海外勤務が1年に満たない社員は、企業内転勤では日本に呼べません。取れる道は三つです。グループ会社での勤務期間を合算して1年を満たせないか確認する、技人国の上陸許可基準に当てはめて技人国で呼ぶ、1年に達するまで待つ。本人が大学を卒業していれば、多くの場合は技人国が現実的な選択肢になります。
入管の内部基準である入国・在留審査要領は、企業内転勤の基準に適合しない申請を「直ちに」不交付にせず、技人国に当たるかを確認するよう定めています。同一法人の中の転勤なら、技人国で呼ぶ場合も日本法人と雇用契約を結び直す必要はありません。以下では、情報公開請求で開示された審査要領の第16節(16-3、16-11〜16-12)と第15節(15-4)をもとに、1年要件の数え方と技人国への切替えの条件を整理します。
この記事でわかること
- 企業内転勤の1年要件の条文と趣旨
- 1年に数えられる期間(日本での企業内転勤期間、グループ会社での勤務)
- 1年に届かない社員を技人国で呼ぶ条件と、雇用契約の扱い
- どの方法を選ぶかの判断順序と、1年を証明する資料
1年要件の条文
企業内転勤の上陸許可基準(入管法7条1項2号の基準省令で定める条件)は2号から成り、第1号が勤務期間の要件です。審査要領第15節は、その内容を次のように引いています。
「申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において1年以上継続して法別表第1の2の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事していること。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-4
ここでいう1年要件とは、転勤の直前に外国の事業所で1年以上継続して技人国の項の下欄に掲げる業務に従事していることを求める、上陸許可基準第1号の定めを指します。分解すると、要件は三つの部分からできています。転勤の「直前」であること、「1年以上継続して」いること、従事していた業務が技人国の項の下欄に掲げる業務であること。この三つが同時にそろって初めて第1号に適合します。
業務の中身について、審査要領は技人国の下欄に規定する業務であれば足り、日本で従事する業務と同一または関連する業務である必要まではないとしています(16-3)。海外で品質管理をしていた技術者が、日本で購買の仕事に就いても要件は満たします。反対に、海外で現場作業や単純な事務補助をしていた期間は、何年あっても1年には数えられません。
「直前」をどの時点で見るかについて、審査要領は申請時点か転勤時点かを明示していません【要確認】。筆者は、在留資格認定証明書の申請時点で1年を満たしたうえで申請するのが安全と考えています。
なぜ1年が求められるのか
ここで重要なのは、1年要件が経験年数の要件というより、採用直後の転勤を防ぐための要件だという論点です。審査要領は、この規定を「新たに採用した職員を直ちに本邦に転勤させることは認めないという規定」と説明しています(16-3)。外国企業が日本での労働力確保だけを目的に、技人国に当たる業務をしたことがない新規採用者を送り込むことを防ぐ趣旨です。
この趣旨を踏まえると、1年要件の本質は「その企業グループの中で、技人国レベルの仕事をしてきた実績があるか」という点にあります。趣旨に照らして問題のない勤務実績であれば合算を認める、という次の緩和も、この考え方から出ています。
1年に数えられる期間
審査要領は、1年の数え方について二つの緩和を置いています。
| 合算できる期間 | 条件 | 審査要領 |
|---|---|---|
| 日本での企業内転勤の期間 | 直前の1年以内に、外国の事業所等から転勤して日本の事業所に企業内転勤で在留していた期間 | 16-3、16-4 |
| グループ会社での勤務期間 | 働いていた会社が、転勤元と同種の業務を行う子会社や関連会社で、人事異動等が一体的に行われることが可能な程度の関係にあること | 16-3 |
一つ目は、以前にも企業内転勤で日本に来ていた社員が、いったん海外に戻り、再び日本に転勤するような場面です。日本にいた期間も「外国の事業所での勤務」と同じように数えられます。
二つ目のグループ会社での合算は、実務でよく使う緩和です。審査要領は、働いていた会社が転勤元と業務上・資本関係等で密接な関連を持つ場合の扱いを定めています。その場合は、転勤元に籍を置いて1年以上勤務したことがなくても、その子会社や関連会社での勤務実績を合算して継続1年以上あれば基準に適合すると扱ってよいとしています(16-3)。
条件は二つです。一つは転勤元と同種の業務を行っていること、もう一つは人事異動等が一体的に行われることが可能な程度の関係があること。資本関係があるだけでは足りません。同じ製品の販売を手がける海外の子会社Aに8か月、子会社Bに5か月勤務し、グループの人事部門が両社の人事を一括して管理している、という事情があれば合算の説明が成り立ちます。グループ内の人事異動の規程や、過去の異動の実績を資料として示すのが有効です。
合算の条件は、企業内転勤の「転勤」の範囲とは別の基準である点にも注意してください。親会社・子会社・関連会社のどこまでが転勤の対象になるかは企業内転勤の「転勤」の範囲|親会社・子会社・孫会社・関連会社への異動で整理しています。
