短期滞在ビザ(短期滞在査証)の必要書類は、旅券、査証申請書、写真、航空便の予約確認書の4点がどの目的でも共通で、残りは渡航目的と、渡航費用を誰が負担するかで決まります。観光なら申請人が自国で揃える書類だけで足りますが、親族訪問・知人訪問・商用では、日本側の招へい人が作る招へい理由書と滞在予定表が必要です。さらに日本側が費用を負担する場合は、身元保証書と身元保証人の所得の証明が加わります。
短期滞在ビザの必要書類は「目的」と「費用負担者」で決まる
ここでいう短期滞在ビザとは、観光、親族訪問、知人訪問、短期商用などの目的で日本に90日以内滞在する外国人が、来日前に自国の日本大使館・総領事館で取得する査証を指します。査証免除の対象となる国・地域の人は、観光や親族訪問などの短期滞在であれば査証を取る必要がありません。短期滞在で認められる活動と滞在日数の違いは短期滞在ビザとは?90日・30日・15日の違いと2026年9月からの日単位指定で扱っています。
必要書類を考えるときに押さえておきたいのは、書類が「申請人が自国で用意するもの」と「日本側が用意して申請人に送るもの」の二層に分かれている点です。外務省は、招へい人と身元保証人に対し、書類が整ったら申請人に送付するよう案内しています。査証を申請するのはあくまで申請人本人で、日本側の書類は申請人の手元に届いてから在外公館に出されます。
日本側の書類の範囲を決めるのが、渡航費用の負担者です。申請人が自分で旅費と滞在費を払えるなら、申請人が所得証明書や預金残高証明書で支払能力を示し、日本側は招へい理由書などだけを用意します。日本側が費用を負担するなら、日本側の身元保証人が身元保証書を書き、その人の所得や預金を証明します。
目的別の必要書類一覧
外務省が「一次有効の短期滞在査証の申請」として示している標準的な書類を、目的別に並べると次のとおりです(2025年4月版。中国、フィリピン、ベトナム、ロシアなどは別の一覧があります)。
| 書類 | 観光 | 親族訪問 | 知人訪問 | 短期商用 |
|---|---|---|---|---|
| 旅券・査証申請書・写真・航空便予約 | 申請人 | 申請人 | 申請人 | 申請人 |
| 渡航費用の支弁能力の証明 | 申請人 | 申請人(自費の場合) | 申請人(自費の場合) | — |
| 関係の証明 | — | 親族関係の証明(申請人) | 知人関係の証明(申請人) | 出張命令書・派遣状と在職証明書(申請人) |
| 滞在予定表 | 申請人 | 日本側 | 日本側 | 日本側 |
| 招へい理由書 | — | 日本側 | 日本側 | 日本側(取引契約書・会議資料等で代えられる) |
| 招へい理由の関連資料 | — | 日本側(ある場合) | 日本側(ある場合) | — |
| 申請人名簿 | — | 日本側(2名以上) | 日本側(2名以上) | 日本側(2名以上) |
| 身元保証書・保証人の資料 | — | 日本側(日本側負担の場合) | 日本側(日本側負担の場合) | 日本側(招へい機関負担の場合) |
表で分かるとおり、観光だけは日本側の書類がありません。日本に知り合いがいない旅行者を想定した区分なので、滞在予定表も申請人自身が作ります。反対に、親族訪問、知人訪問、商用は、日本側の誰かが申請人を招く構造になっているため、招く側の説明(招へい理由書)と日程(滞在予定表)が必須になります。
観光の場合
観光目的で申請人が用意するのは、旅券、査証申請書1通、写真1葉、出入国予定日が分かる航空便や船便の予約確認書、渡航費用を払えることの証明、滞在予定表です。費用の証明は、公的機関が発行した所得証明書か、預金残高証明書・銀行の取引明細のいずれかです。
観光の査証で審査されるのは、実際に観光のために来て、予定どおり帰国するかどうかです。滞在予定表の日程と航空便の予約日が一致しているか、宿泊先が決まっているか、滞在日数に見合う資金があるかが確認されます。
親族訪問の場合
親族訪問では、申請人が旅券・申請書・写真・航空便予約に加えて、親族関係を証明する書類を用意します。出生証明書、婚姻証明書、戸籍謄本などで、写しでも構いません。招へい人か招へい人の配偶者が日本人の場合は、本籍地の市区町村が発行した戸籍謄本(全部事項証明書)で関係を示せます。
日本側の招へい人が用意するのは、招へい理由書、滞在予定表、申請人が2名以上なら申請人名簿、そして招へいの理由に関係する資料です。外務省は関連資料の例として、卒業式や結婚式の日程が分かる案内状、診断書などを挙げています。親の出産の手伝い、子の結婚式への出席といった理由が、日付の入った資料で裏付けられる形が望ましいということです。
知人訪問の場合
知人訪問(友人や恋人を呼ぶ場合)の書類の構成は、親族訪問とほぼ同じです。違うのは関係の証明で、戸籍や出生証明書の代わりに、二人の関係が分かる写真、メールのやり取り、通話記録、手紙などを出します。
知人訪問は、親族訪問に比べて関係が書類で証明しにくい分、招へい理由書の書き方が審査に影響しやすい区分です。いつ、どこで知り合い、どれくらいの期間交流しているのか、今回なぜ日本に呼ぶのかを具体的に書き、写真の撮影日やメッセージの日付と合わせておきます。招へい理由書の書き方と例文は招へい理由書の書き方と例文|家族・友人・恋人を呼ぶときの記入例で解説しています。
短期商用の場合
商用(会議、商談、契約調印、見本市の視察など)で申請人が用意するのは、旅券・申請書・写真・航空便予約に加えて、所属先からの出張命令書や派遣状など商用であることを示す書類と、在職証明書です。
日本側の招へい機関(取引先企業など)は、招へい理由書、申請人名簿(2名以上)、滞在予定表を用意します。招へい理由書の代わりに、会社間の取引契約書や会議資料など、日本での活動内容が分かる資料を出すこともできます。日本で報酬を受けて働く予定がある場合は短期滞在の範囲を超えるため、就労できる在留資格を検討します。種類は外国人を採用できる在留資格の種類一覧で整理しています。
日本側の費用負担で加わる身元保証書と所得の証明
親族訪問・知人訪問で日本側が渡航費用を負担する場合、身元保証人が身元保証書を書き、次の書類を添えます。
- 身元保証人の渡航費用支弁能力を証する書類:市区町村が発行する直近の総所得が記載された課税(所得)証明書、税務署が発行する納税証明書(その2)、預金残高証明書などのいずれか1点以上。源泉徴収票は認められない
- 住民票:世帯全員の続柄が記載されたもの
- 身元保証人が外国人の場合:在留カードの表裏の写し、マイナンバーと住民票コード以外の記載事項に省略がない住民票、旅券の写し
源泉徴収票が認められないのは、勤務先が発行する私文書で、公的機関の証明ではないためです。会社員の身元保証人は、住んでいる市区町村で課税証明書を取るのが最も手間がかかりません。
商用で招へい機関が費用を負担する場合は、身元保証書に加えて、法人登記簿謄本(登記事項証明書)か会社・団体概要説明書を出します。上場企業は会社四季報の写しで代えられ、個人が招へいする場合は在職証明書で代えられます。
身元保証書は、在外公館に対して申請人の滞在費や帰国旅費の負担、法令の遵守を約束する書類です。書くのであれば、実際に負担できる範囲で書くことが前提です。
書類の有効期限・原本・写しのルール
目的にかかわらず、書類には共通のルールがあります。外務省の一覧によると、次のとおりです。
- 日本で発行される証明書は、発行後3か月以内のもの(有効期間の記載があるものは有効期間内のもの)を出す
- 日本側の書類は写しでの提出も可能だが、在外公館から原本の提出を求められることがある
- 旅券以外の提出書類は返却されない
- 審査の過程で書類の追加提出を求められることがある
発行後3か月という期限は、日本側の書類を準備してから申請人の手元に届くまでの時間も含めて数える必要があります。課税証明書を取ってから招へい理由書の作成に時間がかかり、国際郵便で送って申請するまでに3か月を超えると、取り直しになります。日本側の書類は、申請人の申請日から逆算して、最後の1か月以内にまとめて取得して送るのが安全です。
国籍で異なる書類|中国・フィリピン・ベトナムは専用の一覧
外務省は、中国、フィリピン、ベトナム、ロシア、CIS諸国などについて、国籍ごとに別の書類一覧を示しています。インド、インドネシア、モンゴルなど一部の国にも個別の案内があります。
中国籍の場合、申請人の書類として戸口簿の写し、本籍地が申請先の管轄外であれば居住証か居住証明書が加わり、親族関係の証明には親族関係公証書や出生医学証明書などが挙げられています。身元保証人の書類に在職証明書が含まれ、招へい人にも住民票や在職証明書(学生は在学証明書)が求められるなど、日本側の書類も一般の一覧より多くなっています。
