ここでいう在留資格の選択とは、外国人を採用する際に企業が最初に決めるべき「どの枠組みで雇うか」という論点を指します。ここを誤ると、あとから業務内容を変える、経歴を揃え直す、最悪の場合は申請そのものをやり直す事態になります。
在留資格認定証明書の申請さえ出せば、あとは入管が適切に判断してくれると考えている経営者は少なくありません。しかし在留資格は、企業側が「この業務にはこの在留資格」と選んで申請するものです。選択を誤ったまま出せば、その内容のまま審査され、不許可・不交付という結果が返ってきます。専門家に相談すれば選択のミスは防げますが、まず自社にどんな選択肢があるのかを把握しておかなければ、相談すべきタイミングそのものを見誤ります。
この記事では、企業が外国人を採用する際に候補になる代表的な在留資格を一覧で整理し、比較表つきで判断軸を示します。
在留資格の選択は、どれが簡単そうかで選ぶものではありません。業務内容と、本人の学歴・職歴・試験の合否によって、選べる在留資格は自動的に絞られます。逆に言えば、業務内容と経歴を正確に把握できれば、選択のミスはほとんど防げます。この記事を通じて、自社の採用ケースがどこに当てはまるかを確認してください。
この記事でわかること
- 企業が外国人採用で使う代表的な在留資格の全体像
- 技人国・特定技能・特定活動46号・経営管理の違いと使い分け
- 技能実習との違いと、間違えやすいポイント
- 採用ケース別にどの在留資格を検討すべきかの判断軸
外国人採用で検討すべき在留資格の全体像
外国人を雇うといっても、雇う相手の学歴・経歴と、任せたい業務内容によって選べる在留資格はまったく変わります。企業の採用担当者が押さえておくべき代表的な5つを整理します。
| 在留資格 | 主な対象 | 業務のイメージ |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 大卒・専門卒相当の人材 | エンジニア、営業、経理、通訳・翻訳等 |
| 特定技能 | 技能試験・日本語試験の合格者 | 介護・外食・建設・農業等16分野の現場業務 |
| 特定活動46号 | 日本の大学を卒業した留学生 | 飲食店・小売店等の接客・店舗管理 |
| 経営・管理 | 経営者・事業責任者 | 会社の経営・管理業務全般 |
| 技能実習 | 送出し国からの実習生 | 技能移転を目的とした実習計画内の業務 |
それぞれの詳しい要件は個別の記事で解説しているので、この記事では使い分けの考え方に絞って説明します。
在留資格選びの基本的な考え方
在留資格の審査は、「該当性」と「基準適合性」という2つの視点で判断されます。該当性とは、その活動内容がそもそもその在留資格に当てはまるかどうか。基準適合性とは、本人や受入れ機関が定められた基準を満たしているかどうかです。この2つを分けて考えると、選ぶべき在留資格が見えやすくなります。
実務でよくあるのが、該当性を無視して基準適合性だけで判断してしまうミスです。大卒で給与も日本人と同等以上払える、だから技人国で問題ないはずだ、と考えてしまう。しかし、やらせる仕事が接客中心なら、給与や学歴がどれだけ整っていても該当性の時点で通りません。まずその活動がどの在留資格に該当するのかを決め、それから基準を満たしているかを確認する。この順番を守る必要があります。
技術・人文知識・国際業務(技人国)
いわゆる技人国は、大卒・専門卒相当の外国人が、専攻や実務経験と関連する専門業務に従事するための在留資格です。エンジニア、経理、営業企画、通訳・翻訳あたりが典型で、オフィスワークの採用ではもっとも使われる在留資格といえます。
ここで重要なのは、肩書きではなく実際の業務内容で判断されるという点です。「マーケティング担当」という肩書きでも、実態が単純作業ばかりなら技人国は通りません。履歴書の肩書きをどれだけ丁寧に書いても、入管が見るのは実態です。ここを甘く見て申請し、不許可になってから相談に来る企業が後を絶ちません。
技人国のもうひとつの特徴は、更新に上限がないことです。特定技能1号のように5年で在留期間が打ち止めになる心配がなく、要件を満たし続ければ長期的に雇用を継続できます。腰を据えて専門人材を育てたい企業にとって、技人国はもっとも安定した選択肢のひとつです。要件・職種一覧・不許可事例まで含めた詳しい解説は技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国)とはにまとめています。
特定技能
