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技能ビザと特定技能・技人国の違い|調理・製造の仕事でどれを選ぶか

調理の仕事なら、外国料理の熟練した調理師を1人呼ぶときは技能ビザ、経験より試験の合格で人材をそろえ、調理から接客まで任せるときは特定技能です。技術・人文知識・国際業務(以下「技人国」)は、調理や接客そのものには使えません。製造の仕事では、ペルシアじゅうたんやヨーロッパ特有のガラス製品のように「日本にない製品」を作る熟練工なら技能です。食品工場や部品工場の現場作業なら特定技能、設計や技術開発なら技人国、という線引きになります。

ここで重要なのは、三つの在留資格が「何を基準に人を選んでいるか」という論点です。これを混同すると、選び方を誤ります。技能は本人の経験、特定技能は試験で測る即戦力の技能水準、技人国は学歴に裏づけられた知識を見ています。この違いが、任せられる仕事の範囲、雇い方、在留できる年数の違いにそのまま表れます。

この記事でわかること

  • 技能・特定技能・技人国が、それぞれ何を基準に人材を受け入れているか
  • 要件、雇用形態、在留期間の上限、家族帯同の比較
  • 飲食店の調理・接客・店舗管理で使える在留資格
  • 製造の仕事で技能ビザが使える場面と使えない場面
  • 特定技能の経験を技能・技人国に持ち越せない理由

三つの在留資格は何を基準に人を選んでいるか

技能について、入国・在留審査要領は「日本人で代替できない産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する外国人を受け入れるために設けられたもの」としています(18-1)。技人国との区別については、技人国が学術上の素養を含めて理論を実際に応用して処理する能力であるのに対し、技能は「主として個人が自己の経験の集積によって有している能力を指す」と整理しています(18-1)。

特定技能の趣旨は、第18節の3に書かれています。

中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるために設けられた

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-1

ここでいう「特定産業分野」とは、この人手不足対応のために指定された分野を指します。出入国在留管理庁の特定技能運用要領(令和8年8月)では19分野で、外食業、飲食料品製造業、工業製品製造業などが含まれます。開示された審査要領には16分野と書かれていますが、公表資料の新しいほうが現行の内容です。

三つの受入れ対象を並べると、技能は「その分野で熟練した個人」、特定技能は「人手不足の分野で即戦力になる人材」、技人国は「専門知識を使うホワイトカラー」を受け入れる仕組みです。

要件と雇い方の比較

比較項目 技能 特定技能1号 技人国
対象業務 基準省令の9区分(外国料理の調理、外国特有製品の製造等) 19の特定産業分野の業務区分 専門知識等を要する業務
主な要件 区分ごとの経験年数(調理師は10年以上) 技能評価試験等と日本語(N4以上等、分野によりN3以上) 大学卒業程度または実務経験10年以上(国際業務は3年以上)
契約の形 雇用のほか委任・委託等も可(特定機関との継続的な契約) 雇用契約に限る。原則フルタイムの直接雇用 雇用のほか委任・委託等も可
在留期間の上限 更新の回数に上限なし 通算5年 更新の回数に上限なし
家族帯同 可(家族滞在) 不可 可(家族滞在)
受入れ機関の支援義務 なし 1号特定技能外国人支援計画の作成・実施 なし
受入れ数の上限 なし 分野ごとの受入れ見込数あり なし

出典は、技能が18-1〜18-13、特定技能の雇用形態が18の3-2〜18の3-3、契約の形が第1節 1-1です。試験と日本語の水準の出典は、出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」です。家族帯同は入管法別表第一の四の表(家族滞在)によります。

1号特定技能外国人支援計画とは、特定技能1号の外国人が日本で仕事と生活を安定して続けられるよう、受入れ機関が行う支援の内容をまとめた計画を指します。技能と技人国にはこの義務がありません。その代わり、技能では経験の立証が、技人国では学歴と業務の関連性の立証が、審査の中心になります。

特定技能は、2号に移れば在留期間の上限がなくなり、家族も呼べます。2号の対象は11分野で、外食業、飲食料品製造業、工業製品製造業は対象に含まれています。

調理の仕事ならどれか

出入国在留管理庁の「飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について」は、飲食店での業務ごとに在留資格の可否を整理しています。技能の欄はない資料なので、第18節の内容を加えて表にしました。

