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育成就労の優良要件とは?人数枠拡大の条件と技能実習の優良基準との違い

育成就労の優良要件とは、育成就労法施行規則19条1項2号が定める「技能の修得をさせる能力につき高い水準を満たす」育成就労実施者の基準で、育成就労制度運用要領(第4章、2026年8月改正版)では100点満点の点数制として具体化されています。優良と認められるには、総得点の7割以上を取り、しかも法令違反の項目を除く各項目で6割以上を取る必要があります。技能実習の優良要件は150点満点の6割以上でしたから、合格ラインは上がり、点の取り方の偏りも許されなくなりました。優良と認められると受入れ人数枠が広がるほか、本人の意向で転籍してくる育成就労外国人を受け入れるための条件にもなります。

優良な育成就労実施者の要件は「100点満点で7割、各項目6割」

運用要領は、優良な育成就労実施者の要件を4つの項目に分けて配点しています。

項目 最大点数 主な内容
Ⅰ 技能及び日本語能力の修得に係る実績 50点 技能試験・日本語試験の合格率、再受験率、日本語学習支援
Ⅱ 体制・待遇・実施状況 40点 人権方針、送出機関費用ゼロ、賃金水準、昇給率、住環境、母国語相談、優良な監理支援機関
Ⅲ 地域社会との共生 10点 地域交流と日本文化の機会、帰国時の住民税の処理、マイナ保険証の保有率
Ⅳ 法令違反・問題の発生状況 減点・不可 改善命令、行方不明者

合格ラインは、育成就労外国人を受け入れてからの年数によって変わります。受入れ実績のない会社が、まだ出るはずのない技能試験の合格率で評価されることがないよう、年数ごとに評価の対象になる基準(★の数)と総得点が決まっています。

  1. 受入れ実績がない、又は初回受入れから1年未満:★の基準で総得点56点の7割(40点)以上
  2. 初回受入れから1年以上2年未満:★〜★★の基準で総得点72点の7割(51点)以上
  3. 初回受入れから2年以上3年未満:★〜★★★の基準で総得点85点の7割(60点)以上
  4. 初回受入れから3年以上:★〜★★★★の基準で100点の7割(70点)以上

そのうえで、Ⅳを除くⅠ〜Ⅲの各項目について、それぞれ6割以上を獲得していることが求められます。技能試験の成績だけで稼いで地域共生の点がゼロ、という会社は、総得点が7割を超えていても優良とは認められません。

項目Ⅰ|技能だけでなく日本語試験の合格率が点数になる

項目Ⅰの50点のうち、日本語に関する配点が大きな比重を占めます。

基準 ★ 配点
① 基礎級程度の技能試験の合格率(過去3事業年度) ★ 95%以上7点/80%以上4点/75%以上0点/75%未満−7点
② 同試験の再受験率 ★★★ 100%(又は該当者なし)3点
③ 目標となる技能試験の合格率 ★ 80%以上10点/70%以上6点/60%以上2点/50%以上0点/50%未満−10点
④ 1年目のA1相当の日本語試験の合格率 ★★ 75%以上7点/60%以上4点/50%以上0点/50%未満−7点
⑤ A2相当の日本語試験(目標)の合格率 ★★★★ 80%以上10点/70%以上6点/60%以上2点/50%以上0点/50%未満−10点
⑥ B1相当の日本語試験の合格率 ★★★★ 50%以上5点/30%以上3点
⑦ 2年目終了までにA2相当に合格した割合 ★★★ 50%以上4点/30%以上2点
⑧ 技能検定等の実施への協力 ★ 2点
⑨ 義務の講習以外に費用を負担して日本語学習を支援 ★★ 2点

日本語に関する④⑤⑥⑦⑨を合わせると最大28点で、項目Ⅰの半分を超えます。育成就労制度が、3年間で特定技能1号の水準まで技能と日本語を育てることを目的にしている以上、日本語の成績が優良の判断に直結するのは当然の設計です。①③の合格率には、技能実習生の技能検定等の実績も含めることができます。

合格率の数え方にも注意点があります。③の目標となる技能試験の合格率は、過去3事業年度に3年間の育成就労を終了した人を分母にしますが、目標を達成できずに4年目に延長した人は分母にも分子にも含めません。延長者を出せば合格率は下がらない代わりに、そもそも目標を達成できなかったことが別の形で問われる、という作りです。

項目Ⅱ|待遇と相談体制の配点が増えた

項目Ⅱの40点は、外国人の待遇と支援の質を点数化したものです。

  • 人権方針の策定・公表・周知:3点(★)
  • 育成就労外国人が送出機関に支払う費用がゼロとなる措置:4点(★)
  • 育成・キャリア形成プログラムを活用したキャリア面談:3点(★★)
  • 基本給の最低額が最低賃金の120%以上:3点、115%以上120%未満:2点(★)
  • 勤続年数に応じた昇給率8%以上:4点、5%以上8%未満:2点(★★)
  • 住環境の向上に向けた取組:3点(★)
  • 母国語相談・支援のマニュアル策定と周知:3点(★)
  • 全ての育成就労外国人について母国語で相談できる相談員の確保:3点(★)
  • 優良な監理支援機関の監理支援を受けていること:6点(★★★)
  • 直近3年以内に、他の実施者で育成就労の継続が困難になった外国人を受け入れたこと:4点(★)
  • 育成就労実施者変更情報サイトへの求人掲載:4点(★)

