育成就労制度運用要領は、2027年4月1日に始まる育成就労制度について、出入国在留管理庁と厚生労働省が法律・施行規則の解釈と審査の基準をまとめた解説書です。2026年2月20日に公表され、4月6日と8月3日に一部改正されています(外国人技能実習機構は8月5日付けで改正版を掲載)。全10章のうち、受入れ企業(育成就労実施者)が最優先で読むべきは第4章「育成就労計画の認定等」で、人数枠、日本語の目標、転籍、送出機関に払う費用の上限など、技能実習から変わった点の大半がここに集まっています。
運用要領の位置づけ|法律・施行規則・分野別運用要領との関係
育成就労制度のルールは、複数の層に分かれています。
1つ目は法律です。2024年6月に公布された改正法により、技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改められます。2つ目は、その下の主務省令である育成就労法施行規則です。人数枠の表や講習の時間数など、具体的な数字の多くは施行規則に書かれています。
3つ目が運用要領です。運用要領は法律と施行規則の条文を引用し、その趣旨、審査で確認する書類、用語の意味を解説しています。条文だけでは分からない「審査で何を見るか」が書かれているのが運用要領で、実務の手引きとして最も使われる資料になります。
4つ目は分野ごとの上乗せです。育成就労では分野ごとに分野別運用方針が定められ、介護、建設、農業などでは分野所管省庁が上乗せ基準の告示を出しています。出入国在留管理庁のウェブサイトには、ビルクリーニング、工業製品製造業、外食業などの「特定の分野に係る育成就労制度運用要領」も別に掲載されています。自社の分野については、全分野共通の運用要領と、分野別の運用方針・告示・運用要領を重ねて読む必要があります。
この構造は特定技能とよく似ています。特定技能の運用要領の読み方は特定技能の運用要領とは?で整理しており、育成就労も同じ発想で読むことができます。
全10章の構成と、企業が読むべき章
運用要領の本体は次の10章で構成されています。
| 章 | タイトル | 企業にとっての重要度 |
|---|---|---|
| 第1章 | 育成就労制度の趣旨 | 一読でよい |
| 第2章 | 育成就労制度の概要 | 手続の流れの確認に使う |
| 第3章 | 育成就労法の目的・定義等 | 用語の意味を調べるときに使う |
| 第4章 | 育成就労計画の認定等 | 最優先で読む |
| 第5章 | 監理支援機関の許可等 | 監理支援機関を選ぶときに使う |
| 第6章 | 育成就労外国人の保護 | 必ず読む(短い) |
| 第7章 | 補則 | 必要に応じて |
| 第8章 | 養成講習 | 責任者・指導員の講習受講時に読む |
| 第9章 | 違法行為の防止・摘発及び違法行為に対する行政処分 | 実地検査への備えとして読む |
| 第10章 | 罰則 | 一読でよい |
このほか、参考様式、育成就労産業分野・業務区分の一覧、技能実習2号移行対象職種と育成就労における業務区分との対応関係などが別紙として付いています。
受入れ企業にとっての中心は第4章です。第4章は、育成就労計画の認定(第1節)、認定基準(第2節)、転籍(第3節)、欠格事由(第4節)、計画の変更(第5節)から、実施の届出(第11節)、育成就労実施困難時の届出(第12節)、帳簿の備付け(第13節)、実施状況報告(第14節)までを扱っており、受入れの準備から日常の管理まで企業の義務がここにまとまっています。第6章は数ページの短い章ですが、暴力・脅迫による強制、違約金の定め、旅券・在留カードの保管といった禁止行為が書かれており、違反すれば刑事罰の対象になるため、経営者と現場責任者が必ず目を通すべき章です。
第4章で押さえるべき技能実習からの変更点
技能実習の運用要領を読んだことがある企業にとって、育成就労の運用要領は見慣れた構成に見えます。その分、変わった箇所を見落としやすくなります。第4章の中で、実務への影響が大きい変更点は次のとおりです。
育成就労の目標に日本語能力が入った
育成就労計画の認定基準(第2節第2・第3)では、技能の目標に加えて日本語能力の目標を定めることが求められます。運用要領は「就労開始前に育成就労外国人がA1相当の日本語能力を身に付けることを前提としています」と明記し、入国後講習の日本語について、A1相当の試験に合格していない場合は認定日本語教育機関の「就労のための課程」による講習を100時間以上(講習の総時間数は320時間以上)、合格している場合は講習の総時間数を220時間以上としています。3年間の育成就労の目標となる日本語試験はA2相当で、分野別運用方針でそれより高い水準が定められることがあります。日本語要件の段階的な整理は育成就労の日本語要件|入国時A1・1年目・転籍・特定技能移行時に必要なレベルで扱います。
