家族滞在ビザから就労ビザへの切り替えは、在留資格変更許可申請で行います。変更先で最も多い「技術・人文知識・国際業務」(技人国)では、大学または日本の専門学校の卒業、もしくは10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験という学歴・職歴の要件が、海外から呼び寄せる人とまったく同じ基準で審査されます。日本で何年暮らしていても、家族滞在で在留していたことを理由に要件が緩和されることはありません。例外は、日本の高校を卒業した家族滞在の子どもに認められている「定住者」「特定活動」への変更で、こちらは学歴・職歴を問わず就職できます。この記事では、企業の採用担当者と本人に向けて、変更先ごとの条件と、家族滞在特有の審査の論点を整理します。
家族滞在のままでは週28時間を超えて働けない
家族滞在は、就労系の在留資格などで日本にいる外国人の扶養を受ける配偶者・子のための在留資格です。在留資格そのものには就労が認められておらず、資格外活動許可(包括許可)を受けて週28時間以内のアルバイトやパートができるにとどまります。フルタイムで働くには、就労が認められる在留資格に変更する必要があります。
もう一つの理由は、家族滞在の前提である「扶養を受けている」状態との関係です。フルタイムで働き、配偶者と同程度かそれ以上の収入を得るようになれば、扶養を受けて日常的な活動を行うという家族滞在の中身とかみ合わなくなります。週28時間の上限を守っていても、収入が増えて扶養者の税・社会保険上の扶養から外れると、次の更新で扶養の実態を問われることがあります。家族滞在の就労制限は家族滞在ビザで働ける時間は?資格外活動許可と週28時間を超えた場合のリスクで詳しく扱っています。
変更先ごとの主な条件
家族滞在から変更できる就労系の在留資格は、本人の学歴・職歴・試験の合格状況で決まります。主な選択肢は次のとおりです。
| 変更先 | 主な条件 | 家族を呼べるか |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 大学卒業(短大含む)・日本の専門学校卒業(専門士)、または実務経験10年(国際業務は3年)。専攻と業務の関連性。日本人と同等以上の報酬 | 呼べる(家族滞在) |
| 特定技能1号 | 分野ごとの技能試験と日本語試験(原則N4相当)の合格。受入れ機関との雇用契約と支援体制 | 原則呼べない |
| 特定活動46号 | 日本の大学卒業(学士以上)とJLPT N1またはBJT480点以上。日本語を用いた業務 | 呼べる(特定活動) |
| 定住者・特定活動(高校卒業者の特例) | 日本の高校卒業、入国時18歳未満など(次の節で説明) | 在留資格ごとに異なる |
このほか、要件を満たせば「技能」(外国料理の調理師など、実務経験10年が原則)や「経営・管理」「介護」への変更もあり得ます。いずれも家族滞在からの変更だからといって基準が変わるものはありません。
技人国への変更|学歴・職歴の要件は緩和されない
技人国への変更で最初に確かめるのは学歴です。上陸許可基準は、従事する業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業したこと、または日本の専修学校の専門課程を修了したこと(専門士)を求めています。外国の専門学校や職業訓練校の修了は、大学と同等以上の教育機関と認められない限り対象になりません。日本の高校を卒業しただけでは、技人国の学歴要件は満たせません。
学歴がない場合は実務経験で要件を満たすことになります。技術・人文知識の業務は10年以上、翻訳・通訳・語学指導・広報・海外取引などの国際業務は3年以上の実務経験が必要です(大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は実務経験不要)。ここで家族滞在の人がつまずきやすいのは、日本でのアルバイト歴の扱いです。週28時間以内の資格外活動として行ったアルバイトは、業務の内容が専門的なものでない限り、技人国で求められる実務経験には通常数えられません。実務経験の数え方は技人国の実務経験10年要件で解説しています。
学歴・職歴の次に見られるのは、専攻と業務の関連性、報酬、会社の事業の安定性です。報酬は日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上であることが必要で、家族滞在のときのパート時給をそのまま月給に換算したような条件では通りません。業務の中身も、技人国は専門的な知識を使う業務に限られ、飲食店のホール業務や工場のライン作業が中心であれば該当しません。
2026年4月15日以降の申請からは、主に言語能力を使って対人業務に従事する人(翻訳・通訳・接客など)について、CEFR B2相当の言語能力を証する資料が求められるようになりました。日本語能力試験N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、日本の大学卒業などがB2相当と扱われます。日本で長く暮らしてきた家族滞在の人は日本語力で有利なことが多い一方、試験の合格証がないと立証できないため、早めに受験しておくことを勧めます。詳細は通訳・翻訳・接客の技人国にCEFR B2が必要にを参照してください。
特定技能への変更と、2026年4月からの外食業の停止