特定技能は、介護・外食・建設・農業など、人手不足が深刻な16分野の現場業務を対象にした在留資格です。技人国と違って学歴や専攻は問われませんが、分野ごとの技能試験と日本語試験に合格していることが前提になります。
試験に合格していれば誰でもよいわけではなく、受入れ企業側にも支援計画の実施義務や労働条件の基準があります。1号・2号の違い、対象分野、受入れ機関の要件をまとめて解説した記事を特定技能とはに用意しているので、現場業務での採用を考えている企業は必ず目を通してください。
技人国と特定技能はどちらも「即戦力」という言葉で語られがちですが、審査の切り口はまったく別物です。技人国は「学んできたこととやる仕事のつながり」、特定技能は「試験合格という客観的な技能証明」で判断されます。自社の現場が単純作業寄りなら特定技能、専門性のある業務なら技人国という大枠で振り分けたうえで、細かい要件を確認するのが効率的です。
特定活動46号
意外と知られていないのが特定活動46号です。日本の大学を卒業した留学生であれば、日本語能力や一定の要件を満たすことで、飲食店や小売店の接客・店舗管理業務に就くことができます。技人国では認められにくい「接客」を正面から任せられる、数少ない在留資格です。
大学を出ているのだから技人国でいけるだろうと安易に判断して申請し、業務内容が接客中心だったために不許可になるケースは実際にあります。そうしたケースこそ、特定活動46号を検討すべきだった例です。
特定活動46号の対象になるには、日本の四年制大学(学部)を卒業していることが前提で、専門学校卒や短大卒は対象外です。加えて、日本語能力試験N1相当の日本語力、または大学で日本語を用いて授業を受けたと認められることが求められます。単に日本語が話せるというレベルではなく、客観的な試験結果や学修歴での証明が必要になる点は押さえておいてください。対象者の要件や採用の流れは特定活動46号とはで詳しく解説しています。
経営・管理
海外の親会社・子会社の役員クラスを日本に呼び寄せる、あるいは外国人自身が日本で会社を立ち上げて経営者として在留する、といったケースで使うのが「経営・管理」の在留資格です。事業所の確保、一定額以上の出資、常勤職員の雇用など、技人国や特定技能とはまったく異なる切り口の要件が課されます。
経営・管理には2028年10月までの経過措置が設けられていて、既存の在留者にも一定の対応が求められる見込みです。会社の経営体制そのものに関わる話なので、対象になりそうな企業は早めに確認しておいたほうがいいでしょう。詳しくは経営・管理ビザの経過措置とはで解説しています。
経営・管理は、技人国や特定技能と違って「雇われる側」の資格ではなく「経営する側」の資格である点が最大の違いです。日本人従業員を雇用する義務があったり、事業計画の実現可能性を示す資料の提出が求められたりと、他の在留資格にはない審査の切り口があります。海外資本の日本進出、あるいは外国人経営者による起業を支援する場面では、この在留資格の理解が欠かせません。社長として働きたいという相談を受けた場合、まずはこの在留資格が候補になることを念頭に置いてください。
配偶者・家族の帯同という視点も忘れずに
在留資格を選ぶとき、業務内容や要件ばかりに目がいきがちですが、本人の家族帯同の可否も、採用の定着率に大きく影響する要素です。技人国や経営・管理では、要件を満たせば配偶者と子を「家族滞在」の在留資格で呼び寄せることができます。一方で特定技能1号は原則として家族帯同が認められません。
採用が決まったにもかかわらず、家族と離れて暮らすことを理由に本人が入社を辞退したケースも実際にあります。長期的に働いてもらいたい人材であればあるほど、家族帯同の可否は事前に説明しておくべき情報です。採用条件を提示する段階でこの点も含めて丁寧に伝えておくと、入社後のミスマッチを防げます。特定技能で採用する場合は、2号への移行を将来的な選択肢として提示できるかどうかが、優秀な人材をつなぎとめるための材料になり得ます。
申請手数料の動向にも注意
在留資格の変更・更新にかかる手数料は、2026年10月に改定される方針が示されています。永住許可の手数料が20万円になるという報道もあり、企業が費用を一部負担するケースでは採用コストの見積もりに影響が出る可能性があります。詳しい金額や企業負担の考え方は在留資格の変更・更新手数料はいくらになるか、駆け込み申請のタイミングについては在留資格の更新手数料はいつから上がるかで解説しています。正式決定前の情報のため、最新の運用は都度確認するようにしてください。
