家族滞在ビザの理由書は、出入国在留管理庁が公表している提出書類の一覧には入っていない任意の書類です。配偶者と幼い子を普通に呼び寄せる申請なら、理由書を付けなくても審査は進みます。理由書が効くのは、審査官が書類を見て「なぜ今、この家族を呼ぶのか」と疑問を持ちそうな場面、たとえば16歳以上の子を呼ぶ場合、親子が何年も離れて暮らしていた場合、扶養者の収入が家族の人数に比べて少なく見える場合です。この記事では、理由書が必要になる場面を先に切り分け、そのうえで場面別の例文と、更新申請書の「更新の理由」欄の書き方を示します。
家族滞在ビザの理由書は、提出書類一覧にない任意の書類
出入国在留管理庁の「在留資格『家族滞在』」のページは、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の提出書類として、申請書、写真、身分関係を証する文書(戸籍謄本・婚姻届受理証明書・結婚証明書・出生証明書など)、扶養者の在留カード又は旅券の写し、扶養者の職業と収入を証する文書(在職証明書、住民税の課税・納税証明書)を挙げています。この3つの申請の一覧に、理由書や質問書は含まれていません。一方で、同じページには「審査の過程において、上記以外の資料を求める場合もあります」という注記があります。
なお、日本で生まれた子などの在留資格取得許可申請では、一覧に「質問書」が掲げられています。取得許可の質問書は様式が決まっている書類で、この記事で扱う自由形式の理由書とは別物です。
理由書が一覧にないからといって、出す意味がないわけではありません。審査官は、身分関係の書類と扶養者の収入の書類だけから家族の事情を読み取ります。その書類だけでは説明がつかない事情があるとき、追加資料の通知を待つより、先に理由書で説明しておくほうが、審査が止まる時間を短くできます。追加資料の通知が届いた場合の対応は入管から資料提出通知書が届いたら?で解説しています。
「招へい理由書」との違い
「招へい理由書」は、外務省が定める短期滞在ビザの様式で、日本にいる人が家族や知人を観光・親族訪問などで短期間呼ぶときに使います(2020年11月3日から押印不要)。家族滞在ビザの申請では、この様式は使いません。家族滞在で出す理由書は決まった様式がなく、A4の用紙に自由な形式で書きます。
理由書が必要になる場面・不要な場面
審査の中心は、扶養者に家族を養う意思と資力があり、配偶者は扶養者と同居して経済的に依存し、子は扶養者の監護養育を受けるかどうかです(入国・在留審査要領の家族滞在の項)。理由書が必要かどうかは、この点について提出書類だけで疑問が残るかどうかで決まります。
| 場面 | 理由書の要否の目安 | 審査官が持ちやすい疑問 |
|---|---|---|
| 扶養者の来日と同時期に、配偶者と未就学・小学生の子を呼ぶ | 通常は不要 | 特になし |
| 16歳以上の子、とくに18歳前後の子を呼ぶ | 付けることを勧める | 扶養を受けるためか、日本で働くためか |
| 扶養者の来日から数年たってから子を呼ぶ | 付けることを勧める | なぜ今になって呼ぶのか、それまで誰が監護していたか |
| 子の親の一方だけが来日する(もう一方の親は本国に残る) | 付けることを勧める | 親権・監護権は誰にあるか、本国の親は同意しているか |
| 扶養者の年収が家族の人数に比べて少なく見える、入国直後・転職直後 | 付けることを勧める | 家族を養えるだけの資力があるか |
| 配偶者が本国で働いていて、来日後も働く意向がある | 状況による | 経済的に独立していないか |
表の「16歳以上」は法令上の基準ではなく、筆者が実務の感覚で置いた目安です。家族滞在の子に年齢の上限はありませんが、年齢が上がるほど、本人が自分で稼げる年齢に近づくため、扶養を受ける実態があるかが丁寧に見られます。
年長の子で考えておくべき将来の在留
18歳以上で来日する子には、もう一つ注意点があります。家族滞在で在留する子が日本の高校を卒業して就職するとき、「定住者」や「特定活動」に変更できる扱いがありますが、出入国在留管理庁が示す要件には「入国時に18歳未満であること」が含まれています。18歳を過ぎてから呼び寄せると、この道は使えません。呼び寄せの時期を決める段階で、子の将来の進路まで含めて考えておくべき理由です。この扱いの詳細は家族滞在の子どもは定住者・特定活動に変更できる?日本の高校卒業後の就職で解説しています。
理由書の基本の書式
理由書に決まった様式はありませんが、次の形にしておくと読みやすくなります。
- 表題:「理由書」又は「申請理由書」