住環境の取組は、確認書類として「在籍する全ての育成就労外国人について個室が確保されていることを明らかにする資料」が挙げられており、実質的には個室の確保が加点の条件です。最低賃金との比較は、日給・月給の人も時間額に換算し、原則として申請した事業年度の4月1日時点で行います。

項目Ⅳ|改善命令は減点でなく「優良適合不可」になった

技能実習の優良要件と比べて最も厳しくなったのが、法令違反の扱いです。

  • 直近過去3年以内に改善命令を受けた実績(技能実習制度時の実績を含む):優良適合不可
  • 直近過去3年以内に育成就労実施者に責めのある行方不明者が発生(技能実習制度時の実績を含む):優良適合不可
  • 直近過去3年以内の行方不明者の数・割合:10%未満又は1人以下0点/10%以上20%未満又は2人−10点/20%以上又は3人以上−20点

ここでいう「直近過去3年以内」は、申請時から遡った3年間で、事業年度単位ではありません。改善命令は育成就労法15条1項の改善命令を指しますが、技能実習法15条1項の改善命令も対象です。つまり、2025年に技能実習で改善命令を受けた会社は、2027年4月に育成就労が始まっても、改善命令の日から3年を経過する2028年の同じ時期まで優良にはなれません。

実施者に責めのある行方不明者について、運用要領は、報酬を適切に支払わない、劣悪な環境下での業務を強制するといった事情で行方不明者が出た場合に帰責性があると判断されるとしています。

技能実習の優良要件との違い

技能実習制度の優良な実習実施者の要件は、150点満点で6割以上(90点以上)を取れば基準に適合するものでした。配点は①技能等の修得等に係る実績70点、②技能実習を行わせる体制10点、③技能実習生の待遇10点、④法令違反・問題の発生状況5点、⑤相談・支援体制45点、⑥地域社会との共生10点です。

比較点 技能実習の優良要件 育成就労の優良要件
満点と合格ライン 150点満点の6割以上 100点満点の7割以上、かつⅣ以外の各項目6割以上
受入れ年数への配慮 実績がない場合の加点措置あり 受入れ年数に応じて評価対象と総得点を4段階で変える
技能の実績 基礎級・3級・2級の合格率が中心(70点) 技能試験と日本語試験(A1・A2・B1)の合格率(50点)
待遇 最低賃金比115%以上で5点、昇給率5%以上で5点 最低賃金比120%以上で3点、昇給率8%以上で4点、送出費用ゼロ4点、人権方針3点
改善命令 改善実施−30点、未実施−50点 優良適合不可
責めのある失踪 −50点 優良適合不可
優良な監理団体・監理支援機関 配点項目なし 優良な監理支援機関の監理支援で6点

引き継がれたものは、評価の枠組みそのものです。技能の実績、指導・相談の体制、待遇、地域共生、法令違反という5つの観点は、配点の比重を変えながら残りました。変わったのは3点に集約できます。日本語能力の修得が新たに大きな配点を持ったこと、送出費用や人権方針など外国人本人の負担と権利を問う項目が加わったこと、そして重大な法令違反を点数で相殺できなくなったことです。

技能実習の優良要件で最大の意味を持っていたのは、3号技能実習(4〜5年目)を実施できることでした。育成就労は原則3年の制度で3号に相当する段階がないため、優良であることの意味は、人数枠と転籍の受入れに移っています。技能実習3号と優良要件の関係は技能実習3号とは?優良要件150点の内訳と移行手続き・経過措置で扱っています。

優良と認められると何が変わるか

受入れ人数枠が広がる

監理型育成就労の基本人数枠は、常勤職員30人以下の会社で9人(1人なら3人、2人なら6人)ですが、実施者が優良であれば18人(6〜30人の場合)になります。さらに、実施者と監理支援機関がともに優良で、実施者の住所(法人の本店所在地)が指定区域にある場合は27人(9〜30人の場合)です。福岡県をはじめ九州各県は全域が指定区域に含まれます。

常勤職員の総数 基本(表2) 実施者が優良(表4) 実施者・監理支援機関とも優良+指定区域(表5)
3人以上30人以下 9人 10〜18人 11〜27人
31〜40人 12人 24人 36人
51〜100人 18人 36人 54人
301人以上 常勤の20分の3 常勤の10分の3 常勤の20分の9

表4・表5は常勤職員が少ない会社ほど段階が細かく、例えば表4は3人10人、4人12人、5人15人、6〜30人18人です。監理型で実施者が優良でない場合は、監理支援機関が優良でも基本の表2が適用されます。人数枠の全体と常勤職員の数え方は育成就労の人数枠|常勤職員数別の上限表と優良・地方枠、介護の事業所単位で説明しています。

本人意向の転籍者を受け入れられる

育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められます。転籍先として本人意向転籍者を受け入れる育成就労実施者は、育成就労法9条の2第4号ハと施行規則28条3号により、優良な育成就労実施者であることが要件です。運用要領は、新たな育成就労計画の認定申請時と、その計画に基づく育成就労の開始時のいずれでも優良である必要があるとしています。

優良でない会社は、他社から本人の意向で移ってくる人材を受け入れる側に回れません。転籍の仕組みと人材流出への備えは育成就労の転籍とは?人材流出を防ぐために受入れ企業が今から取るべき対策で扱っています。

分野別の特例

介護分野の育成就労は、事業所単位の人数枠(令和8年厚生労働省告示第156号)で、優良であれば基本の2倍、優良な監理支援機関の監理支援と指定区域の条件がそろえば3倍になります。建設分野の特定技能では、2026年1月23日の分野別運用方針で、1号特定技能外国人の人数枠の算定について「優良な育成就労実施者たる特定技能所属機関はこの限りでない」とする規定が設けられましたが、適用の開始時期と手続は確認できていません(公式資料では未確認)。

優良の認定手続と有効期間

優良と認められるには、育成就労計画の認定申請時に、優良要件適合申告書(参考様式第1-36号)と疎明資料を提出し、外国人育成就労機構の確認を受けます。認められると、計画の認定通知書で優良である旨が通知されます。

優良として扱われる期間(優良適合期間)は、通知を受けた日の属する年度の翌年度の12月31日までです。運用要領の例では、2027年4月に通知を受けた場合、2028年12月31日まで優良として扱われます。継続するには、期間が満了する年度の実施状況報告書(4月1日から5月31日までに提出)に優良要件適合申告書と疎明資料を添えて提出し、確認を受ければ、満了日の翌日から新たに1年間延びます。実施状況報告書の提出時に申告書を出さなければ、優良適合期間の満了で優良の扱いは終わります。

施行日の2027年4月1日から優良として受け入れたい会社は、最初の育成就労計画の認定申請で申告書を出すことになります。この時点では育成就労外国人の受入れ実績がないため、★の基準で56点中40点以上が必要です。技能実習生の技能検定の実績、母国語相談員の確保、地域交流の実績など、技能実習時代の取組を加点に使える項目があるので、今の技能実習の運営記録を整理しておくことが準備になります。

よくある質問

育成就労の優良要件は?

育成就労制度運用要領が定める100点満点の点数制で、総得点の7割以上、かつ法令違反の項目を除く各項目で6割以上を取ることです。受入れ年数に応じて評価の対象と総得点が変わり、受入れ実績がない場合は56点中40点以上です。直近3年以内の改善命令や、実施者に責めのある行方不明者の発生があれば、点数にかかわらず優良とは認められません。

技能実習で優良だった会社は、育成就労でも自動的に優良になりますか?

自動的には引き継がれません。育成就労計画の認定申請時に優良要件適合申告書を提出し、機構の確認を受ける必要があります。ただし、技能実習生の技能検定の実績や相談員の確保など、技能実習時代の実績を算入できる項目があります。

優良になると受入れ人数はどれくらい増えますか?

監理型で常勤職員6〜30人の会社なら、基本の9人が18人になります。監理支援機関も優良で本店所在地が指定区域(福岡県は全域)にあれば27人です。

優良な監理支援機関を選ぶ意味はありますか?

あります。優良な監理支援機関の監理支援を受けていることは実施者の優良要件で6点の加点になり、指定区域にある実施者であれば、人数枠が表5(最大の枠)になるための条件でもあります。

優良を「取れるか」より先に「失わない運営」を考える

育成就労の優良要件は、点数を積み上げる項目より、1つで全てを失う項目のほうが重い設計になっています。改善命令と、実施者に責めのある行方不明者は、どれだけ他の点を取っていても優良の扱いを止めます。しかも技能実習時代の実績が遡って数えられるため、2027年4月以降に優良を目指す会社にとって、今の技能実習の運営がそのまま審査の材料になります。

判断の順番としては、まず直近3年に改善命令と行方不明者がないかを確かめ、次に日本語学習の支援体制と母国語相談員を整え、最後に賃金水準と昇給の設計を見直すことをお勧めします。人数枠の拡大と転籍者の受入れは、どちらも優良であることが前提です。育成就労制度の全体像は【2027年4月施行】育成就労制度とは?技能実習からの移行で企業がやるべき準備を解説で整理しています。優良要件への適合の見通しは個別の事情で判断が変わるため、申告の前に監理支援機関や専門家と点数を試算しておくと確実です。

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根拠資料


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