留学生を新卒採用するときの在留資格
日本の大学・専門学校に在籍する留学生を新卒で採用したい場合、在留資格「留学」から就労系の在留資格への変更申請が必要になります。ここで多くの企業がつまずくのが、留学生ならとりあえず技人国という思い込みです。専攻内容と業務内容の関連性が薄いと、留学から技人国への変更は認められません。
大学卒業予定で、専攻と業務がつながる仕事に就かせるなら技人国、大学卒業予定で飲食・小売の接客をメインにさせたいなら特定活動46号、専門学校卒業予定なら技人国のハードルがより高くなる、という整理になります。採用が決まった段階で、配属予定の業務内容と本人の専攻を照らし合わせておくことを強くおすすめします。
複数の在留資格にまたがる採用ケース
実際の相談では、この人材は技人国でも特定技能でもいけそうだが、どちらがいいかという質問もよく受けます。たとえば、外国の調理師学校を出て経理も少しかじっている人材を、外食業の店舗運営全般で採用したいというケース。厨房の調理業務がメインなら特定技能(外食業)、店舗全体の経営企画や経理がメインなら技人国、という判断になります。
こうした事情から、業務内容の比重で判断が分かれるケースは珍しくありません。片方の在留資格で申請してうまくいかなかったために、もう一方に切り替えるということも実務上は起こり得ます。切替えには当然時間もコストもかかるので、最初の段階でどちらが自社の実態に合っているかを慎重に見極めるべきです。
判断に迷う典型例をもうひとつ挙げると、ホテル業界での採用です。フロント業務や企画・広報が中心なら宿泊分野の特定技能、語学力を活かした業務なら技人国の国際業務、経営企画寄りの業務なら技人国の人文知識、というように、同じ「ホテルで働く外国人」でも実際の業務によって選ぶべき在留資格が分かれます。業種名だけで判断せず、必ず個別の業務内容まで踏み込んで検討してください。
在留資格認定証明書交付申請と在留資格変更許可申請の違い
ここまで紹介した在留資格を実際に取得するには、大きく2つの手続きがあります。海外にいる本人を新しく呼び寄せる場合の「在留資格認定証明書交付申請」と、既に日本国内にいる本人の在留資格を切り替える場合の「在留資格変更許可申請」です。名称は似ていますが、必要書類も審査の進み方もまったく異なります。
| 在留資格認定証明書交付申請 | 在留資格変更許可申請 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 海外に在住する外国人 | 既に日本に在留している外国人(留学生・転職者等) |
| 申請先 | 日本国内の地方出入国在留管理局 | 本人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局 |
| 許可後の流れ | 証明書を本人に送付し、本人が現地の日本大使館・領事館でビザ申請、その後来日 | 許可されれば新しい在留カードが交付され、そのまま就労開始 |
海外から呼び寄せる採用のほうが、証明書交付後にさらにビザ申請・来日という工程が加わる分、トータルの期間は長くなりがちです。内定を出してから来日までどれくらいかかるかを経営陣や現場に説明する際は、この2段階の手続きがあることを踏まえて見積もっておくべきです。
技能実習との違い
技能実習は、ここまで挙げた4つの在留資格とは根本的に性質が異なります。技能実習は「開発途上国への技能移転」という国際貢献が制度上の目的で、就労そのものが主目的ではありません。実務上は転籍のしやすさ、受入れの手続き、費用の構造も大きく異なります。
人手が足りないからとにかく外国人をという発想で技能実習を選んでしまい、あとから特定技能のほうが自社に合っていたと気づく企業は少なくありません。制度・受入れ方法・費用まで比較した記事を技能実習と特定技能の違いにまとめているので、現場業務での採用を検討している企業は、特定技能と技能実習の両方を比べたうえで判断してください。
技能実習と特定技能では、受入れにかかる初期費用の構造も異なります。技能実習は監理団体への加入費用や送出し機関への手数料など、独特のコスト構造を持っています。特定技能は登録支援機関への委託費用が中心で、初期費用は技能実習ほど大きくならないケースが多いです。どちらが自社にとってコストメリットがあるかは受入れ人数や継続年数によっても変わるため単純な比較は難しいところですが、技能実習のほうが安いという単純な思い込みは持たないほうがいいでしょう。目先の費用だけでなく、支援体制の手間や将来的な人材の定着率まで含めてトータルで比較したほうが、結果的に正しい判断につながります。
転籍の自由度は、企業の採用戦略に直結する論点です。技能実習は転籍が限定的にしか認められないため、いったん受け入れれば実習期間中は安定して働いてもらえるという見方もできますが、その分、本人の意思よりも制度上の制約で職場に留まっている側面があります。特定技能は転職の自由度が高い分、待遇や職場環境を整えないと、より条件のいい会社に人材が流出するリスクがあります。囲い込みやすさを重視するのか、柔軟に採用できることを重視するのかで、選ぶべき制度は変わってきます。
2027年4月には技能実習に代わる「育成就労制度」の施行が予定されています。技能実習からの移行がどう変わるのか、受入れ企業が今のうちに準備すべきことについては、別途詳しい記事で解説する予定です。技能実習での受入れを検討している企業は、この制度変更の動向もあわせて注視しておいてください。
在留資格の比較表
ここまでの内容を、企業が採用時に見るべき軸で一覧化しておきます。
| 在留資格 | 学歴要件 | 単純労働 | 在留期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 技人国 | 大卒・専門卒相当 | 不可 | 5年〜3ヶ月(更新上限なし) |
| 特定技能1号 | 試験合格が要件(学歴不問) | 分野内なら可 | 通算5年上限 |
| 特定活動46号 | 日本の大学卒業 | 接客等は可 | 更新上限なし |
| 経営・管理 | 不問(事業要件が中心) | 経営業務のみ | 更新上限なし |
| 技能実習 | 不問 | 実習計画の範囲内で可 | 最長5年 |
採用ケース別の判断軸
実際の相談でよくあるパターンに沿って、どの在留資格を検討すべきかを整理しておきます。
- 海外の大学卒の人材をエンジニア・営業として雇いたい → 技人国を検討
- 介護・外食・建設・農業などの現場が人手不足 → 特定技能を検討
- 日本の大学を卒業した留学生を、飲食店や小売の接客要員として採用したい → 特定活動46号を検討
- 海外拠点の役員を日本法人の経営者として呼びたい → 経営・管理を検討
- 技能移転を前提に、送出し機関経由で実習生を受け入れたい → 技能実習を検討
これはあくまで典型パターンです。実際には業務内容が複数の在留資格にまたがっていたり、本人の経歴によって選べる選択肢が変わったりします。なんとなくこれだろうで進めるのではなく、業務内容を具体的に書き出して経歴と照らし合わせてから選ぶべきです。判断を誤ってから申請をやり直すほうが、はるかに時間がかかります。
在留資格選定でよくある失敗
実際の相談で目にする失敗パターンを、いくつか挙げておきます。
- 肩書き先行の申請:業務の実態を確認せず、「マネージャー」「エンジニア」といった肩書きだけで在留資格を決めてしまう
- 他社事例の丸写し:同業他社が技人国で許可を取ったからと、自社の業務内容を確認せずに同じ在留資格で申請してしまう
- 試験合否の未確認:特定技能を前提に採用を進めたが、実際には試験に合格していなかった
- 経過措置の見落とし:経営・管理や特定技能など、制度変更の経過措置対象になっているのに気づかず対応が後手に回る
いずれも確認すれば防げるものばかりです。ただし採用を急いでいるときほど確認作業を後回しにしがちです。だからこそ、採用が決まった瞬間ではなく、面接や内定を出す前の段階で在留資格の見立てを済ませておくべきです。
在留資格の変更・更新にかかる期間の目安
どの在留資格を選ぶにしても、申請から許可までにはそれなりの期間がかかります。海外から呼び寄せる場合の在留資格認定証明書交付申請は1〜3ヶ月、国内での変更・更新許可申請は2週間〜2ヶ月が目安です。入社希望日から逆算して、余裕を持ったスケジュールで動く必要があります。
入社時期が決まっている新卒採用や、既存の在留期限が迫っている転職者の受入れでは、この期間の見積もりを誤ると、内定を出したのに入社日に間に合わないという事態にもなりかねません。在留資格の選定と並行して、申請スケジュールも早い段階で組み立てておいてください。
外国人採用の実務フロー全体像
在留資格の種類を理解したうえで、実際の採用実務がどう進むのかを整理しておきます。おおまかには次の順番です。
- 業務内容の言語化:採用したいポジションで実際に何をやらせるのかを具体的に書き出す
