特別永住者の帰化申請は、一般の外国人と同じ法務局で、同じ帰化許可申請の手続によって行います。違いが出るのは3点で、日本で生まれた人が多いため国籍法6条の簡易帰化で住所条件が「引き続き3年以上」に緩和されること、国籍を証明する書類が韓国の基本証明書などになること、父母の代までさかのぼる本国の身分関係書類が中心になることです。審査期間の公式な目安は特別永住者にもありませんが、書類の準備では韓国の家族関係証明書と除籍謄本の取り寄せに最も時間がかかります。
特別永住者も帰化の手続は一般の外国人と同じ
ここでいう特別永住者とは、入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)に基づいて日本に永住できる人を指します。同法2条は、1945年9月2日以前から引き続き日本に在留していた人と、その後平和条約発効までに日本で生まれた一定の子を「平和条約国籍離脱者」と定め、その子孫も特別永住者となります。令和7年末の特別永住者は266,896人で、国籍は韓国・朝鮮が大半を占めます(出入国在留管理庁)。
特別永住者は、在留期間の更新も在留資格の変更もなく、退去強制の事由も一般の外国人より限定されています。それでも国籍は外国のままなので、日本国籍を取得するには帰化の許可が必要です。帰化の申請先は住所地を管轄する法務局・地方法務局で、15歳以上は本人が出頭して書面で申請します(国籍法施行規則2条)。手数料はかかりません。
法務省民事局の統計では、2025年の国籍別帰化許可者数は、中国3,533人に次いで韓国・朝鮮が2,017人でした。この中には特別永住者でない韓国籍の人も含まれるため、特別永住者の帰化の件数そのものは公表されていません。
国籍法6条の簡易帰化|住所条件が3年に緩和される
一般の外国人の住所条件は、国籍法5条1項1号の「引き続き5年以上日本に住所を有すること」です。特別永住者の多くは、これが緩和される国籍法6条に当たります。
| 国籍法6条 | 対象 | 緩和の内容 |
|---|---|---|
| 1号 | 日本国民であった者の子(養子を除く) | 引き続き3年以上の住所・居所で足りる |
| 2号 | 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所・居所がある、又は父か母(養父母を除く)が日本で生まれた者 | 同上 |
| 3号 | 引き続き10年以上日本に居所がある者 | 同上 |
日本で生まれ育った特別永住者は、2号の前段に当たります。緩和されるのは5条1項1号の住所条件だけで、能力(18歳以上で本国法でも行為能力があること)、素行、生計、重国籍防止、憲法遵守の各条件は一般の外国人と同じく審査されます。帰化の条件全体は帰化の条件とは?国籍法5条の7要件と2026年4月からの居住10年の運用で整理しています。
法務大臣は2026年3月27日の閣議後記者会見で、同年4月1日から帰化の審査で原則として10年以上の在留を求める運用にすると説明しましたが、この運用が6条の簡易帰化に及ぶのかは、法務局の公表資料では書き分けられていません(公式資料では未確認)。日本で生まれてから一度も長期の出国がない特別永住者であれば、住所の期間で問題になることはまずないと筆者は見ていますが、長く海外で暮らしていた時期がある人は、初回相談で確認してください。
素行条件で見られる項目も一般の外国人と同じです。住民税5年分、社会保険2年分の納付、運転記録証明書(過去5年分)、刑罰歴が確認されます。日本で生まれた人だからといって、納付の遅れや交通違反の評価が甘くなるわけではありません。
特別永住者の必要書類|東京法務局の一覧から
東京法務局は、「帰化許可申請書に添付する書類(特別永住者の方)」のページを、一般の外国人向け(その他の国籍・地域の方)とは別に設けています(2026年9月4日更新)。項目ごとに整理すると次のとおりです。
国籍を証する書面
申請者の基本証明書(詳細)を出します。基本証明書を出せない場合は、家族関係登録簿が作られる前の韓国・朝鮮の戸籍(除籍)謄本で代えます。一般の外国人は国籍証明書と、期限切れのものを含む全パスポートの写しで国籍を示しますが、特別永住者向けの一覧の国籍証明はこの基本証明書が中心です。
身分関係を証する書面
特別永住者の書類で最も量が多いのがこの部分です。東京法務局の一覧は次の書類を挙げています。