技人国で呼ぶという選択肢
合算しても1年に届かない場合、次に検討するのが技人国です。審査要領は、企業内転勤の基準に適合しない申請の扱いを明記しています。
「基準に適合しない場合には、従事しようとする業務内容が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にも該当し得ないときを除き、直ちに在留資格認定証明書交付申請を不交付処分とすることなく、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するか否かを確認の上、当該在留資格による上陸のための条件への適合性について…」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-3(この文の続きは次頁につながっておらず、黒塗りまたはOCR欠落の可能性がある)
日本での仕事の中身は企業内転勤も技人国も同じです。違いは上陸許可基準にあります。企業内転勤で求められるのは1年の勤務と報酬ですが、技人国では本人の学歴か実務経験が問われます。
| 技人国の基準 | 内容 |
|---|---|
| 第1号(技術・人文知識) | 業務に関連する科目を専攻して大学を卒業(同等以上の教育を含む)、関連科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了、または10年以上の実務経験(関連科目の専攻期間を含む)のいずれか。情報処理業務はIT告示の試験合格・資格でも可 |
| 第2号(国際業務) | 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等に従事し、関連する業務で3年以上の実務経験。大学卒業者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は実務経験不要 |
| 第3号(報酬) | 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上 |
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-8〜15-9、15-17〜15-18
海外で採用されたばかりの社員でも、現地の大学で業務に関連する分野を専攻していれば、第1号で技人国の基準に適合します。技人国の要件の全体像は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説にまとめています。
日本で主に翻訳・通訳や接客など言語能力を使う対人業務を担当する場合は、令和8年4月15日から、CEFR・B2相当の言語能力が前提になりました。カテゴリー3・4の機関は申請時に証明資料を出す必要があり、同じ日から「所属機関の代表者に関する申告書」の提出も求められています(入管庁「技術・人文知識・国際業務」ページ、別紙4)。詳しくは通訳・翻訳・接客の技人国にCEFR B2が必要に(2026年4月15日〜)|大卒なら実務経験不要の例外もを確認してください。
雇用契約は結び直すのか
技人国は「本邦の公私の機関との契約に基づいて」行う活動です。海外で採用された社員は、日本法人と直接の雇用契約を結んでいないことが多く、この点が障害になるように見えます。審査要領はここを明確に整理しています。技人国で入国する場合も、同一法人の外国の事業所から日本の事業所への転勤であれば、日本にある外国法人の本店・支店等との間で新たに雇用契約を結ぶ必要はありません。この点は企業内転勤に特有のことではないとされています(16-12)。
理由は、転勤前に外国企業に採用された時点で雇用契約をすでに結んでおり、その契約をもって「本邦の公私の機関との契約」があるといえるからです(16-11、15-4)。外国法人の日本支店に転勤させる場合が典型です。
ただし、この扱いが書かれているのは「同一の法人」の場合だけです。海外の親会社の社員を日本の子会社で技人国として働かせる場合、法人が異なるため、審査要領のこの箇所はそのまま当てはまりません。日本の子会社との雇用契約を用意するのが確実です。海外の会社と日本の会社の間の契約書しかない場合について、審査要領第1節は6つの事項を挙げています。本人の特定、使用者の特定、労働契約を締結する旨、労働条件、労働基準法の遵守、賃金の直接支払いです。これらが明示されていれば、本人との労働契約の成立を認めるとしています(1-2〜1-3)。
どの方法を選ぶか
判断の順序は、次のように組み立てると迷いません。
- 海外での業務が技人国の下欄に当たるかを確認する。当たらなければ、企業内転勤の1年にはならない
- 転勤元での期間が1年未満なら、同種の業務を行うグループ会社での勤務や、直前1年以内の日本での企業内転勤期間を合算できないか確認する
- 合算しても1年未満なら、本人の学歴・実務経験が技人国の基準に適合するかを確認する
- 技人国の基準にも適合しなければ、1年に達するまで海外での勤務を続けてもらい、企業内転勤で申請する
技人国の基準に適合する社員なら、1年を待たずに技人国で呼ぶ選択には利点もあります。技人国は日本での勤務期間が限られず、転勤した特定の事業所でしか働けないという企業内転勤の制約(15-4)もありません。来日後に日本国内の別拠点へ異動させる可能性があるなら、筆者は技人国を優先して検討すべきと考えます。