- 候補者の経歴確認:学歴、専攻、実務経験、保有資格・試験の合否を確認する
- 在留資格の見立て:業務内容と経歴を照らし合わせて、該当する在留資格を絞り込む
- 雇用契約の締結:在留資格の基準に沿った労働条件で契約を結ぶ
- 在留資格の申請:認定証明書交付申請または変更許可申請を行う
- 受入れ後の管理:在留期限の管理、必要な届出、更新のスケジュール管理
この中でもっとも重要なのは、③の「在留資格の見立て」を①②より後回しにしないことです。いい人材が見つかったからとりあえず内定を出し、あとで在留資格を考えるという順番で進めると、内定を出したあとに実は在留資格の要件を満たしていなかった、という事態になりかねません。採用の初期段階で在留資格の見立てを済ませておくことが、結果的にいちばんの近道になります。
⑥の「受入れ後の管理」を軽視する企業も少なくありません。在留資格の申請が通ると、そこで安心してしまいがちですが、在留期限は必ず来ますし、業務内容が変わればそのたびに在留資格との整合性を確認し直す必要があります。人事担当者が変わっても管理が途切れないよう、在留カードの写し・在留期限・在留資格の種類を一覧化した管理台帳を作っておくことをおすすめします。
在留カードで最低限確認すべき項目
面接や採用が決まった段階で、必ず在留カードの原本を確認してください。確認すべき最低限の項目は次のとおりです。
- 在留資格の種類(技人国、特定技能、留学、家族滞在等)
- 在留期間の満了日
- 就労制限の有無(就労不可、就労制限あり、就労制限なし等の記載)
- 資格外活動許可の記載(留学生のアルバイト等の場合)
「留学」の在留資格を持つ人を、資格外活動許可を確認せずにフルタイムで働かせてしまう、といったミスも実務では起こり得ます。在留カードはコピーを取るだけでなく、記載事項を一つずつ確認する習慣をつけておくべきです。ここを怠ると、本人が知らないうちに不法就労状態になっていたり、企業側が不法就労助長罪に問われるリスクに直結したりします。本人が大丈夫と言っていたという説明は、審査や捜査の場面では通用しません。確認する主体は、あくまで雇用する企業側です。在留カードの真贋を見分けるのが不安な場合は、出入国在留管理庁が提供している在留カード等番号失効情報照会システムを使って、番号の有効性を確認することもできます。
在留資格ごとの労務管理の留意点
在留資格の種類によって、労務管理で気をつけるべきポイントも変わってきます。技人国や経営・管理は、日本人従業員と同様に社会保険・雇用保険の適用を受けるのが基本ですが、給与水準の妥当性を継続的に説明できる状態にしておく必要があります。特定技能は、報酬水準の基準に加えて、支援計画の実施記録という独自の管理項目が加わります。技能実習は、実習計画に基づく労働時間・業務内容の管理が求められ、実習計画から外れた業務をさせると重大な違反になります。
共通して言えるのは、どの在留資格であっても契約書に書いてあることと実際にやらせていることを一致させるという基本を徹底することです。ここがずれていると、労務トラブルだけでなく在留資格の更新にも影響します。人事・総務担当者は、外国人社員の在留資格の種類ごとに確認すべきチェック項目を社内で整理しておくと安心です。複数の在留資格の外国人を雇用している企業ほど、この整理を怠ると管理が煩雑になりがちなので、早い段階でルール化しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 外国人採用でもっとも多く使われている在留資格は何ですか?
オフィスワークの採用では技術・人文知識・国際業務、いわゆる技人国が圧倒的に多く使われています。現場業務の採用では特定技能の利用が急速に増えています。
Q. 留学生をアルバイト先の飲食店でそのまま正社員採用できますか?
大学を卒業する留学生であれば、特定活動46号を使って飲食店や小売店で接客・店舗管理業務に就かせられる可能性があります。専門学校卒は対象外なので、学歴の確認が最初のステップになります。
Q. 海外の子会社から経営幹部を呼び寄せたい場合はどの在留資格ですか?
経営・管理の在留資格が該当します。事業所の確保や出資額など独自の要件があり、技人国や特定技能とは審査の切り口がまったく異なります。
Q. 在留資格を間違えて申請するとどうなりますか?
不許可や不交付になるだけでなく、数ヶ月の審査期間を経て振り出しに戻ることもあります。業務内容と本人の経歴を整理したうえで、どの在留資格に当たるかを先に確定させてから動くべきです。