人数枠の表が変わった
受入れ人数枠(第2節第11)は、施行規則19条の表で定められています。監理型の基本人数枠は、常勤職員30人以下(3人以上)で9人、31〜40人で12人、41〜50人で15人、51〜100人で18人、101〜200人で30人、201〜300人で45人、301人以上で常勤職員総数の20分の3です。常勤職員が1人なら3人、2人なら6人です。優良な育成就労実施者であればこの約2倍、さらに監理支援機関も優良で住所が指定区域にある場合は約3倍の枠が使えます。
育成就労外国人自身は、この計算の「常勤職員」に含まれません。また、2027年4月以降も経過措置で続く技能実習生(第3号を除く)は、育成就労外国人の数とみなして人数枠に算入されます。技能実習生と育成就労外国人が同じ職場に混在する移行期には、この経過措置の扱いを確認しておく必要があります。人数枠の早見表と計算例は育成就労の人数枠|常勤職員数別の上限表と優良・地方枠、介護の事業所単位で扱います。
転籍(本人意向の転籍)の基準が加わった
第4章第3節は、育成就労外国人の転籍を扱います。技能実習では原則として認められなかった本人の意向による転籍が、一定の要件のもとで認められるようになりました。要件の1つが転籍制限期間で、分野別運用方針が分野ごとに1年以上2年以下の範囲で定めます。運用要領は、分野の転籍制限期間が2年であっても、個々の育成就労実施者が自らの判断で1年とすることができると説明しています。一方、1年を超える転籍制限期間を設ける場合は、1年経過後に昇給など分野別運用方針で定める待遇の向上を図ることが認定基準になります(第2節第10(8))。転籍の要件と企業の対策は育成就労の転籍とは?で詳しく解説しています。
送出機関に払う費用に上限が付いた
認定基準(第2節第13・第14)は、育成就労外国人やその親族が送出機関に支払う費用を、月給の2か月分までと定めています。送出機関は、育成就労外国人の月額賃金の2か月分を超える金額を、費目を問わず、本人だけでなく配偶者や親族からも受け取ることが禁止されています。受入れ企業としては、認定申請の際に「育成就労の準備に関し本国で支払った費用の申告書」などで費用の額と内訳を確認することになります。優良な育成就労実施者の評価項目には、送出機関に支払う費用がゼロとなる措置を講じていることが加点要素として挙げられています。
責任者・指導員・生活相談員に講習修了が必要
育成就労責任者、育成就労指導員、生活相談員は、それぞれ過去3年以内に対応する養成講習を修了している必要があります(第2節第6(1))。育成就労指導員は、従事させる業務について認定申請の時点で5年以上の経験を持つ人から選任します。講習の修了は認定時だけでなく認定後も継続して求められるため、修了から3年が近づいている担当者がいる場合は、申請の時期に合わせて受講し直す必要があります。当分の間は、技能実習制度で必要な養成講習を受講していれば足りるとされています。
期間は原則3年、3年未満の計画は認められにくい
育成就労の期間は原則として3年です。運用要領は「3年を下回る育成就労計画は、適正な育成を行えるものと認められず、認定を受けられない可能性があります」としています。技能実習では1号(1年)で終了する受入れもありましたが、育成就労では3年間の育成を前提に計画を立てることになります。
第6章・第9章|禁止行為と実地検査
第6章は、法46条から48条の禁止行為を解説しています。暴力、脅迫、監禁などによる育成就労の強制、契約の不履行についての違約金や損害賠償額を予定する契約、貯蓄金を管理する契約、旅券や在留カードの保管が禁止されています。本人の同意があっても、会社が旅券や在留カードを預かることは認められません。
第9章は、外国人育成就労機構による実地検査や、育成就労実施者に対する指導監督を扱います。帳簿書類(第4章第13節)が事業所に備え付けられているか、監査記録・面談記録が保管されているかが、実地検査で確認されます。技能実習の実地検査を受けたことのある企業であれば流れは似ていますが、日本語教育や待遇向上の実施状況など、確認される項目が増えることを前提に準備してください。
よくある質問
育成就労の運用要領はいつ公表されましたか?