学歴・職歴の要件を満たさない家族滞在の人にとって、現実的な選択肢になるのが特定技能1号です。分野ごとの技能試験と、原則として日本語教育の参照枠A2.2相当(JLPT N4またはJFT-Basic)の日本語試験に合格すれば、学歴は問われません。試験は日本国内でも受験でき、家族滞在の人も受験資格があります。
ただし、特定技能1号には家族滞在の家族を呼ぶことが原則として認められず、在留は通算5年が上限です。本人が特定技能に変わっても、配偶者が技人国などで就労していれば、子どもはその配偶者の扶養を受ける家族滞在として在留を続けられます。一方、家族全員が本人の扶養に頼る形になる場合は、特定技能を選ぶと家族の在留が成り立たない点に注意が必要です。
もう一つ、2026年に大きく変わった点があります。外食業分野では、受入れ見込数の上限に近づいたことから、2026年4月13日以降に受理された在留資格認定証明書の交付が停止されました。出入国在留管理庁の案内では、同日以降に受理された他の在留資格から外食業の特定技能への変更も原則として不許可とされ、例外は分野内の転職などに限られています。家族滞在で飲食店のアルバイトをしている人が、そのまま同じ店で特定技能に切り替える、という道は現時点では使えません。停止の範囲と例外は特定技能「外食業」の新規受入れ停止で解説しています。飲食料品製造業や介護など他の分野は、2026年9月時点で停止されていません。
家族滞在のまま日本の大学・専門学校を卒業した場合
家族滞在の子どもや配偶者が、在留資格を「留学」に変えずに日本の大学や専門学校に通うことは認められています。家族滞在は扶養を受けて行う日常的な活動を広く含み、教育機関で学ぶこともその中に入るからです。卒業後の就職で使える選択肢は、留学生とほぼ同じになります。
日本の大学を卒業していれば、技人国の学歴要件は満たします。専門学校の場合は、専修学校の専門課程を修了して「専門士」の称号を得ていることが必要で、専攻と業務の関連性は大学卒業者より厳しく見られます。専門学校で学んだ分野と、就職先で担当する業務が対応しているかを、成績証明書の科目名と職務内容の説明書で示せるようにしておきます。
もう一つ、日本の大学(学士以上)を卒業し、JLPT N1またはBJT480点以上の日本語能力がある人は、特定活動46号も選べます。46号は、日本語を使ったコミュニケーションを要する業務であれば、技人国では認められにくい現場の業務を含めて従事できる在留資格で、飲食店や小売店の店舗運営、工場での通訳を兼ねた現場管理などが典型です。家族滞在で日本の大学に進んだ子どもは日本語力が高いことが多く、46号の条件を満たしやすい層です。要件の詳細は特定活動46号とは?で解説しています。
なお、卒業後すぐに就職先が決まらない場合、留学生であれば就職活動のための特定活動(最長1年)に移る道がありますが、家族滞在の人は、扶養者の在留が続き、扶養を受けている実態がある限り、家族滞在のまま就職活動を続けられます。ただし、成人した子が学校を卒業して長く就職しないままでいると、扶養の実態を更新で問われることがあります。
日本の高校を卒業した子どもの特例(定住者・特定活動)
家族滞在で親に呼ばれ、日本の学校で育った子どもについては、出入国在留管理庁が学歴・職歴の要件を問わない特例を案内しています。ここでいう特例とは、日本の高校を卒業して日本で就職する家族滞在の子どもが、フルタイムで働ける「定住者」または「特定活動」に変更できる取扱いを指します。
入管庁の案内(2024年9月30日更新)によれば、主な条件は次のとおりです。
- 定住者:日本の小学校と中学校を卒業していること、日本の高校を卒業(見込みを含む)していること、入国後引き続き家族滞在で在留していること、入国時に18歳未満であったこと、就労先が決定(内定を含む)していること、住居地の届出などの公的義務を履行していること
- 特定活動:日本の高校を卒業(見込みを含む)していること、扶養者が身元保証人として在留していること、入国後引き続き家族滞在で在留していること、入国時に18歳未満であったこと、就労先が決定(内定を含む)していること、公的義務を履行していること。高校に編入した場合は、JLPT N2程度またはBJT400点以上の日本語能力が必要
学校は学校教育法1条に定める学校(いわゆる1条校)が前提とされています。この特例は、週28時間を超えて働くことを希望する場合が対象です。技人国のような学歴と業務の関連性は問われず、定住者であれば就労の制限もないため、高校卒業後に製造業、小売、飲食など幅広い職種で正社員として働けます。定住者と特定活動の違い、特定活動から定住者へ移る道筋は家族滞在の子どもは定住者・特定活動に変更できる?日本の高校卒業後の就職で詳しく扱います。
企業の採用担当者にとっては、高校新卒の家族滞在の生徒を採用するとき、内定を出すこと自体がこの特例の条件の一つになるという点が重要です。内定通知と雇用契約書の写しを早めに渡し、本人が卒業前に変更申請の準備を始められるようにしてください。
家族滞在特有の審査の論点
家族滞在からの変更では、就労系の要件に加えて、家族滞在で在留していた期間の過ごし方が見られます。
最も多い問題は、資格外活動の週28時間の超過です。変更申請では本人の住民税の課税証明書などで前年の収入が確認されるため、アルバイト収入が週28時間では届かない水準であれば、超過を疑われます。資格外活動許可の範囲を超えた就労は、在留状況が良好でないとして変更の許否に影響します。複数のアルバイト先を掛け持ちしていた場合は、合計で28時間を超えていないかを、本人が給与明細で確かめておく必要があります。