Q. 1人の外国人に複数の在留資格の候補がある場合、どう決めればいいですか?
業務内容の比重で判断します。専門性のある業務が主なら技人国、現場の実務が主なら特定技能というように、実際に従事する時間や割合の大きい業務を基準に振り分けるのが基本の考え方です。迷う場合は事前に専門家へ確認したほうが安全です。
審査全体の厳格化にも目を向けておく
2026年1月には、関係閣僚会議が「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定し、在留審査全体の厳格な運用を進める方針が示されています。技人国の該当性審査、特定技能の受入れ機関の適正性確認、永住許可の要件など、幅広い在留資格に影響が及ぶ内容です。どの在留資格を選ぶにしても、これまで通っていたから今後も大丈夫という前提は通用しにくくなっていくと見ておいたほうがいいでしょう。総合的対応策の内容は外国人受入れの総合的対応策で在留審査はどう変わるかで詳しく解説しています。
将来的に外国人社員に永住を見据えてもらいたい企業にとっては、永住許可の要件厳格化の動きも見逃せません。2026年10月には要件がさらに見直される見込みで、これは企業の定着支援のあり方にも関わってきます。詳細は永住許可の要件厳格化で何が変わるかにまとめています。
中小企業が外国人採用でつまずきやすいポイント
大企業と違って、中小企業には専任の人事担当者がいないケースが多くあります。総務や経営者自身が採用から在留資格の申請まで一手に引き受けていて、外国人採用は初めてで何から手をつけていいか分からないという相談は本当に多く寄せられます。
中小企業がつまずきやすいポイントとして、次のようなことが挙げられます。
- 会社の規模が小さいことで、カテゴリー区分上、提出書類が多くなり手間がかかる
- 事業計画や決算内容の説明資料を用意する経験がなく、雇用理由書の作成に苦労する
- 在留期限の管理が属人化していて、更新のタイミングを見落とす
うちは小さい会社だから外国人採用は難しいと最初から諦めてしまう経営者もいますが、規模が小さいこと自体が不許可の理由になるわけではありません。事業の実態や将来性をきちんと説明できれば、規模の小さい会社でも十分に許可は得られます。むしろ書類の準備に慣れていない分、早い段階で専門家に相談したほうが遠回りせずに済みます。相談に来る経営者の多くも、最初はうちのような規模で大丈夫かと不安そうにしていますが、業務内容と事業の実態をきちんと整理すれば、ほとんどのケースで許可までたどり着いています。規模の大小よりも、説明の丁寧さのほうが審査結果を左右することのほうが多いというのが実感です。
相談前に用意しておくと話が早い資料
専門家に在留資格の相談をする際、あらかじめ次のような情報を整理しておくと、初回の相談がぐっとスムーズになります。
- 採用予定者の履歴書・職務経歴書(学歴・専攻・実務経験が分かるもの)
- 配属予定の部署・ポジションでの具体的な業務内容(できれば箇条書きで)
- 雇用条件(給与、勤務地、雇用形態)の案
- 会社の概要が分かる資料(会社案内、直近の決算書類等)
- 希望する入社時期
これらが揃っていれば、初回の相談だけでどの在留資格に該当しそうか、不足している要件は何かというおおまかな見立てまで進められます。逆にこれらが曖昧なまま相談に来ると、確認作業に何度もやり取りが必要になり、その分だけ入社時期が後ろ倒しになってしまいます。忙しい採用担当者ほどこの準備を省略しがちですが、結果的には最初にきちんと整理したほうが早く進みます。この一手間が、最短ルートで許可までたどり着くための近道になります。
まとめ
外国人採用の入口は「どの在留資格を選ぶか」です。技人国、特定技能、特定活動46号、経営・管理、技能実習、それぞれ対象も要件も業務範囲もまったく異なります。業務内容と採用したい人材の経歴を先に整理し、そこから逆算して在留資格を選ぶ。この順番を守るだけで、不許可・不交付のリスクはかなり減らせます。
この記事で紹介した5つの在留資格は、あくまで代表的なものです。実際にはこれ以外にも細かい在留資格が存在しますし、同じ技人国でもカテゴリーや職種によって求められる書類は変わります。自社の採用がどの在留資格に当たるか判断がつかないなら、内定を出す前の段階、できれば求人票を作る段階で一度相談してください。最初の設計を間違えなければ、あとの手続きはずっとスムーズに進みます。
外国人採用は、一度制度を理解してしまえば特別なものではありません。日本人採用と同じように、業務内容を明確にし、それに合った人材を選び、必要な手続きを踏む。その手続きの中身が日本人採用とは異なるというだけの話です。この記事をきっかけに、自社にとって最適な在留資格の選び方を整理してもらえれば幸いです。制度は毎年のように見直されるため、一度理解して終わりにせず、採用のたびに最新の情報を確認する習慣を持っておくといいでしょう。