- 宛先:申請先の地方出入国在留管理局長(福岡局なら「福岡出入国在留管理局長 殿」)
- 日付
- 本文:申請人と扶養者の氏名・国籍・生年月日、扶養者の在留資格と勤務先、呼び寄せる理由、日本での生活の見通し
- 末尾:扶養者の署名(申請人の署名も付けてよい)、住所、電話番号
分量はA4で1〜2枚が目安です。日本語で書くのが原則で、扶養者が母語で書いた場合は日本語訳を付けます。パソコンで作成してかまいませんが、署名は自筆にします。
中身で守るべきことは一つで、理由書に書く数字と日付は、提出する他の書類と必ず一致させることです。在職証明書の年収、出生証明書の生年月日、扶養者の入国日(旅券のスタンプや在留カードの交付日)と理由書の記載がずれると、理由書そのものの信用がなくなります。
場面別の例文
以下の例文は、骨格を示すためのものです。実際に書くときは、自分の家族の事実に置き換え、裏付けとなる資料を添えてください。例文の固有名詞・数字は架空のものです。
例文1:16歳以上の子を呼ぶ場合
私は、ベトナム国籍の〇〇〇〇(1988年5月10日生)です。2023年4月から、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で福岡市の株式会社△△に勤務し、設計業務に従事しています(年収420万円、在職証明書のとおり)。 このたび、長男〇〇〇〇(2009年8月3日生、17歳)を日本に呼び寄せ、妻とともに家族3人で暮らすため申請いたします。長男はこれまで、本国で妻と同居し、妻が監護養育してまいりました。妻は2025年10月に家族滞在の在留資格で来日しており、長男は現在、本国の母方の祖父母宅で生活し、高校2年生に在籍しています。 長男を今呼び寄せる理由は、祖父母が高齢で長男の世話を続けることが難しくなったこと、また両親と離れた生活が長くなり、親子で暮らしたいという本人の希望が強いためです。来日後は、福岡市内の高校への編入を予定しており、日本語学習のため、市の日本語教室に通う準備を進めています。就労の予定はありません。 長男の学費・生活費は、私の給与収入と預金(別添の残高証明書のとおり)でまかないます。以上の事情をご理解いただき、ご許可くださいますようお願い申し上げます。
この例文で押さえているのは、今までの監護者(誰と住んでいたか)、今呼ぶ理由、来日後の生活(学校・日本語学習)、就労の予定がないこと、費用の出どころの5点です。年長の子の申請で審査官が確かめたいのは、日本で働くために家族滞在を使うのではないかという点なので、来日後に何をするかを具体的に書くことが要になります。編入先の学校が決まっていれば、その資料を添えると説明の裏付けになります。
例文2:扶養者の来日から数年たって子を呼ぶ場合
私は、中国籍の〇〇〇〇(1985年2月14日生)です。2019年6月に在留資格「技術・人文知識・国際業務」で来日し、現在も同じ会社に勤務しています。 長女〇〇〇〇(2016年11月20日生、9歳)は、私の来日後も本国で妻と暮らしてまいりました。来日当初は、私の日本での仕事と住居が安定するまでの間、家族は本国で生活することを夫婦で決めておりました。2024年に現在の住居(2LDK、賃貸借契約書のとおり)に転居し、2026年4月に昇給して生活の見通しが立ったため、このたび妻と長女を呼び寄せることにいたしました。 長女は来日後、住居地の市立小学校に就学する予定です(就学の案内を受けております)。 離れて暮らしていた期間も、毎月の送金(別添の送金記録のとおり)とビデオ通話で家族の生活を支えてまいりました。
呼び寄せが遅れた理由は、審査官が最も知りたい点です。仕事や住居の安定を待っていた、子の学年の区切りを待っていた、といった事情を時系列で書き、その間も扶養していたことを送金記録で示します。扶養者の来日から時間がたっている申請で、送金の記録がまったくないと、その間の扶養の実態が説明しにくくなります。
例文3:親の一方だけが日本に来る場合(離婚後の子など)
長男〇〇〇〇の父母は2021年に離婚しており、本国の裁判所の判決(別添の判決書及び訳文のとおり)により、親権は母である私にあります。長男の父〇〇〇〇は、長男が日本で私と暮らすことに同意しており、同意書(別添)を提出いたします。
この場面では、親権・監護権が扶養者側にあることと、もう一方の親の同意を示す書類が中心になります。理由書の文章は短くてかまわず、判決書や同意書といった裏付け資料の方が重要です。
更新申請書の「更新の理由」欄と、更新時の理由書
家族滞在の更新では、在留期間更新許可申請書に「更新の理由」を書く欄があります。事情に変化がなければ、この欄は短く書けば足ります。