- 申請者の家族関係証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書(いずれも詳細)
- 父と母の家族関係証明書(詳細)、母の婚姻関係証明書(詳細)
- 父母の婚姻以降の除籍謄本、母がおおむね10歳頃以降の除籍謄本の全て
- 身分関係によっては日本の戸籍(除籍)謄本
- 日本の役所に出生・婚姻・離婚などの届出をしている場合は、その届書の記載事項証明書又は受理証明書
- 日本又は韓国の家庭裁判所の審判書・判決書の謄本(確定証明書付き)
韓国の家族関係登録制度は2008年1月1日に戸籍制度から切り替わったもので、それ以前の身分関係は除籍謄本でしか確認できません。母の除籍謄本を「おおむね10歳頃以降」全て求めるのは、申請者に異父母の兄弟姉妹がいないかまで確かめるためと考えられます。
ここで押さえておきたいのは、日本の役所への届出との突き合わせです。在日の家庭では、子の出生や婚姻を日本の市区町村にだけ届け出て、韓国側には届け出ていない(又は遅れて届け出た)ことが珍しくありません。その場合、韓国の家族関係登録簿に記載がなかったり、日付が日本の届出と違ったりします。記載事項証明書や受理証明書が求められるのは、この差を埋めるためです。
居住歴・運転記録・収入・納税・社会保険
居住歴は、法定住所期間(簡易帰化なら3年、一般なら5年)の住所が記載された世帯全員の住民票・除住民票と、特別永住者証明書の表裏の写しです。運転記録証明書(過去5年、発行後2か月以内)と免許証の写し、収入の資料(在勤及び給与証明書、源泉徴収票、給与明細など)、住民税の課税・納税証明書5年分、年金・医療保険の納付状況2年分は、一般の外国人と同じです。
一般の外国人向けの一覧では「その他」に卒業証明書や日本語能力に関する資料が並びますが、特別永住者向けの一覧の「その他」は帰化相談質問票と必要書類確認表です。ただし個別の事情で追加を求められることはあるため、書類の最終的な範囲は相談時の指示に従ってください。必要書類の全体像は帰化申請の必要書類一覧|会社員・自営業・配偶者別の書類と取得先にもまとめています。
動機書は必要か
帰化の動機書について、法務局のてびき(令和6年6月版)は、15歳未満の申請者は不要としていますが、特別永住者を除く旨の記載はありません。特別永住者は動機書が不要とする解説もありますが、法務局の公表資料では確認できていません(公式資料では未確認)。福岡法務局の申請書類(Word版)のページにも動機書の様式が掲載されているため、相談時に作成の要否を確認してください。書き方は帰化の動機書の書き方と例文|必要な人・不要な人と法務局が求める記載事項で扱っています。
韓国の家族関係証明書・除籍謄本の取り方
基本証明書、家族関係証明書などの家族関係登録簿の証明書は、日本に住んでいる人なら駐日韓国大使館・総領事館の領事窓口で請求するのが一般的です。九州には福岡と長崎に総領事館があります。管轄、請求できる人の範囲(本人・配偶者・直系血族など)、手数料、郵送請求の可否は各公館で扱いが異なるため、公館の案内で確認してください(公式資料では未確認)。
時間がかかるのは除籍謄本です。本籍地(登録基準地)が分からないと請求できず、祖父母の代の本籍地を家族も知らないということが起こります。2012年7月8日以前から日本に住んでいた人の外国人登録原票には、本国の住所(本籍)を書く欄がありました。本人の原票は出入国在留管理庁への開示請求(1件300円)で取り寄せられ、本籍地の手がかりになることがあります。
韓国語の書類には、A4判の日本語訳を付け、翻訳者の住所・氏名と翻訳年月日を書きます。翻訳者に資格は求められていないので、本人や家族が訳してもかまいません。除籍謄本は漢字とハングルが混在し、手書きの古い記載もあるため、枚数が多い家庭では翻訳にかなりの時間がかかります。
朝鮮籍の人も、法務局の一覧では韓国・朝鮮の戸籍謄本が国籍・身分関係の書面として扱われています。ただ、本国の書類を実際にどう取得するかは個別の事情で大きく変わるため、初回相談の段階で法務局に事情を伝え、代わりになる書類を確認するのが近道です。
特別永住者の帰化申請の期間
法務省は帰化許可申請の標準処理期間を定めていません(「帰化許可申請」の案内で「ありません」と明記)。特別永住者だけの処理期間も公表されていないため、「特別永住者なら何か月」と言える公式の数字はありません。一般には、法務局への相談から許可・不許可の決定まで最短でも1年半程度とされています(帰化の期間は帰化申請の期間はどのくらい?受付から許可まで・面接後の結果待ちの目安【2026年】で詳しく扱っています)。