2026年2月20日に出入国在留管理庁と厚生労働省が公表し、2026年4月6日と8月3日に一部改正されています。外国人技能実習機構のウェブサイトには、改正箇所一覧とともに「令和8年8月5日改正版」として章ごとのPDFが掲載されています。制度の施行前に改正が重ねられているため、読むときは表紙の日付と改正箇所一覧を確認してください。
育成就労計画の作成者は誰ですか?
育成就労計画は、育成就労実施者(受入れ企業)が作成し、外国人育成就労機構に認定を申請します。監理型育成就労の場合、計画の作成について監理支援機関の指導を受けることが認定基準になっており、その指導を受けた監理支援機関による監理支援を受けなければなりません。計画の記載事項と申請の時期は育成就労計画の認定申請|記載事項・作成指導者の要件と施行日前申請の時期で扱います。
技能実習と育成就労の運用要領の違いは何ですか?
構成は似ていますが、育成就労では日本語能力の目標と入国後講習の時間数、本人意向の転籍の基準、送出機関に払う費用の上限(月給2か月分)、人数枠の表、責任者・指導員・生活相談員の講習修了要件などが加わり、または変わっています。技能実習の運用要領の知識で判断すると誤る箇所があるため、変わった箇所は育成就労の運用要領の該当箇所で確認してください。
育成就労の受入れ人数に上限はありますか?
あります。監理型の基本人数枠は、常勤職員30人以下(3人以上)で9人、100人規模(51〜100人)で18人などと施行規則19条で定められ、優良な育成就労実施者であれば枠が拡大されます。介護や建設など、分野別の上乗せ基準で別の制限がある分野もあります。
運用要領のQ&Aはありますか?
出入国在留管理庁が「育成就労制度Q&A」を公開しており、制度の目的と施行時期、技能実習制度との関係、受入れ機関の要件、転籍、日本語能力要件、特定技能との関係など、81の質問に回答しています。運用要領そのものにも、各項目に「留意事項」や「用語の解説」が付いており、Q&Aに相当する解説が含まれています。個別の事情で判断が変わる点は、外国人育成就労機構や監理支援機関に確認してください。
2027年4月までに企業が運用要領で確かめること
運用要領は別紙を含めた全体版で500ページを超える資料で、最初から通読する必要はありません。受入れ企業が施行までに確かめるべきは、自社の分野の転籍制限期間と待遇向上の条件、自社の常勤職員数から見た人数枠、そして育成就労責任者・指導員・生活相談員に誰を充てるかの3点です。この3点は、第4章第2節と分野別運用方針を読めば判断できます。
そのうえで、送出機関と監理支援機関を選ぶ段階では、送出費用の上限(月給2か月分)が守られる契約になっているか、監理支援機関が計画の作成指導と定期的な監査・訪問指導を担える体制かを確認してください。制度全体の準備の流れは【2027年4月施行】育成就労制度とは?で扱っています。運用要領は施行前にも改正が続いているため、社内で要点を共有する際は、参照した版の日付を必ず添えておくことをお勧めします。