次に、住民税・国民健康保険料・国民年金保険料の納付状況です。家族滞在の配偶者は扶養者の社会保険の被扶養者になっていることが多い一方、収入が増えて扶養から外れた年は、本人が国民健康保険・国民年金に加入し保険料を納めていなければなりません。未納がある場合は、納付してから申請するのが基本です。
最後に、変更後の家族の在留です。家族滞在だった本人が就労資格に変わると、今度は本人が家族の扶養者になり得ます。夫婦の在留資格の組合せが変わるときは、子どもの家族滞在を誰の扶養として更新するかも併せて整理しておきます。
申請の手続・時期・手数料
変更申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に、在留資格変更許可申請書と、変更先の在留資格で求められる書類を提出して行います。技人国であれば、勤務先のカテゴリー(上場企業、前年の源泉徴収税額など)に応じて提出書類が変わり、卒業証明書、雇用契約書、会社の登記事項証明書・決算書などが必要です。本人が申請するほか、勤務先の職員や行政書士が申請取次で提出することもできます。
入管庁が示す変更申請の標準処理期間は2週間から1か月です。家族滞在の在留期間の満了日までに申請すれば、処分が出るまで、または満了日から2か月を経過する日のいずれか早い日までは在留を続けられます。ただし、この間は家族滞在の在留資格のままなので、フルタイムで働き始めることはできません。入社日は許可が出てからに設定するのが原則です。
手数料は許可を受けるときに収入印紙で納めます。2026年10月1日以降は、許可される在留期間に応じた額に変わり、1年の許可で窓口33,000円(オンライン27,000円)、3年以上5年未満で窓口64,000円(オンライン56,000円)などとなります。2026年9月30日までに受理された申請は改定前の6,000円(オンライン5,500円)です。
変更が不許可になったとき
変更申請が不許可になっても、家族滞在の在留資格が直ちに失われるわけではありません。家族滞在の在留期間が残っていれば、その期間内は家族滞在として在留を続けられ、資格外活動の範囲でアルバイトも続けられます。特例期間中に不許可となった場合は、在留期間が既に満了していることがあるため、入管の指示に従って出国準備のための手続をとる必要が生じます。満了日の直前に変更申請を出すことの危うさはこの点にあります。
不許可の理由は、地方出入国在留管理官署で説明を受けることができます。学歴と業務の関連性の説明不足、報酬の低さ、会社の決算内容、資格外活動の超過など、理由によって再申請で補える点と補えない点が分かれます。不許可の理由を聞いたうえで、補える点を補ってから再申請を検討します。
よくある質問
家族滞在ビザから就労ビザに変更することはできますか?
できます。在留資格変更許可申請を行い、変更先の在留資格の要件を満たせば許可されます。技人国であれば学歴または実務経験、特定技能であれば試験の合格が必要で、家族滞在からの変更だからといって要件が緩和されることはありません。
家族滞在ビザから就労ビザに切り替える期間はどれくらいですか?
入管庁の標準処理期間は2週間から1か月です。書類の準備を含めると、内定から許可まで2か月程度を見込んでおくと安全です。許可が出るまではフルタイムで働けないため、入社日は余裕をもって設定してください。
高校を卒業しただけでも就労ビザに変更できますか?
技人国の学歴要件は満たせません。ただし、日本の高校を卒業し、入国時18歳未満などの条件を満たす家族滞在の子どもは、「定住者」または「特定活動」に変更して正社員として働けます。
就労ビザから家族滞在ビザへ切り替えることはできますか?
できます。退職や出産などで就労をやめ、日本で就労している配偶者の扶養を受ける場合は、家族滞在への変更を申請します。扶養者の在留資格と収入で扶養が可能であることを示す必要があります。
採用前に「どの在留資格で雇うか」を決めておく
家族滞在の人を正社員として採用するとき、企業側が最初に決めるべきは、どの在留資格で雇うかです。本人に大学や日本の専門学校の卒業歴があり、専門的な業務を任せるなら技人国、学歴がなく現場の仕事を任せるなら特定技能(外食業を除く)、日本の高校を卒業した若い人なら定住者・特定活動の特例、という順序で検討すると判断を誤りにくくなります。
変更の許否は、学歴や職歴だけでなく、家族滞在の期間中の就労時間や納税の状況も含めて、個別の事情で判断が変わります。アルバイト時代の働き方がそのまま審査の材料になるため、採用を決めた段階で、本人の課税証明書と資格外活動の状況を一緒に確かめておくことを勧めます。
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根拠資料
- 「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ(出入国在留管理庁、2024年9月30日更新)
- 在留資格「家族滞在」(出入国在留管理庁)
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁)
- 特定技能「外食業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置について(出入国在留管理庁)
- 在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(e-Gov法令検索)
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