一方で処理期間は、令和8年7月に許可された案件の平均で、認定が企業内転勤37.8日、技人国49.8日でした(入管庁「在留審査処理期間」、不許可・取下げは含まない)。赴任日が迫っていて1年の到達も近い場合は、到達を待って企業内転勤で申請したほうが早いこともあります。
1年の勤務を証明する資料
審査要領は、申請書の職歴欄と立証資料で、転勤前の事業所で技人国の活動に従事していたこと、その期間が継続して1年以上あることを確認するとしています(16-4)。入管庁の提出書類一覧(令和8年4月1日運用開始、カテゴリー3・4)では、次のものが求められます。
- 過去1年間の業務内容・地位・報酬を明示した、転勤直前に勤務していた外国の機関の文書(社会保険の加入証明等。直前1年以内に企業内転勤で日本にいた期間があれば、その日本の機関の分も含む)
- 経歴書
- 転勤前に勤務していた事業所の存在を明らかにする資料(公的機関の法人登記資料、または納税状況・取引実績・船荷証券・輸出入許可書・広告等)
- 転勤前後の事業所の関係を示す資料(支店の登記、出資関係・資本関係の資料)
グループ会社での勤務を合算する場合は、それぞれの会社について在籍期間と業務内容を示す文書が必要です。さらに「同種の業務」と「人事異動等の一体性」を示す資料(事業内容の比較、グループの人事規程、異動の辞令など)を添えると、合算の根拠を審査官が確認しやすくなります。1年要件以外の要件の全体像は企業内転勤ビザとは|審査要領で読む要件と技人国との違いを参照してください。
よくある質問
Q. 海外で採用して半年の社員を企業内転勤で日本に呼べますか?
原則として呼べません。企業内転勤の基準は、転勤の直前に外国の事業所で技人国相当の業務に継続して1年以上従事していることです。ただし、同種の業務を行うグループ会社で人事異動が一体的に行われる関係があれば、その会社での勤務期間を合算できる場合があります。合算しても1年に届かなければ、技人国での受入れを検討します。
Q. 技人国で呼ぶ場合、日本法人と雇用契約を結び直す必要はありますか?
同一法人の外国の事業所から日本の事業所への転勤であれば、転勤前に外国企業と結んだ雇用契約をもって本邦の公私の機関との契約があるといえるため、新たな契約は不要と審査要領に書かれています。日本の子会社など別法人で働く場合は、この扱いは書かれておらず、日本側の機関との契約を用意することになります。
Q. 海外で現場作業をしていた期間も1年に数えられますか?
数えられません。1年の間に従事していた業務は、技人国の項の下欄に掲げる業務でなければなりません。一方、日本で担当する業務と同一または関連する業務であることまでは求められていません。
Q. 企業内転勤の要件を満たさないと、申請はすぐ不交付になりますか?
審査要領は、業務内容が技人国にも該当し得ない場合を除き、直ちに不交付とせず、技人国に当たるかを確認したうえで上陸条件への適合性を検討するよう定めています。ただし技人国の学歴・実務経験の要件を満たしていなければ、技人国としても許可されません。
申請の前に確認すること
まず、転勤させたい社員の在籍期間を月単位で書き出し、その間の業務が技人国に当たるかを一つずつ確認してください。1年に足りなければ、グループ会社での勤務歴と、本人の最終学歴・専攻を並べます。この二つの表があれば、企業内転勤で進めるか、技人国で呼ぶか、到達を待つかの判断ができます。
申請書の在留資格欄をどちらにするかで、提出する資料も変わります。赴任日から逆算して、どの時点で何を申請するかを先に決めておくことをおすすめします。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節「企業内転勤」16-3〜16-4、16-11〜16-12(情報公開請求による開示版。16-3末尾は黒塗りまたはOCR欠落の可能性)
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-4、15-8〜15-9、15-17〜15-18
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節 第1「本邦の公私の機関との契約」1-2〜1-3
- 出入国在留管理庁「在留資格「企業内転勤」」・提出書類一覧(令和8年4月1日運用開始)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/intracompanytransfee.html、https://www.moj.go.jp/isa/content/001457117.pdf
- 出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」別紙4 https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
- 出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」ページ https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html
- 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html