日本でいう永住権とは、入管法22条の「永住許可」を受けた外国人が持つ在留資格「永住者」の通称です。法律に「永住権」という言葉はなく、権利として当然に与えられるものでもありません。永住者になると在留期間の更新が要らず、仕事の種類も制限されませんが、国籍は元のままで、出国時の再入国許可、在留カードの更新、退去強制の対象であることは変わりません。2025年末時点で永住者は94万7,125人おり、在留外国人412万5,395人のうち最も多い在留資格です(出入国在留管理庁の公表)。
永住権とは「永住者」という在留資格の通称
外国人が日本に住むには、入管法が定めるいずれかの在留資格が必要です。在留資格とは、日本で行える活動や日本での身分・地位を類型化したもので、技術・人文知識・国際業務、留学、日本人の配偶者等などがあります。永住者はそのひとつで、入管法別表第二に「法務大臣が永住を認める者」と定められています。
ここで押さえておきたいのは、永住者も「在留資格の一種」にとどまるという点です。永住権という呼び方からは、いったん得れば二度と失わない地位のような印象を受けますが、法律上は他の在留資格と同じ枠組みの中にあります。取消しや退去強制の規定も、永住者に及びます。
英語では Permanent Resident と表記され、在留カードの在留資格欄にも「永住者 Permanent Resident」と記載されます。海外の人に説明するときは、アメリカのグリーンカードに近い地位と伝えると通じやすいでしょう。ただし、制度の中身は国ごとに違うため、他国の永住権の感覚をそのまま当てはめないほうが安全です。
永住許可との違い|「手続・処分」と「その結果の地位」
永住権と永住許可の違いは、手続と結果の違いです。永住許可は、すでに別の在留資格で日本に住んでいる外国人が「永住者」への変更を申請し、法務大臣がそれを許可する処分を指します。その結果として得られる地位が、在留資格「永住者」、つまり通称の永住権です。
入管法22条2項は、次の3つを満たし、法務大臣が認めたときに限り永住を許可することができると定めています。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
条文が「許可することができる」という書き方をしている以上、要件を満たせば必ず許可されるわけではありません。永住許可は法務大臣の広い裁量に委ねられた処分で、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン」(最新は2026年2月24日改訂)で、原則10年の在留、税金・年金・医療保険料の期限内納付、最長の在留期間を持っていることといった基準を示しています。永住権の「権」の字が付いていても、申請すれば得られる権利ではない、ということです。要件の中身は永住権の条件とは?素行善良・独立生計・国益の3要件と原則10年在留で詳しく解説しています。
手数料も押さえておくべき点です。2026年10月1日から永住許可の手数料は1万円から20万円に引き上げられました(9月30日までに受け付けた申請は旧額)。詳しくは【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?をご覧ください。
永住権を得るまでの手続と期間
永住許可の申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に、申請書と在留歴・収入・納税・年金の資料を提出して行います。福岡県内に住む人なら福岡出入国在留管理局が窓口です。永住許可申請は在留申請オンラインシステムの対象外で、窓口での提出が基本になります。
出入国在留管理庁が示す標準処理期間は4か月から6か月ですが、実際の処理日数はこれより長く、2026年7月に処分された永住許可申請の平均は310.2日でした。審査中に今の在留期間が満了する場合は、永住の申請とは別に在留期間更新許可申請をしておく必要があります。永住の申請には、更新申請のような特例期間(満了後も一定期間在留できる仕組み)が準用されていないためです。結果は郵送のハガキで通知され、許可の場合は地方出入国在留管理局で新しい在留カードを受け取ります。審査期間の詳しい推移は永住権申請の期間はどのくらい?審査期間の実績約300日と結果ハガキ・申請中の在留期限で扱っています。
永住権でできること
永住者になって最も大きく変わるのは、在留期間と活動の範囲です。家族の在留資格にも波及します。
在留期間が無期限になり、更新が不要になる
入管法施行規則別表第二は、永住者の在留期間を「無期限」としています。就労資格や配偶者ビザのように、1年・3年・5年ごとに在留期間更新許可申請をする必要はありません。更新のたびに勤務先の書類をそろえたり、不許可を心配したりすることがなくなります。
仕事の種類・勤務先の制限がなくなる
永住者は別表第二の在留資格なので、入管法19条の活動制限を受けません。在留カードの「就労制限の有無」欄は「就労制限なし」です。事務職から工場のライン作業へ移る、飲食店を開業する、副業をする、といったことに入管の許可は要りません。技術・人文知識・国際業務のように、学歴と職務内容の関連性を問われることもなくなります。
企業から見ると、永住者の採用では在留資格上の職種の制約を考えなくてよく、転職時の所属機関の届出も不要になります。在留カードで在留資格が「永住者」であることと、有効期間を確認すれば足ります。
家族の在留資格にも影響する
永住者の配偶者と、日本で生まれた永住者の子は、在留資格「永住者の配偶者等」の対象になります。この在留資格にも就労制限はありません。永住者の子が日本で生まれた場合は、出生から30日以内に在留資格取得許可申請をする必要があります(入管法22条の2)。
また、永住者の配偶者は、永住許可に関するガイドラインの特例で、実体を伴った婚姻生活が3年以上続き、引き続き1年以上日本に在留していれば永住申請ができます。2026年8月4日に公表されたガイドライン改定案では、この期間を婚姻5年・在留3年に伸ばす方向が示されており、確定内容と適用時期は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
社会生活上の信用が得やすくなる
在留期間の定めがなくなるため、住宅ローンやクレジットカードの審査で有利に扱われることがあります。これは金融機関ごとの審査基準によるもので、法律上の効果ではありません。
永住権でもできないこと・残る制約
永住者になっても、外国人であることは変わりません。ここを誤解すると、思わぬところで地位を失います。
国籍は変わらず、参政権もない
永住許可を受けても、国籍は元の国のままです。パスポートも本国のものを使い、日本の旅券は取得できません。国政選挙・地方選挙の選挙権と被選挙権はなく、公務員のうち公権力の行使や公の意思形成に関わる職には就けないとされています。日本国籍を取得するには、法務局に帰化許可申請をする必要があります。永住と帰化の違いは永住権と帰化の違い|国籍・選挙権・取消しリスクで比べるどちらを選ぶべきかで比較しています。
出国するときは再入国許可が要る
永住者でも、再入国許可を受けずに出国すると永住者の在留資格は消えます。有効な旅券と在留カードを持って1年以内に戻る場合は、出国時に「みなし再入国許可」を使えますが、1年を超えると使えません。長期の海外赴任や介護で帰国するときは、出国前に地方出入国在留管理局で再入国許可(有効期間は最長5年)を受けておく必要があります。仕組みは再入国許可とみなし再入国許可の違いで解説しています。
企業が海外転勤を命じるときは、この点が最も実務上の影響が大きい論点です。赴任期間が1年を超える見込みなら、本人がみなし再入国許可で出国しないよう、辞令を出す段階で再入国許可の取得を案内しておくべきだと筆者は考えます。
在留カードの更新は必要
在留期間は無期限でも、在留カードには有効期間があります。2026年6月14日より前に交付された永住者の在留カードは交付日から7年、同日以降に交付されたカードは交付日後の10回目の誕生日(18歳未満の人は5回目の誕生日)までが有効期間です。旧カードでも16歳未満の人は16歳の誕生日までとされていました。更新を忘れると罰則の対象になります。詳しくは永住権の更新は必要?在留カードの有効期間更新の手続きと費用【2026年6月改正】で扱っています。
退去強制の対象であり続ける
永住者も入管法24条の退去強制事由に当たれば、強制的に国外へ退去させられる可能性があります。典型は、1年を超える拘禁刑に処せられた場合(執行猶予が付いた場合を除く)や、薬物犯罪で有罪判決を受けた場合です。永住者であることは、在留特別許可の判断で有利に考慮される事情にはなりますが、退去強制を免れる保証にはなりません。
2027年4月1日から取消事由が加わる
令和6年の入管法改正(令和6年法律第60号)により、2027年4月1日から、永住者について在留資格の取消事由が加わります。故意に税金や社会保険料を納めない場合、在留カードの携帯などの入管法上の義務に違反した場合、一定の罪で拘禁刑に処せられた場合が対象です。取り消す場合も、原則は「定住者」などへ職権で在留資格を変更する仕組みになっています。詳しい要件と手続は永住権の取り消しはいつから?2027年4月施行の新取消事由と対象者で解説しています。個別の事案でどの事由に当たるかは、事情によって判断が変わります。