業務 技能(調理師) 特定技能1号(外食業) 特定技能2号(外食業) 技人国
調理 外国料理の熟練した調理に限り可 可 可 不可
接客 主たる業務としては不可 可 可 不可
店舗管理 対象外 可 可 個別判断(本人が調理・接客をすることは不可)
店舗経営 対象外 不可 可 可

技能の調理師は、店の業務を幅広く任せる在留資格ではありません。許可の前提は、外国で考案され日本で特殊な料理の調理に、熟練した技能で従事することです(18-2)。和食の調理や、接客・洗い場が中心の働き方は対象外になります。任せたいのが「特定の外国料理の厨房」なのか「店全体の現場業務」なのかで、選ぶ在留資格が分かれます。調理師の技能ビザの立証方法は外国料理の調理師(コック)の技能ビザ|実務経験10年の立証と在職証明書で詳しく扱っています。

なお、日本の大学を卒業した留学生であれば、特定活動46号で飲食店の業務(皿洗いや清掃だけの従事は不可)に就く道もあります。

特定技能「外食業」は新規受入れが止まっている

外食業分野の特定技能1号は、在留者数が受入れ見込数に近づいたため、令和8年4月13日から在留資格認定証明書の交付が一時停止されています。同日以降に受理した認定申請は不交付、外食業の1号への変更申請も原則不許可です(外食業の1号在留者の転職等の例外があります)。更新は通常どおり審査されます。経緯と対応は特定技能「外食業」の新規受入れ停止|2026年4月13日以降に飲食店が取るべき対応を解説にまとめています。海外から新たに調理人材を呼ぶ場面では、10年の経歴を証明できる熟練の調理師に限られますが、受入れ数の上限がない技能ビザが現実的な選択肢になります。

製造の仕事ならどれか

製造業で技能ビザを使える場面は限られています。対象になるのは次の区分です。

  • 第1号:外国で考案され日本で特殊なパン、デザート、点心などの食品の製造(パティシエ等)
  • 第3号:外国特有の製品の製造・修理。審査要領は「ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシアじゅうたんなど、我が国にはない製品」を挙げ、治療靴を設計・製作するシューフィッターも含むとしています(18-4)
  • 第4号:宝石・貴金属・毛皮の加工。原石や動物から宝石・毛皮を作る過程を含みます(18-4)
【要確認】第4号の経験年数:開示版のOCRでは、第4号の条文の年数部分が数字の抜けた形になっています。審査のポイント(18-8)は第1号から第6号について10年以上の実務経験を確認するとしていますが、第4号の条文の年数は原本で確認が必要です。当事務所では、原本を確認するまで第4号の年数を断定していません。

第3号は日本にない製品が対象なので、日本でも一般に作られている製品の製造は含まれません。食品工場や部品工場のライン作業は、特定技能の飲食料品製造業や工業製品製造業の業務区分で検討することになります。

技人国で製造業に関わるなら、出入国在留管理庁の資料が例に挙げる設計、プログラミング、技術開発などの業務です。技人国の許可・不許可事例(別紙3)には、専門学校卒の人が菓子工場で洋菓子の製造に従事する申請が、反復訓練で従事できる業務として不許可になった例が載っています。工場での製造作業を主とする仕事は、技人国の対象になりません。

経験は他の在留資格に持ち越せない

特定技能で働いた人を、経験を積ませてから技能や技人国に切り替える。この計画は、審査要領の取扱いと合いません。審査要領は、特定技能のキャリアアップは基本的に1号から2号への移行によるとし、特定技能1号から技人国への変更は「想定されていない」としています。そのうえで、特定技能・技能実習の活動で得た経験は上陸基準省令の実務経験とは基本的に評価しないとしています。この考え方については「「技能」等の「技術・人文知識・国際業務」以外の在留資格においても同様とする」と明記しています(15-11〜15-12)。

日本の外国料理店で特定技能として働いた期間は、技能の調理師の10年に基本的に足せません。「基本的には」に続く部分は黒塗りとみられ、例外の有無は開示版からは読めません。特定技能から技人国への変更の詳しい扱いは特定技能から技人国へ変更できる?特定技能・技能実習の経験は実務経験に数えないで解説しています。