- 「引き続き、扶養者である夫〇〇〇〇と同居し、その扶養を受けて日本で生活するため。」
- 「引き続き、父〇〇〇〇の扶養を受け、〇〇市立〇〇中学校に通学するため。」
更新で別紙の理由書を付けたほうがよいのは、前回の申請から事情が変わった場合です。
- 扶養者が転職した、又は一時的に離職していた
- 扶養者の年収が下がった
- 配偶者のアルバイト収入が増え、課税証明書に表れている
- 子が学校を卒業した、又は退学した
- 扶養者と別居している期間がある
更新時の理由書の例を示します。
扶養者である夫〇〇〇〇は、2026年3月に株式会社△△を退職し、同年5月から株式会社□□に勤務しております(在職証明書及び雇用契約書のとおり)。前年の課税証明書の所得が例年より少ないのは、この転職に伴う2か月間の離職期間があったためです。現在の月額給与は32万円で、前職より増えております(直近3か月の給与明細の写しを添付します)。 私は資格外活動許可を受け、週20時間程度、飲食店でアルバイトをしておりますが、家計の中心は夫の収入であり、今後も夫の扶養を受けて生活してまいります。
アルバイトについて書く場合は、許可の範囲(週28時間以内)を守っていることと、家計の中心が扶養者の収入であることを明確にします。家族滞在の配偶者が経済的に独立していると見られると、家族滞在の要件から外れるおそれがあるためです。更新全体の書類と申請書の記入例は家族滞在ビザ更新の必要書類|申請書の記入例と扶養者の課税証明書の注意点とあわせて読むと整理しやすくなります。更新の申請時期は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?を参照してください。
よくある質問
家族滞在ビザの申請理由書の例文は?
本文の例文1〜3(年長の子・来日が遅れた子・親の一方だけが来日する場合)と、更新時の例文を参照してください。どの場面でも、今呼ぶ理由、それまでの監護・扶養の状況、来日後の生活、費用の出どころを、他の書類と一致する日付と数字で書くのが骨格です。
家族滞在ビザの期間更新にはどのような理由が必要ですか?
事情に変化がなければ、「引き続き扶養者の扶養を受けて日本で生活するため」という趣旨で足ります。扶養者の転職・減収、配偶者のアルバイト収入の増加、子の卒業など、前回の申請から変化があった場合は、別紙の理由書で経緯を説明しておくと審査が進みやすくなります。
理由書は必ず提出しなければなりませんか?
入管の提出書類一覧には含まれていないため、必須ではありません。ただし、審査の過程で求められることがあり、書類だけでは説明がつかない事情があるときは、最初から付けておくほうが審査の時間を短くできます。
家族滞在の子どもは何歳まで呼べますか?
法令や審査要領に年齢の上限はありません。ただし、年齢が上がるほど扶養を受ける実態があるかが厳しく見られ、成年に近い子や成年の子を新たに呼ぶ場合は、理由書と裏付け資料による説明が重要になります。どの程度の説明で足りるかは個別の事情で判断が変わります。
理由書は「書類の空白」を埋めるために書く
家族滞在の理由書は、情に訴える文章を書くためのものではありません。審査官が提出書類を読んだときに生まれる空白、たとえば「この子は今まで誰が育てていたのか」「なぜ5年たってから呼ぶのか」「この年収で4人が暮らせるのか」という問いに、先回りして事実で答えるための書類です。
書き始める前に、自分の申請書類一式を審査官の目で読み直し、説明がつかない点を書き出してみてください。書き出した点がなければ、理由書は付けなくてかまいません。書き出した点があれば、それぞれに対応する事実と資料を並べれば、理由書の骨格はほぼ出来上がります。企業の人事担当者が関われるのは、扶養者の年収と雇用の安定性を示す在職証明書の発行です。審査の組み立て方は入国・在留審査要領とは?で解説しています。
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根拠資料
- 在留資格「家族滞在」(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 別表第一(e-Gov法令検索)
- 「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ(出入国在留管理庁)
- ビザ申請における招へい理由書・身元保証書の押印省略(外務省・2020年11月)
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