企業内転勤の在留資格のまま転職することはできません。日本の別の会社に移る場合はもちろん、海外の所属会社(転勤元)が変わる場合も同じです。入国・在留審査要領は、転勤元と日本の勤務先が同時に変わるケースを取り上げています。形のうえでは新しい転勤に見えても、「転勤元の変更はすなわち転職である」として在留資格該当性を認めないという整理です(第12編(開示版)16-12)。
転職後も日本で働き続けるには、転職先での仕事を前提に、技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)などへ在留資格を変更します。ここで見落とされやすいのが学歴です。企業内転勤には学歴の要件がないため、転勤者として問題なく在留してきた人が、技人国の学歴・実務経験の基準を満たさないことがあります。転職の話が出たら、最初に本人の最終学歴と専攻、職歴を確認してください。
この記事でわかること
- 企業内転勤のまま転職できない理由
- 海外の転勤元が変わった場合の審査要領の整理(16-12)
- 日本国内の異動が認められる場合との違い
- 技人国へ変更するときの学歴要件と準備
- 退職後の届出と、転職者を採用する企業の確認事項
企業内転勤は「転勤した事業所」に結びついた在留資格
入管法別表第1の2の表は、企業内転勤の活動を「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う」技人国の項の活動と定めています。行う仕事の中身は技人国と同じですが、誰が、どこで行うかが条文で限定されています。
審査要領ではこう書かれている
「企業内転勤」の在留資格においては、期間を定めて転勤するものであること及び転勤した特定の事業所においてしか活動を行うことができないことが「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と相違する。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 第1の2(3)キ(15-4)
ここでいう在留資格該当性とは、日本で行う活動が、入管法の別表に定められたその在留資格の活動に当てはまることを指します。企業内転勤の場合、「外国の事業所の職員であること」「その事業所から転勤してきたこと」「転勤先の当該事業所で働くこと」の三つがそろって、はじめて該当性が認められます。転職は、このうち少なくとも一つを崩します。両者の違いを並べると次のとおりです。
| 企業内転勤 | 技人国 | |
|---|---|---|
| 活動の根拠 | 外国の事業所からの転勤 | 本邦の公私の機関との契約 |
| 勤務先を変えたとき | 原則として在留資格該当性を失う(16-12) | 技人国の業務を続けるなら在留資格の変更は不要(届出は必要) |
| 学歴要件 | なし(直前1年以上の継続勤務と報酬が基準。16-3〜16-4) | 関連科目を専攻した大学卒業等、または10年以上の実務経験(15-8〜15-9) |
| 期間の定め | 必要(16-2) | 不要 |
企業内転勤の全体像は企業内転勤ビザとは|審査要領で読む要件と技人国との違いで整理しています。
海外の転勤元が変わると、審査要領は「転職」とみる
判断に迷いやすいのは、グループ内で籍が動くケースです。たとえば、A国の親会社X社から日本支店に転勤してきた社員が、日本にいる間にX社を退職してB国の関連会社Y社に籍を移し、同時に日本での勤務先もY社の日本子会社に変わる、という場面です。Y社から日本子会社へ転勤したと見れば、企業内転勤の形は整っているように見えます。
審査要領ではこう書かれている
転勤元と転勤先の変更が同時期に起こる場合について、転勤先の変更が転勤元の変更に伴って発生している場合は、表見上、新たに所属する外国の事業所から本邦の事業所に転勤する「新たな転勤関係」が生じることとなり、在留資格該当性があるようにも見えるが、転勤元の変更はすなわち転職であることから、本邦内の事業所の変更は転職に伴う稼働先(所属先)の変更にすぎず、転職元である外国にある事業所からの転勤とはいえないことから、在留資格該当性は認められない。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 第2の4「勤務先が変更になる場合の取扱い」(16-12)
審査要領の論理は、日本にいる間に起きた変化を、転勤ではなく転職と読み替える点にあります。日本の勤務先が変わった原因が「所属会社を替えたこと」にある以上、それは人事異動の結果とはいえない、という整理です。
筆者は、この結論は企業内転勤の1年要件の趣旨とも一貫していると考えます。審査要領は、転勤直前に外国の事業所で1年以上継続して勤務していることを求める基準について、「新たに採用した職員を直ちに本邦に転勤させることは認めないという規定」だと説明しています(16-3)。日本にいながら転勤元を替えた人は、新しい転勤元で働いた実績がないまま日本に在留していることになり、この趣旨とかみ合いません。
名目より実体で活動をみる考え方は、判例にも表れています。最高裁平成14年10月17日判決は、婚姻が法律上存続していても、実体を失い修復の見込みがなければ「日本人の配偶者等」の活動に当たらないとしました。身分系の判例ですが、形式が整っていても活動の実体で該当性を判断するという考え方は、就労系の審査にも共通します。
国内の異動が認められる場合と、どこが違うか
同じ16-12は、日本国内で勤務先が変わる場合全般についても書いています。日本の事業所の単独の判断で別の事業所へ移ること(審査要領はこれを「更なる転勤」と呼びます)は、原則として在留資格該当性を失わせます。一方、転勤命令が日本の事業所と転勤元の連名で出ている場合や、転勤元が承認している場合など、転勤元の最終的な判断による異動であれば、帰国せずに直接移っても「更なる転勤」には当たりません。
ここで重要なのは、国内異動の可否を分けるのが「転勤元が関与しているか」であり、転職の場面ではその転勤元自体が入れ替わっている、という論点です。関与すべき転勤元が変わってしまえば、関与の有無を問う前提がなくなります。場面ごとに並べると次のようになります。
| 場面 | 企業内転勤としての扱い |
|---|---|
| 転勤元の命令・承認のもとで、同一企業内の日本の別の事業所へ異動 | 「更なる転勤」に当たらず、該当性は認められる(16-12) |
| 日本の事業所の単独判断で別の事業所へ異動 | 「更なる転勤」として、原則該当性を失う(16-12) |
| 転勤元を替え、それに伴って日本の勤務先も変わる | 転職とみなされ、該当性は認められない(16-12) |
| グループ外の日本企業に就職 | 外国の事業所からの転勤ではないため、企業内転勤の活動に当たらない |
転勤元の関与を示す書面の整え方は企業内転勤中に日本国内の別の支店・グループ会社へ異動できるかで扱っています。
転職するなら技人国への在留資格変更が必要になる
転職先で働くには、在留資格変更許可申請(入管法20条)を行い、許可を受けてから転職先の業務に就きます。許可が出るまでは、転職先の業務に就くことはできません。入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年6月最終改正)は、変更の審査で考慮する事項を挙げています。在留資格該当性、上陸許可基準への適合(「原則として」必要)、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと、素行、独立生計、雇用・労働条件、納税義務等の履行、届出義務の履行です。
学歴・実務経験の基準を満たすか
変更先を技人国とする場合、関門になるのが基準省令の経歴要件です。ここでいう基準省令とは、在留資格ごとに入国時の条件を定めた法務省令(上陸許可基準)を指し、技人国では次のいずれかが求められます(15-8〜15-9、15-17〜15-18)。
- 業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して、大学を卒業しているか、これと同等以上の教育を受けていること
- 関連する科目を専攻して、日本の専修学校の専門課程を修了していること(専門士・高度専門士)
- 10年以上の実務経験(関連科目を専攻した在学期間を含む)
- 翻訳・通訳・広報・海外取引業務などの国際業務では、原則3年以上の関連業務の実務経験(大学卒業者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は不要)
企業内転勤の基準は、転勤直前に外国の事業所で技人国相当の業務に1年以上継続して従事していることと、日本人と同等額以上の報酬の二つです(16-3〜16-4)。学歴は問われていません。高校卒業後に海外の現地法人で経験を積み、転勤で来日した人は、企業内転勤の許可は受けられても、技人国の経歴要件には届かないことがあります。専攻と業務の関連性は、大学卒業者なら「比較的緩やかに判断される」一方、専門学校卒業者は「相当程度の関連性」が必要とされます(15-10)。要件の詳細は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説を確認してください。
2026年の運用変更と、期間・手数料
転職先での職種が翻訳・通訳や接客など、主に言語能力を使う対人業務である場合は注意が必要です。令和8年4月15日以降の申請ではCEFR B2相当の言語能力が前提になり、変更申請でもその証明資料を出します(入管庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」ページ)。転職先がカテゴリー3・4の機関であれば、「所属機関の代表者に関する申告書」も追加で提出します。
処理期間は、変更の標準処理期間が1〜2か月とされています(在留資格変更許可申請の手続ページ)。令和8年7月許可分の実績では、技人国への変更の告知までの平均は72.9日でした(在留審査処理期間)。手数料は令和8年10月1日から、許可される在留期間に応じた額に改定されます(1年なら窓口33,000円・オンライン27,000円、3年以上5年未満なら64,000円・56,000円)。令和8年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月以降でも旧手数料です。
退職したら14日以内の届出を
企業内転勤は、入管法19条の16が定める所属機関(活動機関)に関する届出の対象です。所属機関から離脱・移籍したときなどは、その日から14日以内に出入国在留管理庁長官へ届け出ます。
退職後、次の仕事が決まらないまま在留期限まで時間がある場合、在留資格の取消しが気になるところです。入管庁の出入国審査・在留審査Q&A(Q77)は、技人国・技能等の就労資格で活動を3か月以上行っていない場合を扱っています。その場合でも、退職後に会社訪問など具体的な就職活動をしているような「正当な理由」があれば、取消しの対象にはならないとしています。就職活動の記録は残しておいてください。なお、審査要領には、会社都合で解雇された就労資格者の在留を定めた取扱いがあります(1-16)。ただし対象は「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格とされており、企業内転勤が含まれるかは文言上明示されていません【要確認】。
退職時の手続全般は外国人社員が退職・解雇したら?企業に必要な届出と手続きを解説を参照してください。
転勤者を中途採用する日本企業が確認すること
採用候補者の在留カードの在留資格欄が「企業内転勤」であれば、そのまま自社で働かせることはできません。変更許可を受ける前に業務を始めさせると、本人は資格外の就労、会社は不法就労助長罪(入管法73条の2)の問題に直面します。内定の段階で確認したいのは次の点です。
- 最終学歴と専攻(卒業証明書・成績証明書)が、自社で任せる業務と関連しているか
- 学歴で足りない場合、関連業務の実務経験を在職証明書で年数どおり示せるか
- 任せる業務が技人国の範囲に入り、報酬が同じ業務の日本人と同等額以上か
- 企業内転勤の申請時に出した経歴書・職歴と、今回の申請内容に食い違いがないか
最後の点は軽視できません。変更申請では、過去の申請で入管に出した経歴と今回の経歴書が突き合わされます。当事務所でも、経歴の記載に詐称と受け取られても仕方がない誤りがあった案件を扱ったことがあります。このときは誤りを隠さず、経緯を説明したうえで申請し、許可を受けました。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
技人国の外国人を中途採用するときの届出や手続は技術・人文知識・国際業務の外国人が転職したら?企業に必要な届出と手続きを解説で解説しています。
よくある質問
Q. 企業内転勤ビザのまま日本の別の会社に転職できますか?
できません。企業内転勤は、外国の事業所から転勤した日本の特定の事業所で働くための在留資格です。グループ外の会社に移るなら、転職先での業務を前提に技術・人文知識・国際業務などへの在留資格変更許可を受ける必要があります。
Q. 海外の所属会社が同じグループ内で変わった場合も、企業内転勤のままでよいですか?
認められません。審査要領は、転勤元と日本の勤務先が同時に変わる場合、形のうえでは新しい転勤に見えても、転勤元の変更は転職であるとして在留資格該当性を認めないと整理しています(16-12)。
Q. 企業内転勤から技人国に変更するとき、学歴は必要ですか?
必要です。企業内転勤には学歴要件がありませんが、技人国では、業務に関連する科目を専攻した大学卒業等の学歴、または原則10年以上の実務経験(国際業務は原則3年以上)が求められます。転職を決める前に確認してください。
Q. 転勤元の会社を退職したら、何をすればよいですか?
退職した日から14日以内に、出入国在留管理庁長官へ所属機関に関する届出をします。そのうえで、日本で働き続けるなら転職先を前提に在留資格の変更を申請し、帰国するなら在留期限までに出国の準備を進めます。
転職の話が出たら、最初にすること
まず、本人の卒業証明書と専攻、これまでの職歴を手元にそろえ、技人国の経歴要件を満たすかを確かめてください。満たすなら、転職先の業務内容と報酬を固めたうえで、現在の在留期限と退職日から変更申請のスケジュールを組みます。満たさない場合は、転職そのものを見直すか、転勤元に残ったまま期間の延長を求めるかを、退職届を出す前に判断すべきです。グループ内で籍を移す計画がある企業は、その異動が「転勤元の変更」に当たらないか、人事部門で辞令を出す前に確認してください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 企業内転勤 第1の1〜3(16-1〜16-4)、第2の4(16-12)
- 同 第15節 技術・人文知識・国際業務 第1の2(3)キ(15-4)、第1の3(2)(3)(15-8〜15-10、15-17〜15-18)
- 同 第1節 第8「雇用状況の悪化に伴う外国人の在留に関する取扱い」(1-16)
- 出入国在留管理庁 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html)
- 出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請(https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html)
- 出入国在留管理庁 在留審査処理期間(令和8年7月許可分)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001470530.pdf)
- 出入国在留管理庁 出入国審査・在留審査Q&A(https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html)
- 出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html)
- 出入国在留管理庁 令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について(https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html)
- 最高裁平成14年10月17日判決