中国、ベトナムなどでは、申請人が大使館に直接申請することはできず、大使館が指定する代理申請機関を通して申請します。フィリピンは、在フィリピン日本国大使館の告知(2025年3月19日)により、2025年4月7日から日本ビザ申請センター(パラニャーケ・マカティ・ケソン・セブ・ダバオ)での受付に切り替わり、認定旅行会社での受付は2025年4月6日で終了しました。代理申請機関ごとに受付の方法や手数料が違うため、日本側が書類を送る前に、申請人がどの機関で申請するのかを確かめておくと、送付先や部数の間違いを防げます。
審査期間・手数料と2026年の変更点
外務省は、書類に問題がなければ審査期間はおおむね1週間としています。ただし、書類の追加提出を求められた場合や本国での照会がある場合は長くなります。国際郵便の日数と3か月の有効期限を合わせて考えると、日本側は来日予定日の1〜2か月前から準備を始めるのが現実的です。
査証手数料は、外務省の2026年6月24日の案内により、2026年7月1日から一次有効査証が約15,000円、数次有効査証が約30,000円に改定されています。現地通貨の額は国ごとに決まり、代理申請機関やビザ申請センターを使う場合は別にその手数料がかかります。フィリピン国籍者の短期滞在査証は、在フィリピン日本国大使館の査証案内(2026年6月24日更新)で無料とされています。
入国後の在留期間についても、2026年9月1日施行の法務省令(令和8年法務省令第48号)により、短期滞在の在留期間が90日以内で日単位で指定できるようになりました。滞在予定表に書いた日数が、上陸の際に決められる在留期間と結びつきやすくなるため、予定表の日程は実際の予定に合わせて正確に書いておくことが大切です。
よくある質問
短期滞在ビザ(親族訪問)の必要書類は何ですか?
申請人側は、旅券、査証申請書、写真、航空便の予約確認書、親族関係の証明(出生証明書、婚姻証明書、戸籍謄本など)です。日本側は、招へい理由書、滞在予定表、申請人が2名以上なら申請人名簿、招へい理由の関連資料を用意します。日本側が費用を負担する場合は、身元保証書、身元保証人の課税証明書などの所得の証明、住民票が加わります。
家族をまとめて呼ぶ場合、書類は人数分必要ですか?
旅券、査証申請書、写真、関係の証明は一人ずつ必要です。招へい理由書と滞在予定表は1通にまとめ、申請人全員の国籍・氏名・生年月日と招へい人との関係を「申請人名簿」に書いて添付します。身元保証書をまとめられるかどうかは在外公館の運用によるため、申請先の案内で確認してください。
招へい人と身元保証人は同じ人でもよいですか?
同じ人で構いません。日本に住む子が親を呼び、費用も負担する場合がその典型です。この場合、招へい理由書と身元保証書の両方をその人が書きます。招へい人の収入が少ない場合は、同じ世帯の家族や親族が身元保証人になる組み合わせもあります。
観光でも日本の知人の書類が必要ですか?
外務省の標準的な一覧では、観光目的は申請人が用意する書類だけで、日本側の書類はありません。日本の知人を訪ねることが主な目的であれば、観光ではなく知人訪問として申請するのが実態に合っています。目的と書類が合わない申請は、査証の審査や入国時の上陸審査で説明を求められる原因になります。許否は個別の事情で判断が変わります。
書類はどこに出せばよいですか?
日本の入管ではなく、申請人が住む国の日本大使館・総領事館(国によっては指定の代理申請機関)に、申請人が出します。日本側の書類は、原本またはコピーを国際郵便などで申請人に送ります。
書類を揃える前に、目的と負担者を一文で書いてみる
短期滞在ビザの書類は数こそ多く見えますが、どれを出すかは「何のために来て、誰が費用を払うのか」でほぼ決まります。申請の準備を始める前に、たとえば「福岡に住む娘の出産の手伝いのため、母が30日間来日し、費用は娘夫婦が負担する」と一文で書いてみると、目的は親族訪問、日本側負担なので身元保証書と課税証明書が必要、と必要書類が自動的に絞られます。
そのうえで、この一文を招へい理由書、滞在予定表、航空便の予約、関連資料のすべてに一貫させることが、審査で余計な質問を受けないための近道です。短期滞在で来日した後の滞在延長や在留資格の変更は例外的な扱いなので、来日前に目的と日数を固めておくことを勧めます。短期滞在の延長や在留資格変更は、認められる事情が限られています。来日後の手続は地方出入国在留管理局で行い、九州では福岡出入国在留管理局とその出張所が窓口です。
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