特別永住者の場合、審査の側面では、日本で生まれ育って在留歴が明確で、出入国歴や来日の経緯を確認する必要が小さいため、在留歴の確認に時間がかかりにくいと考えられます。一方で、準備の側面では、韓国の除籍謄本の収集と翻訳に数か月かかることがあります。申請までの期間は、本国書類がどれだけそろっているかでほぼ決まります。
帰化のメリットと、許可後の手続
特別永住者は在留の安定性がすでに高いため、帰化のメリットは永住者よりも「国籍を持つこと」そのものに集中します。代表的なのは、選挙権・被選挙権、日本のパスポートによる渡航、公務員の任用で国籍が条件になる職への就任、そして家族の身分関係を日本の戸籍で一本化できることです。反対に、韓国籍を失うこと、本国の身分関係の手続が必要になることは、帰化を選ばない理由として挙げられます。永住と帰化の比較は永住権と帰化の違い|国籍・選挙権・取消しリスクで比べるどちらを選ぶべきかで扱っています。
帰化が許可されると官報に告示され、告示の日から日本国籍を取得します(国籍法10条)。そのうえで、告示の日を含め1か月以内に市区町村へ帰化届を出します。特別永住者証明書は、特別永住者でなくなった日から14日以内に出入国在留管理庁長官に返納しなければなりません(入管特例法16条1項)。許可後の手続の全体は帰化の官報告示とは?許可後にやること(帰化届・在留カード返納・パスポート)にまとめています。
よくある質問
帰化と特別永住者の違いは何ですか?
特別永住者は外国籍のまま日本に永住できる在留上の地位で、帰化は日本国籍を取得することです。特別永住者は選挙権がなく、日本のパスポートも持てません。帰化すると日本国民になり、特別永住者の地位はなくなります。
特別永住者が帰化するまでにかかる期間は?
法務省は標準処理期間を定めておらず、特別永住者向けの期間も公表していません。一般に相談から決定まで最短で1年半程度とされ、特別永住者の場合は韓国の除籍謄本などの収集にかかる期間が申請までの長さを左右します。
特別永住者の帰化は緩和されますか?
日本で生まれた人は国籍法6条2号に当たり、住所条件が5年から3年に緩和されます。ただし緩和は住所条件だけで、素行・生計などの条件は一般の外国人と同じです。日本で生まれ育った人の多くは、住所条件をすでに満たしているため、実質的な違いは書類の中身に表れます。
特別永住者が帰化申請をするにはどんな書類が必要ですか?
東京法務局の一覧では、申請者の基本証明書(国籍証明)、申請者と父母の家族関係証明書・婚姻関係証明書など、父母の婚姻以降の除籍謄本、日本の役所への届書の記載事項証明書、住民票、運転記録証明書、収入・納税・社会保険の資料が挙げられています。申請者が作る帰化許可申請書、履歴書、生計の概要なども一般の外国人と同じく必要です。
特別永住者の帰化に動機書は必要ですか?
法務局のてびきは15歳未満の申請者を不要としていますが、特別永住者を除外する記載は確認できていません(公式資料では未確認)。作成の要否は相談時に法務局の担当者に確認してください。
本国書類から始める
特別永住者の帰化は、要件の面では一般の外国人より進めやすい一方、書類の面では父母・祖父母の代にさかのぼる作業が中心になります。筆者がお勧めする進め方は、法務局への初回相談の前に、自分の登録基準地(本籍地)が分かるかを家族に確認し、韓国の基本証明書と家族関係証明書を取っておくことです。そこから除籍謄本をどこまで取る必要があるかが見えてきます。
日本側の書類は、住民票や課税証明書のように数日でそろうものが大半です。時間がかかる本国書類を先に動かし、その間に日本の役所への届出の記載事項証明書を集め、履歴書(書き方は帰化申請の履歴書の書き方|学歴・職歴・出入国歴を空白なく書く記入例参照)と生計の概要を下書きする、という順序で進めると、相談から申請までの期間を短くできます。個別の事情で必要書類は変わるため、身分関係が複雑な家庭は、早い段階で専門家に書類の範囲を見てもらうのも一つの方法です。
関連するコラム
- 家族滞在から永住申請するには?配偶者・子どもの同時申請の条件と注意点
- 永住申請の年金記録|直近2年の納付状況と未納・遅延があるときの対応
- 定住者の永住申請の条件|在留5年の特例・起算点と必要書類の注意点