特別永住者・高度専門職との違い
永住者と混同されやすい地位が2つあります。
| 区分 | 根拠 | 在留期間 | 主な違い |
|---|---|---|---|
| 永住者 | 入管法22条・別表第二 | 無期限 | 在留カード(有効期間あり)、みなし再入国は1年以内 |
| 特別永住者 | 入管特例法 | 無期限 | 特別永住者証明書、みなし再入国は2年以内、退去強制事由が限定 |
| 高度専門職2号 | 入管法別表第一の二 | 無期限 | 活動は高度専門職の範囲、親の帯同など優遇措置あり |
特別永住者は、戦前から日本に住んでいた朝鮮半島・台湾出身者とその子孫を対象に、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)で定められた地位です。入管法の永住者とは根拠法が別で、2025年末時点で26万6,896人います。永住許可の申請で特別永住者になることはできません。
高度専門職2号も在留期間は無期限ですが、活動は高度専門職の範囲に限られます。その代わり、永住者にはない親の帯同や家事使用人の帯同といった優遇措置があります。両者の比較は高度専門職2号とは?要件・永住権との違いで解説しています。
よくある質問
永住権とはどういう意味ですか?
日本の法律上は、入管法22条の永住許可を受けて得る在留資格「永住者」のことを指す通称です。在留期間が無期限で仕事の制限がない一方、国籍は変わらず、外国人としての出入国管理の規定は引き続き適用されます。
在留カードで永住権かどうかはどう確認しますか?
在留カード表面の「在留資格」欄が「永住者」、「在留期間(満了日)」欄が「無期限」になっていれば永住者です。「就労制限の有無」欄は「就労制限なし」と記載されます。「永住者の配偶者等」は永住者とは別の在留資格で、在留期間の更新が必要です。
永住権と永住許可は違うものですか?
同じ地位を別の角度から呼んだものです。永住許可は法務大臣が行う許可の処分、永住権はその結果として得る在留資格「永住者」の通称です。申請書や入管の案内では「永住許可申請」という言葉が使われます。
永住権があれば日本の選挙で投票できますか?
できません。選挙権と被選挙権は日本国籍を持つ人に限られています。投票や日本のパスポートが必要なら、帰化によって日本国籍を取得する必要があります。
永住権は一度取れば一生失いませんか?
失う場合があります。再入国許可を受けずに出国した場合や、退去強制事由に当たった場合、2027年4月1日以降は新たな取消事由に当たった場合です。在留カードの有効期間の更新も続ける必要があります。
永住権を「身分」でなく「管理される地位」として捉える
永住権は、在留期間と仕事の制限から解放される点で、外国人にとって最も安定した在留資格です。ただ、その安定は、税金と社会保険料を期限内に納め、在留カードを更新し、長期出国の前に再入国許可を取る、という日々の管理の上に成り立っています。2027年4月からは、その管理を怠ったこと自体が取消事由になり得ます。
これから永住を目指す人は、要件を満たすことと同じ重さで、許可後も続く義務を理解しておく必要があります。永住者を雇用する企業にとっては、在留資格上の職種制限を気にしなくてよくなる一方、海外赴任や住民税の特別徴収の扱いが本人の地位に直結する、という見方に切り替える時期に来ています。今後の制度変更が社員の定着にどう影響するかは【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で整理しています。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 19条・22条・22条の2・24条・26条の2・別表第二(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 別表第二(e-Gov法令検索)
- 永住許可申請(出入国在留管理庁)
- 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁、2026年2月24日改訂)
- 令和7年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁、2026年公表)
- 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(e-Gov法令検索)
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