在留資格の選択は、採用時点だけでなく、5年後、10年後の働き方を決める先行投資でもあります。長く店の中核を担ってほしい人材なら、上限なく更新でき家族も呼べる技能や技人国、あるいは2号への移行を見込んだ特定技能を、最初から前提にして選ぶことをおすすめします。

迷ったときの確認の順番

筆者は、相談を受けたときに次の順で確認しています。

  1. 任せたい仕事は何か。特定の外国料理の調理、店全体の現場業務、管理・企画のどれか
  2. 候補者はその仕事で何年の経験があり、在職証明書で証明できるか(技能の可能性)
  3. 候補者は特定技能の評価試験と日本語試験に合格しているか、合格できる見込みがあるか(特定技能の可能性)
  4. 候補者の学歴と専攻は、任せたい業務と関連しているか(技人国の可能性)
  5. その分野の特定技能で、受入れの停止や上限の問題が生じていないか

1で「店全体の現場業務」と答えるなら、技能は外れます。2で必要な年数(調理師なら10年)の証明ができなければ、技能の申請はできません。順に絞ると、多くの場合は一つに決まります。技能ビザそのものの要件は技能ビザとは?対象職種・実務経験10年の要件と技人国との違いを審査要領で解説、特定技能の全体像は特定技能とは?【2026年最新】1号・2号の違い・対象分野・受入れ手続きを完全解説を参照してください。

よくある質問

Q. 外国料理店の調理師は、技能と特定技能のどちらで雇うべきですか?

その料理について10年以上(タイ料理人は条件付きで5年以上)の経験を証明できる熟練の調理師なら技能、経験は浅くても試験に合格して調理・接客・店舗管理を幅広く任せるなら特定技能「外食業」が候補です。ただし外食業の特定技能は、令和8年4月13日から在留資格認定証明書の交付が一時停止されています。

Q. 特定技能で5年働いた調理師を、技能ビザに切り替えられますか?

基本的に難しいと考えてください。審査要領は、特定技能・技能実習の活動で得た経験を上陸基準省令の「実務経験」とは評価しないとし、その考え方を技能にも同様に当てはめています。技能の10年は、それ以外の経験で満たす必要があります。

Q. 技人国の社員に調理をさせてもよいですか?

認められません。出入国在留管理庁の資料は、飲食店で技人国の人が調理・接客をすることは認めないとしています。店舗管理も個別判断で、管理者本人が調理・接客をすることは認められません。

Q. 洋菓子工場の製造ラインで技能ビザは使えますか?

技能の第1号は、外国で考案され日本で特殊なパンやデザートなどを熟練した技能で製造する調理師やパティシエが対象です。反復作業で担える工場ラインの業務は、熟練を要しない作業として技能には当たりにくく、特定技能「飲食料品製造業」などを検討することになります。

次にすべきこと

まず、採用したいポジションの業務内容を、1日の仕事の割合まで書き出してください。そのうえで、候補者の経歴(経験年数と証明の可否)、試験の合格状況、学歴の三つを並べると、使える在留資格が見えてきます。外国料理の熟練した調理師で10年の証明ができるなら、在職証明書の取り寄せから始めます。特定技能を考えるなら、その分野で認定証明書の交付が止まっていないかを先に確認してください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節「技能」18-1(趣旨・技人国との区別)、18-2(第1号 調理師)、18-4(第3号 外国特有製品、第4号 宝石・貴金属・毛皮。第4号の年数はOCR欠落)、18-12〜18-13(在留期間)
  • 同 第18節の3「特定技能」18の3-1〜18の3-3(制度趣旨・直接雇用とフルタイム)
  • 同 第15節「技術・人文知識・国際業務」15-11〜15-12(特定技能等の経験の扱い)
  • 同 第1節「全般事項」1-1(契約の形態)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」https://www.moj.go.jp/isa/content/001452975.pdf
  • 出入国在留管理庁「飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について」https://www.moj.go.jp/isa/content/001450260.pdf
  • 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf
  • 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付の一時停止措置について」https://www.moj.go.jp/isa/03_00176.html
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」別紙3 https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf