もう1つの軸は婚姻の実態です。婚姻期間が17年を超える事案でも、信ぴょう性や生計の安定性に疑義があれば不許可になっています。逆に婚姻期間1年台でも許可された例があり、年数の長さより、関係と生活の実態を資料で示せるかが問われています。実刑判決で拘禁刑の長い事案は、婚姻が長く子がいても不許可になっており、刑事処分の重さは家族の事情で埋めきれない場合があることも読み取れます。

強制送還される前にできること

これから退去強制手続を受ける本人や、その家族・雇用主が再入国まで見据えて考えるなら、送還前の選択が後の申請に影響します。

  • 不法残留だけが問題で、過去に退去強制や出国命令の歴がないなら、摘発される前に自ら出頭して出国命令の対象になれば、上陸拒否期間は1年で済む
  • 退去強制令書が出た後でも、自費出国の許可と上陸拒否期間の短縮決定を申請できる場合がある
  • 自費出国に応じたかどうかは、上陸特別許可や5条の2の判断で考慮されている
  • 日本人や永住者と婚姻している場合は、送還前に在留特別許可の申請を検討する余地がある

在留特別許可が認められれば、そもそも出国せずに日本に残れます。送還された後に戻る方法より先に、この可能性を検討するのが順序です。在留特別許可の判断では、入管庁の「在留特別許可に係るガイドライン」に沿って、家族関係、日本での在留期間、素行などが総合的に考慮されます。

よくある質問

強制送還されたら日本に再入国できますか?

できます。初めて退去強制された人は退去の日から5年、2回目以降は10年が経過すれば、上陸拒否事由(9号)に当たらなくなり、在留資格認定証明書の申請や査証の申請ができます。ただし1年以上の拘禁刑(執行猶予付きを含む)に処せられたことがある場合は期間の定めがなく、5条の2による特例の判断を受ける必要があります。

強制送還されたらいつから再入国できますか?

起算日は「退去の日」または「出国した日」です。退去強制の決定日や退去強制令書の発付日から数えるわけではありません。本人の旅券に押された出国の記録や、退去強制時に交付された書類で日付を確認してください。

出国命令で帰国した場合は1年後に必ず戻れますか?

1年が過ぎれば9号には当たらなくなりますが、査証や在留資格認定証明書の審査が免除されるわけではありません。過去の不法残留の経緯は審査で確認され、日本に戻る目的と生活基盤の説明が求められます。短期滞在の査証免除国の人でも、入国審査で過去の違反歴を理由に入国目的を詳しく確認されることがあります。

強制送還されたら再入国拒否されますか?

上陸拒否期間中に短期滞在などで来日しても、空港で上陸拒否事由に当たると判断され、上陸は認められません。期間中に入国を希望する場合は、事前に在留資格認定証明書交付申請を行い、5条の2の特例の判断を受けるのが基本です。

日本人と結婚していれば上陸拒否期間中でも入国できますか?

可能性はありますが、結婚しているだけでは足りません。入管庁が公表した令和7年の事例では、婚姻期間が17年を超えていても、国費送還や婚姻の信ぴょう性への疑義があった事案は不許可になっています。個別の事情で判断が変わるため、過去の記録と婚姻の実態を資料で説明できるかを申請前に点検してください。

再入国を考えるなら、最初に3つの記録を集める

強制送還された人の再入国は、期間の計算と例外の検討という2段階で考えると整理しやすくなります。まず、判決書の写し、退去強制時や出国命令時の書類、旅券の出国記録の3つを集め、どの号に当たるのか、起算日はいつかを確定させます。4号に当たらず期間も経過していれば、通常の申請に説明資料を加える形で進められます。

期間中の入国を目指す場合や4号に当たる場合は、入管庁の公表事例が判断の物差しになります。自費出国だったか、婚姻の実態と生計を資料で示せるか、刑事処分の重さはどうか。公表事例の特記事項と自分の事情を1つずつ照らし合わせると、申請に踏み切るべきか、期間の経過を待つべきかの判断材料がそろいます。不許可になった場合の考え方は入管から不許可のハガキが届いたら?も参考にしてください。

根拠資料


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